子供でなかった時に取るべき法的手段(時期別)

この記事の概要

親子関係を否定するための「否認の訴え」と「親子関係不存在確認の訴え」は、どちらも親子関係を法的に否定するための手段ですが、その目的や適用条件、手続きには重要な違いがあります。

婚姻中に生まれた子は、民法上「夫の子」であると推定されます。DNA鑑定によって生物学上の父子関係がないと分かった場合でも、法律上の親子関係を否定するには、決められた手続きを、決められた期間内に行う必要があります。この分野は2024年4月の民法改正で大きく変わった部分でもあるため、古い情報のまま判断すると、本来使えるはずの手続きを見落としてしまう可能性があります。ここでは現行の制度を整理してご説明します。つらい状況のなかで手続きを調べている方も多いと思いますが、まずは落ち着いて、ご自身のケースがどの制度にあてはまるのかを確認していきましょう。

この記事でわかること

  • 婚姻中に生まれた子に対する「嫡出推定」の基本的な考え方
  • 2024年4月の民法改正で、提訴期間・提訴できる人がどう変わったか
  • 「嫡出否認の訴え」と「親子関係不存在確認の訴え」の違いと使い分け
  • 出生からの経過期間別に、どちらの手続きを検討すべきか
  • 手続きを進める際の一般的な流れと、相談先を選ぶときのポイント

出産前に父子関係を確認できる検査
法的鑑定もできる

婚姻中に生まれた子の「嫡出推定」とは

民法772条により、婚姻中に懐胎した子や、婚姻中または離婚後300日以内に生まれた子は、法律上「夫の子」と推定されます。これを「嫡出推定」と呼びます。この推定は、母親が誰と生物学的な親子関係にあるかとは関係なく、婚姻関係という外形的な事実から法律上の親子関係を早期に確定させ、子の身分関係を安定させるための制度です。そのため、たとえDNA鑑定で生物学上の父子関係が否定されたとしても、それだけで自動的に法律上の親子関係が消えるわけではありません。法律上の親子関係を否定するには、後述する裁判上の手続きを経る必要があります。

2024年4月の民法改正で何が変わったのか

2022年12月に成立した改正民法が2024年4月1日に施行され、嫡出否認の提訴期間が1年から3年に延び、提訴できる人も夫だけでなく子・母・前夫まで広がりました。以前は「夫のみが、子の出生を知った時から1年以内」という非常に限定的な制度でしたが、現在は次のように変わっています。

  • 提訴できる人の拡大:改正前は夫のみでしたが、改正後は父(夫)・子・母・前夫(母の再婚に伴い推定される夫が変わるケースなど)が対象になりました。
  • 提訴期間の延長:1年から3年に延びました。起算点は提訴する人によって異なり、父・前夫は「子の出生を知った時」から3年以内、子・母は「子の出生の時」から3年以内です。
  • 子どもの特例:子が父と継続して同居した期間が3年に満たない場合、子は21歳に達するまで嫡出否認の訴えを提起できます(父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときを除きます)。
  • 母・前夫の行使制限:母や前夫が否認権を行使することが子の利益を害することが明らかなときは、その行使は認められません。

あわせて、離婚後300日以内に生まれた子であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合は再婚後の夫の子と推定するというルール(いわゆる「300日問題」の解消)や、女性の再婚禁止期間の廃止もあわせて施行されています。なお、2024年3月31日以前に生まれた子については、子や母に限り、施行日である2024年4月1日から1年間(2025年3月31日まで)に限定した経過措置が設けられていましたが、この経過措置の期間はすでに終了しています。現時点でこれから手続きを検討する場合は、通常の3年ルールにあてはめて期間を確認する必要があります。

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嫡出否認の訴えとは

嫡出否認の訴えは、民法772条の嫡出推定を受ける子について、法律上の父子関係の推定を裁判で覆すための手続きです。婚姻中に生まれた多くの子はこの推定を受けるため、DNA鑑定などで生物学上の父子関係が否定された場合の基本的な手続きは、まずこの嫡出否認の訴えを検討することになります。

提訴できる人と期間

  • 父(夫):子の出生を知った時から3年以内。
  • :子の出生の時から3年以内。父と同居した期間が3年未満の場合は21歳まで(父の利益を著しく害する場合を除く)。
  • :子の出生の時から3年以内(子の利益を害することが明らかなときを除く)。
  • 前夫(母の再婚により推定が及ぶ夫が変わるケースなど):子の出生を知った時から3年以内(子の利益を害することが明らかなときを除く)。

主な特徴

  • 期間内に提訴しない場合、法律上の親子関係は確定し、後から覆すことが極めて難しくなります。
  • 「親子関係がない」ことを直接証明するのではなく、法律が推定している親子関係を裁判で否定する手続きという位置づけです。
  • 実務上、DNA鑑定の結果は父子関係の有無を裏付ける重要な証拠として提出されることが一般的です。

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親子関係不存在確認の訴えとは

親子関係不存在確認の訴えは、嫡出推定がそもそも及ばない「推定の及ばない子」について、親子関係が存在しないことを確認するための手続きです。ここが特に誤解されやすいポイントですが、単にDNA鑑定で生物学上の父子関係が否定されたというだけでは、婚姻中に懐胎された子について当然にこの手続きが使えるわけではありません。

「推定の及ばない子」とは

判例上、「推定の及ばない子」と認められるのは、夫の長期の海外赴任・服役・別居など、母が夫の子を懐胎する可能性がおよそ考えられないことが外観上明白な事情がある場合に限られます。最高裁判所は2014年の判決で、生物学上の父子関係がDNA鑑定によって否定されており、子が現に夫のもとで監護されておらず、実際には妻や生物学上の父のもとで生活しているという事情があっても、それだけでは「推定の及ばない子」にはあたらず、親子関係不存在確認の訴えでは父子関係を争えないと判断しています。子の身分関係の法的な安定を保つ必要があるという考え方に基づく判断です。

提訴できる人と期間

  • 提訴できる人:夫、妻、子、その他利害関係を持つ第三者(相続人など)。
  • 期間:提訴期間の制限はありません。ただし時間の経過により、当時の状況を示す証拠の収集が難しくなることがあります。

つまり、「推定の及ばない子」に該当する特別な事情がない限り、婚姻中に生まれた子の父子関係を争うには、期間の定めがある嫡出否認の訴えによる必要がある、というのが現在の実務・判例の基本的な考え方です。ご自身のケースが「推定の及ばない子」にあたるかどうかは事案ごとの個別判断となるため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

両者の違いのまとめ

嫡出否認の訴えは期間が限られた原則的な手続きで、親子関係不存在確認の訴えは「推定の及ばない子」に限定される例外的な手続きです。それぞれの違いを表で整理します。

項目嫡出否認の訴え親子関係不存在確認の訴え
対象嫡出推定を受ける子推定の及ばない子(外観上、懐胎の可能性がない場合など)
目的推定されている親子関係を裁判で否定する親子関係がそもそも存在しないことを確認する
提訴できる者父(夫)・子・母・前夫(2024年4月改正で拡大)夫、妻、子、利害関係を持つ第三者
提訴期間原則3年以内(起算点は提訴者により異なる。子は特例で21歳まで)期限なし
主な適用状況婚姻中に生まれた子の父子関係をDNA鑑定等で争う一般的なケース長期別居・海外赴任等で懐胎の可能性自体が外観上明白にない特別な場合
夫婦 不仲 赤ちゃん 

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出生からの経過期間別に検討すべき手続き

子の出生から3年以内であれば嫡出否認の訴え、3年を経過している場合は原則として提訴できる人が限られ、「推定の及ばない子」にあたる特別な事情があるかどうかが重要な分かれ目になります。状況別に整理すると、次のようになります。

  1. 出生から3年以内の場合:父・子・母のいずれも、原則として嫡出否認の訴えを提起できます。DNA鑑定を証拠として準備したうえで、早めに家庭裁判所への申立てを検討します。
  2. 出生から3年を経過している場合:父・母による通常の否認は期間経過により難しくなりますが、子自身は父と同居した期間が3年未満であれば21歳まで提起できる特例があります。それ以外は、「推定の及ばない子」にあたる特別な事情があるかを弁護士とともに確認する必要があります。
  3. 長期の別居・海外赴任などで懐胎の可能性が外観上明白にない場合:「推定の及ばない子」として親子関係不存在確認の訴えを検討できる可能性があります。ただし該当するかどうかは事案ごとの判断のため、専門家への相談が欠かせません。
  4. 2024年3月31日以前に子が生まれている場合:子・母を対象とした経過措置(2025年3月31日までの1年間)はすでに終了しているため、現時点で新たに検討する場合は通常の3年ルールにあてはめて期間を確認します。

手続きを進める際の一般的な流れ

嫡出否認や親子関係不存在確認は人事訴訟にあたるため、多くの場合はまず家庭裁判所での話し合い(調停)を経てから訴訟に進みます。一般的な流れとしては、家庭裁判所に調停または訴えを申し立て、必要に応じてDNA鑑定の結果を証拠として提出し、審理を経て結論が示されるという流れになります。DNA鑑定書は父子関係の有無を裏付ける有力な資料として扱われますが、どの手続きを選ぶべきか、どのような資料をそろえるべきかは個々の事情によって異なります。具体的な進め方については、必ず弁護士など法律の専門家に相談したうえで判断してください。

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専門家に相談する際のポイント

手続きの選択や期間の計算は事案ごとに判断が分かれるため、DNA鑑定の結果が出た段階で早めに弁護士へ相談することをおすすめします。相談の際は、婚姻期間や別居の有無、子の出生日、これまでの生活状況など、時系列で分かる範囲の情報をまとめておくとスムーズです。私自身、鑑定結果をお渡しする際に「この後どうすればよいか分からない」というお声を伺うことが少なくありません。DNA鑑定はあくまで生物学上の父子関係を明らかにする検査であり、法的な手続きそのものは弁護士や家庭裁判所が専門領域となります。お住まいの地域の弁護士会や法テラスの相談窓口、家庭裁判所の家事相談窓口なども活用しながら、一人で抱え込まずに進めていただければと思います。

まとめ

婚姻中に生まれた子の父子関係を争う手続きは、2024年4月の民法改正により、提訴できる期間が3年に延び、提訴できる人も夫だけでなく子・母・前夫まで広がりました。原則は「嫡出否認の訴え」で対応しますが、長期別居など懐胎の可能性が外観上明白にない特別な事情がある場合に限り「親子関係不存在確認の訴え」が検討対象になります。単にDNA鑑定で父子関係が否定されただけでは後者を使えない場合がある、という点は特に誤解されやすいポイントです。ご自身の状況がどちらにあてはまるかは事案ごとの判断となるため、DNA鑑定の結果を受け取った後は、早めに弁護士など専門家に相談しながら、落ち着いて次の一歩を進めてください。

よくある質問(FAQ)

法的手続きに関してよくいただくご質問をまとめました。個別の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。

Q1. 嫡出否認の訴えの提訴期間は今も1年ですか?

A. いいえ。2024年4月1日施行の民法改正により、原則3年に延長されています。起算点は提訴する人によって異なり、父・前夫は子の出生を知った時から、子・母は子の出生の時からとなります。

Q2. 妻や子供からも嫡出否認の訴えを提起できますか?

A. できます。2024年4月の改正前は夫のみでしたが、改正後は子・母・前夫にも提訴権が認められています(母・前夫については子の利益を害することが明らかなときを除きます)。

Q3. DNA鑑定で父子関係が否定されれば、それだけで親子関係不存在確認の訴えを起こせますか?

A. 婚姻中に懐胎された子の場合、DNA鑑定の結果だけでは足りません。最高裁判例上、母が夫の子を懐胎する可能性が外観上明白にないといえる特別な事情(長期の別居・海外赴任など)がなければ、この訴えは認められないとされています。

Q4. 子の出生から3年以上経ってしまった場合、もう手続きはできませんか?

A. 子自身は父と同居した期間が3年未満であれば21歳まで嫡出否認の訴えを提起できる特例があります。それ以外の方は、「推定の及ばない子」にあたる事情があるかを弁護士に確認する必要があります。

Q5. 2024年3月以前に生まれた子について、まだ経過措置は使えますか?

A. 子・母を対象とした経過措置は2024年4月1日から1年間(2025年3月31日まで)に限られており、すでに終了しています。現時点では通常の3年ルールで期間を確認する必要があります。

Q6. どちらの手続きを使うべきか自分では判断できません。どうすればよいですか?

A. 提訴期間や適用要件の判断は専門的な内容を含むため、DNA鑑定の結果を持って早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士会の法律相談や法テラス、家庭裁判所の家事相談窓口も利用できます。

出産前に父子関係を確認できる検査
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医師監修 監修日:2024年11月16日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年11月16日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. 大変申し訳ございません。私はリアルタイムで直接指定されたウェブページのURLにアクセスして、その内容を読み取ることができません。
  2. お手数をおかけいたしますが、**該当するウェブページのテキストをコピーしてこちらに貼り付けていただければ**、そこから根拠となっている論文や判例、法制度などを抽出し、バンクーバースタイル(Vancover style)で一覧として整理いたします。
  3. テキストをご提示いただけましたら、速やかに対応いたします。よろしくお願いいたします。

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