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加齢に伴い、体の機能は徐々に低下し、さまざまな内科的疾患のリスクが高まります。自覚症状が現れにくい慢性疾患や生活習慣病、また予防や早期発見が難しい病気も多く、高齢者にとっては日々の健康管理がより重要になります。本記事では、高齢者が特に注意すべき内科的疾患を医療的視点からわかりやすく解説し、予防と早期発見のために実践すべき生活習慣や医療機関の活用方法についてご紹介します。
1. 高齢者に多い内科的疾患の特徴とは?
高齢になると、複数の慢性疾患を抱える「多病併存」が珍しくありません。特に次のような疾患は発症率が高く、進行によって生活の質(QOL)を著しく低下させることがあります。
● 高血圧症
加齢によって血管が硬くなりやすく、心臓や腎臓への負担が増加。放置すると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。高齢者の高血圧は収縮期血圧(上の血圧)が高く、拡張期血圧(下の血圧)が低くなる傾向があり、薬の調整が難しい点が特徴です。
● 糖尿病
インスリン分泌能力が低下し、加えて運動不足や栄養バランスの乱れによって血糖コントロールが難しくなります。合併症(網膜症、腎症、神経障害)が進行しても自覚しづらく、発見が遅れることもあります。
● 脂質異常症(高脂血症)
動脈硬化を促進する代表的な疾患。悪玉コレステロール(LDL)が増加し、心血管系疾患の引き金になります。自覚症状がほとんどないため、定期検査が重要です。
● 骨粗しょう症
骨密度が減少し、転倒や骨折のリスクが高まる疾患。特に高齢女性に多く、骨折による寝たきりを防ぐには早期発見とビタミンDやカルシウムの摂取、適度な運動が必要です。
2. 見逃しがちな症状と、その背後にある疾患
高齢者では、病気の初期症状がはっきり現れない場合が多く、疲れやすい、食欲がない、気分が沈むといった曖昧な体調不良が見逃されやすい傾向にあります。以下のような症状が継続する場合は、医療機関での相談を検討すべきです。
● 倦怠感・食欲不振
軽視されがちですが、慢性心不全や腎機能低下、甲状腺機能異常が背景にある可能性があります。
● 物忘れ・感情の起伏
認知症だけでなく、うつ病や脳血管障害の前兆であることもあります。家族が気づくケースも多いため、周囲の観察も重要です。
● 夜間頻尿・むくみ
心不全や腎臓病の兆候である場合があります。年齢のせいと自己判断せず、検査を受けることが大切です。
3. 高齢者における内科的ケアのポイント
高齢者の健康管理は、単に病気を見つけるだけでなく、進行を防ぎ、生活の質を維持することが主な目的です。そのためには、以下のような内科的アプローチが有効です。
● 定期的な健康診断と血液検査
年に1回以上の健診に加え、主治医と相談して血糖値、血圧、脂質、肝機能、腎機能などを定期的にモニタリングしましょう。
● ポリファーマシー(多剤併用)への注意
複数の薬を服用することによる副作用や相互作用が高齢者では問題になります。医師・薬剤師と連携し、必要最低限の薬剤で治療管理を行うことが重要です。
● 栄養管理と運動療法
高齢者においてもタンパク質やビタミンの摂取は必須です。噛む力や嚥下機能に合わせた食事指導も必要です。また、無理のない範囲でのウォーキングやストレッチも筋力低下を防ぐ上で有効です。
4. 認知症やうつ病も内科で対応可能
高齢者に多い認知機能の低下や気分障害は、精神科だけでなく内科でも早期の対応が可能です。
● 認知症の初期サイン
- 予定をすぐに忘れる
- 同じ話を何度も繰り返す
- 日付や場所の混乱
こうした症状が続く場合は、認知機能検査を含む内科的評価が推奨されます。
● 高齢者うつ病の見極め
「元気がない」「家に閉じこもる」など、うつ病は身体症状(頭痛・食欲不振)として現れることが多く、見過ごされやすい傾向にあります。内科では、身体的な不調とあわせて心理的側面も丁寧に診察します。
5. 予防こそ最良の治療:今日から始められる健康習慣
高齢者が内科的疾患を予防・管理するためには、日々の生活習慣の見直しが大きな意味を持ちます。
● 規則正しい生活
起床・就寝時間、食事時間を一定にすることで体内リズムが整い、自律神経の安定にもつながります。
● バランスの良い食事
野菜、魚、発酵食品、良質な油を取り入れた「和食中心」の食生活が、糖尿病や高血圧の予防に効果的です。

● 社会とのつながり
人との交流が少ないと、認知機能や意欲が低下します。地域の健康教室や趣味サークルへの参加も重要な「予防策」です。
6. 家族や周囲のサポートも重要
高齢者の健康管理は、本人だけでなく、家族や周囲の支援も欠かせません。
- 通院の付き添い、薬の管理
- 食事や運動のサポート
- 気になる症状の早期把握と受診勧奨
内科医との連携により、ご家族の不安も解消しやすくなります。気になる変化があれば、些細なことでもご相談ください。
まとめ:高齢者の「元気」は日常管理から
高齢者における内科的疾患は、早期発見と継続的な管理が何より重要です。症状が出てからではなく、出る前に対処することが、健康寿命を延ばす鍵になります。定期検診、生活習慣の見直し、医療機関との連携を通じて、安心して年齢を重ねるための準備を始めましょう。
ご不安な点があれば、ぜひお近くの内科医へお気軽にご相談ください。



