公益社団法人日本産科婦人科学会は、出生前に行われる遺伝学的検査について会告(見解)を公表しています。この記事では、出生前親子鑑定がその中でどのように位置づけられているかを、実際の文言にもとづいて解説します。あわせて、NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)との違いも紹介します。
出産前に父子関係を確認できる検査
法的鑑定もできる
日本産科婦人科学会が公表している見解
日本産科婦人科学会は2013年6月22日に見解を改定・公表しました。正式名称は「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」です。
この見解には、「法的措置の場合を除き、出生前親子鑑定など医療目的ではない遺伝子解析・検査を行ってはならない」という一文が含まれています。医療を目的としない遺伝子解析は、家庭裁判所の手続きなど法的な必要性がある場合を除いて行うべきではない。これが学会の立場です。
なお、正式名称は「日本産科婦人科学会」であり、「産科」と「婦人科」の両方を含む名称です。混同されやすいため、この記事でも正式名称で統一しています。
出産前に父子関係を確認できる検査
法的鑑定もできる
出生前親子鑑定が対象外とされている理由
出生前診断は本来、胎児が疾患を有する可能性を調べる医療目的で行われる検査です。
- 侵襲的な検査に伴うリスク:羊水穿刺や絨毛採取など、従来の出生前検査には母体への侵襲を伴う方法があり、一定の割合で流産等のリスクが知られています。
- 医療上の必要性とのバランス:医療目的以外の理由でこうした検査を行うことは、母体・胎児への負担に見合わないという考え方が背景にあります。
親子関係の確認だけを目的に、こうしたリスクを伴う検査を行うことには慎重であるべきです。これが学会の一貫した姿勢といえます。
NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)との違い
NIPTは、母体血液中に含まれる胎児由来のDNAを調べる非侵襲的な検査です。日本では、13番・18番・21番染色体の数的異常を調べるスクリーニング検査として、認証施設による臨床研究の枠組みで運用されています。
NIPTと出生前親子鑑定は、母体血液を検体とする点は共通していますが、目的も運用体制もまったく異なります。NIPTは染色体異常のスクリーニングという医療目的に限定された検査であり、遺伝カウンセリング体制の整った認証施設でのみ実施されます。親子関係の確認を目的とした検査ではありません。
| 項目 | NIPT(染色体異常スクリーニング) | 出生前親子鑑定 |
|---|---|---|
| 目的 | 染色体数的異常の可能性を調べる医療検査 | 父子関係の確認 |
| 運用体制 | 認証施設・遺伝カウンセリング体制が必須 | 医療機関が独自に提供するサービス |
| 検体 | 母体血液 | 母体血液・父親候補の頬粘膜または血液 |
出産前に父子関係を確認できる検査
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ヒロクリニックの出生前親子鑑定の位置づけ
日本産科婦人科学会の見解は、学会が管理するNIPTの臨床研究体制を中心に定められたものです。家族関係の確認を目的とした私的な出生前親子鑑定は、この臨床研究の枠組みとは別に、医療機関が独自に提供しているサービスにあたります。
ヒロクリニックでは、検査を希望されるご本人(妊婦さん)の同意のもとで、医師の説明を受けていただいたうえで検査を実施しています。裁判所への提出など法的な手続きを目的とする場合は、私的鑑定とは異なる要件を満たす必要があるため、目的に応じた検査方法を選ぶことが大切です。私的鑑定と法的鑑定の違いはDNA鑑定の費用(私的、法的鑑定の比較)で解説しています。
母体血液を用いた検査の流れはNIPPTの利点とプロセス:母体血液サンプルから学ぶ出生前親子鑑定でも解説していますので、あわせてご確認ください。
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法的鑑定もできる
まず専門家に相談してください
出生前親子鑑定を検討する際は、私的な確認が目的なのか、法的な手続きが目的なのかによって選ぶべき検査が変わります。判断に迷う場合は、一人で抱え込まず専門家に相談してください。
よくある質問
日本産科婦人科学会は出生前親子鑑定を禁止していますか。
禁止する法的強制力はありません。ただし、法的措置の場合を除き、医療目的ではない遺伝子解析・検査を行うべきではないという見解を公表しています。
NIPTと出生前親子鑑定は同じ検査ですか。
母体血液を検体とする点は共通していますが、目的と運用体制が異なります。NIPTは染色体異常のスクリーニングを目的とした医療検査で、認証施設での実施が必須です。
私的な出生前親子鑑定を受けることは違法ですか。
直ちに違法となるものではありません。私的鑑定として提供している医療機関があります。ただし、結果を法的な手続きに使う場合は、法的鑑定としての要件を確認する必要があります。
法的な手続きのために鑑定結果を使いたい場合はどうすればいいですか。
法的鑑定として、要件を満たした手順で検査を受ける必要があります。私的鑑定との違いは専門記事で解説しています。
検査を受ける前に相談できますか。
可能です。目的(私的な確認か、法的な手続きか)に応じた検査方法について、事前にご相談いただけます。
まとめ
日本産科婦人科学会は、法的措置の場合を除き、医療目的ではない遺伝子解析・検査(出生前親子鑑定を含む)を行うべきではないという見解を公表しています。この見解は主に、学会が管理するNIPTの臨床研究体制を対象としたものです。
私的な出生前親子鑑定と法的鑑定では、必要な手続きが異なります。検査の目的を明確にしたうえで、医療機関に相談してください。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 出生前遺伝学的検査に関する見解. 日本産科婦人科学会雑誌. 2022;74(6):1012-1025.
- 日本法医学会. DNA親子鑑定についての指針(2021年改訂版). 法医学の実際と研究. 2021;64:1-5.
- Ryan A, Banjevic M, de la Vega FM, et al. Noninvasive prenatal paternity testing. Genet Med. 2013;15(6):473-477.
- Sparks AB, Struble CA, Wang ET, et al. Noninvasive prenatal paternity testing using maternal plasma. Am J Obstet Gynecol. 2012;206(4):319.e1-5.





