受診のご案内

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などに代表される生活習慣病は、心筋梗塞や脳卒中など重大な疾患の引き金になります。しかし、これらの病気の多くは「未然に防ぐ」ことが可能です。内科医としての立場から、生活習慣病を予防・管理するために必要な食事、運動、検査、そして必要に応じた薬物療法まで、医学的エビデンスに基づいた具体的な対策をご紹介します。健康な未来を築くために、今できることを一緒に考えていきましょう。
1. 生活習慣病とは何か?定義とリスク
● 生活習慣病の定義
生活習慣病とは、主に「不適切な生活習慣」が原因で発症・進行する疾患群を指します。以下が代表的な病気です。
- 高血圧症
- 2型糖尿病
- 脂質異常症(高LDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症など)
- 高尿酸血症・痛風
- メタボリックシンドローム
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)
これらはそれぞれ独立した疾患であると同時に、互いに合併しやすく、心血管疾患や脳血管障害のリスク因子となります。
● 主なリスク要因
- 不適切な食事(過剰な塩分、脂質、糖質摂取)
- 運動不足
- 喫煙・過度の飲酒
- 睡眠不足やストレス
- 遺伝的素因
これらの因子が複雑に絡み合い、病気の発症・進行を引き起こします。
2. 食事療法:医学的根拠に基づいた栄養管理
● 「減塩」はすべての予防の基本
- 厚生労働省の推奨では、1日の塩分摂取量は男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。
- 高血圧リスクを抑えるには1日6g以下が理想的です。
おすすめの実践方法
- 出汁やスパイスを活用し、調味料の使用量を減らす
- 加工食品(漬物、ハム、インスタント食品)の摂取を控える
- 外食では「塩分控えめ」メニューを選ぶ
● 食物繊維と低GI食品の活用
- 血糖上昇を緩やかにする低GI食品(玄米、全粒粉パン、大豆など)を中心に据える
- 野菜・海藻・きのこなどに含まれる水溶性食物繊維は、血糖コントロールや脂質代謝に有効
● 「地中海式食事法」に学ぶ
- 魚介類、オリーブオイル、豆類、野菜を中心とした食事法は、心血管疾患リスクを有意に低下させるとされています(NEJM, 2013)
3. 運動療法:継続可能な身体活動の提案

● 運動の医学的効果
- 血圧・血糖・脂質の改善に加え、インスリン抵抗性の軽減、内臓脂肪の減少、メンタルヘルスの向上にも寄与
- ガイドラインでは、中強度の有酸素運動を週150分以上が推奨されています
● 実践しやすい運動例
| 運動種別 | 方法例 | メリット |
| 有酸素運動 | ウォーキング・自転車・水中歩行 | 脂肪燃焼・血管機能改善 |
| 筋力トレーニング | 自重スクワット・腕立て伏せ | 基礎代謝UP・転倒予防 |
| 柔軟運動 | ヨガ・ストレッチ | 血流促進・自律神経の安定 |
ポイント: 最初は10分/日から開始し、慣れてきたら徐々に時間・頻度を増やしましょう。
4. 定期健診と内科的スクリーニングの重要性
● 内科的チェックで早期発見
生活習慣病は初期段階では無症状のことが多く、気づかないうちに進行します。
以下の検査を年1回は受けましょう。
- 血圧測定
- 空腹時血糖・HbA1c
- 血中脂質(LDL・HDL・中性脂肪)
- 肝機能・腎機能
- 腹囲(メタボ判定)
● 健診で異常が出たらすぐに内科へ
健康診断で「要再検査」や「経過観察」となった場合も、放置せず早めの受診が重要です。内科医は、初期段階での生活指導や投薬調整で、病気の進行を防ぐ役割を果たします。
5. 内科的治療:薬物療法は予防の一環
● 生活指導だけで改善しない場合
- 高血圧や糖尿病は、適切な薬物治療によって合併症リスクを大きく下げることができます。
- 「薬を飲んだら一生やめられない」という誤解もありますが、生活改善により減薬・中止が可能な場合もあります。
● 主な薬剤とその作用
| 疾患 | 主な治療薬 | 作用機序 |
| 高血圧 | ARB、Ca拮抗薬、利尿薬 | 血管拡張・体液量調整 |
| 糖尿病 | メトホルミン、SGLT2阻害薬 | 血糖低下・体重減少・心腎保護効果 |
| 脂質異常症 | スタチン、EPA製剤 | LDL低下・抗炎症作用 |
| 高尿酸血症 | フェブキソスタット、アロプリノール | 尿酸生成抑制 |
注意: 医師の指示なく自己判断での服薬中止は禁物です。
6. 生活習慣病を予防・管理するための5つのステップ
- 栄養バランスの見直し
→ 食品の選び方、調理法を工夫して塩分・糖分・脂質を減らす - 日常に運動を組み込む
→ 階段の利用、通勤時のウォーキングなどから始める - 毎年の健康診断を欠かさない
→ 自覚症状がなくても、年1回のチェックが鍵 - ストレス管理と睡眠の質向上
→ 自律神経の安定がホルモンバランスを整える - 必要に応じた医療的アプローチを受け入れる
→ 内科での早期治療・定期フォローが健康維持に有効
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 食事療法だけで薬は不要になりますか?
A:個人差があります。初期の段階であれば生活習慣の改善のみで十分なこともありますが、すでに数値が高い場合は薬物療法の併用が推奨されます。
Q2. 血圧や血糖が正常値なら何もしなくて良い?
A:将来的なリスクを下げるには「今から」予防することが重要です。正常値でも油断せず、健診や生活習慣の見直しが推奨されます。
Q3. 家族に糖尿病の人がいる場合、予防できますか?
A:遺伝要因は変えられませんが、生活習慣を見直すことで発症リスクを大幅に下げることが可能です。
8. まとめ:生活習慣病予防は内科の役割でもある
生活習慣病は、単に「不健康な生活」の結果ではなく、日常の選択と向き合うことで予防できる“未来型疾患”です。内科では、食事や運動、検査、必要に応じた薬物治療まで、個別に合わせたトータルな予防支援を行っています。ご自身やご家族の健康のために、まずは一歩を踏み出してみましょう。



