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「急にふらっとして立っていられない」「天井がぐるぐる回る感じがする」——そのようなめまいの症状に悩んだことはありませんか?めまいは耳鼻科だけの問題と思われがちですが、実は内科的な病気が関係していることも少なくありません。高血圧、貧血、血糖値の異常、自律神経の乱れなど、全身状態の変化がめまいを引き起こす場合もあります。本記事では、内科で診るめまいの原因から検査、治療法、そして日常生活での注意点までを、内科医の視点から詳しく解説します。
1. めまいとは?——症状のタイプと分類
「めまい」は単なる一つの症状ではなく、その原因によってタイプが異なります。以下のような分類が一般的です。
回転性めまい(ぐるぐる回る)
自分自身や周囲が回っているように感じるタイプ。耳の異常(内耳や前庭神経など)に起因することが多いですが、脳血管障害などの内科的要因も無視できません。
浮動性めまい(ふわふわする)
身体が宙に浮いているような、不安定な感覚。脳の虚血、低血圧、貧血、自律神経失調症など、内科的な疾患が関係している場合があります。
立ちくらみ(眼前暗黒感)
急に立ち上がったときなどに、目の前が暗くなったり、意識が遠のくような感じ。血圧や血糖の急な変動が原因になることが多く、循環器系や代謝異常が疑われます。
2. 内科で診るめまいの主な原因
内科領域で原因となるめまいは、以下のように多岐にわたります。
貧血
赤血球やヘモグロビンの不足により、脳への酸素供給が減少してめまいを引き起こすことがあります。女性に多く、鉄欠乏性貧血が代表的です。
低血圧・起立性低血圧
血圧の急激な低下により脳への血流が不足し、立ち上がった瞬間にめまいを感じるケース。脱水や長時間の座位の後にも起こりやすいです。
高血圧
高血圧そのものがめまいの直接原因になることは少ないですが、急激な血圧の変動や脳血管の障害がめまいを引き起こすことがあります。
血糖値の異常(低血糖・高血糖)
糖尿病患者などで、インスリンの過剰投与による低血糖発作や、著しい高血糖状態でも、意識障害やめまいが起こることがあります。
自律神経失調症
ストレスや生活リズムの乱れによって自律神経が乱れると、血管の収縮・拡張がうまくいかず、慢性的なふらつきやめまいを感じることがあります。
脳血管障害(脳梗塞・TIA)
特に高齢者で注意が必要です。めまいに加えて手足のしびれ、言語障害、視野障害などが伴う場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
3. 内科で行う診察・検査の内容
内科では、めまいの原因を特定するために以下のような検査や問診が行われます。
問診
- めまいの発症時期、持続時間、再発頻度
- めまいの種類(回転性、浮動性など)
- 随伴症状(動悸、発汗、頭痛、しびれなど)
- 服用中の薬、既往歴、生活習慣
身体診察
- 血圧・脈拍の測定(起立性低血圧の評価)
- 神経学的検査(脳梗塞の有無)
- 聴力検査や眼振の確認(耳との関連)
検査
- 血液検査(貧血・血糖・炎症反応など)
- 心電図(不整脈の有無)
- 脳の画像検査(CT/MRI):特に神経症状を伴う場合は必須
- 尿検査・ホルモン検査:内分泌異常の可能性がある場合
4. めまいに対する治療法と薬物療法
原因に応じて、内科では以下のような治療が行われます。
薬物療法
- 貧血:鉄剤やビタミンB12、葉酸補充
- 低血圧:昇圧剤、塩分摂取の指導
- 高血圧:降圧薬の調整(急激な降圧は避ける)
- 自律神経失調症:漢方薬(加味逍遙散など)や自律神経調整薬
- 血糖異常:糖尿病の治療調整、インスリンまたは経口薬の見直し
生活指導
- 食生活・睡眠・ストレス管理の見直し
- 水分と塩分の適切な摂取(特に低血圧の場合)
- アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける
- めまい時の転倒防止のための安全対策
5. 日常生活での予防と注意点
生活習慣の見直し
- バランスの取れた食事を心がけ、空腹を避ける
- 規則正しい睡眠リズムを維持
- ストレスを溜めない工夫(呼吸法、軽運動、趣味の時間)
- 急に立ち上がらず、姿勢変化はゆっくり行う

めまい時の対応
- 安静にして頭を低くする
- 突然の歩行や運転は控える
- 繰り返す場合はメモに記録して、受診時に医師へ伝える
6. いつ受診すべき?危険なめまいの見分け方
以下のような症状を伴うめまいは、早急な受診が必要です:
- 激しい頭痛や意識障害
- 手足のしびれや力が入らない
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 視界のぼやけ、複視(ものが二重に見える)
- 嘔吐が止まらない
これらは脳血管障害や脳腫瘍など、緊急性の高い疾患の可能性があるため、速やかに医療機関(特に内科・神経内科)を受診してください。
7. よくある質問(Q&A)
Q. 耳鼻科と内科、どちらに行くべき?
A. 回転性のめまい(耳鳴りや難聴を伴う)なら耳鼻科が適切なことが多いですが、ふらつきや立ちくらみ、全身症状を伴うめまいは内科での精査が有効です。
Q. 市販薬でめまいを治せますか?
A. 一時的な緩和は可能でも、原因を突き止めないまま使い続けるのは危険です。特に高齢者では重大な病気が隠れていることもあるため、医師の診断を優先してください。
Q. 更年期でもめまいが起こる?
A. はい、更年期にはホルモンバランスの乱れによる自律神経失調が起きやすく、めまいの症状として現れることがあります。内科でのホルモン検査も有効です。
8. まとめ|めまいを正しく理解し適切な対応を
めまいは一過性の症状として軽く見られがちですが、内科的な全身疾患の兆候であることも少なくありません。早めの受診と適切な診断が、重症化を防ぐ鍵です。
内科では、血圧や血糖、貧血、自律神経、ホルモンなど、身体全体のバランスを評価しながら、めまいの背景にある疾患を探ることができます。「最近ふらつくことが増えた」「年齢のせいかも…」と自己判断せず、気になる症状があれば早めにご相談ください。



