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「なんとなく胸が苦しい」「チクチクする痛みがある」——そんな症状を、「疲れのせい」や「一時的なもの」と軽く見てはいませんか?胸の痛みの中には、狭心症や心筋梗塞といった重大な心臓疾患のサインが潜んでいることがあります。心疾患は日本人の死因の上位に位置しており、早期発見と適切な治療が何より重要です。本記事では、内科医の視点から、胸の痛みの原因と心臓病の初期症状、受診のタイミング、検査・治療内容について専門的に解説します。
1. 胸の痛みとは?その多様な原因
胸部の痛みは、単なる筋肉の緊張から命に関わる病気まで、原因が非常に多岐にわたります。内科医が診察する上で大切なのは、「どのような痛みか」「いつからか」「何をきっかけに始まったか」といった詳細な情報です。
主な原因には以下が含まれます:
- 心臓の病気(狭心症、心筋梗塞、心膜炎など)
- 肺の病気(肺塞栓症、肺炎、気胸など)
- 消化器の病気(逆流性食道炎、胃潰瘍など)
- 筋骨格系の障害(肋間神経痛、筋肉痛、肋骨骨折など)
- 精神的ストレスによるもの(パニック発作、心因性胸痛など)
胸の痛みは一見すると軽い不調に思えることもありますが、命に関わる疾患の初期症状である可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
2. 心臓病に関連する胸の痛みの特徴
心臓由来の胸痛には、いくつかの特徴的なパターンがあります。以下は内科で注意深く確認される症状です。
狭心症の特徴
- 胸の中央部が締めつけられるような痛み
- 数分間でおさまることが多い
- 運動やストレスが引き金になる
- 安静にすると症状が改善する
心筋梗塞の特徴
- 強い圧迫感、焼けつくような痛み
- 30分以上持続することが多い
- 胸以外にも、肩・腕・あご・背中に放散する痛み
- 冷や汗、吐き気、呼吸困難を伴うことがある
その他、注意すべき症状
- 安静時にも痛む
- 朝方や夜間に痛みが強くなる
- 高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を持っている
こうした症状がみられる場合には、内科を受診し、心電図や血液検査を含めた早期の評価が必要です。
3. 内科で行う診察と検査内容
胸の痛みを訴える患者に対して、内科では以下のような流れで診察が行われます。
問診(症状の聴取)
- 痛みの部位・性質(鋭い、鈍い、締め付けなど)
- 継続時間、発症タイミング
- 増悪・緩和因子(運動時、安静時、食後など)
- 既往歴・家族歴(心疾患・生活習慣病など)
身体診察
- 血圧・脈拍の測定
- 呼吸音・心音の聴診
- 腹部や胸部の触診
検査
- 心電図(ECG):狭心症や心筋梗塞の兆候をチェック
- 血液検査(心筋トロポニンなど):心筋へのダメージを評価
- 胸部X線:肺疾患や心拡大の有無を確認
- 超音波(心エコー):心臓の構造・機能を詳細に観察
- 運動負荷試験、ホルター心電図:一過性の心電図変化を捉えるために有用
内科ではこれらの検査を組み合わせて、心疾患かどうかを診断し、必要に応じて循環器内科など専門医への紹介を行います。
4. 重大な心疾患の種類とその特徴
狭心症(安定型・不安定型)
冠動脈の狭窄によって心筋への血流が一時的に不足し、痛みが起こります。不安定型は心筋梗塞に進行するリスクが高いため、緊急対応が必要です。
心筋梗塞
冠動脈が完全に詰まり、心筋が壊死に陥る疾患です。命に関わるため、時間との戦いです。発症後2時間以内の治療開始が予後を左右します。
心膜炎
心臓を包む膜の炎症によって、鋭い胸痛が起こります。呼吸や姿勢の変化で痛みが増減するのが特徴です。
心不全
胸の痛みに加え、息切れや浮腫が現れます。急性の場合は緊急入院が必要です。
5. 受診の目安と早期対応の重要性
胸の痛みを感じたとき、「様子を見よう」「とりあえず我慢」と判断してしまうのは非常に危険です。以下の症状がある場合は、すぐに内科を受診するか、救急車を呼ぶべきです。
緊急性の高いサイン
- 安静にしていても痛みが続く
- 痛みが30分以上続く
- 息苦しさや冷汗を伴う
- 意識がもうろうとする
- 既に心疾患の診断を受けている

特に高齢者や糖尿病患者では、典型的な胸痛が現れにくい無痛性心筋梗塞も存在するため、症状が曖昧でも油断は禁物です。
6. 予防のためにできる生活習慣の改善
心疾患の予防には、日常の習慣の見直しが欠かせません。内科ではこうした生活指導も重視しています。
食事
- 野菜・魚・果物中心の地中海型食生活
- 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の制限
- 塩分摂取は1日6g以下を目指す
運動
- 週150分以上の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギングなど)
- 無理のない範囲で継続することが重要
禁煙・節酒
- タバコは冠動脈を収縮させ、動脈硬化を加速させます
- アルコールは適量(男性で1日20g程度、女性でその半分以下)
ストレス管理
- 睡眠の質を高め、過労を避ける
- 心理的ストレスをため込まないよう、趣味やカウンセリングを活用
7. よくある質問と内科医からのアドバイス
Q. 胸のチクチクした痛みも心臓病ですか?
A. 一般的には筋肉や神経由来のことが多いですが、高血圧・糖尿病・喫煙歴がある場合は注意が必要です。自己判断せず検査を受けましょう。
Q. 市販の鎮痛薬で様子を見てもいいですか?
A. 胸痛に対しての自己判断による薬の服用は危険です。症状が心疾患によるものであれば、対症療法だけでは命に関わる可能性があります。
Q. 胸の痛みがあったがすぐに治まった。受診すべき?
A. 痛みが一時的に消えても、狭心症などの可能性は排除できません。できるだけ早めに内科を受診して原因を調べることが大切です。
8. まとめ|胸の痛みを軽視せず、命を守る行動を
胸の痛みは、日常的な疲労や姿勢によるものから、命を脅かす心臓病まで幅広い原因が考えられます。特に狭心症や心筋梗塞といった病気は、早期の診断と治療が生死を分けることもあります。
内科では、心疾患の早期発見を目的に、症状の詳細な聴取と的確な検査を通じて、適切な診断と治療方針を提供します。「いつもと違う胸の痛み」を感じたら、まずは内科にご相談ください。それがご自身の健康と命を守る第一歩になります。



