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医者

年末年始は、忘年会・新年会、帰省、普段と異なる生活リズムといった要因が重なり、胃腸、心血管、代謝、呼吸器、免疫など多方面で「普段以上」に体に負荷がかかりやすい時期です。特に内科領域では、急性胃腸炎、心筋梗塞、高血圧発作、糖尿病の悪化、風邪・インフルエンザ、腎機能悪化などさまざまな健康リスクが顕在化しやすくなります。本記事では、年末年始に注意すべき主な内科的健康リスクを、医学的根拠と臨床経験を交えながら解説し、具体的な予防・対策法をお伝えします。暮らしを楽しみつつ、健康リスクを抑えるための“知識の備え”としてお役立てください。

1. 暴飲暴食と胃腸・消化器のリスク

食べ過ぎ・飲み過ぎがもたらす胃腸への負荷

年末年始というタイミングは、忘年会・新年会、親族との集まり、帰省先での“もてなし料理”など、普段よりも食卓が豪華になりやすく、食べ過ぎ・飲み過ぎの機会が増えます。この過剰な摂取行動が、胃腸・消化器系に対して以下のようなリスクを引き起こします。

胃・食道への影響

・胃酸分泌刺激:脂肪分・刺激物(辛味、アルコール、炭酸飲料など)の多量摂取は胃酸分泌を過剰に促します。結果として、胃粘膜の炎症(急性胃炎)、逆流性食道炎の悪化を誘発する可能性があります。
・胃拡張と蠕動低下:大量の食事により胃が拡張すると、蠕動運動(胃腸の動き)が抑制されやすくなります。消化不良、腹部膨満感、吐き気、食後の不快感などを引き起こします。
・消化酵素負荷:特に脂質分解酵素(膵酵素、胆汁酸)は過度な負荷を受けやすく、膵臓や胆道に問題を抱えている人では急性膵炎や胆石発作を誘発するおそれがあります。

腸・下部消化管への影響

・下痢・便秘の増加:油脂やアルコール、刺激性の高い食品は腸の蠕動異常を招き、下痢を誘発したり一方で便秘を助長したりします。特に普段便秘しがちな人は、生活リズムが乱れることで排便リズムが崩れやすくなります。
・腸内細菌バランスの崩壊:暴飲暴食や高脂肪・高糖質食、アルコール過剰は腸内フローラ(腸内細菌叢)を乱すことがあります。善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、下痢、ガス、膨満感、炎症性腸症状などが発現しやすくなります。
・ナル症候群・腸管過敏症の誘発:過度な食事の乱れは、腸過敏症(過敏性腸症候群)の症状増悪のトリガーになることがあります。

予防と対策法

  1. 少量頻回・分割食:一度に大量に食べずに、少量ずつ回数を分けて食べるよう心がけます。胃腸の負荷を軽くし、消化の効率を上げる効果があります。
  2. 脂肪・刺激物の抑制:特に脂質(揚げ物、バター、ラードなど)は控えめにし、香辛料、炭酸、アルコールは適量にとどめます。
  3. 食後の休息と軽い運動:食後はすぐに横にならず、できればゆっくり歩く程度の軽運動(消化促進に有効)を取り入れましょう。ただし負荷の大きい運動は逆効果なので避けてください。
  4. 水分補給・発酵食品・食物繊維:水分や発酵食品(ヨーグルト、漬物、味噌など)、食物繊維(野菜・海藻・果物など)を意識的に摂ることで、腸内環境を整える助けになります。
  5. 食前・食間のプロバイオティクスや整腸剤(医師指導下で):腸内細菌をサポートする整腸剤やプロバイオティクスの利用は、過度な乱れの予防に有効なことがあります。ただし、持病がある人や薬剤使用歴のある人は、担当医と相談のうえで使用してください。
  6. 早めの対処:胃痛、腹痛、持続する下痢、嘔吐、血便、体重急減などの異常があれば、速やかに医療機関を受診することが重要です。

このように、年末年始の食行動の乱れは胃腸・消化器に直接影響を及ぼし、見過ごすと急性疾患にも発展し得ます。だからこそ、予防と自己モニタリングが鍵になります。

2. 心血管・循環器系リスク:高血圧・狭心症・心筋梗塞

年末年始に増える心血管イベント

年末年始は「寒気」「ストレス」「飲酒」「睡眠不足」などが重なり、心血管系にとって非常に負荷の高い時期です。臨床では、年の瀬から新年にかけて心筋梗塞や脳卒中の発生がやや増加する傾向があるとの報告もあります(疫学的傾向)。これらの要因を理解し、注意すべき点と対策を押さえておきましょう。

主なトリガー因子とメカニズム

  1. 寒冷刺激・交感神経亢進
     寒さは末梢血管を収縮させ、血圧を上昇させる圧力負荷を増大させます。また交感神経が刺激され、心拍数の増加や収縮力の亢進が起きやすく、これが冠動脈や末梢血管に対するストレスとなります。
  2. アルコールと脱水
     過度の飲酒は血管拡張や脱水、心拍変動、電解質異常などを引き起こしやすく、心房細動の誘発や不整脈リスクを高めます。また、利尿作用による脱水は血液粘性を上げ、血栓形成のリスクを高める可能性があります。
  3. ストレス・興奮・過労
     年末年始は心労、準備作業、対人関係の緊張、移動疲れなどストレス源が増え、それに伴う交感神経の興奮や血圧上昇が起こり得ます。
  4. 睡眠不足・不規則な睡眠
     睡眠の質・量が低下すると、夜間の自主的降圧(血圧の自然低下)が妨げられ、昼夜を通じて高血圧状態が継続し、血管負荷・内皮障害を引き起こす要因になります。
  5. 塩分・水分の変動
     おせち料理、漬物、加工食品など塩分量の多い食事が増えるほか、アルコール・脱水などで体内水分バランスが崩れると、血圧変動を誘発しやすくなります。

代表的な心血管トラブル

  • 高血圧発作:血圧が急激に上昇し、頭痛、動悸、めまい、肩こり、出血傾向(眼底出血など)を引き起こすことがあります。
  • 狭心症・不安定狭心症:冠動脈の負荷が過度になると狭心症症状が出やすく、特に既往のある方は注意が必要です。
  • 心筋梗塞:血管壁に進展していたプラークが破綻し、血栓を形成しやすい条件が重なると、急性心筋梗塞の発症リスクが上がります。
  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血):高血圧状態・血液粘性亢進・循環動態異常は、脳血管にもリスクを及ぼします。
  • 心房細動・不整脈:電解質バランスの乱れ、飲酒、交感神経刺激は不整脈の誘因になります。

予防とセルフケアの指針

  1. 寒さ対策・保温
     外出時は防寒着や手袋・マフラーなどで体を冷やさないようにし、特に高齢者・持病ありの方は屋外と屋内の温度差(ヒートショック)にも注意が必要です。
  2. 節度ある飲酒
     アルコールは適量にとどめ、飲酒中・後の水分補給を忘れずに。利尿作用で脱水にならないよう注意しましょう。
  3. 規則正しい睡眠・休息
     就寝時間・起床時間を可能な範囲で整えるよう努め、睡眠環境(温度・湿度・静穏性)にも気を配ります。
  4. 塩分・水分バランスの管理
     食品の塩分量に注意し、無理なく適度な摂取に。飲料水や水分の補給もこまめに行いましょう(特にアルコールや利尿性食品をとる場合は注意)。
  5. 軽度運動・ストレッチ
     無理のない範囲で、散歩やストレッチ、深呼吸などを取り入れて血行を促進します(ただし発症リスクが高い人は医師指導下で実施)。
  6. 自己血圧モニタリング
     高血圧あるいは心血管病既往歴のある方は、家庭血圧計等で複数回/日測定して異常時は早めに受診判断を。
  7. 適時の医療受診
     胸痛、息切れ、動悸、眩暈、強い頭痛、片麻痺、言語障害などの症状が出たら、ためらわずに救急受診が必要です。

年末年始は心血管系にとって非常に挑戦の多い季節です。日常的な予防策を意識し、異変を感じたら速やかに行動することが安全を保つ鍵となります。

医療

3. 代謝・内分泌リスク:糖尿病・脂質異常・腎機能への影響

食生活・運動不足が誘発する代謝異常

年末年始は食生活が乱れやすく、運動量が激減することで代謝系に対する負荷が増加します。とくに糖尿病や脂質異常症、腎機能低下を抱える人にとっては状態悪化のリスクが高まるため、慎重な管理が求められます。

糖尿病・高血糖リスク

過剰な炭水化物・糖質摂取:お餅・お菓子・ジュースなど甘味食品の摂りすぎは急激な血糖上昇を招き、インスリンの需要を過度に高めます。普段からインスリンを使っている患者では、用量調整が難しくなることがあります。
運動不足・安静傾向:日中の移動が減り、家に閉じこもる時間が増えると、筋肉のグルコース取り込みが低下し、インスリン抵抗性が上がる傾向があります。
ストレス・ホルモン反応:ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリンなど)の分泌が上がると、糖新生や血糖上昇を促進する作用が働き、血糖コントロールを乱しやすくなります。
飲酒・肝負荷:アルコール摂取は肝臓代謝を乱し、低血糖や高血糖を誘発することがあります。肝機能が関係する糖代謝異常のトリガーになり得ます。

脂質異常・肝機能への影響

・高脂肪食の常態化:揚げ物・脂肪分の高い料理が続くと、トリグリセリド(中性脂肪)やLDLコレステロールが上昇しやすく、動脈硬化リスクを押し上げます。
・飲酒・アルコール性肝障害:頻繁かつ過度な飲酒は肝脂肪変性(脂肪肝)や肝炎、さらには肝機能異常を引き起こす可能性があります。これにより、脂質代謝異常がさらに進行する恐れがあります。
・インスリン抵抗性の増強:高脂肪・高糖質の食事の継続は脂肪組織から分泌されるアディポカインなどに影響し、インスリン抵抗性を高める方向に働きます。

腎機能・電解質異常リスク

・脱水・濃縮尿:アルコールや利尿性食品(コーヒー、アルコール類など)の摂取が増えると、脱水傾向になることがあります。これが濃縮尿を招き、腎血流低下、腎機能へのストレスを増加させます。
・塩分・水分負荷:塩分過多と水分摂取の急激な変動は腎に対する負荷を高めます。高血圧の増悪や浮腫、腎機能悪化を招くことがあります。
・電解質異常:利尿作用食品・薬(カフェイン含有飲料、アルコール)などの多量摂取はカリウム、ナトリウム、マグネシウムといった基本電解質バランスを乱す可能性があります。特に腎機能が低下している人は致命的な電解質異常を生じ得ます。

予防策と管理の実務ポイント

  1. 食事設計と血糖管理
     糖質コントロール(低GI食品、複合炭水化物、食物繊維併用)を意識し、甘味・砂糖類は節度を守るようにします。インスリン投与中・経口血糖降下薬使用中の人は、食前血糖値やインスリン量・服薬タイミングの調整を、主治医と事前に相談しておきましょう。
  2. 適度な運動の継続
     無理のない範囲で歩行・ストレッチ・簡易な体操を継続的に行うようにします。特に食後1時間程度の軽い運動は、血糖降下作用を助ける効果があります。
  3. 飲酒・肝機能の配慮
     アルコール量を抑えるとともに、肝負荷を考慮した食事選び(過度な脂肪・糖質の濃縮食品を避ける)も重要です。肝機能異常がある人は、医師の指導に従った飲酒制限を徹底してください。
  4. 水分補給と脱水予防
     アルコールや利尿性飲料をとる際は、相応の水分補給を心がけて、腎血流の維持と濃縮尿を防ぎます。
  5. 定期モニタリング
     血糖値、HbA1c、肝機能(AST/ALT/γ‑GTPなど)、腎機能(eGFR、クレアチニン、尿蛋白など)、脂質プロファイル、電解質などは、年末年始の前後でチェックできるよう調整できれば安心です。
  6. 注意すべき異常兆候
     頻回の高血糖(多飲・多尿・倦怠感)、低血糖発作、むくみ、蛋白尿、倦怠感・黄疸など肝腎機能異常を示唆する症状が出たら速やかに医療機関で評価を受けましょう。

代謝・内分泌系は沈黙的に進行しがちですが、年末年始の“乱れた生活”はこれらのバランスを一気に崩しやすい時期です。特に既往歴を持つ方は、予防管理を怠らないことが肝要です。

4. 免疫・呼吸器・感染リスク:風邪・インフル・肺炎など

年末年始の感染リスク上昇要因

寒さが厳しくなる冬期、室内滞在時間の長期化、帰省・旅行による人の流動性、飲み会・親族来訪などの多人数接触、疲労・ストレス・睡眠不足・栄養状態の悪化といった要因が重なり、免疫機能が低下しがちになります。このような状況下では、風邪、インフルエンザ、肺炎、RSウイルス、ノロウイルス、胃腸ウイルスなどの感染性疾患が発症・流行しやすくなります。

典型的な感染症とそのリスク

  • 風邪(ウイルス性上気道炎):くしゃみ、鼻水、喉の痛み、咳、発熱など。通常軽症ですが、高齢者・心肺疾患・糖尿病患者では気管支炎・肺炎への進展が懸念されます。
  • インフルエンザ:高熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感、咳・呼吸器症状を伴うことが多く、重症化・合併症(肺炎、心筋炎など)を起こすリスクがあります。
  • 肺炎(細菌性・ウイルス性):インフルエンザや風邪後、気道防御力が低下した際に起こりやすく、特に高齢者や基礎疾患を持つ人は注意が必要です。
  • ノロウイルス・ウイルス性胃腸炎:帰省・旅行先・飲食の場での接触機会や調理環境の変化で感染リスクが上がります。下痢・嘔吐を主症状とし、高齢者・乳幼児では脱水リスクも伴います。
  • RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、コロナウイルスなど:冬期は複数の呼吸器ウイルスが流行するため、重複感染や重症化しやすい環境になります。

免疫力低下のメカニズム

  1. 睡眠不足・ストレス:睡眠が不足すると、免疫調整に関わるサイタカイン(例:インターロイキン、インターフェロンなど)の産生が低下し、免疫応答が低下します。
  2. 栄養不良・偏食:アルコールや高カロリーの嗜好食品中心の食事は、必要なビタミン(A、C、D、E、B群など)、ミネラル(亜鉛、鉄、セレンなど)の摂取が不十分になりやすく、免疫能の維持に支障を来たします。
  3. 体温調整能力の低下:寒冷刺激により体の防御反応が消耗され、粘膜のバリア機構(気道上皮、粘液分泌など)が弱まりやすくなります。
  4. 過労・疲労蓄積:過度な活動や準備業務、移動ストレスなどが免疫応答を抑制することがあります。

予防・対策法

  1. ワクチン接種
     可能な場合は、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、医療機関での予防接種を計画的に受けるようにします。これにより重症化リスクを抑えることができます。
  2. 手洗い・うがい・マスク
     外出後・調理前・食事前などこまめに手洗い・うがいを行い、咳マナー(マスク着用など)を徹底します。人混みではマスク着用が有用です。
  3. 十分な休息・睡眠時間確保
     可能な範囲で就寝・起床時間を整え、7時間程度以上の良質な睡眠を確保するよう努めます。
  4. 栄養バランスの確保
     ビタミン・ミネラル・良質タンパク質を意識した食事を心がけ、特に野菜・果物・魚・発酵食品などを積極的に取り入れましょう。過度なアルコールや脂肪・糖質の偏りには注意が必要です。
  5. 適度な湿度管理
     室内湿度を40〜60%程度に保つことで、ウイルス飛沫の分散抑制と、粘膜乾燥防止が期待できます。加湿器や換気を適度に併用しましょう。ただし湿度過多はカビや結露の原因にもなるため過湿には注意。
  6. 人混みを避ける・換気
     混雑する場所を避け、屋内では定期的に換気を行うようにします。
  7. 早期受診
     発熱・喉痛・咳・倦怠感・呼吸困難・激しい腹痛・頻回嘔吐・下痢などの症状が続く、または重症化を疑う場合は速やかに医療機関を受診してください。

感染リスク対策は“日常の基本徹底”が非常に効果的です。特別な手技ではなく、手洗い・栄養・休息・ワクチンなど、普段から備えておくことが最良の防御策となります。

総括と注意喚起

年末年始は、「普段と異なる生活リズム」「飲食・飲酒・移動の多さ」「寒さ・ストレス・睡眠不足」「人との接触頻度増加」という複数の負荷要因が重なり、その結果として胃腸・心血管・代謝・免疫・呼吸器といった内科的領域すべてでリスクが高まる時期です。特に、以下のポイントを意識しておくことが安全な年末年始を過ごすうえで重要です。

  • 自己モニタリングの徹底:血圧・血糖値・体重・排便・尿量・体調異変(痛み・めまい・動悸など)には敏感になり、異常があれば早めに医師相談を。
  • 予防行動の維持:暴飲暴食を避け、適度な運動と十分な休息、栄養バランスのある食事、飲酒の節度、保温・防寒、手洗い・うがい・マスクなど。
  • 計画的な準備:ワクチン接種スケジュールの確認、日常薬の備え(年末年始中の利用可能性を含めて)、予備的な整腸剤や解熱鎮痛薬(常備薬、医師相談のうえ)なども検討。
  • 無理をせず、早めに対応する姿勢:体調に異変を感じたら自己判断をせず、ためらわずに医療機関を受診することが、重症化予防につながります。