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健康的に体重を減らしたい方は多いですが、無理な食事制限や短期的な流行ダイエットは、体への負担やリバウンドリスクが大きくなります。本記事では、内科医の視点から、栄養学・運動・ホルモン・心理面まで包括的に解説。科学的に安全で効果的なダイエット法を紹介します。
1. 健康的なダイエットの基本原則
1-1. 無理な減量は体に負担
急激な減量は筋肉量や骨量の減少を招き、基礎代謝の低下につながります。特に高齢者では骨粗鬆症のリスクも増大します。安全な減量目安は、1か月に体重の5%以下です。
1-2. カロリー管理と質の両立
単純にカロリーを減らすだけでなく、食品の質を重視することが大切です。低カロリーでも栄養不足の食品は避け、全粒穀物、野菜、魚、良質な脂質を中心にした食事を心がけましょう。
1-3. ホルモンと代謝の関係
食欲や脂肪代謝にはホルモンが関与しています。例えば、レプチンは満腹感を、グレリンは空腹感を調整します。睡眠不足やストレスはこれらのホルモンを乱すため、食欲コントロールに悪影響を及ぼします。
2. 栄養バランスを整える食事法
2-1. 三大栄養素の最適バランス
- 炭水化物:50〜60%(血糖値の安定化には低GI食品を選択)
- たんぱく質:15〜20%(筋肉量維持、代謝維持)
- 脂質:20〜25%(オメガ3脂肪酸は抗炎症作用あり)
2-2. 微量栄養素の重要性
- ビタミンD:筋力維持、骨健康
- カルシウム:骨・歯の健康、脂肪代謝にも関与
- マグネシウム:エネルギー代謝や神経機能をサポート
不足すると代謝が低下し、ダイエット効果を妨げます。
2-3. 食物繊維と発酵食品
食物繊維は腸内環境を整え、糖質吸収を緩やかにします。ヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸内フローラを改善し、体脂肪減少を助ける可能性があります。
2-4. 食事のタイミングと間食管理
朝食は基礎代謝を活性化させるため必須です。夕食は就寝2〜3時間前までに済ませ、間食はナッツや果物など栄養価の高いものに置き換えると良いでしょう。
3. 運動と生活習慣の改善
3-1. 有酸素運動の具体例(脂肪燃焼+血糖・血圧の安定に◎)
目標頻度:週150分以上(中強度)または週75分(高強度)
強度の目安:
- 中強度=「少し息が上がるが会話はできる」(RPE※ 4〜6)
- 高強度=「息が上がり会話は途切れがち」(RPE 7〜8)
※RPE=自覚的運動強度(10段階)
種目別ガイド
- ウォーキング:中強度/1日30分×週5日
- コツ:背筋を伸ばし、肘を軽く曲げて腕を振る。歩幅は“やや大きめ”。
- 目安:6,000〜8,000歩/日から、可能なら10,000歩へ。
- ジョギング・サイクリング:脂肪燃焼効率が高い
- ジョギング:会話がギリギリ続くペースで20〜30分、週3回。
- サイクリング:やや重めギアでケイデンス60–80/分、30–45分。
- 膝が不安な人はサイクリングの方が関節負担が少なめ。
- 水泳:全身運動・関節負担が少ない
- 初心者:平泳ぎや水中ウォーキングを15〜20分から。
- 中上級:クロールでインターバル(例:50m×10本、レスト30秒)。
進め方(12週間の例)
- 週1–2:ウォーキング20分×3回
- 週3–4:ウォーキング30分×4回
- 週5–8:ウォーキング40分×4回 or ジョグ/サイクル20分×2回追加
- 週9–12:中強度150–200分/週を安定化
安全ポイント
- ウォームアップ5分(ゆっくり歩く→可動域を広げる)→本運動→クールダウン5分。
- 痛み・違和感が出たら中止。翌日に強い疲労が残るなら強度を一段下げる。
3-2. 筋力トレーニング(基礎代謝維持&リバウンド防止の要)
目標頻度:週2〜3回、1回20〜30分/非連日が基本(筋回復のため)
自宅でできる基本3種目
- スクワット(下半身・臀部)
- フォーム:つま先はやや外、胸を張る/膝はつま先の向きと揃える。
- 目安:10〜15回×2–3セット、休憩60–90秒。
- きつくする:腕を前に伸ばす→ペットボトル/ダンベル→ブルガリアンスクワット。
- 腕立て伏せ(胸・肩・腕)
- フォーム:頭〜踵を一直線、肘は45°外向き。
- 目安:5〜12回×2–3セット。
- きつい場合:膝つき/壁腕立てから。楽になったら足上げで強度UP。
- プランク(体幹)
- フォーム:骨盤を丸めすぎ/反りすぎに注意、呼吸を止めない。
- 目安:20–45秒×2–3セット。
- 進化:サイドプランク、プランク+レッグリフト。
全身を補う追加メニュー(余力があれば)
- ヒップリフト、ランジ、バックエクステンション、チューブローイング など。
組み方の例(週2回)
- A日:スクワット→プランク→腕立て
- B日:ランジ→ヒップリフト→サイドプランク
(各10〜15回/秒数×2–3セット)
進め方のコツ
- 同じ回数で「あと2回できそう」で止める(追い込みすぎない)。
- 2週ごとに回数+2回またはセット+1で漸進。
- 筋肉痛が強い日はフォーム練習やストレッチに切り替え。
3-3. 睡眠とストレス管理(食欲ホルモンを整え、過食を防ぐ)
睡眠:7〜8時間を安定確保
- 就寝/起床時刻を毎日ほぼ固定(±1時間内)。
- 寝る90分前に入浴(40℃・15分)で深部体温を下げやすく。
- 就寝前60分は“ブルーライト断ち”(スマホ/PCはナイトモード or 使わない)。
- カフェインは就寝6時間前まで、アルコールは量を最小限。
- 寝室環境:温度18–22℃、暗さ・静けさ・快適な寝具。
ストレス管理:自律神経を整える小技
- 呼吸法(4-7-8法):4秒吸う→7秒止める→8秒吐く×4セット、1日2回。
- マインドフル5分:姿勢を正し呼吸と体感に意識を向けるだけ。
- 軽運動の“間に合わせ”:会議間の3分ストレッチ/寝る前の首肩ほぐし。
- 情報ダイエット:就寝2時間前は刺激的ニュース/作業を避ける。
- タスク整理:明日のToDoを3つだけメモ→不安を紙に“外出し”。
4. ダイエットの心理学的アプローチ
4-1. 行動変容のテクニック
- 小さな目標設定(例:週1回の運動を2回に増やす)
- 自己モニタリング(体重・食事・運動を記録)
- 報酬システム(運動後の達成感や非食品報酬)
4-2. マインドフルイーティング
食事中はスマホやテレビを避け、味覚・咀嚼を意識することで満腹感が得やすくなります。

5. 特別なケースへの配慮
5-1. 高齢者のダイエット
筋肉量や骨密度の低下に注意。たんぱく質中心、転倒予防の運動を重視。無理な減量は禁物。
5-2. 女性特有の注意点
月経周期や更年期のホルモン変化により、脂肪の蓄積や体重変動が起こりやすい。無理な食事制限は避け、栄養バランス重視。
5-3. 持病のある方
糖尿病、高血圧、腎臓疾患などがある場合は、医師の指導下でカロリー管理や食事制限を行う必要があります。
6. 補助的な方法と医療チェック
6-1. サプリメント
- ビタミン・ミネラル補給
- プロテインで筋肉量維持
ただし、食事・運動の補助として使用。サプリだけで痩せることは困難です。
6-2. 内科での定期チェック
血液検査で栄養状態や脂質・血糖値を確認することで、安全に減量できます。特に持病がある方や薬を服用中の方は必須です。
7. 長期的に続けるコツ
ダイエットは短距離走ではなく仕組みづくりの長距離走です。完璧を目指すより、 “まずやる→少し直す” を淡々と回すことが成功率を上げます。
現実的な目標設定
最初に「どれくらい・どの指標で・どれだけの期間続けるか」を決めましょう。数字にすると迷いが減り、続けやすくなります。
- 月の減量目安:体重の1〜2%(70kg→0.7〜1.4kg)
- 体重だけでなくウエスト/体脂肪/睡眠の質も記録
- SMART目標化:例)週150分の有酸素+たんぱく90g/日
習慣化
意志力は有限。だからこそ環境を整えて自動化します。ハードルが下がるほど、継続は楽になります。
- ハビットスタック:歯磨き後にプランク30秒/コーヒー時にゆで卵1個
- 前夜に運動ウェアを玄関へ、間食は見えない場所へ移動
- だるい日は「5分だけ」歩く―最小行動で中断を防ぐ
楽しみを仕込む
「楽しい」は最強の継続燃料。ご褒美と置き換えで、我慢の総量を減らします。
- 好きな音楽やドラマは運動中だけ解禁
- 調理は「揚げる→焼く/蒸す」「マヨ→ヨーグルト+レモン」
- 週1のご褒美は量と時間を先に決めて気持ちよく楽しむ
社会的サポート
人は一人より二人のほうが続けやすい。可視化と約束で“やらざるを得ない”仕組みを。
- 家族・友人と散歩の約束/進捗は共有カレンダーで見える化
- 目標を紙やLINEで宣言して自分を軽く縛る
記録と週1レビュー
記録は“鏡”です。良し悪しを責めずに、次の一手だけ決めましょう。
- 毎日:体重・歩数を一行メモ
- 週1チェック:
- うまくいった→続ける
- つまずき→原因を1つに絞る
- 来週の代替策を1つだけ決める
脱線した日のリセット
崩れるのは普通。大事なのはリセットが早いことです。
- 食べ過ぎた翌日は次の3食を「野菜+たんぱく」で整える
- オールorナッシング思考は捨て、翌朝水1杯+2分ストレッチで再開
1週間のミニモデル
全体像があると動きやすいです。まずはこの“並走プラン”から。
- 運動:有酸素30分×4日/筋トレ15分×2〜3日
- 食事:皿の1/2野菜・1/4たんぱく・1/4主食を目安に
- 生活:7〜8時間睡眠、就寝1時間前は画面オフ
小さく始める → 仕組み化 → 週1で微調整。 この循環を回せば、必ず前に進みます。
まとめ
健康的なダイエットは、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、良質な睡眠、ストレス管理を組み合わせることが基本です。内科医の視点からも、極端な食事制限や過度な運動はリスクが高く、長期的には逆効果になることがあります。科学的根拠に基づいた方法を取り入れ、自分に合ったペースで継続することが、健康的に体重を管理する最善の方法です。



