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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中の呼吸停止や低呼吸が繰り返される疾患で、日中の強い眠気や生活の質の低下を引き起こします。
放置すると高血圧や心疾患など重大な合併症を招くため、早期の正確な診断と適切な治療が欠かせません。
本記事では、睡眠時無呼吸症候群の検査方法から治療の流れまで、専門的な視点で詳しく解説し、あなたの健康管理をサポートします。
1. 睡眠時無呼吸症候群とは?基礎知識の確認
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に気道が繰り返し閉塞したり、呼吸が浅くなったりする疾患です。呼吸の停止や低呼吸が続くことで、体内の酸素濃度が低下し、眠りが断続的に妨げられます。その結果、深い睡眠が得られず、睡眠の質が著しく低下し、日中の活動に支障をきたすさまざまな症状を引き起こします。
代表的な症状には、日中の強い眠気や注意力の低下、朝の頭痛、慢性的な疲労感などがあり、長期的には高血圧・心疾患・脳卒中など重大な合併症のリスクが高まります。
SASの主なタイプ
睡眠時無呼吸症候群は、原因や発症メカニズムによって大きく3つのタイプに分類されます。
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
最も多いタイプで、気道が物理的に狭くなったり塞がれたりすることで呼吸が止まる状態です。肥満、扁桃肥大、鼻の構造異常などが主な原因です。 - 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
脳の呼吸中枢が正常に働かず、呼吸指令が適切に送られないことで発症します。心不全や脳血管障害との関連が強く、OSASより頻度は少ないですが重症化しやすい傾向があります。 - 混合型
OSASとCSASの両方の特徴を併せ持つタイプです。複雑な要因が絡むため、精密検査による詳細な評価が必要です。
睡眠時無呼吸症候群は自覚症状が軽くても進行する可能性がある疾患です。早期発見と適切な診断が、症状改善や合併症予防のための第一歩となります。
2. 睡眠時無呼吸症候群の検査方法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断には、自覚症状や生活習慣の把握に加えて、医学的根拠に基づいた専門的な検査が欠かせません。症状の程度やリスク因子によって検査内容は異なり、正確な診断がその後の治療方針を左右します。
2-1. 問診と身体所見
診察の最初のステップは問診と身体所見です。医師は、睡眠や生活習慣に関する情報を丁寧に確認します。
主な確認ポイント
- いびきの有無や強さ
- 日中の眠気や集中力低下の程度
- 夜間に呼吸が止まる様子があるかどうか(家族からの指摘含む)
- 高血圧や糖尿病など、生活習慣病の有無
- 首回りのサイズや肥満の程度
- 鼻づまりや扁桃腺肥大など、気道に影響を与える要因
この段階で、SASの疑いがどの程度あるかを概ね把握できます。
2-2. 簡易検査(在宅検査)
次のステップは、自宅で行える簡易検査です。小型の測定機器を装着して一晩眠ることで、睡眠中の呼吸や酸素状態を記録します。
測定内容
- 呼吸回数
- 無呼吸・低呼吸の有無と頻度
- 血中酸素飽和度(SpO₂)
- 心拍数の変動
特徴
- 自宅でできるためリラックスした状態で検査可能
- 手軽で費用も比較的低い
- 軽症から中等度のスクリーニングに有効
ただし、重症度の詳細な分析には不十分な場合があるため、必要に応じて精密検査が推奨されます。
2-3. 終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)
精密な診断が必要な場合には、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)が行われます。これはSAS診断のゴールドスタンダードとされる検査です。
検査内容
- 脳波
- 心電図
- 筋電図(顎や脚)
- 呼吸音や胸腹部の動き
- 血中酸素濃度
- 眼球運動
これらを一晩かけて記録し、無呼吸や低呼吸の回数・持続時間・影響を詳細に評価します。
特徴
- 正確で詳細なデータが得られる
- 治療方針の決定に不可欠
- 病院で一泊が必要だが、その分信頼性は非常に高い
適切な検査を受けることで、重症度や発症の背景を正しく把握でき、最適な治療法を選択するための確かな基盤となります。
3. 睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、診断結果や症状の重症度、生活習慣や体質を踏まえて、最も適した方法を組み合わせて行います。放置すれば合併症リスクが高まるため、早期からの適切な治療介入が重要です。
3-1. CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法は、中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)における第一選択とされる標準的な治療法です。
鼻マスクを通じて一定の空気圧を送り込み、睡眠中も気道を開放し続けることで無呼吸や低呼吸を防ぎます。
主な特徴
- 日中の眠気や倦怠感が大幅に改善
- 集中力や作業効率が向上
- 高血圧や心血管系疾患のリスク低下
継続使用が効果のカギとなるため、機器の適合確認や定期的なデータチェックが欠かせません。
3-2. 口腔内装置療法
軽度から中等度のOSASには、マウスピース型の口腔内装置が有効です。
下顎を前方に固定し、睡眠中の気道狭窄を防ぐことで呼吸をスムーズにします。
メリット
- 持ち運びが容易で出張や旅行時にも使用可能
- 違和感が少なく、慣れやすい
ただし、歯列や顎関節の状態によっては適応外となる場合があるため、歯科・内科の連携が推奨されます。
3-3. 外科的治療
解剖学的な異常が原因で気道が狭窄しているケースでは、手術による根本治療が検討されます。
- 扁桃腺肥大やアデノイド肥大
- 鼻中隔湾曲
- 顎の形態異常
近年は内視鏡やレーザーを用いた低侵襲手術が一般化し、術後の痛みや合併症リスクが軽減されています。
重症例や他の治療法で改善が得られない場合にも有効です。
3-4. 生活習慣の改善
いかなる治療法と併用しても重要なのが、生活習慣の見直しです。
- 体重管理:肥満は気道を圧迫し、無呼吸を悪化させます。5〜10%の減量でも症状が改善するケースがあります。
- 飲酒・喫煙の制限:飲酒は筋肉を弛緩させ、喫煙は炎症を助長します。両者とも悪化因子となるため、制限や禁煙が推奨されます。
- 睡眠姿勢の工夫:仰向けでは気道が塞がれやすくなるため、横向きで寝るよう意識すると呼吸が楽になります。
- 規則正しい生活習慣:睡眠不足や不規則な生活も症状悪化の一因です。一定の就寝・起床リズムを保つことが大切です。
SASの治療は単一の方法で完結することは少なく、複数のアプローチを組み合わせることで最大の効果が得られます。医師と相談しながら、ライフスタイルや症状に合わせた無理のない治療計画を立て、継続的な改善を目指しましょう。

4. 治療後のフォローアップと注意点
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、治療を始めたら終わりではなく、継続的な管理が不可欠な慢性疾患です。治療の効果を最大限に引き出し、将来的な健康リスクを減らすためには、定期的なフォローアップと生活習慣の見直しを続けることが重要です。
まず、CPAP療法を行っている方は、使用している機器が正しく適合しているか、また設定が最適であるかを定期的にチェックする必要があります。マスクのサイズや装着感が合っていない場合、十分な治療効果が得られなかったり、不快感から使用が続けにくくなったりします。医療機関では、装置のデータを解析し、睡眠の質や無呼吸の回数が改善しているかを細かく確認します。
また、治療中の症状の改善状況や副作用については、必ず医師と共有しましょう。例えば、CPAP使用による鼻や喉の乾燥、皮膚のトラブル、口呼吸のクセなどがある場合は、装置の調整や加湿機能の活用で改善できます。口腔内装置を使用している場合も、歯や顎の負担がないかを定期的に確認することが大切です。
さらに、治療効果を維持するためには生活習慣の継続的な管理も欠かせません。体重管理を続けること、禁煙・節酒を徹底すること、そして規則正しい睡眠習慣を守ることが、症状の安定や再発予防につながります。特に肥満が背景にある場合、減量によって症状が軽快するケースは多く、治療と生活習慣改善を両立させることが理想です。
フォローアップのポイント
- CPAPや口腔内装置の適合状態を定期的に確認する
- 睡眠の質や症状の改善状況をデータで把握
- 副作用があれば早めに医師に相談
- 体重・食生活・運動習慣の管理を継続
- 血圧や血糖値など、合併症リスクの指標も定期的にチェック
SASは、適切な管理を続けることで症状をコントロールできるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を予防できる病気です。医師と二人三脚で治療を続け、「治療を続ける習慣」を身につけることが、長期的な健康維持への近道となります。
5. まとめ
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、単なる「睡眠の質が悪い状態」ではなく、放置すれば高血圧・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病といった深刻な合併症につながる可能性のある疾患です。しかし、正確な検査と適切な治療を受けることで、日中の強い眠気や疲労感の改善、さらには長期的な健康維持が十分に期待できます。
SASは慢性疾患の一つであり、早期発見が予後を大きく左右します。例えば、軽度の段階で生活習慣を見直したり、適切な治療を始めたりすることで、重症化を防ぎ、合併症リスクを大幅に下げることが可能です。特に、「いびきが大きい」「寝ても疲れが取れない」「日中に強い眠気がある」といった症状を軽視せず、医療機関で相談することが重要です。
当院では、問診・検査・治療・フォローアップまでをトータルでサポートし、患者様一人ひとりの症状や生活習慣に合わせた最適な治療プランをご提案しています。CPAP療法の導入・調整、口腔内装置の適合、生活習慣指導まで、細やかな対応を行い、安心して継続できるサポート体制を整えています。
健康で快適な毎日を送るためには、「気になる症状があるけれど、忙しくて相談できない」と放置せず、まずは検査を受けて自分の状態を知ることが第一歩です。
もし、日中の眠気や強いいびき、夜間の呼吸停止を指摘された経験がある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。



