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あくびをする男性

日中に強い眠気や集中力の低下を感じることはありませんか?
単なる疲労や生活習慣の乱れと見過ごされがちですが、実は睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因となっている場合があります。
SASは睡眠中に呼吸が断続的に止まることで、質の良い睡眠が取れず、日中の眠気や倦怠感を引き起こします。
放置すると高血圧や心臓病などの重大な合併症を招くリスクも。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の特徴や診断法、効果的な治療方法を詳しく解説し、あなたの健康な毎日をサポートします。

1. 日中の眠気と睡眠時無呼吸症候群の関係

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が10秒以上停止する、または呼吸量が著しく低下する状態が繰り返し起こる疾患です。
日本国内でも年々患者数が増えており、特に働き盛り世代の男性や高齢者に多く見られます。

睡眠は本来、心身を休めて回復させる大切な時間ですが、SASでは睡眠の質が大幅に低下します。呼吸が止まるたびに体は無意識に覚醒し、深い眠りが妨げられることで、翌日の疲労感や眠気が慢性化していくのです。

なぜ日中に強い眠気が起こるのか

無呼吸が続くことで、血中の酸素濃度が低下し、体が常に酸素不足の状態に陥ります。この酸素不足が脳を刺激し、何度も睡眠が中断されることで「熟睡できない夜」が続きます。

その結果、以下のような状態が引き起こされます。

  • 長時間眠っても疲労が抜けない
  • 日中に強い眠気が突然襲ってくる
  • 集中力や判断力が低下し、仕事や勉強に支障が出る

このような慢性的な睡眠不足は、交通事故や労働災害など命に関わるリスクにも直結するため、早期に気づくことが重要です。

眠気以外の代表的な症状

睡眠時無呼吸症候群では、日中の眠気だけでなく、全身にさまざまな症状が現れます。代表的なものは次の通りです。

  • 大きないびき
    家族や同居人から「いびきがうるさい」と指摘されるケースが多く、無呼吸のサインであることも少なくありません。
  • 起床時の頭痛や口の渇き
    睡眠中の酸素不足や口呼吸によって起こります。
  • 夜間の頻尿
    無呼吸に伴う心臓への負担から、尿の生成が増えることがあります。
  • 早朝の高血圧
    無呼吸のストレスで交感神経が刺激され、血圧が上がりやすくなります。
  • 集中力の低下・記憶力の減退
    睡眠の質が悪化することで脳の働きが鈍り、パフォーマンスが落ちることがあります。
  • 慢性的な疲労感
    睡眠で十分に疲労が取れないため、体が常に重い感覚が続きます。

このように、睡眠時無呼吸症候群は単なる「眠気」だけの問題ではなく、心身全体の健康に影響を及ぼす疾患です。早期の診断と適切な治療を行うことで、生活の質(QOL)を大きく改善することができます。

2. 睡眠時無呼吸症候群の原因とリスクファクター

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、原因によって閉塞性中枢性の2種類に大きく分けられます。それぞれの特徴や発症メカニズムを理解することが、適切な診断と治療の第一歩となります。

主な原因

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

最も一般的なタイプで、気道が物理的に狭くなり、睡眠中に空気の通り道が塞がれて呼吸が止まる状態です。
主な原因は以下の通りです:

  • 喉の筋肉や組織の緩み
    睡眠中は筋肉が自然に緩みますが、加齢や疲労、飲酒などでさらに筋肉が弛緩すると、気道が狭くなりやすくなります。
  • 肥満による首周りの脂肪増加
    首回りに脂肪が付くと気道が圧迫され、空気の通りが妨げられます。特にBMIが高い人ではリスクが顕著に上昇します。
  • 扁桃肥大やアデノイドの腫れ
    小児や若年層では、扁桃やアデノイドが大きいことが原因で気道が狭くなるケースがあります。
  • 顎の形状(小顎・後退顎)
    下顎が小さい、あるいは後退している場合、気道の奥行きが浅く、閉塞が起きやすくなります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)

OSASとは異なり、気道は塞がっていないにもかかわらず、脳から呼吸を指令する信号が適切に送られないことで無呼吸が生じます。
このタイプはOSASに比べて少数ですが、以下のような背景が関与します:

  • 心不全や脳疾患
    脳梗塞や重度の心疾患を持つ方に多く見られます。
  • 薬剤の影響
    特定の薬(睡眠薬、オピオイド系鎮痛薬など)が呼吸中枢に作用する場合もあります。

リスクファクター

睡眠時無呼吸症候群の発症には、生活習慣や体質、年齢など、さまざまな要因が絡み合っています。代表的なリスク要因を整理すると以下の通りです。

  • 肥満
    首周囲や気道周囲の脂肪蓄積が、呼吸時の空気の流れを妨げます。BMIが25を超えるとリスクが大きく上昇します。
  • 高齢
    加齢とともに筋肉や軟部組織の緊張が低下し、睡眠中に気道が閉塞しやすくなります。
  • 男性
    男性は女性に比べ、構造的に気道が狭く、筋肉の支持力も弱いため、発症率が高いとされています。ただし、女性も閉経後はホルモン変化によりリスクが増加します。
  • 喫煙・飲酒
    喫煙は気道の炎症を引き起こし、飲酒は筋肉の緊張を緩めるため、無呼吸を悪化させます。
  • 生活習慣病
    高血圧、糖尿病、脂質異常症などを持つ方は、SASを合併するリスクが高いと報告されています。これらの疾患とSASは互いに影響し合い、症状を悪化させる傾向があります。

このように、睡眠時無呼吸症候群は単なる睡眠の問題ではなく、体質・生活習慣・基礎疾患の複合的な影響で発症します。リスクを把握し、生活習慣の見直しや早期の受診につなげることが、重症化を防ぐための重要なポイントです。

3. 睡眠時無呼吸症候群の診断方法

医療機関での診断ステップ

問診・身体検査

  • 眠気の度合いを評価するエプワース眠気尺度などの質問票
  • いびきや呼吸停止の有無の確認
  • 体格や首周りの計測

簡易検査(在宅検査)

自宅で睡眠中に装着する簡易装置により、呼吸状態や血中酸素濃度を測定。
軽度から中等度の症状を検出するのに有効。

終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)

病院で行う一晩の精密検査。
脳波、心電図、呼吸、筋電図、眼球運動など多項目を測定し、無呼吸の頻度や重症度を詳細に把握します。

4. 治療法の選択肢と効果

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、症状の重症度や原因、生活背景によって最適な方法が異なります。ここでは、内科で一般的に行われる治療法とその効果を詳しく説明します。

1. CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法は、重度のSASに対して最も効果的な治療法です。
睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を常に開いた状態に保つことで、無呼吸や低呼吸を防ぎます。

特徴と効果

  • 睡眠の質を劇的に改善
  • 日中の強い眠気や疲労感を軽減
  • 高血圧や心疾患などの合併症リスクを低下
  • 適切な使い方を継続することで、生活の質(QOL)が大幅に向上

注意点

  • 毎晩の装着が必要
  • 慣れるまでに数週間かかることもある

2. 口腔内装置療法(マウスピース)

軽度から中等度の患者には、歯科で作成する口腔内装置(スリープスプリント)が有効です。
下顎を前方に固定することで気道の閉塞を防止
し、呼吸を確保します。

メリット

  • 携帯しやすく旅行や出張時も便利
  • CPAPに比べて装着感が軽い

デメリット

  • 重症例には効果が限定的
  • 顎関節に負担がかかる場合がある

3. 外科手術

気道の構造的な問題が原因の場合、外科手術による改善が検討されます。

適応されるケース

  • 扁桃腺肥大
  • 鼻中隔湾曲
  • 顎の骨格異常

特徴

  • 近年は内視鏡を用いた低侵襲手術が主流
  • 手術による改善効果は高いが、再発の可能性があるため慎重な検討が必要

4. 生活習慣の改善

すべての患者に共通して推奨されるのが生活習慣の見直しです。軽症例では、生活改善だけで症状が大幅に改善することもあります。

具体的な対策

  • 減量:特に首周りの脂肪を減らすことで、気道が広がり呼吸がスムーズになる
  • 禁煙・節酒:喫煙は気道を刺激し炎症を引き起こし、飲酒は気道周囲の筋肉を弛緩させ無呼吸を悪化させる
  • 横向き睡眠:仰向けで眠ると舌が落ち込み気道を塞ぎやすいため、横向きで寝る姿勢が推奨される
  • 規則正しい睡眠習慣:十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めることも重要

このように、SASの治療は「重症度に合わせた適切な介入」と「生活習慣の改善」の両輪で進めることが大切です。

横向きで寝る男性

5. 睡眠時無呼吸症候群の放置が招くリスク

SASを未治療で放置すると、以下のような健康被害が起こる可能性があります。

  • 高血圧の悪化
  • 心筋梗塞や脳卒中の発症リスク増加
  • 糖尿病や脂質異常症の悪化
  • 交通事故や労働災害の増加(居眠り運転など)
  • うつ病や認知機能障害のリスク上昇

6. まとめ:日中の眠気を見逃さないで

日中に強い眠気を感じるのは、単なる疲労やストレスの影響と考えられがちですが、実は睡眠時無呼吸症候群(SAS)という重大な疾患が隠れている場合があります。睡眠中に繰り返される無呼吸や低呼吸によって深い眠りが妨げられ、質の悪い睡眠が続くことで、日中のパフォーマンスが著しく低下し、健康リスクも高まります。

特に、いびきがひどい、夜間に呼吸が止まっていると指摘された、朝起きた時に頭痛やだるさがあるといった症状は、SASを疑うサインです。放置すれば、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病を悪化させるだけでなく、集中力低下による交通事故や労働災害のリスクも増加します。

しかし、適切な検査と治療を受けることで状況は大きく改善します。CPAP療法による気道の確保、口腔内装置の使用、体重管理や生活習慣の見直しといった治療法を組み合わせることで、日中の眠気や倦怠感は軽減され、仕事や日常生活の質も向上します。また、早期に治療を始めることで、将来的な心血管リスクを大きく減らすことも可能です。

「疲れているだけだろう」と自己判断せず、眠気が強い、いびきがひどい、夜間の呼吸異常を指摘された場合には、早めに専門医に相談することが何より大切です。検査から治療開始までの流れは比較的スムーズで、負担が少ない方法も増えています。

当院では、睡眠時無呼吸症候群の検査からCPAP療法の導入・継続サポートまで、患者様一人ひとりに合わせた診療を行っています。「日中の眠気が続く」「睡眠の質が悪い」と感じている方は、早めにご相談いただくことで、安心で快適な毎日を取り戻す一歩となります。