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近年、糖尿病予備軍と診断される人が急増しています。自覚症状がほとんどないため、知らぬ間に健康リスクが高まっているケースも少なくありません。本記事では、糖尿病予備軍を早期に発見し、進行を防ぐための内科的チェックリストを専門的な観点からご紹介します。生活習慣や検査数値の見直し、医師との連携を通じて、健康を守るための第一歩を踏み出しましょう。

1.糖尿病予備軍とは?その定義とリスクを理解する

糖尿病予備軍とは、正式には「境界型糖尿病」または「耐糖能異常」とも呼ばれ、糖尿病と診断されるには至らないものの、血糖値に異常が見られる状態を指します。空腹時血糖値が100~125mg/dL、または75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値が140~199mg/dLである場合、糖尿病予備軍と判定されます。

この状態は、糖尿病への進行リスクが非常に高く、適切な対処を怠ると5~10年以内に2型糖尿病へ移行する可能性があります。また、予備軍の段階でも血管障害が始まっていることがあり、心筋梗塞や脳卒中などの合併症リスクが上昇します。

【糖尿病予備軍の主なリスクファクター】

  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
  • 運動不足
  • 高脂肪・高糖質な食生活
  • 家族歴(親や兄弟に糖尿病患者がいる)
  • 高血圧・脂質異常症の既往
  • 加齢(特に40歳以上)

このような要因を持つ人は、血糖値が正常でも注意が必要です。医療機関での定期的な検査に加えて、自らの生活習慣を見直すことが不可欠です。

2.内科的チェックリストで自分のリスクを可視化しよう

糖尿病予備軍の予防には、日常の生活の中で自分の健康状態を把握することが重要です。以下に、内科医が推奨するチェックリストを示します。3項目以上該当する方は、一度医療機関での受診をおすすめします。

【糖尿病予備軍チェックリスト】

  1. 最近体重が増えた、またはBMIが25以上である
  2. ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上
  3. 1日30分以上の運動を週3回以上していない
  4. 野菜よりも肉類や揚げ物が多い食生活
  5. 清涼飲料水や間食(お菓子など)を毎日摂取する
  6. 就寝時間が不規則または睡眠時間が6時間未満
  7. 喫煙習慣がある
  8. 両親や兄弟姉妹に糖尿病患者がいる
  9. 健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された
  10. ストレスを強く感じる、またはストレス発散の方法がない

このチェックリストは、血糖値のみに依存せず、生活習慣や遺伝的背景も含めて総合的に判断することを目的としています。

【HbA1cとは?】

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1〜2ヶ月間の平均血糖値を反映する指標で、糖尿病の診断や治療効果の評価に用いられます。一般的に5.6%以下が正常、5.7~6.4%が糖尿病予備軍、6.5%以上で糖尿病と診断されます。

この数値が高い場合は、たとえ空腹時血糖が正常でも注意が必要です。

3.内科的アプローチによる予防と対策

糖尿病予備軍を食い止めるには、生活習慣の改善 × 医療の伴走が最も効果的です。内科では「測る→見直す→続ける」を軸に、無理なく結果が出る計画を一緒に作ります。

1. 定期的な血液検査とモニタリング

「数字を点ではなく、推移で追う」のがコツです。

  • 頻度の目安:3~6か月ごと(体重・生活が大きく変わる時期はやや短めに)
  • 主な項目:空腹時血糖、HbA1c、脂質(LDL/HDL/中性脂肪)、肝機能、腎機能、尿アルブミン、必要に応じてインスリン抵抗性(HOMA-IR)や75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)
  • 身体測定:体重・BMI・腹囲、血圧
  • 見方の例
    • HbA1cや空腹時血糖が前回より改善しているか
    • 体重や腹囲が緩やかに減少しているか
  • 自宅でできること:体重・歩数・就寝時刻をアプリや手帳で可視化。食後の眠気やだるさもメモして医師と共有すると調整がスムーズです。

2. 栄養指導と生活習慣改善のサポート

管理栄養士と具体的な「やり方」まで落とし込みます。

  • 食事バランス(お皿法)
    • 皿の1/2:野菜1/4:主食(全粒・雑穀・低GI)1/4:たんぱく質(魚・鶏むね・大豆)
  • ポイント
    • 主食は「白→茶色」へ(白米→雑穀米、食パン→全粒粉)
    • 食べる順番:野菜→たんぱく→主食(血糖の急上昇を抑える)
    • 間食の置き換え:甘い飲料をやめ、ナッツ・無糖ヨーグルト・チーズ少量へ
    • たんぱく質:目安は体重1.0~1.2g/kg/日(腎機能に応じて調整)
    • 食物繊維20~25g/日を意識(海藻・豆・きのこ・野菜)
    • タイミング:夕食は就寝2~3時間前まで、夜食は基本オフ
    • アルコール:量と頻度を管理(休肝日を設定)
  • 運動療法の併走:ウォーキング等の有酸素軽いレジスタンスをセットで(下記参照)
栄養管理

3. 運動療法

「きつい運動」より続く運動が勝ち。

  • 目標中等度の有酸素150分/週(速歩30分×5回)+筋トレ週2~3回
  • 始め方
    • 食後10~15分のゆる歩きを追加(血糖の上がりすぎを防ぐ)
    • 椅子スクワット・かかと上げ・プランクなど自宅メニュー
    • まずは座りっぱなし60分ごとに立つ(NEATの底上げ)
  • からだづくりの効果:筋肉量を保つと基礎代謝↑・ブドウ糖の取り込み↑で、血糖が安定しやすくなります。

4. 薬物療法

原則は生活改善が主役ですが、合併症やリスクが高い場合に補助輪として使うことがあります。

  • :肥満、家族歴、HbA1cが高止まり、脂肪肝や高血圧・脂質異常を合併 など
  • 選択肢メトホルミン(インスリン抵抗性の改善)を検討することがあります。
    • 腎機能・胃腸症状・長期ではビタミンB12低下に注意
  • 併存疾患の管理:血圧・脂質のコントロールは心血管リスク低減に直結(生活療法+必要に応じて薬)

※薬は医師と相談のうえで個別最適化。自己判断での開始・中止は避けましょう。

5. 行動療法と心理的支援

続ける仕組みをつくると、数字は自然に動きます。

必要に応じて心療内科・カウンセリングと連携

行動変容

SMART目標(具体・測定可・達成可能・関連・期限)で小さく始める

体重・歩数・就寝時刻・食事を見える化

できた日は自己肯定のメモ(脳のごほうび回路を活用)

心理面のケア

ストレス食い・夜間摂食にはマインドフルイーティング認知行動療法(CBT)

いびき・日中の強い眠気があれば睡眠時無呼吸の評価

4.糖尿病予備軍を防ぐには“意識改革”がカギ

最後に強調したいのは、糖尿病予備軍は「まだ病気ではない」ではなく、「今がチャンス」ということです。この段階で生活習慣を見直し、医師のアドバイスに従うことで、糖尿病の発症を防ぐことができるのです。

多くの患者が「症状がないから大丈夫」と放置してしまい、発症後に後悔する現実があります。逆に、予備軍の段階で取り組みを始めた人の多くが、正常値に改善し、健康を取り戻しています。

【今日からできる一歩】

  • 健康診断の結果を見直し、HbA1cや空腹時血糖に注目
  • 週に2〜3回の運動習慣を始める
  • 間食や夜食を減らす
  • ストレスコントロールの方法を身につける(深呼吸・瞑想など)

まとめ

糖尿病予備軍は、気づかないうちに進行しやすい「サイレント・リスク」です。しかし、正しい知識+内科的フォロー+日々の小さな行動で、発症リスクは着実に下げられます。数値を“点”でなく“推移”で追い、生活習慣を無理なく整えることが鍵です。

まずは定期チェックを習慣化

  • 3〜6か月ごとに 空腹時血糖・HbA1c・体重/腹囲・血圧・脂質 を確認。
  • 結果は合否ではなく「前回より良い方向か」で評価しましょう。

生活改善の優先ポイント(医師目線)

  • 体重:半年〜1年で体重の5〜7%減を目標(まずは−2〜3kgの小目標から)。
  • 運動:週150分の有酸素運動+週2回の筋トレ(速歩30分×5回/自重スクワット・プランクなど)。
  • 食事:主食は精製→全粒に置換野菜→たんぱく→主食の順で食べて血糖の急上昇を抑制。甘い飲料はゼロを基本に。
  • 生活:睡眠7時間前後、アルコールは量と頻度を管理、禁煙は最優先の血管ケア。

続ける仕組みを作る

  • 朝は水一杯+5分ストレッチ、昼は主食“小盛”、夜は就寝2〜3時間前までに。
  • 体重・歩数・食事をメモやアプリで見える化。家族や同僚と“宣言”すると継続率が上がります。
  • うまくいかない週があっても“やめない”ことが最重要。翌日からリスタートでOK。

医療との二人三脚

  • 合併症リスクや服用中の薬がある方は、必ず主治医に相談のうえで進めましょう。
  • 生活改善で不十分なときは、必要に応じて薬物療法も選択肢になります(専門医と相談)。

小さな改善を積み重ねれば、将来の糖尿病や心血管イベントのリスクを確実に下げられます。定期的なチェックと一歩ずつの生活改善を続け、自らの健康を守る主体になりましょう。