この記事の概要
DNA鑑定は、親子関係を科学的に確認するための有力な手段であり、出生後に行う親子鑑定においても非常に高い精度を誇ります。特に、髪の毛(毛髪)を使ったDNA鑑定は、目立たずにサンプルを採取できる点や、自宅でこっそりと検査を進められる点で注目されています。しかし、髪の毛を使ったDNA抽出には一定の条件や注意点があり、それを理解しないまま検査を進めると、正確な結果が得られないこともあります。
本記事では、毛髪からのDNA抽出による出生後の親子鑑定について、その手順、メリット・デメリット、費用、注意点などを詳しく解説します。。
1. 毛髪からのDNA抽出の基本条件
毛根が必要不可欠
DNA鑑定に毛髪を使用する際、最も重要なのは毛根(毛球)がついているかどうかです。毛根には核DNAを含む生きた細胞が存在しており、ここからDNAを抽出します。
- 必要本数:5本~10本程度の毛根付きの毛髪が必要
- 適切な採取方法:抜く際は根元がしっかり付いているか確認。ハサミで切った毛では不可
- 保存方法:乾燥状態を保ち、清潔な紙に包むか封筒に入れて保管
サンプルの劣化に注意
- 長期間放置された毛髪や湿度の高い環境で保存された毛髪はDNAが分解してしまう可能性があります
- サンプルが古すぎると、再採取や他の検体への切り替えが必要になるケースもあります
バレずにこっそり検査できる
出産後でも鑑定できます
2. 毛髪を使った親子DNA鑑定の流れ
2.1 サンプル採取
被検者(父親・子どもなど)それぞれから毛根付き毛髪を採取し、指定の検査キットや封筒に入れて提出します。
2.2 DNA抽出
毛根から細胞を取り出し、DNAを抽出。口腔内細胞や血液と比べて、毛髪からのDNA抽出は技術的に難しいことがありますが、経験豊富な検査機関であれば正確に行われます。
2.3 遺伝子解析
- 主に短鎖反復配列(STR)と呼ばれるDNA領域を解析します
- STRは人によって個別のパターンを持っており、親子間での一致率を調べることで血縁関係を判定します
- STRの一致が15領域以上であれば、99.99%以上の確率で親子関係があるとされます
2.4 結果報告
- 結果は書面や電子メールで報告されます
- 一致率が99.99%以上の場合、生物学的な親子関係があると判断されます
- 否定の場合は0%に近い数値が示されます

3. 毛髪を使用する場合の注意点
3.1 毛根がないと鑑定できない
- 毛幹(毛の繊維部分)には核DNAがないため、鑑定不能
- 髪の毛の見た目があっても、根元が白く膨らんでいなければ無効です
3.2 サンプルが混ざらないようにする
- 採取する際は、被検者ごとに清潔なピンセットや手袋を使い分け、混在を防ぐ
3.3 古い髪の毛はリスクあり
- 保存状態や期間によってはDNAが分解され、鑑定不能になる場合があります
バレずにこっそり検査できる
出産後でも鑑定できます
4. 髪の毛以外のDNAサンプル
髪の毛以外にも、以下の検体が使用可能です
- 口腔内細胞(頬の内側をこすって採取):最も一般的で、簡便かつ正確
- 血液:高精度だが、採血が必要
- 爪、唾液、皮膚片:毛髪と同様、毛根などのDNA源があれば検査可能
- 歯ブラシやタバコの吸い殻:一部の検査機関では特殊処理により使用可能な場合もあります
5. 費用と日数について
費用の相場
- 髪の毛を使ったDNA鑑定の費用は、一般的に3万円〜10万円程度
- 鑑定の目的(私的利用か法的利用か)によって料金が変わることがあります
- 法的証拠能力付きの鑑定は、証明書類の発行などで費用が高くなる傾向にあります
結果までの日数
- 通常:1〜3週間程度
- 急ぎ対応:数日で結果が出るサービスも存在(要オプション)
- 特殊サンプル(歯ブラシなど)を使う場合は、さらに日数がかかる可能性があります
バレずにこっそり検査できる
出産後でも鑑定できます
6. 毛髪を使うメリットとデメリット
メリット
- バレずにサンプルを採取できる(例:子どもや本人が協力できないケース)
- 古い歯ブラシや帽子に残った毛髪を使える場合も
- 自宅で簡単に検体を用意できる
- 身体的負担がない(採血や口腔内採取に抵抗がある場合に有効)
デメリット
- 毛根がないと鑑定不可能
- 髪の毛が古いと失敗率が高まる
- 鑑定失敗時の再検査が必要になることも
- 技術的に難しいため、信頼できる検査機関選びが重要
7. 毛髪DNA鑑定の法的効力について
私的な目的で行うDNA鑑定と異なり、家庭裁判所や行政手続きで使用する場合には、法的証拠能力のある鑑定報告書が必要です。そのためには
- 本人確認(身分証提示)
- 立会人の同席
- 写真付き証明書類の添付
といったプロセスが必要です。毛髪によるサンプル提出も可能な場合がありますが、提出方法や封入方法に厳格なルールがあります。
まとめ
毛髪からのDNA抽出による出生後の親子鑑定は、非侵襲的で目立たずに検体を採取できる便利な方法です。サンプルの取り扱いには注意が必要ですが、正しく採取された毛根付きの髪の毛を使えば、高精度の結果が得られます。鑑定の費用や日数も把握した上で、必要に応じて口腔内細胞や血液との併用も検討するとよいでしょう。
親子関係に関する不安を抱える方にとって、DNA鑑定は大きな安心材料となります。自身の状況に合った方法で、正確かつ信頼できる鑑定を受けることが大切です。
バレずにこっそり検査できる
出産後でも鑑定できます
参考文献
- Butler, J.M. (2005). Forensic DNA Typing. Elsevier Academic Press. https://www.elsevier.com/books/forensic-dna-typing/butler/978-0-12-147952-7
- Alonso, A. et al. (2004). DNA typing from human remains: evaluation of multiplex and megaplex STR systems on degraded DNA. International Journal of Legal Medicine, 118(5), 254–260. https://doi.org/10.1007/s00414-004-0453-z
- 日本法医学会. (2021). 親子鑑定に関するガイドライン. https://www.jslm.jp/guideline/
- 国立科学捜査研究所. (2020). DNA鑑定の科学的基礎と応用. https://www.moj.go.jp/psia/kagaku_sousa.html
- 生物学的親子鑑定技術評価. (2023). 厚生労働科学研究成果データベース. https://mhlw-grants.niph.go.jp/
よくある質問
Q髪の毛でDNA親子鑑定は可能ですか?
Aはい、可能です。ただし毛根(白く膨らんだ根元)が付いている毛髪でないとDNAの抽出ができません。
Q毛髪は何本必要ですか?
A通常5~10本程度の毛根付き毛髪が必要です。採取時に毛根があることを確認してください。
Q切った髪の毛でも検査できますか?
Aいいえ。ハサミで切った髪には核DNAが含まれておらず、鑑定には使用できません。
Q髪の毛の保存方法に注意は必要ですか?
Aはい。乾燥状態を保ち、清潔な紙に包んで封筒に入れるなどし、湿気や高温を避けて保存してください。
Q髪の毛によるDNA鑑定の精度は高いですか?
A毛根がしっかり付いていれば、口腔粘膜や血液と同等の99.99%以上の精度で親子関係を特定できます。
Q検査の流れはどうなっていますか?
A①毛髪採取→②DNA抽出→③STR解析→④一致率評価→⑤結果報告(通常1〜3週間)という流れです。
Q髪の毛を使った鑑定の費用はどれくらい?
A私的鑑定で3〜5万円程度、法的鑑定で5〜10万円程度が一般的です。オプションで早期結果通知もあります。
Q髪の毛が古くても使えますか?
A状態によります。長期間保存されていたり湿度の高い環境で劣化していると、DNAが分解されて使えない場合があります。
Q法的に使える結果を得るにはどうすれば?
A医療機関などで本人確認と立会いのもと採取し、証拠能力のある正式な鑑定書を発行してもらう必要があります。
Q他に使える検体はありますか?
Aはい。口腔内細胞、血液、爪、唾液、歯ブラシ、タバコの吸い殻なども検査に使用できる場合があります。





