
「コーヒーは寝る何時間前までなら大丈夫ですか」。睡眠の外来で、ほぼ毎日いただく質問です。
よく見かける答えは「4〜6時間前まで」。ところが厚生労働省の資料を読み直すと、その目安では足りない場合があると分かります。
この記事は、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」だけを根拠にしています。カフェインを何時までにするか、就寝時刻から逆算して整理します。
この記事でわかること
- カフェインは寝る何時間前までにするべきか、量ごとの目安時刻
- 「4〜6時間前」という定番の目安が、人によっては足りない理由
- 1日の上限400mgがコーヒー何杯にあたるか
- 夜に飲んでも眠れる人ほど気づきにくい落とし穴
眠れない状態が続いてつらいときは、ヒロクリニック心療内科にご相談ください。川口院・池袋駅前院で診療しています。電話は048-430-7000。公式LINEからもお問い合わせいただけます。
カフェインは寝る何時間前まで?量によっては9〜13時間前から影響します
結論から言えば、コーヒー1杯程度でも就寝の9時間前の摂取が夜の睡眠に影響しうると報告されています。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を見てみます。18〜65歳の成人を対象にした系統的レビューを引用し、摂取量ごとにこう整理しています。
| カフェインの量 | この時刻より後だと夜の睡眠に影響しうる | コーヒーの目安 |
|---|---|---|
| 107mgを超える | 就寝の約9時間前より後 | ドリップ約1杯 |
| 217.5mgを超える | 就寝の約13時間前より後 | ドリップ約2杯 |
| 1日合計400mgを超える | 時刻を問わず(朝でも) | ドリップ約4杯 |
つまり23時に眠る人がコーヒーを1杯飲むなら、14時が一つの区切りになります。2杯なら10時。定番の「4〜6時間前」より、かなり早い時刻です。
もちろん全員に当てはまる数字ではありません。あくまで「影響が出はじめうる境界」として使ってください。
なぜ「4〜6時間前」で足りないのか|半減期3〜7時間の個人差
理由は単純で、カフェインが体から抜ける速さに大きな個人差があるからです。
睡眠ガイド2023によれば、日本人の血中半減期は3〜7時間とばらつきます。半減期とは、血液中の濃度が半分になるまでの時間のこと。
同ガイドは半減期5時間の人を例に、こう説明しています。
- 朝9時に400mgを一度に摂取すると、14時に200mg相当が残る
- 19時にはまだ100mg相当が体内に残っている
- 19時に100mgを摂ると、24時になっても50mg分が残存する
そして夕方以降に100mg以上を摂ると、睡眠に影響が出ます。具体的には入眠困難、徐波睡眠(深い眠り)の減少、中途覚醒の増加。
半減期が7時間寄りの人なら、残り方はさらに長引きます。「自分は大丈夫」と感じていても、代謝の速さは自分では選べません。
Xにも同じ気づきがあります。半減期を知って夕方以降のコーヒーをやめたら改善した、という声(@ysydiusさん)。私の外来でも、最後の1杯の時刻を伺うと夕方だった、という方は珍しくありません。
1日の上限は400mg|コーヒーなら約4杯が目安です
時刻と同じくらい大切なのが、1日の合計量です。
睡眠ガイド2023は1日400mgという線を示しています。コーヒーを700cc程度。これを超えると夜眠りにくくなる可能性がある、と明記されています。
| 飲み物 | 400mgに相当する量 | 換算の目安 |
|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 珈琲カップ4杯分(700cc) | 1杯あたり約100mg |
| 市販のペットボトルコーヒー | 1.5本分(750cc) | 100mlあたり約53mg |
FDA(アメリカ食品医薬品局)やEFSA(欧州食品安全機関)も同じ数字です。カナダ政府を含め、成人の1日の上限は400mgとされています。
見落とされがちなのが次の点。400mgを超えると、朝に飲んだ場合でも睡眠に悪影響を与える可能性があると指摘されています。
量が多ければ、時刻を早めても逃げ切れないということ。まず総量から見直してください。
就寝時刻から逆算するカフェインの目安時刻
ここまでの数字を、就寝時刻ごとの表にまとめます。
コーヒー1杯を約100mg、2杯を約200mgとしました。そこに107mg超は9時間前、217.5mg超は13時間前という境界を当てはめています。
| 就寝時刻 | コーヒー1杯(約100mg)なら | コーヒー2杯(約200mg)なら |
|---|---|---|
| 22時 | 13時ごろまで | 9時ごろまで |
| 23時 | 14時ごろまで | 10時ごろまで |
| 24時 | 15時ごろまで | 11時ごろまで |
| 1時 | 16時ごろまで | 12時ごろまで |
驚かれるかもしれません。23時に眠る人にとって、午後のコーヒーはすでに「夜の睡眠の話」なのです。
実際、お昼のコーヒーをやめたら寝つきと質が変わったという声もありました(@SugaC8492さん)。カフェインを摂ると13時間後まで眠れない。そう気づいた投稿もあります(@komori__komoさん)。
後者はガイドの217.5mg超・約13時間前という記述とほぼ一致します。体感と研究が重なる例。
なお、夕方以降はカフェイン含有の食品・飲料を控えることが、ガイドでも推奨されています。
コーヒー以外の注意点|お茶・エナジードリンクと置き換え候補
カフェインはコーヒーだけのものではありません。

睡眠ガイド2023は、カフェインを含む代表的な飲料をこう挙げています。
- コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶
- コーラタイプの飲料
- エナジードリンク、一部の清涼飲料水
茶葉を使わないお茶に置き換える
茶類のカフェインは茶葉(チャノキ)に含まれます。そのため茶葉を使わない飲み物なら心配は要りません。
ガイドが置き換え先として挙げるのは、麦茶・そば茶・黒豆茶・とうもろこし茶。カフェインを含まないハーブティーも候補です。夕方以降はこちらへ。
夜に飲むものを広く見直したい方は、眠くなる食べ物の記事もご覧ください。
エナジードリンクは製品差が大きい
注意したいのがエナジードリンクです。含有率は製品によって差があります。
ガイドには、コーヒーの5倍近いカフェインを含有する製品が存在するとの記載があります。摂取を最小限にし、飲むなら朝に限るよう促されています。
小児科の医師も、子どものエナジードリンクに注意を促しています(@AoringoDrさん)。
こども・高齢者・妊娠中の方はさらに少量で影響します
同じ量でも、影響の出方は年代や状態によって変わります。
こども
1日あたり1〜3mg/kg以上のカフェイン摂取で、睡眠に悪影響が生じると報告されています。体重30kgの児童なら30〜90mgに相当します。
コーヒー1杯に満たない量です。カナダ保健省は4〜6歳で1日最大45mgを推奨。13歳以上の青少年は1日2.5mg/kg未満です。
高齢者
加齢に伴いカフェインの代謝能が低下します。そのため、こどもと同様に少量でも睡眠に影響しうるとされています。
妊娠中の方
胎児への影響について、明らかな研究結果は得られていません。ただし潜在的なリスクから、可能な限り摂取を控えることが複数の国や学会で勧奨されています。
「夜に飲んでも眠れる」人ほど見落としやすい点
寝つけているから平気、とは限りません。

睡眠ガイド2023のQ&Aは、この疑問に正面から答えています。カフェインの代謝能力には個人差が大きいとされています。微量でも影響する人から、多量でも影響が少ない人まで様々。
そのうえで、こう続きます。入眠に問題がない場合でも、睡眠時間の短縮や深睡眠の減少は多くの人にみられるため注意が必要、と。
つまり「眠れている」と「よく眠れている」は別物です。
脳波で評価した研究があります。摂取量が増えるほど深い睡眠が減り、中途覚醒が増える。睡眠効率が低下し、総睡眠時間も短くなります。用量依存的な変化です。
眠気覚ましに頼る習慣にも注意が要ります。慢性的な摂取では効果が減弱し、依存も生じるとされています。
外来でも似た循環をよく見かけます。眠気を抑えるためにカフェインが増える。そのカフェインが、さらに眠りを浅くする。
カフェインを減らしても眠れないときは
時刻と量を整えても改善しない場合、原因は別にあります。
睡眠ガイド2023も、日中の眠気が改善しない場合は医師に相談するよう促しています。
寝つけない・途中で目覚める状態が2週間以上続き、日中の生活に支障が出ているなら、一度ご相談ください。
- 夜の行動を広く見直したい方は寝る前にやってはいけないこと
- 朝や日中の習慣から整えたい方は睡眠習慣の改善は朝が鍵
- 原因や対処を一通り知りたい方は不眠症の治し方
- どこを受診するか迷う方は不眠症は何科を受診するか
- 医療機関での治療を知りたい方は不眠症の治療ガイド
なお、寝酒で眠ろうとするのは逆効果です。アルコールについてはこちらの記事で詳しく触れています。
よくある質問
カフェインと睡眠について、外来でよくいただく質問をまとめます。
Q. カフェインは寝る何時間前までなら大丈夫ですか?
A. 睡眠ガイド2023が引用する系統的レビューによります。107mgを超えると、就寝の約9時間前でも夜間の睡眠に影響しうるとされています。217.5mgを超えると、約13時間前でも影響しうると報告されています。コーヒー1杯なら9時間前、2杯なら13時間前が目安です。個人差はあります。
Q. コーヒーは1日何杯までなら睡眠に影響しませんか?
A. 睡眠ガイド2023は1日400mgを超えると夜眠りにくくなる可能性があるとしています。400mgの目安は、ドリップコーヒーで珈琲カップ4杯分(700cc)。市販のペットボトルコーヒーなら1.5本分(750cc)です。400mgを超えると朝の摂取でも影響しうる点に注意してください。
Q. 夜にコーヒーを飲んでも眠れるのですが、本当に影響しますか?
A. 睡眠ガイド2023のQ&Aに記載があります。カフェインの代謝能力には個人差が大きいとされています。微量でも影響する人から、多量でも影響が少ない人まで様々です。ただし入眠に問題がない場合でも注意が必要です。睡眠時間の短縮や深睡眠の減少は、多くの人にみられるとされています。
Q. カフェインが抜けるまでどのくらいかかりますか?
A. 睡眠ガイド2023によれば、日本人の血中半減期は3〜7時間とばらつきがあります。半減期が5時間の場合、19時に100mgを摂取すると24時になっても50mg分が体内に残ります。完全に抜けるまでには、さらに時間がかかります。
Q. 夕方以降に飲むなら何がよいですか?
A. 茶類のカフェインは茶葉に含まれます。そのため茶葉を使っていない麦茶・そば茶・黒豆茶・とうもろこし茶が候補です。カフェインを含まないハーブティーも睡眠ガイド2023で挙げられています。
Q. エナジードリンクはコーヒーより影響が大きいですか?
A. 製品によって含有率に差があります。睡眠ガイド2023には、コーヒーの5倍近いカフェインを含有する製品が存在すると記載されています。摂取量を最小限にし、飲む場合も朝に限るなどの注意が必要とされています。
Q. 子どもにカフェインはどのくらいまで大丈夫ですか?
A. 1日あたり1〜3mg/kg以上の摂取で睡眠に悪影響が生じると報告されています。体重30kgの児童なら30〜90mgに相当します。カナダ保健省は4〜6歳で1日最大45mgを推奨。13歳以上の青少年は1日2.5mg/kg未満です。
まとめ
カフェインを寝る何時間前までにするかは、量によって変わります。
- コーヒー1杯(約100mg)なら就寝の9時間前、2杯(約200mg)なら13時間前が影響の境界
- 1日の合計は400mg(コーヒー約4杯)まで。超えると朝の摂取でも影響しうる
- 日本人の血中半減期は3〜7時間で個人差が大きい
- 夕方以降は麦茶・そば茶・ハーブティーなどへ置き換える
- 眠れているつもりでも、深い眠りは減っていることがある
まずは今日の「最後の1杯」の時刻を書き出してみてください。そこが出発点になります。
それでも眠れない日が続くようなら、我慢せずご相談ください。ヒロクリニック心療内科は川口院・池袋駅前院で診療しています。電話は048-430-7000。公式LINEでも受け付けています。
参考文献
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(睡眠と嗜好品について、30〜32ページ)
本記事の数値は上記ガイドの記述に基づいています。監修: ヒロクリニック心療内科編集部。
佐々木先生 (ささき)
医師・医学博士 / ヒロクリニック医師
略歴
- 2008年 佐賀大学卒業
- 2019年 ヒロクリニック心療内科
資格・所属
- 日本精神神経学会専門医
- 日本精神神経学会指導医
- 精神保健指定医
この記事は、ヒロクリニック心療内科の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。