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近年、「生活習慣病」と総称される疾患群――例えば高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症など――は、初期には明確な自覚症状がほとんどなく、気づかぬうちに進行してしまうという性質を持っています。
しかしながら、これらを専門の内科診療で早期に発見し、適切に管理・治療を行うことで、心筋梗塞・脳卒中・腎不全などの深刻な合併症への進展を抑えることが可能です。
本記事では、内科で治療する生活習慣病に焦点を当て、最新の医療知見・診療ガイドライン・治療戦略・生活改善のポイントを包括的にご紹介します。専門的知見も交えながら、医療の視点から「いま知っておきたい」内容をまとめました。
1. 生活習慣病とは何か:定義・背景・変化
1‑1 定義と代表疾患
「生活習慣病」とは、主に食事・運動・喫煙・飲酒・睡眠・ストレスなどの 生活習慣の不良 が関与し、発症・進展する疾患群を指します。
代表的なものとしては以下があります:
- 高血圧症
- 2型糖尿病
- 脂質異常症(高LDLコレステロール・高中性脂肪)
- 高尿酸血症・痛風
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など
これらはそれぞれ単独で存在するだけでなく、しばしば 併存・相互増強 の関係を持ち、メタボリックシンドロームという概念とも重なります。
1‑2 なぜ「内科」の診療が重要か
多くの生活習慣病は初期段階では自覚症状に乏しく、「気づかない」まま進行するケースが少なくありません。
そのため、内科の医師が定期的な問診・検査・生活指導・薬物治療を通じて管理を行うことが、深刻な合併症(心血管疾患・腎疾患など)を予防するうえで非常に重要です。
1‑3 最近の変化・新たな視点
最近では、例えばCOVID‑19(新型コロナウイルス感染症)の影響で、在宅時間の増加・運動量の低下・間食やアルコール摂取の増加などが報告され、生活習慣病リスクへの影響が改めて注目されています。
さらに、デジタル技術を活用したリスク予測・モニタリング(「心臓年齢」など)も登場しつつあり、医療・予防の実践に新たな可能性が広がっています。
2. 内科での診断・スクリーニング:早期発見の鍵
2‑1 定期検査・スクリーニング項目
内科診療において、生活習慣病リスクを把握・早期発見するために以下の検査・指標が有効です。
- 血圧測定(収縮期・拡張期)
- 空腹時血糖・HbA1c(糖尿病・糖代謝異常の指標)
- 血中脂質(LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪)
- 腹囲・体格指数(BMI)・体脂肪率(メタボリック関連)
- 腎機能・肝機能・尿酸値など(合併症リスク評価)
早期に異常が認められた場合、専門的な生活習慣改善・内科治療に移行することが望まれます。
2‑2 内科的問診・生活習慣の把握
問診では、食事内容・塩分・糖質・脂質の過剰摂取、運動習慣、喫煙・飲酒の頻度、睡眠・ストレス状況などを詳細に把握します。これにより「生活習慣病になりやすい背景」が浮き彫りになります。
また、家族歴(親兄弟に心血管疾患、糖尿病があるか)も加味され、より個別化された診断・予防戦略が立案されます。
2‑3 リスク評価と内科的対応の流れ
内科では、スクリーニングで異常が認められた場合、以下の流れで対応がなされることが一般的です。
- 生活習慣の見直し(食事・運動・睡眠・ストレス)
- 再評価・モニタリング(数か月単位)
- 必要があれば薬物療法の検討・開始
- 合併症(心血管・腎・肝)対策や他科紹介も含めた総合管理
このプロセスを内科が中心となってコーディネートすることが、合併症予防・QOL維持の観点から重要です。
3. 治療・管理の最新トレンド:内科診療で押さえるべきポイント
3‑1 生活習慣改善(食事・運動・その他)
食事療法:医学的根拠に基づく具体的戦略が出されています。例えば、1日あたりの塩分摂取量の目安は男性7.5 g未満、女性6.5 g未満、さらには6 g以下が理想ともされています。
また、低GI食品、食物繊維豊富な野菜・海藻・きのこ、大豆製品などの導入も、血糖・脂質・内臓脂肪の観点から有効とされます。
運動療法:中強度有酸素運動(週150分以上)や筋力トレーニング、柔軟運動を組み合わせることが推奨されており、内科でも実践支援が重要です。
例えば、ウォーキング・自転車・水中歩行等を毎日10分からスタートし、徐々に頻度・時間を増やす継続可能なプランが推奨されます。
その他の生活因子:良質な睡眠・ストレスマネジメント・禁煙・適度な飲酒なども、生活習慣病の進展抑制には不可欠です。特に喫煙や睡眠時無呼吸症候群(SAS)は動脈硬化リスクを増大させるため、内科での評価・介入が重要です。
3‑2 薬物療法の進展と内科的役割
生活習慣改善だけでコントロールが不十分な場合、内科における薬物療法が併用されます。最近のトレンドとして注目すべき点は以下の通りです。
- 高血圧治療薬(ARB、Ca拮抗薬、利尿薬など)→血管・腎臓保護の観点からも選択される。
- 糖尿病治療薬:従来のインスリン・SU薬に加え、例えばSGLT2阻害薬は体重減少・心腎保護効果も確認されており、内科診療においても採用が増えています。
- 脂質異常症治療薬:スタチン系に加え、EPA製剤やPCSK9阻害薬などが注目されており、内科では動脈硬化予防の観点から積極的に検討されます。
- 高尿酸血症:フェブキソスタット、アロプリノールなどを用いた尿酸低下療法が、痛風発作予防のみならず、腎・心血管リスク軽減の観点でも議論されています。
薬物療法を開始した後も、内科では モニタリング(血圧・血糖・脂質・腎機能・肝機能など)や 副作用管理 を継続的に行う責任があります。誤った自己判断での中断・変更は禁物です。
3‑3 合併症予防・進展抑制の観点から
生活習慣病が長期間コントロール不良であると、動脈硬化・腎症・網膜症・神経障害・脂肪肝・認知機能低下といった重篤な合併症に至るリスクが高まります。
内科では、こうした合併症を未然に防ぐために、以下の対策が重要です。
- 定期的なフォローアップ:血管・腎・肝・眼・神経など関連領域へのチェック
- リスク因子の包括的管理:例えば肥満・喫煙・睡眠時無呼吸症候群なども内科で検討・紹介が必要です。
- 患者教育・セルフマネジメント支援:内科医は単に薬を出すだけではなく、患者自身が生活習慣を長期にわたって維持できるよう支援する役割があります。

4. 最新研究・内科診療の今後の方向性
4‑1 デジタル時代のリスク予測・モニタリング技術
最近では「心臓年齢」など、生物学的な年齢指標を通じて心血管リスクを可視化するツールが登場しています。
こうしたツールは、患者自身の「危機意識」を高め、内科医との生活習慣改善の対話を促す契機になり得ます。ただし、まだ完全に臨床に標準化されているわけではなく、医師の判断と合わせて使う必要があります。
また、機械学習/人工知能を使った発症予測モデルについての研究も進展しており、将来的には内科診療の“個別化”がさらに進む可能性があります。
4‑2 新しい治療戦略・内科のチャレンジ
医療ガイドラインや治療戦略も日々更新されており、例えばSGLT2阻害薬・GLP‑1受容体作動薬の心腎保護効果の拡大や、脂質異常治療のターゲット値見直しなどがあります。内科医はこれらをアップデートしながら、個別患者に応じた戦略を構築しなければなりません。
また、内科診療における“多職種連携”(栄養士・理学療法士・薬剤師・看護師)と、“長期フォローアップ”の重要性が、改めて認識されています。
4‑3 日本における社会的背景・制度的視点
日本では高齢化が進み、生活習慣病の予防・管理・治療が医療費削減・健康寿命延伸という観点からも重要視されています。内科医が、地域医療・プライマリケアの枠で生活習慣病を包括的に扱う体制づくりが加速しています。
例えば、オンライン診療の活用や定期検査・フォローアップを効率化する仕組みも、実践が広がっています。
5. 患者さん向け:内科で受けるべき治療・管理の実践ポイント
5‑1 受診するタイミングと内科での相談内容
- 健診で「要再検査」や「異常あり」と指摘されたら、すぐに内科受診を検討してください。初期段階での介入が進行を防ぎます。
- 健診前後に「最近運動できていない」「間食が増えた」「体重が増えている」「血圧が少し高めと言われた」などの変化があれば、内科で早めの相談がおすすめです。
- 相談の際には、普段の食事・運動・飲酒・睡眠・ストレス・家族歴などを整理しておくと、内科医との対話がスムーズになります。
5‑2 内科での治療を継続するためのコツ
- 定期受診と検査結果のフォローをきちんと続けること。自覚症状がなくても、数値や血管・臓器の状態は進行している場合があります。
- 生活習慣改善を「一時的」ではなく「継続的」に行うことが重要です。内科医・医療スタッフと計画を立て、具体的な目標(例:週150分運動、塩分6g以下、体重‑5 %等)を設定しましょう。
- 薬物治療を開始した場合、自己判断で中断せず、内科医の指示に従って継続・副作用チェックを行ってください。
- 内科医だけでなく、栄養士・理学療法士・薬剤師といった多職種のサポートを活用しましょう。地域の内科クリニックでは、こうした連携を実施しているところも増えています。
5‑3 日常でできる具体的セルフケア
- 食事:加工食品や外食の頻度を減らし、自炊中心で野菜・豆類・魚介・玄米・全粒粉パンなど低GI・高食物繊維の食品を意識する。塩分は「梅干1個」「干物1枚」「たくあん3切れ」などを控えるだけでも、約2 gの減塩効果があります。
- 運動:まず1日10分から始め、ウォーキング・階段利用・自転車・ストレッチなどを組み合わせ、週3~5日、合計150分を目標に。筋力トレーニングも週2回ほど取り入れるとよいでしょう。
- 睡眠・ストレス:毎日同じ時間に寝起きし、7時間以上の睡眠を確保。ストレスが多い時には散歩・深呼吸・軽い運動・趣味の時間を設ける。
- 禁煙・飲酒:喫煙は動脈硬化を加速させる重大な因子です。飲酒は適量(日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン2杯程度)を目安に。
まとめ
「生活習慣病」は、単なる“歳を取るから起きる病気”ではなく、日々の生活習慣に端を発し、いかに“内科で早期発見・継続管理”できるかが鍵です。自覚症状が乏しいだけに、内科での定期的な診療・検査・生活習慣改善・薬物療法のトータルマネジメントが不可欠です。最新の医療知見やデジタル技術の進展を活用しつつ、個々の患者さんに合わせた「内科での戦略」を立てることが、健康寿命を延ばす上で非常に重要です。
あなた自身の生活と数値を見直し、適切な内科受診・継続治療の第一歩を踏み出しましょう。



