この記事の概要
STR(Short Tandem Repeat)の小数点表記は、リピートユニットの完全な繰り返し回数に加えて、部分的なリピートがある場合に用いられます。整数部分は完全なリピート回数を示し、小数部分はそのリピートに追加された部分的なリピートの割合を示します。例えば、17.2という表記は、完全なリピート17回に加えて、部分的にリピートが0.2回分存在することを意味します。これは遺伝子解析や親子鑑定、法医学で重要な情報となり、正確な遺伝子型の判別に役立ちます。部分的なリピートの解釈には標準データベースや解析基準を確認することが重要です。
STR型鑑定の結果には、まれに「17.2」のような小数点付きの数値が表示されることがあります。この数字は「割合」ではなく、不完全なリピートに含まれる塩基の数をそのまま示したものです。この記事では、小数点表記が意味する内容と、親子鑑定における扱いを正確に解説します。
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STR(Short Tandem Repeat)とは
STR(Short Tandem Repeat)とは、DNA上に存在する短い塩基配列が繰り返し並んでいる領域のことです。この繰り返し回数は人によって異なり、個人識別力が高いことから、法医学分野の標準的な手法として世界的に利用されています。米国FBIのCODIS(犯罪者DNAデータベース)でも、同じ考え方に基づく座位が採用されています。
親子鑑定では、複数のSTR座位について、子どもと父親候補の型を比較します。通常、繰り返し回数は「15」「17」のような整数で表記されますが、まれに「17.2」のような小数点付きの数値が現れることがあります。
小数点表記(マイクロバリアント)の正しい意味
小数点付きのアレル(型)は、専門的に「マイクロバリアント」と呼ばれます。小数点以下の数字は、不完全なリピートに含まれる塩基の数をそのまま表したもので、割合(パーセント)を示すものではありません。この点は誤解されやすいため、正確に理解しておく必要があります。
たとえば、法医学分野で広く使われるD18S51という座位では、リピートユニットは「AGAA」という4塩基です。
- 15:「AGAA」が完全に15回繰り返されていることを示します。
- 14.2:「AGAA」が完全に14回繰り返された後に、2塩基分(AG)の不完全なリピートが続いていることを示します。
ここで注意したいのは、小数点以下の数字が「塩基数そのもの」であり、リピートユニットの長さ(3塩基か4塩基か)によって割合が変わるわけではないという点です。4塩基リピートで「.2」なら全体の半分、3塩基リピートで「.2」なら全体の3分の2に相当し、一律に「約2割」と表現できるものではありません。この記事では、こうした誤解を避けるため、割合表現ではなく塩基数で説明しています。
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なぜ小数点表記(マイクロバリアント)が生じるのか
マイクロバリアントは、DNA複製の過程で生じる自然な変異の一種です。リピート配列がすべて同じパターンで繰り返されるとは限らず、一部だけ配列が欠けたり短くなったりすることがあります。これは病的な変化ではなく、集団の中で一定の頻度で観察される正常な多型です。
座位ごとにマイクロバリアントが現れやすさは異なり、出現頻度や表記のルールは国際的なガイドラインに基づいて定められています。ISFG(国際法遺伝学会)のDNA委員会は、こうしたSTR配列の命名法についてたびたび勧告を公表しており、標準化が進められています。
親子鑑定で小数点表記が出た場合の扱い
マイクロバリアントが検出された場合でも、親から子へ受け継がれる基本的な遺伝の法則は変わりません。子どもが持つ2つのアレルのうち一方が父親候補と一致するかどうかを、他の座位と同じように比較します。
共同監修者の堤は「マイクロバリアントは決して珍しい現象ではありません。複数の座位を組み合わせて総合的に判定することで、結果の信頼性は保たれます」と説明しています。ヒロクリニックの検査では、52座位を組み合わせて分析することで、単一の座位の解釈に依存しない、99.99%以上の精度を実現しています。
検査機器にはQiagen社製の次世代シーケンサー「MiSeq FGx」日本初導入機を採用し、自社ラボである東京衛生検査所で一貫して解析しています。次世代シーケンサーによる解析のため、マイクロバリアントの塩基配列まで正確に読み取ることが可能です。
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よくある質問
小数点表記の数字は割合を示していますか。
いいえ、割合ではありません。不完全なリピートに含まれる塩基の数をそのまま示したものです。リピートユニットの長さによって割合は変わるため、パーセントで一律に表現することはできません。
マイクロバリアントが検出されると結果の精度は下がりますか。
下がりません。複数の座位を組み合わせて総合的に判定するため、マイクロバリアントが含まれていても99.99%以上の精度で判定できます。
マイクロバリアントは病気と関係がありますか。
関係ありません。DNA複製の過程で自然に生じる正常な多型であり、集団の中で一定の頻度で観察されるものです。
小数点表記のルールは検査機関によって違いますか。
基本的な考え方は、ISFG(国際法遺伝学会)などが示す国際的な命名法に基づいています。ヒロクリニックでも、この標準に沿って解析結果を判定しています。
検査結果に小数点表記があった場合、自分で読み解く必要がありますか。
その必要はありません。結果の解釈は検査機関が専属医師の管理のもとで行い、最終的な判定結果としてご報告します。表記の意味が気になる場合は、遠慮なくお問い合わせください。
まとめ
STRの小数点表記は、割合ではなく、不完全なリピートに含まれる塩基の数を示すものです。マイクロバリアントは自然に生じる正常な多型であり、検出されても親子鑑定の精度が下がることはありません。
ヒロクリニックでは、次世代シーケンサーと52座位の組み合わせ分析により、マイクロバリアントを含む結果でも99.99%以上の精度で判定しています。検査結果の見方で不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Puers C, Hammond HA, Jin L, Caskey CT, Schumm JW. Identification of repeat sequence heterogeneity at the polymorphic short tandem repeat locus HUMTH01 [AATG]n and reassessment of alleles in population database. Am J Hum Genet. 1993 Oct;53(4):953-958.
- Bär W, Brinkmann B, Budowle B, Carracedo A, Gill P, Lincoln P, Mayr W, Olaisen B. DNA recommendations. Further report of the DNA Commission of the ISFG regarding the use of short tandem repeat systems. Int J Legal Med. 1997;110(4):175-176.





