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眠ろうとしても寝つけない――それに加えて「呼吸が止まる」「いびきが大きい」といった無呼吸の兆候を感じる。こうした「不眠」と「無呼吸」が同時に起こる状態は、単なる睡眠の悩みを超えて健康リスクを伴う可能性があります。
本記事では、なぜこれらが同時に起こりうるのか、そのメカニズムを紐解きつつ、日常で始められる改善法や医療的対策、注意点をご案内します。あなたの睡眠の質を取り戻すための指針としてご活用ください。
不眠症(Insomnia)と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea:OSA)が併存する状態は、近年「COMISA(Comorbid Insomnia and Sleep Apnea)」と呼ばれ、注目されています。日本語文献でも、この併存率はかなり高いとされており、OSA 患者のおよそ 30% に不眠症状が見られ、不眠症患者の約 30% に OSA を伴うという報告があります。
このようにどちらか一方だけでなく、両者が重なることで、日常生活機能障害 や 生活の質(QOL) への影響は単独の場合より大きくなる可能性が指摘されています。
以上の点から、単なる「睡眠が浅い」「いびき」「目覚めの悪さ」といった訴えを軽視せず、併存可能性を念頭に置くことが重要です。
以下では、不眠と無呼吸が相互作用する要因・メカニズムを整理します。
無呼吸・低呼吸エピソードが終わる際、身体は呼吸を再開するために“覚醒反応” (arousal) を引き起こします。これが中途覚醒や断続的な覚醒を誘発し、睡眠の連続性を破壊します。結果として「目が覚めやすい」「眠りが浅い」「断続的に目覚める」など、不眠症状を引き起こしやすくなります。
たとえば、OSA 患者に CPAP を導入した研究では、不眠症状(特に中途覚醒)は改善したという報告もあります。
逆方向の関係もあります。不眠体質・過覚醒性(寝入る前や夜間に過度に脳が覚醒しやすい傾向)があると、わずかな呼吸の揺らぎ(気道抵抗の変動など)でも覚醒してしまい、無呼吸がより顕在化する可能性があります。すなわち、本来は無自覚だった軽度の呼吸抵抗変動も、覚醒傾向が強いと不眠感や中途覚醒を起こすトリガーとなります。
このように “不眠状態 → 睡眠の不安定化 → 呼吸揺らぎへの過敏反応 → 無呼吸発現” という悪循環モデルが指摘されています。
無呼吸をもたらす因子(肥満、首周囲脂肪、小顎、軟口蓋過長、舌沈下傾向など)と、不眠を助長する神経興奮傾向・覚醒閾値(低い閾値=目覚めやすい傾向)とが重複すると、両者を併発しやすくなります。
また、上気道抵抗症候群(UARS:Upper Airway Resistance Syndrome)という、明確な無呼吸ではないものの、呼吸抵抗増大が睡眠を断片化する状態もあり、これが不眠様症状を併せ持つケースもあります。
これら複数要因が交錯し、「不眠+無呼吸」併存をもたらすわけです。
併存する不眠と無呼吸を和らげるには、生活ベースで取り組める改善が基盤になります。以下は、特に有効性が期待される手法です。
これらは不眠改善の基本であり、覚醒傾向を抑制するための神経可塑性改善にもつながります。CBT‑I(認知行動療法による不眠治療)もこの領域で最も支持される方法です。
これらの生活改善は、軽度~中等度の COMISA 症例ではかなり有効なベース戦略となります。
生活改善だけで症状がなかなか改善しない、または無呼吸が中等度~重度である場合には、以下の補助的アプローチを併用することが一般的です。
無呼吸症候群に対する第一選択治療です。気道に陽圧をかけて閉塞を防ぎ、呼吸の中断を抑えます。
COMISA 症例でも、CPAP を導入することで無呼吸由来の中途覚醒が軽減し、不眠症状も改善するケースがあります。
ただし CPAP 利用者は、不眠傾向が強いと装着継続が困難になることもあり、装着適合性・使用快適性を向上させる工夫が不可欠です。
下顎を前方に引き出すことで気道を確保する装置で、軽〜中等度の OSA において比較的扱いやすい治療選択肢です。
装置を使うことで、無呼吸・低呼吸が軽減されれば中途覚醒も抑制され、不眠改善に寄与する可能性があります。
舌・軟口蓋・咽頭筋など上気道支持筋を訓練することで、睡眠中の気道崩壊を抑える手法。唱歌・発声訓練・舌運動などを使う方法があります。
この方法単独では劇的な効果を期待するのは難しいものの、CPAP や口腔装置補助として併用されることが多いです。
不眠そのものを改善するための心理行動療法で、睡眠制限療法・刺激制御・認知再構成・リラクセーション技法などを用います。
特に COMISA 症例では、不眠側の要因(入眠不安・夜間覚醒思考など)を制御する CBT‑I が、呼吸障害治療の補完的役割を果たします。
不眠が非常に重く、心理的な要因が大きい場合には睡眠薬・抗不安薬などが使われることもあります。ただし、これらの薬剤は筋弛緩作用を持つ場合があり、無呼吸を悪化させるリスクを伴うため、慎重に選択・管理が必要です。
また、最近はオレキシン受容体拮抗薬(睡眠維持を助ける系)など、比較的新しい作用機序の薬剤も使われ始めています。

重症例や改善が見られない例では、医療的評価と治療戦略が不可欠です。
自宅型簡易検査(在宅終夜呼吸モニタリング)から始め、異常があれば臨床的ポリソムノグラフィー検査を行います。これにより、無呼吸・低呼吸回数(AHI指数)、血中酸素飽和度変動、覚醒回数、睡眠段階などが定量的に評価されます。
この結果をもとに、無呼吸重症度・睡眠構造異常度・覚醒傾向の強さなどを総合的に見て、治療方針を決定します。
COMISA の場合、単一治療だけで十分な改善が得られにくいため、以下のような統合アプローチが理想とされます:
無呼吸原因として、扁桃肥大・軟口蓋過長・鼻中隔湾曲などの構造異常が明らかな場合は、手術的治療(軟口蓋形成術・鼻中隔矯正術など)が検討されることもあります。ただし手術による効果や合併症リスクを慎重に検討すべきです。
不眠と無呼吸が同時に起こる「COMISA(併存不眠+睡眠時無呼吸)」は、相互に悪影響を及ぼしあう複雑な睡眠障害です。両者を分離して扱うのではなく、呼吸補正 + 不眠制御 + 生活ベースの改善 を統合的に行うアプローチがより効果を発揮します。
一般内科・糖尿病内科を担当しています。
この記事は、ヒロクリニックの医師紹介・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
岡 浩子 (おか ひろこ)
医療法人社団福美会 理事長
この記事は、ヒロクリニックの医師紹介・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
一般内科を担当しています。
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