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「最近、胃が重い」「下痢や便秘が続いている」「食後すぐに膨満感がある」——こうした胃腸トラブルは、多くの方が経験するものです。症状が軽くても、放っておくことで慢性化したり、重大な疾患が隠れている場合もあります。本記事では、内科医の立場から胃腸トラブルの原因や分類、治療法、生活で気をつけたいポイントをわかりやすく、かつ専門的にご紹介します。症状に悩む方、再発を防ぎたい方はぜひご一読ください。
1. 胃腸トラブルの主な症状と分類
● よくある胃腸症状
胃腸に関連する症状は多岐にわたり、以下のようなものがあります。
- 胃もたれ、胃痛、胸焼け(上腹部の症状)
- 下痢、便秘、腹痛(下腹部の症状)
- 食欲不振、吐き気、腹部膨満感
これらの症状は一時的なもので済むこともありますが、継続する場合は内科的な評価が必要です。
● 機能性と器質性の違い
胃腸トラブルは大きく以下の2つに分類されます。
| 分類 | 説明 |
| 機能性疾患 | 検査では異常が見られないが症状がある(例:機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群) |
| 器質性疾患 | 胃潰瘍、大腸ポリープ、腫瘍など、明確な異常がある |
機能性であっても、QOL(生活の質)を大きく損なうため、適切な治療が必要です。
2. 内科で診る代表的な胃腸疾患
● 機能性ディスペプシア(FD)
慢性的な胃もたれや食後の膨満感、みぞおちの痛みを主とする疾患で、明確な器質的異常はありません。
治療法:
- 消化管運動改善薬(モサプリドなど)
- 胃酸分泌抑制薬(PPIやH2ブロッカー)
- ストレス軽減や食生活の見直しも重要
● 過敏性腸症候群(IBS)
ストレスや自律神経の乱れが原因となり、下痢や便秘、腹痛を繰り返す疾患です。
治療法:
- 整腸剤(ビフィズス菌、酪酸菌など)
- 抗コリン薬、便秘・下痢改善薬
- 漢方薬(桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯 など)
- 心療内科との連携が有効な場合も
● 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸やピロリ菌による粘膜障害が原因。出血や穿孔など、重症化するリスクがあります。
治療法:
- 胃酸分泌抑制薬(PPI)
- ピロリ菌の除菌療法
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs)の使用に注意
● 感染性胃腸炎
ウイルスや細菌による急性の胃腸障害で、嘔吐や下痢、発熱を伴う場合があります。
治療法:
- 脱水防止のための水分・電解質補給
- 状況に応じて整腸剤・抗菌薬を使用
- 二次感染や重症化に注意
3. 内科での検査と診断:原因を明確にするプロセス
● 問診と視診・触診
まず、症状の出現状況・頻度・きっかけなどを丁寧にヒアリングします。加えて、腹部の視診・触診を行い、腫瘤や圧痛の有無を確認します。
● 血液検査・便検査
- 炎症反応(CRP、白血球)
- 貧血、電解質バランス
- 便潜血検査(大腸がんのスクリーニングにも有効)
● 胃カメラ(上部消化管内視鏡)
慢性的な胃痛や吐き気がある場合、胃潰瘍・がん・逆流性食道炎の有無を直接確認できます。
● 腹部エコー・CT検査
腹痛の原因が肝胆膵領域や腸にある場合、画像診断で臓器の状態をチェックします。
4. 胃腸トラブルを防ぐ生活習慣のポイント
● 食生活の見直し
- 暴飲暴食を避け、規則正しい食事リズムを意識
- 刺激物(辛味、酸味、カフェイン、アルコール)の摂取を控える
- 食物繊維(野菜・海藻・きのこ)をバランスよく取り入れる
● ストレス管理
- ストレスは自律神経の乱れ→消化機能低下の悪循環を招きます
- 軽い運動、瞑想、趣味などでストレスケアを
- 必要に応じて、心療内科やカウンセリングの活用を検討
● 睡眠と運動
- 睡眠不足は消化機能の低下・ホルモンバランスの乱れに直結
- ウォーキングや軽い体操を1日20~30分程度習慣にすることで、腸のぜん動運動が活性化します

5. 胃腸の不調が続く場合は、早めに内科を受診しましょう
軽度な症状であっても、「何となく調子が悪い」と感じたら消化器内科を受診することが重要です。
特に以下のような状態は、速やかに医師の判断を仰ぐべきです。
- 症状が1週間以上続く
- 食欲不振・体重減少を伴う
- 黒色便・血便・嘔吐などの異常がある
- 市販薬で改善が見られない
消化器内科専門医がいるクリニックでは、胃腸の専門的な診察はもちろん、必要に応じて専門機関と連携し、正確な診断と継続的なフォローが可能です。
6. まとめ:胃腸の声に耳を傾けることが、健康への第一歩
胃腸の働きは、栄養の吸収・免疫機能・ホルモン分泌など全身の健康に直結しています。日常的な不調を「そのうち治る」と放置するのではなく、体の声に耳を傾け、医学的なアプローチで根本原因を見極めることが大切です。



