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「いびきはよくあること」「疲れているだけ」——そう思って放置していませんか?実は、大きないびきや不規則ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の兆候である可能性があります。この疾患は、睡眠中に呼吸が一時的に停止することで全身の臓器に負担をかけ、放置すれば高血圧・糖尿病・心疾患・脳卒中といった重篤な病気の引き金にもなりかねません。本記事では、いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係を中心に、症状、原因、診断法、治療法、予防策を総合的に解説します。

いびきとは何か?正常ないびきと危険ないびきの違い

正常な「いびき」はあるのか?

いびきは、睡眠中に気道(空気の通り道)が狭くなることで、空気が通る際に粘膜が振動し、音が出る現象です。誰しも疲れていたり、仰向けで寝ていたりすると一時的にいびきをかくことがあります。これは生理的ないびきと呼ばれ、一過性であれば特に問題はありません。

危険ないびきの特徴

一方で、以下のようないびきは、睡眠時無呼吸症候群のサインである可能性があります。

  • 音が極端に大きく、周囲を起こしてしまう
  • いびきが途中で止まり、「無音」の後に激しく再開する
  • 呼吸が止まっているように見える
  • 毎晩いびきが続く
  • いびきとともに寝汗や夜間頻尿がある

こうした症状に心当たりがある場合は、放置せず医療機関での相談をおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

病気の概要

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり、極端に浅くなったりする病気です。医学的には、呼吸が10秒以上止まり、それが1時間に5回以上繰り返される場合にSASと診断されます。

眠っている間に酸素が十分に取り込めなくなることで、脳や心臓、血管など全身の臓器に大きな負担がかかります。その結果、高血圧や糖尿病、心疾患、脳卒中などのリスクが高まることが知られています。単なる「いびき」や「寝相の悪さ」と思って放置すると、命に関わる病気につながることがあるため注意が必要です。

主なタイプ(分類)

  1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
    最も多いタイプで、のど(咽頭)周囲の筋肉がゆるんでしまい、空気の通り道である気道がふさがって呼吸が止まります。
  • 主な原因:肥満、加齢、扁桃腺の肥大、あごの形の影響など
  • 特徴:大きないびきと呼吸停止を繰り返す
  1. 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
    脳の呼吸中枢から「呼吸をしなさい」という指令が出にくくなり、呼吸そのものが止まってしまうタイプです。
  • 主な原因:心不全や脳・神経の病気
  • 発生頻度:OSASよりは少ない
  1. 混合型
    上記の「閉塞性」と「中枢性」が両方合わさったタイプです。原因や症状が複雑になりやすく、より詳細な検査や治療が必要になることがあります。

つまり、SASといっても「気道がふさがって起こる場合」と「脳からの指令が出にくい場合」があり、原因や治療法が少しずつ異なります。特に閉塞性タイプは肥満と強く関係しているため、生活習慣の改善が治療や予防につながります。

SASの代表的な症状と日常生活への影響

自覚しやすい症状

睡眠時無呼吸症候群では、本人が気づける症状として以下が挙げられます。

  • 起床時の頭痛や口の乾き
  • 強い日中の眠気
  • 全身のだるさや集中力の低下
  • 記憶力の低下や気分の落ち込み
  • 夜間の頻尿や寝汗

「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない」と感じる人は注意が必要です。

周囲から指摘されやすい症状

自分では気づきにくいものの、家族やパートナーが次のような異変を指摘することがあります。

  • 大きないびきと呼吸停止
  • 寝返りが多く、寝相が悪い
  • 寝ている間に突然むせる

こうしたサインは、SASの早期発見につながる重要な手がかりです。

口を開けて寝る男性

QOL(生活の質)への影響

SASの影響は単なる「眠気」だけにとどまらず、仕事や家庭生活に大きな支障をきたす場合があります。特に、車の運転や危険を伴う作業に従事する方は、事故のリスクが高まり社会的な問題にもつながります。

放置するとどうなる?SASが引き起こす重大な疾患

SASを放置すると、次のような命に関わる合併症につながる可能性があります。

高血圧・心疾患

無呼吸による低酸素状態は交感神経を刺激し、血圧を持続的に上昇させます。結果として、高血圧症、心筋梗塞、心不全、不整脈のリスクが高まります。

脳血管障害

夜間の無呼吸は脳への酸素供給を妨げ、脳梗塞や脳出血のリスクを増加させます。

糖尿病・代謝異常

睡眠の質の低下は、ホルモンバランスや血糖値のコントロールに悪影響を与え、糖尿病や脂質異常症と密接に関係します。

交通事故や労働災害

慢性的な眠気により、交通事故や作業ミスが多発。SAS患者の事故率は、一般の約2〜3倍と言われています。

診断の流れと検査方法

受診のきっかけとなるチェックポイント

以下の項目に複数当てはまる方は、早めに医療機関で相談しましょう。

  • 毎晩いびきをかく
  • 呼吸が止まっていると家族に言われた
  • 日中の眠気が強い
  • 睡眠時間が足りているのに疲れが取れない
  • 肥満傾向がある
  • 高血圧や糖尿病を指摘されている

主な検査方法

簡易検査(自宅で可能)

携帯型の検査装置を使用し、睡眠中の呼吸状態、酸素飽和度、脈拍などを記録します。自宅で行えるため、初期スクリーニングとして有用です。

精密検査(終夜睡眠ポリグラフ:PSG)

医療機関に1泊入院し、脳波・眼球運動・筋電図・呼吸・心電図などを測定します。無呼吸の程度を詳細に評価できます。

治療法と生活上の改善策

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、症状の程度や原因に応じて選択されます。代表的な治療法は以下の通りで、生活習慣の改善とあわせて行うことで、より高い効果が期待できます。

CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

最も標準的かつ効果が高い治療法です。専用のマスクを装着し、機械から一定の圧力をかけた空気を気道に送り込むことで、睡眠中に気道が塞がらないようにします。

  • 中等症〜重症のSASに有効
  • 使用を継続することで、高血圧・心疾患・脳卒中など合併症のリスクを減らせる
  • 日本では条件を満たせば保険適用可能

効果は非常に高い一方で、毎晩マスクを装着する必要があるため、慣れるまで不快感を覚える方もいます。しかし適切に使い続けることで、日中の眠気が改善され、生活の質(QOL)が大きく向上します。

マウスピース療法(口腔内装置:OA)

軽症〜中等症の患者さんに有効とされる治療法です。就寝時に下顎を前方に固定するマウスピースを装着することで、舌や喉の奥の組織が気道を塞ぐのを防ぎます。

  • 歯科医院でオーダーメイドで作成
  • 比較的手軽に始めやすく、持ち運びも便利
  • 効果はCPAPほど強力ではないが、軽症例には十分有効

副作用として、顎関節への負担や歯のかみ合わせの変化が生じる場合がありますが、定期的な調整で改善可能です。

外科手術

解剖学的な異常が明らかな場合に検討されます。

  • 扁桃腺やアデノイドが肥大している場合には 摘出手術
  • 鼻中隔湾曲や鼻腔の狭さが原因の場合には 鼻の矯正手術
  • 口蓋や舌の形態を改善する 咽頭形成術 など

外科手術は原因がはっきりしている場合には有効ですが、再発の可能性や手術リスクもあるため、医師との十分な相談が必要です。

このように、SASの治療は「CPAP療法」「マウスピース療法」「外科手術」の3本柱が中心となります。加えて、生活習慣の改善(減量・禁酒禁煙・睡眠習慣の見直し)を取り入れることで、より高い効果と再発防止が期待できます。

生活習慣の見直しでSASを予防・改善

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、生活習慣の改善によって症状を軽減できるケースも少なくありません。日常の工夫で「いびき」や「無呼吸」の頻度を減らすことができるため、治療と並行して生活習慣の見直しを行うことが重要です。

減量

肥満はSASの最大の危険因子です。特に首まわりや喉の脂肪が増えると気道が圧迫され、無呼吸が悪化しやすくなります。
体重を わずか5〜10%減らすだけでも、いびきや無呼吸の回数が減少する ことが報告されています。無理な食事制限ではなく、バランスの取れた食事と適度な運動を継続することが大切です。

禁酒・禁煙

  • アルコール:寝る前のお酒は筋肉を緩め、気道が塞がれやすくなります。特に就寝直前の飲酒は避けるのが望ましいです。
  • タバコ:喉や気道の炎症を引き起こし、粘膜が腫れて空気の通り道を狭めてしまいます。禁煙することでSASの改善につながる可能性があります。

寝る姿勢の工夫

仰向けで寝ると舌や軟口蓋が重力で喉の奥に落ち込み、気道をふさぎやすくなります。横向きで寝ることで、無呼吸が軽減される場合があります。専用の抱き枕や体位保持用のグッズを活用するのも効果的です。

睡眠時間の確保と規則正しい生活

慢性的な睡眠不足は、ホルモンバランスや自律神経に悪影響を与え、SASの症状を悪化させる要因になります。

  • 毎日同じ時間に寝起きする
  • 十分な睡眠時間(7時間前後)を確保する
  • 夜更かしや不規則な生活を避ける

といった生活リズムの安定が、全身の健康維持とSAS改善の両方に役立ちます。

まとめ:いびきは体からのSOSかもしれません

いびきは「ただのクセ」「年齢のせい」と見過ごされがちですが、実際には体からの大切な警告サインである可能性があります。特に、毎晩続く大きないびきや、呼吸が止まっているように見える、日中の強い眠気や頭痛がある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることを疑うべきです。

この疾患を放置すると、睡眠の質が大きく損なわれるだけでなく、高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病といった命に関わる病気につながることが分かっています。つまり「いびき」は、体が発するSOSのサインの一つと言えるのです。

一方で、SASは早期に発見し、適切に治療を行うことで、日中の眠気や倦怠感の改善はもちろん、生活習慣病や循環器疾患のリスクを大きく減らすことができます。治療を始めることで「日常のパフォーマンスが戻ってきた」「家族からいびきが減ったと言われた」と実感する方も少なくありません。

当院では、自宅でできる簡易検査から、専門的な精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)、そしてCPAPやマウスピースなどの治療まで、一貫した体制を整えております。気になる症状がある方は、「ただのいびき」と思わずに、ぜひ一度ご相談ください。

あなたの「いつものいびき」が、健康を守るための大切な手がかりになるかもしれません。早めの受診が、安心と健康につながります。