受診のご案内

肌荒れというと、多くの方はスキンケアや化粧品が合わなかったことを第一に思い浮かべるかもしれません。確かに、外的な要因も肌の状態に大きく影響しますが、実は「体の内側」に潜む内科的な問題が、肌トラブルの根本原因になっているケースも少なくありません。腸内環境の悪化、ホルモンバランスの乱れ、自律神経の不調など、肌は全身の健康状態を映し出す“鏡”のような存在です。
これらの要因が複雑に絡み合い、肌のバリア機能やターンオーバーに影響を与え、慢性的なニキビや乾燥、赤み、くすみなどを引き起こすことがあります。表面的なスキンケアをどれだけ頑張っても、内側の乱れが解消されなければ根本的な改善には至りません。
本記事では、肌荒れの裏に潜む内科的な原因を、腸内環境、ホルモンバランス、自律神経という3つの側面から詳しく解説。さらに、医学的な視点に基づいた具体的な対策や生活習慣の見直しポイントも紹介します。皮膚科的なケアと内科的なアプローチをバランスよく取り入れることで、肌の調子を整え、根本的な美肌改善を目指しましょう。
セクション①:腸内環境と肌の密接な関係
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、全身の健康を左右する重要な臓器です。最近では「腸内環境」と「肌」の関係にも注目が集まっています。実際、腸内環境の乱れは肌荒れの一因となることが数多くの研究で示されています。
腸内には100兆個以上の腸内細菌が存在し、善玉菌・悪玉菌・日和見菌という3つのバランスによって腸内フローラ(腸内細菌叢)が形成されています。善玉菌が優位な状態であれば、腸は栄養の吸収・免疫調整・有害物質の排出などをスムーズに行うことができます。しかし、食生活の乱れやストレス、抗生物質の使用などで悪玉菌が増えると、腸内環境は一気に悪化。これが全身の炎症や免疫異常を引き起こし、肌にも悪影響を及ぼすのです。
例えば、便秘が続くと腸内に有害物質が滞留し、それが血流に乗って全身を巡ります。この毒素は皮膚にも届き、ニキビや吹き出物、くすみなどの肌トラブルを引き起こします。また、腸内環境の悪化はビタミンB群やビタミンKの合成にも影響を及ぼし、皮膚のターンオーバーが乱れる原因となります。
対策としては、まず発酵食品(納豆、ヨーグルト、味噌など)や食物繊維(野菜、海藻、きのこ類)を意識的に摂取することが大切です。加えて、過度な加工食品や糖質過多を避けることで腸内の善玉菌をサポートできます。日々の食事が腸内フローラを整え、肌質改善につながることを意識しましょう。
専門ポイント:腸内環境と肌の関係を語るうえで重要なのは、「腸からの炎症性サイトカイン放出」が皮膚のバリア機能を損なうという事実です。皮膚科的アプローチだけでなく、内科的な腸ケアが肌質改善の鍵になります。
セクション②:ホルモンバランスの乱れが引き起こす肌荒れ
ホルモンは体内のさまざまな機能を調整する重要なメッセンジャーです。特に女性の場合、生理周期や妊娠、閉経といったライフステージの変化に伴い、ホルモンバランスが大きく変化します。このホルモンの変動が肌に及ぼす影響は非常に大きく、内科的な視点からのケアが必要になります。
代表的なのは「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の増加による皮脂分泌の活性化です。排卵後から月経前にかけてプロゲステロンが増加し、皮脂腺が刺激されることでニキビや吹き出物ができやすくなります。また、ストレスや不規則な生活によって副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が増加すると、皮膚のバリア機能が低下し、炎症や赤みが出やすくなります。
さらに、甲状腺ホルモンの異常(バセドウ病や橋本病など)も肌荒れの一因です。甲状腺機能が低下すると皮膚が乾燥しやすくなり、逆に過剰な場合は皮脂が増え、脂性肌になります。これらは内科的な診断と治療を要する疾患であり、単なるスキンケアでは改善が難しいケースです。
ホルモンバランスを整えるには、十分な睡眠、ストレス管理、バランスの取れた食事が基本となります。特にビタミンB6やマグネシウムはホルモン代謝に関与しており、これらの栄養素を含む食品(バナナ、ナッツ、魚介類など)を意識的に摂取するとよいでしょう。
専門ポイント:内科的アプローチでは、月経前症候群(PMS)や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの疾患が肌荒れの背景にある場合も考慮します。皮膚科と内科の連携が重要です。
セクション③:自律神経とストレスが肌に与える影響
現代社会では、多忙な生活や情報過多による「慢性的なストレス」が多くの人の健康を脅かしていますが、実はその影響は肌にも顕著に現れます。ストレスによって乱れる「自律神経」は、肌の血流や免疫機能、皮脂分泌に深く関わっており、肌荒れやニキビ、くすみ、乾燥などを引き起こす大きな要因となるのです。
自律神経は交感神経と副交感神経のバランスによって成り立っており、私たちの心身の働きを自動的に調整しています。日中や緊張状態では交感神経が優位になり、リラックス時や睡眠中は副交感神経が優位になります。しかし、仕事や人間関係、育児などによる精神的ストレスや、夜型生活、過労、カフェインの過剰摂取などによってこのバランスが崩れると、交感神経が過剰に働き、身体が常に「緊張モード」に陥ります。
この状態が続くと、血管が収縮し、肌への血流が低下。肌に必要な栄養や酸素が十分に行き渡らなくなり、ターンオーバーの乱れや乾燥、くすみ、炎症を引き起こす原因となります。また、ストレスにより副腎皮質から分泌される「コルチゾール」が増加すると、皮脂の分泌が過剰になったり、免疫力が低下したりして、ニキビや赤み、かゆみなどのトラブルが出やすくなります。
さらに、自律神経の乱れは「睡眠の質」にも直結します。特に深い眠り(ノンレム睡眠)が不足すると、肌細胞の修復・再生がスムーズに行われず、肌のバリア機能が低下。小さな刺激にも敏感に反応しやすくなり、慢性的な肌荒れを引き起こす一因となります。
こうしたトラブルを防ぐには、自律神経を整えるための「生活リズムの見直し」が非常に重要です。毎朝決まった時間に起床して太陽の光を浴びることで、体内時計が整い、自律神経のバランスが回復しやすくなります。夜はスマートフォンやパソコンの使用を控え、ブルーライトを避けることも有効です。
また、心身の緊張を和らげるために、深呼吸や瞑想、アロマテラピー、軽いストレッチやヨガ、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるといったリラックス法を日常に取り入れるのもおすすめです。これらは副交感神経を優位にし、睡眠の質向上や肌の回復力を高めてくれます。
専門ポイント:内科的な視点では、「自律神経失調症」と診断される方の多くが、肌トラブルや慢性的な不調を訴えています。また、ストレスが強い場合には「心身症」として、心療内科のアプローチが必要になることもあります。ストレスと肌の関係は“気のせい”ではなく、医学的にも明確な根拠があるため、肌の不調が続く場合は心理面のケアやメンタルヘルスの見直しも重要です。

【まとめ:肌荒れの根本改善は“内側”から】
肌荒れは、単なるスキンケアの問題ではなく、体の内部に潜む「健康の乱れ」のサインであることが多くあります。腸内環境の悪化は毒素や炎症性物質の生成を引き起こし、ホルモンバランスの乱れは皮脂分泌や皮膚のターンオーバーに影響を及ぼし、自律神経の不調は血流や免疫機能にまで悪影響を与えます。これらの要因が組み合わさることで、肌荒れは慢性化しやすくなり、なかなか改善しない厄介な状態に陥ってしまうのです。
だからこそ、肌荒れ対策においては「内側からのアプローチ」が極めて重要です。発酵食品や栄養バランスのとれた食事で腸内フローラを整え、十分な睡眠とストレス管理でホルモンと自律神経を安定させるなど、日々の生活習慣を見直すことが肌の根本改善につながります。
また、肌のトラブルが長引く場合には、皮膚科だけでなく、内科的な検査や治療も視野に入れるべきです。特に女性はホルモンの変化が肌に顕著に現れるため、専門的な診断を受けることが重要です。
美しい肌は、健やかな体と心があってこそ育まれるもの。本記事をきっかけに、内科的な視点から肌荒れの原因と向き合い、体の中から肌を整える習慣を始めてみてはいかがでしょうか?



