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「最近なんとなく体がだるい」「立ちくらみや息切れが増えた」――そのような症状は、もしかすると貧血が原因かもしれません。特に女性や高齢者では、鉄分不足や体質による貧血が見逃されやすく、生活の質を大きく損なう可能性があります。この記事では、貧血の種類とその診断、内科的な治療法、さらに日常生活に取り入れたい食事の工夫について、内科医の視点から詳しくご紹介します。
1. 貧血とは何か?その定義と種類
● 貧血の基本的な定義
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの濃度が基準より低下し、全身に酸素を十分に供給できない状態を指します。正常値は年齢や性別によって異なりますが、成人女性でヘモグロビン値が12g/dL未満、成人男性で13g/dL未満の場合、貧血と診断されます。
● 主な貧血のタイプと原因
| 種類 | 主な原因例 |
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄分不足、月経過多、消化管出血 |
| 巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12や葉酸の欠乏 |
| 溶血性貧血 | 赤血球の破壊亢進(自己免疫、遺伝性など) |
| 再生不良性貧血 | 骨髄機能低下による赤血球の産生不足 |
| 慢性疾患に伴う貧血 | がん、腎不全、炎症性疾患などの影響 |
なかでも、鉄欠乏性貧血は最も一般的であり、特に女性に多く見られます。内科ではこのタイプの診断と治療が最も多く行われています。
2. 内科的な診断と検査でわかること
● 問診で重要なチェックポイント
内科受診では、以下のような項目について詳細に確認します。
- 疲れやすさ、めまい、動悸の有無
- 月経の状態(女性の場合)
- 食事内容(鉄分や栄養素の摂取状況)
- 便の色や消化器症状(出血の可能性)
これらの情報から、どの種類の貧血が疑われるかを絞り込みます。
● 血液検査で明らかになる数値
内科では次のような血液検査を通して、貧血の有無と種類を診断します。
- ヘモグロビン値(Hb)
- 赤血球数(RBC)・ヘマトクリット値(Ht)
- 血清鉄・フェリチン・トランスフェリン
- ビタミンB12、葉酸
- 網赤血球数、LDH、ハプトグロビン(溶血性貧血の診断に使用)
これらのデータを総合的に判断し、鉄欠乏性なのか、あるいは他の疾患に起因する貧血なのかを明らかにします。
3. 内科的アプローチによる治療法
● 鉄欠乏性貧血への対応
最も多い鉄欠乏性貧血には、以下のような治療が行われます。
- 経口鉄剤の処方(1日1〜2回)
鉄剤は通常、空腹時に服用することで吸収効率が上がります。副作用として便秘や胃の不快感が出ることがありますが、剤形や投与量を調整することで改善可能です。 - 鉄注射や点滴
経口薬で効果が見られない場合や、胃腸への吸収が困難なケースでは、静脈投与が選択されます。 - 出血の原因除去
子宮筋腫や消化器出血など、根本的な原因の除去も並行して検討します。
● その他のタイプの貧血に対する治療
- ビタミンB12欠乏性貧血:ビタミンB12の筋肉注射または経口投与
- 再生不良性貧血・溶血性貧血:専門的治療(ステロイド、免疫抑制剤、輸血など)を行う必要があり、専門医との連携が不可欠です
内科クリニックでは、まず原因の特定と基礎治療を行い、必要に応じて他科への紹介を含めた総合的対応を行います。
4. 日常生活でできる食事の工夫と栄養管理
● 鉄を多く含む食品と吸収を高めるポイント
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
| 鉄の種類 | 含有食品 | 吸収率 |
| ヘム鉄 | レバー、赤身肉、魚(カツオ、マグロ) | 高い(15~25%) |
| 非ヘム鉄 | 大豆製品、緑黄色野菜、海藻、卵黄など | 低い(1~6%) |
吸収を高める工夫:
- ビタミンCと一緒に摂取(例:野菜、果物、柑橘類)
- カルシウムやお茶・コーヒーは吸収を阻害するため、同時摂取を避ける
- 動物性たんぱく質との併用が吸収を促進する
● その他の必要栄養素
- 葉酸:ほうれん草、アスパラガス、レバー
- ビタミンB12:魚、卵、チーズ、貝類(特にアサリ)
- たんぱく質:筋肉や血液の材料となるため、毎食での摂取が望ましい

● 食事改善の実践例(1日の献立)
- 朝:納豆ご飯、ほうれん草のおひたし、みそ汁、オレンジ
- 昼:赤身の牛丼、ブロッコリーのサラダ、緑茶(お茶は時間をずらして)
- 夜:焼き魚(マグロやカツオ)、豆腐と野菜の煮物、玄米、いちご
5. 予防と継続的な健康管理の重要性
● 自覚症状がなくても「定期検査」を
貧血は数値でしか気づけないケースも多いため、年に1回の血液検査が推奨されます。特に次の方は注意が必要です。
- 月経のある女性
- 妊娠・出産を経験した方
- 高齢者
- 偏食傾向のある方
- 胃腸手術後の方
● 内科クリニックとの連携を継続することがカギ
貧血は一度治っても再発することがあります。再発予防のためには、内科での定期診察や栄養指導を継続することが大切です。薬の服用期間や効果の判定、生活指導も含め、医師との継続的な関係を築くことが症状改善と再発防止につながります。
まとめ:貧血は正しく診断し、日常から改善を
貧血は放置すると慢性的な疲労や免疫低下を引き起こし、日常生活に大きな影響を及ぼします。しかし、内科的な診断と適切な治療、そして栄養バランスのとれた食事によって、十分に改善が可能な疾患です。
「最近ちょっとおかしいな」と思ったら、ぜひ内科を受診し、自分の体の状態を確認してみましょう。小さな不調に早く気づくことが、健康的な生活を守る第一歩です。



