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「特に体調が悪いわけではないから、健康診断は後回しでいい」と思っていませんか?
実は、重大な病気ほど“無症状”のまま進行することがあります。健康診断は、健康な今だからこそ受けるべき予防医療の第一歩です。本記事では、内科医の視点から健康診断の意義や検査内容、早期発見につながる具体的なポイントについて詳しく解説します。毎年の健康診断があなたの命を守るかもしれません。

1. 健康診断の目的とは?

健康診断=病気の「早期発見・早期治療」

健康診断は、まだ症状が出ていない段階で疾患のリスクを把握し、早期に対策を講じるための検査です。
多くの疾患は、進行するまで自覚症状が乏しく、発見が遅れると治療が難しくなるケースも少なくありません。たとえば、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、放置すれば心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。

「予防医学」の第一歩としての役割

健康診断は、病気を治すためだけではなく、“予防”の観点でも非常に重要です。食生活の乱れ、運動不足、喫煙、過度な飲酒などの生活習慣は、さまざまな疾患を引き起こします。
そのリスクを数値として可視化し、生活を見直すきっかけにする——それが健康診断の大きな目的のひとつです。

2. 健康診断でわかる主な疾患とリスク

生活習慣病の早期発見

健康診断では以下のような生活習慣病のリスクを評価します

疾患名主な指標備考
高血圧症血圧測定動脈硬化・脳卒中のリスク上昇
脂質異常症LDL/HDL/中性脂肪動脈硬化の主因
糖尿病空腹時血糖・HbA1c自覚症状が出にくい
肝機能障害AST/ALT/γ-GTPアルコール・脂肪肝も関係
腎機能障害クレアチニン・eGFR高血圧・糖尿病と関連

これらは単体での病気にとどまらず、互いに連鎖的に影響し合い、心疾患・脳血管障害・慢性腎不全といった重篤な状態へ進行することがあります。

がんの兆候も見逃さない

健康診断に含まれる血液検査、便潜血検査、胸部レントゲン、腹部超音波などでは、がんの可能性を示す兆候も把握できます。
特に以下のがんは、定期的な健診での早期発見が有効とされています

  • 胃がん(胃部X線・内視鏡検査)
  • 大腸がん(便潜血検査)
  • 肺がん(胸部レントゲン、CT)
  • 肝臓がん(肝機能・腫瘍マーカー)

3. 年代・性別別に見る健康診断のポイント

20〜30代:健康意識の定着と生活習慣の見直し

若年層では自覚症状がないまま生活習慣病予備軍となっていることが少なくありません。特に以下のポイントに注意しましょう。

  • BMI(肥満度)
  • 肝機能・脂質
  • 喫煙や飲酒の影響

この年代での生活習慣の差が、40代以降の疾患リスクに大きく影響します。

40〜50代:がん・心疾患のリスク増加

仕事や家庭で多忙を極めるこの世代は、ストレス・運動不足・不規則な生活が重なり、以下のリスクが顕在化してきます。

  • 糖尿病や高血圧の本格的な発症
  • 内臓脂肪の蓄積
  • がんの罹患率増加

この世代では、人間ドックやオプション検査の利用も積極的に検討すべきです。

60代以降:慢性疾患の管理と転倒・認知症リスク

高齢者では、既に慢性疾患を抱えるケースが多く、健康診断は病気の「早期発見」から「状態管理」へと目的がシフトします。

  • 骨粗しょう症、貧血、低栄養の兆候を見逃さない
  • 認知機能低下の早期発見(MMSEなども有効)
  • 定期的な心電図・エコーで心疾患の進行を防ぐ

4. 健康診断で注意すべき数値とその意味

健康診断の結果票にはさまざまな数値が並んでいますが、特に注意すべき主な指標は以下のとおりです

検査項目正常範囲例高値・低値が示す可能性
血圧120/80 mmHg前後高血圧・低血圧の兆候
血糖(空腹時)70~99 mg/dL糖尿病・インスリン抵抗性
LDLコレステロール70〜139 mg/dL動脈硬化・脂質異常症
AST/ALT〜40 U/L肝臓障害・脂肪肝・ウイルス性肝炎など
尿蛋白陰性腎障害、糖尿病腎症の可能性
HbA1c4.6〜6.2%過去1〜2か月の平均血糖、糖尿病の指標

※正常値の範囲は施設により多少異なります。異常値がある場合は医師による解説と対策が必要です。

5. 健康診断後にやるべきこと

異常値が出たら放置しない

健康診断で指摘された異常を「自覚症状がないから」と放置するのは非常に危険です。
「要精密検査」「要再検査」の指示がある場合は、できるだけ早く医療機関での再検査・診察を受けてください。

生活習慣の見直し

以下の項目は、すぐにでも実践できる生活改善のヒントです。

  • 食生活の見直し:脂質・糖質の摂りすぎを制限し、野菜・魚・発酵食品を積極的に摂取
  • 適度な運動:週に150分の中強度の有酸素運動(ウォーキングやサイクリング)
  • 睡眠とストレス管理:質の高い睡眠とストレスコントロールは全身の健康に直結します
運動

6. 健康診断を継続するためのコツ

・毎年、同じ時期に予約を入れる(ルーティン化)
健康診断を「誕生月」「年初」「ボーナス月」など、特定の時期に固定することで忘れにくくなります。カレンダーアプリや手帳に“毎年の恒例イベント”として登録しておくと、自然と習慣化されます。

・家族やパートナーと一緒に受ける
健康診断を「家族の健康管理イベント」として活用するのも一つの方法です。
一緒に予約を入れることで「お互いに声かけができる」「一人では面倒でも継続しやすい」という心理的メリットがあります。

・健康診断後の“ご褒美”を用意する
検査が苦手な方に効果的なのが、「診断後に好きなランチを食べに行く」や「映画を観る」など、楽しみをセットにする方法です。心理的な抵抗感を減らし、ポジティブな印象に変える効果があります。

・結果を見て“記録”を残す(健康管理アプリやノート)
過去の健診結果を記録・比較することで、健康への意識が高まります。数値の変化を見ると、「来年も受けよう」というモチベーションにつながります。

会社や自治体の制度を活用する
会社の定期健診や自治体の無料・補助付き検診制度を活用することで、費用や予約の手間を減らせます。多くの場合、期限や対象年齢があるので、通知を見落とさないように注意しましょう。

こうしたちょっとした工夫を取り入れることで、「健康診断を受けること=面倒な作業」から「健康を守るための大切な習慣」に変えることができます。継続することこそ、最大の“予防医療”です。