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腹痛 女性

便秘と下痢が交互に繰り返される症状に悩む方は少なくありません。これらは一見、正反対の症状に見えますが、実は同じ消化器のトラブルが原因で起こることも多いのです。本記事では内科の専門知識を基に、便秘と下痢の同時発症のメカニズムから効果的な対策法までを詳しく解説します。適切な対処法を知ることで、腸内環境の改善と健康維持につなげましょう。

1. 便秘と下痢が同時に起こる原因とは

便秘と下痢は、一見すると正反対の症状ですが、両方が同時、あるいは交互に現れるケースは決して珍しくありません。このような状態は「交替性便通異常」と呼ばれ、特に過敏性腸症候群(IBS)が代表的な原因として挙げられます。

過敏性腸症候群(IBS)とは

IBSは、腸の働きが何らかの原因で過敏になり、正常な消化・排便リズムが乱れる状態です。炎症や器質的な異常は認められず、機能的な問題が主な特徴。ストレスや生活習慣、腸内環境の乱れが複合的に影響し、便秘や下痢、腹痛などの症状を引き起こします。

腸の運動機能の乱れ

正常な腸は、便を適度に押し出す「ぜん動運動」と便の水分を調整する機能がバランスよく働いています。しかし、腸の運動が過剰になると便が早く通過し水分が吸収されにくいため下痢に、逆に運動が低下すると便が長く腸内に留まり水分が過剰に吸収されて便秘になります。IBSでは、この運動機能が不安定で、便秘と下痢が交互に起こりやすくなります。

腸内環境の乱れ(腸内フローラのバランス異常)

腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスを保ちながら共存しています。腸内フローラが乱れると消化吸収に影響を及ぼし、腸の粘膜を刺激して運動異常や分泌異常を招くため、便秘や下痢を引き起こします。抗生物質の使用や偏った食生活、ストレスなどが原因となることが多いです。

食事の影響と過敏性反応

特定の食材に対する過敏性やアレルギー反応も、便秘と下痢の交互発症に関係します。例えば、乳糖不耐症や果糖吸収不良症などの消化吸収障害は、下痢を引き起こす一方、腸の炎症や機能低下により便秘も生じやすくなります。

その他の病気の可能性

便秘と下痢が同時に起こる症状は、IBS以外にも炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、腸の狭窄や腫瘍、甲状腺機能異常、糖尿病など内科的疾患が隠れている場合があります。症状が長引く場合は、自己判断せず医療機関での診断を受けることが重要です。

2. 生活習慣と食事でできる便秘・下痢対策

便秘と下痢が同時に、あるいは交互に起こる場合、生活習慣や食事の見直しが非常に重要です。薬に頼る前に、日常生活の中でできることを一つひとつ改善することで、腸の機能を整え、症状の軽減につなげることができます。

規則正しい生活リズムを整える

腸の動き(ぜん動運動)は、自律神経によってコントロールされています。特に副交感神経が優位になると腸が活発に動き、排便が促進されます。睡眠不足や不規則な生活はこの自律神経のバランスを崩し、便秘や下痢を引き起こす原因になります。

  • 毎朝同じ時間に起きて朝食を摂る
    朝食は胃腸に刺激を与え、腸のぜん動運動を促します。「朝食を食べる → 腸が動く → 便意が起こる」という自然なリズムが形成されます。
  • 睡眠をしっかりとる(目安:7時間以上)
    睡眠中は腸の修復・調整が行われるため、腸内環境の正常化に役立ちます。特に深い睡眠をとることで副交感神経が優位となり、腸がリラックスした状態で働くようになります。
  • 適度な運動を習慣化する
    ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、腸の動きを刺激し、ガスや便の停滞を防ぎます。特に便秘傾向の方には有効ですが、下痢傾向の方にもリラックス効果や自律神経の安定につながるため、両方の対策に有効です。

食物繊維の摂り方に注意

食物繊維は便通を整えるために不可欠ですが、「摂り方」が重要です。便秘と下痢が混在している人は、食物繊維の種類と量を誤ると、かえって症状を悪化させることがあります。

  • 水溶性食物繊維を中心に摂る
    水溶性食物繊維は、腸内でゲル状になり便の水分バランスを調整します。便を柔らかくしつつ、下痢を抑える働きもあります。代表的な食品には、オートミール、納豆、海藻類(わかめ・ひじき)、果物(バナナ・りんご)などがあります。
  • 不溶性食物繊維は摂りすぎに注意
    不溶性食物繊維(ごぼう、さつまいも、豆類、玄米など)は腸を刺激し、排便を促す働きがありますが、便秘の状態で無理に摂ると、腸内に便が溜まったまま固くなり、腹部膨満感やガスの発生を悪化させることがあります。

腸内環境を整える食材の活用

腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラを健全に保つことは、便秘・下痢双方の予防につながります。

  • 発酵食品の摂取
    ヨーグルト、キムチ、味噌、ぬか漬けなどは乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を多く含み、腸内環境の改善に役立ちます。特に毎日少量ずつ継続的に摂ることが大切です。
  • オリゴ糖の活用
    善玉菌のエサになるオリゴ糖は、玉ねぎ、ごぼう、バナナなどに含まれています。腸内で善玉菌の増殖を助け、腸のバランスを整えるサポートをします。
  • 水分補給をしっかりと
    特に便秘傾向が強い場合、便が硬くなって排便困難になることが多いため、こまめな水分補給が重要です。ただし、冷たい水を一度に大量に飲むと腸を刺激して下痢を招くことがあるため、常温の水をこまめに摂るのが理想です。
水分補給 女性

ストレスの管理

ストレスは腸に直接影響を与える「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」という関係が近年注目されています。強いストレスや緊張は自律神経の乱れを引き起こし、腸の動きやホルモン分泌に悪影響を与えます。

  • リラックス法を取り入れる(瞑想・深呼吸・入浴)
    自律神経を整えるには、短時間でもよいので、意識的に体と心をリラックスさせる時間を作ることが大切です。
  • スマホ・PCの使いすぎに注意
    特に寝る前のブルーライトは交感神経を優位にし、睡眠の質を落とす原因になります。良質な睡眠が取れないと、腸の働きも悪化します。

3. 医療機関での適切な検査と治療のすすめ

便秘と下痢が交互に現れる症状は、軽視されがちですが、継続する場合や日常生活に支障をきたすようであれば、専門的な診断と治療が必要です。市販薬や自己流の対処だけでは、原因が見落とされる恐れがあります。

医師による詳細な問診と診察

医療機関ではまず、便の状態や頻度、症状が始まった時期、悪化要因、食習慣や生活背景について詳細に問診が行われます。さらに、腹部の視診・触診・聴診などを通じて、腸の緊張やガス貯留、異常な音などを確認します。

血液検査・便検査・画像診断

便秘・下痢が交互に起こる場合、隠れた病気の有無を調べるため、**血液検査(炎症反応、貧血、甲状腺機能など)便検査(潜血、細菌・ウイルス、消化酵素)を実施します。さらに、必要に応じて腹部エコー、X線、内視鏡(大腸カメラ)**などの画像検査も行われます。

特に以下のようなケースでは、早急な精密検査が推奨されます:

  • 血便や便の色の異常(黒色便など)がある
  • 急激な体重減少が見られる
  • 夜間の下痢や痛みがある
  • がん家系の既往がある

これらは、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)や大腸がんなどの重大な疾患のサインである可能性があり、早期発見が鍵となります。

内科的治療と薬剤の適切な使い分け

診断結果に基づき、医師は症状に応じた治療を提案します。過敏性腸症候群が原因であれば、消化管の運動を調整する薬剤やストレス緩和のための薬(抗コリン薬、整腸剤、抗不安薬など)が用いられることがあります。腸内環境の改善にはプロバイオティクス(善玉菌製剤)も有効です。

一方で、下痢止めや下剤などを自己判断で使用すると、かえって腸の動きが混乱し、症状が長引く原因になることも。医師の判断による的確な薬剤選択と使用量の調整が非常に重要です。

生活指導と継続的フォローアップ

内科では、薬物療法に加えて、食事・運動・ストレス対策などの生活指導も丁寧に行います。患者一人ひとりの生活スタイルに合わせたアドバイスにより、症状の再発を防ぎ、長期的な体調管理を実現します。

また、慢性的な症状の場合は、定期的な通院とフォローアップにより、変化を見逃さずに対応できる体制を整えることが望ましいです。