
夜が来るのが憂うつ。そんな時期が続くと、これは不眠症の症状なのだろうかと気になります。不眠症の症状は、実は大きく4つの型に分かれます。型が違えば、次に取るべき一手も変わります。この記事では、診察室で実際に伺うサインをもとに、見分け方をお伝えします。
この記事でわかること
- 「夜のサイン」だけでは不眠症と呼ばない理由
- 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の見分け方と目安の数値
- いびきやむずむず脚など、不眠症と紛らわしい症状の区別
- その症状が「受診したほうがよいサイン」に変わる境目
ご予約はWEBのほか、お電話(048-430-7000)でも承ります。人に知られたくないというお気持ちがある方は、公式LINEからのご相談も可能です。
不眠症の症状は「夜のサイン」と「昼のサイン」がそろって意味を持ちます
夜眠れないという事実だけでは、不眠症の症状とは呼びません。夜のサインと昼のサインがセットになって、はじめて症状として扱われます。ここを取り違えると、必要のない不安を抱えることになります。
眠れない夜は誰にでもあります。大事な会議の前夜に寝つけなかった。それだけなら、体は困っていません。翌日の昼にどう響いたか。そこが分かれ目です。
不眠症の症状は、次の2つの側面から捉えます。
| 側面 | 代表的なサイン |
|---|---|
| 夜のサイン(睡眠そのもの) | 寝つけない/夜中に目が覚める/朝早く目覚める/眠った感じがしない |
| 昼のサイン(日中の支障) | 疲労感・倦怠感/集中力や記憶力の低下/気分の落ち込み/いらいら/日中の眠気/仕事や家事でのミス |
診察室で「眠れないんです」とお話しくださる方に、私が必ず伺うのは昼の過ごし方です。夜の話だけでは、判断の材料が足りません。「昼は元気ですか」と尋ねると、多くの方が少し考え込まれます。そして「そういえば、午後は頭が回っていません」と続きます。この瞬間が、実は診断の出発点。
厚生労働省のこころの耳にも、関連する記述があります。睡眠による休養感が低い人ほど、抑うつの度合いが強い。国内研究でそう示唆されていると紹介されています。昼のサインを軽く見ない理由が、ここにあります。
なお、この記事は原因を扱いません。脳やホルモンで何が起きているのかは、不眠症の原因は脳にある?メカニズムを解説をご覧ください。ここでは症状の型分けに絞ります。
不眠症の症状は4つのタイプに分けられます
不眠症の症状は、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4タイプに整理されます。まず全体像をつかんでください。

4つの違いは、眠りのどこでつまずくかです。入口でつまずくのか、途中で切れるのか、出口が早すぎるのか、それとも中身が薄いのか。この視点で並べると、一気に見通しが良くなります。
| タイプ | 眠りのどこでつまずくか | 目安になる数値 | 背景に多いもの |
|---|---|---|---|
| 入眠困難(入眠障害) | 入口。布団に入っても眠りに入れない | 眠りにつくまで30分〜1時間以上 | 不安や緊張が強い状態 |
| 中途覚醒 | 途中。眠れるが夜中に切れる | 夜間に目覚め、再び眠るのが難しい | 加齢、痛み、頻尿、飲酒 |
| 早朝覚醒 | 出口。予定より早く終わる | いつもの起床時刻より2時間以上早い | 加齢、気分の落ち込み |
| 熟眠障害 | 中身。時間は足りるが浅い | 時間は足りるのに休養感がない | 睡眠時無呼吸、ストレス |
ここで大切な補足があります。型は固定ではありません。1つだけに当てはまる方のほうが、むしろ少ないくらいです。
実際、複数の型が重なった状態を混合型と呼びます。X上にも「入眠困難と途中覚醒と早期覚醒」と3つ並べた投稿があります(@GINONSUKE)。短い投稿ですが、当事者の実感をよく表しています。
また、季節や仕事の状況で型が移り変わることもあります。春は寝つけず、夏は夜中に目が覚める。そういう方も珍しくありません。今いちばんつらい型はどれか。その一点で選んでください。
タイプ1・入眠困難|布団に入っても30分以上眠れないサイン
入眠困難は、眠りにつくまで30分以上かかる状態が目安です。4タイプのなかで最も相談の多い型でもあります。
こんなサインが出ていたら入眠困難です
この型に当てはまる方は、次のような訴え方をされます。眠りの入口だけが極端に長い、という共通点があります。
- 消灯してから30分〜1時間以上、眠りに入れない
- 体は疲れているのに、頭だけが動き続けている
- 明日の段取りや過去の失敗が、勝手に再生される
- 一度眠ってしまえば、朝までは比較的もつ
最後の項目が、見分けの鍵になります。眠ってさえしまえば持続する。ここが中途覚醒との違いです。
入眠困難の方の次の一手
入口でつまずく型は、寝る前の過ごし方が響きやすい型でもあります。まず夜の行動を見直してください。
具体的な手順は、寝る前にするといいこと5選にまとめてあります。あわせて、寝室の明るさや音が気になる方は睡眠環境の整え方もご覧ください。
診察室でよく申し上げるのは、眠ろうと努力しないでください、ということです。眠りは意志で起こす現象ではありません。30分たっても眠れなければ、一度寝床を出て、暗い部屋で静かに過ごすほうが結果的に早く眠れます。
タイプ2・中途覚醒|夜中に目が覚めて戻れないサイン
中途覚醒は、夜中に目が覚めて再び眠るのが難しい状態を指します。日本人の不眠のなかでは、加齢とともに増える型です。
回数より「戻れるかどうか」で見ます
ここは誤解の多いところです。夜中に目が覚めること自体は、異常ではありません。問題は、その後どうなるかです。
| 状況 | どう捉えるか |
|---|---|
| トイレで起きるが、すぐ眠りに戻れる | 心配のいらない範囲 |
| 目が覚めた後、20〜30分以上眠れない | 中途覚醒として扱う |
| 目覚めるたびに、焦りや不安が湧く | 眠れない不安が上乗せされた状態 |
私が診察で気にしているのは、3行目です。目が覚めた瞬間に「また眠れない」と身構えてしまう。この身構えが、次の覚醒を呼びます。回数を数えるほど眠れなくなる方を、これまで何人も拝見してきました。
寝酒は中途覚醒を増やします
この型で必ず確認するのが、寝る前のお酒です。寝つきが良くなるので習慣にしている方が、とても多いのです。
ところがお酒は、眠りの後半を浅くします。入口を助けて、途中を壊す。中途覚醒の方にとっては、割に合わない取引です。大田区の公式アカウントも、健康コラムで注意を促しています。寝酒をすると浅い睡眠が増え、途中で目が覚めることがある(@city_ota)。自治体が発信するほど、ありふれた落とし穴。
お酒と眠りの関係が気になる方は、寝る前にやってはいけないこともあわせてご確認ください。
タイプ3・早朝覚醒|予定の2時間以上前に目覚めるサイン
早朝覚醒は、いつもの起床時刻より2時間以上早く目覚め、その後眠れない状態が目安です。4タイプのなかで、最も慎重に扱いたい型でもあります。
加齢による早起きとの違い
年齢を重ねると、誰でも早く目が覚めやすくなります。ですから早起き自体は、症状とは限りません。区別の目安は、目覚めた後の状態です。
- すっきり起きられて、日中も普通に動ける → 加齢による変化の範囲
- 目覚めた瞬間から気分が重く、二度寝もできない → 早朝覚醒として扱う
- 朝がいちばんつらく、夕方にかけて少し楽になる → 医療機関でのご相談を
3行目は、気分の落ち込みを伴う不眠で見られやすいパターンです。早朝覚醒は、気分の問題と関連することが知られています。睡眠の相談として来られた方から、背景にある心の疲れが見つかることも。だからこそ、この型は自己判断で片づけないでいただきたいのです。
X上にも「早朝覚醒つらい」という投稿がありました。そのまま睡眠薬に手を伸ばそうか迷う様子が続きます(@MR_Shiroty)。お気持ちはよく分かります。ただ、この型は薬より先に背景を確認したいのです。自己判断で市販の睡眠薬を続けることは避けてください。
薬の種類や副作用については、不眠症の薬と副作用で解説しています。医療機関で行う治療の流れを知りたい方は、不眠症の治療ガイドをご覧ください。
タイプ4・熟眠障害|眠ったのに休んだ感じが残らないサイン
熟眠障害は、睡眠時間は足りているのに休養感が得られない状態です。4タイプのなかで、いちばん自覚しにくい型といえます。
「時間は寝ている」ので見逃されます
この型の方は、そもそも自分を不眠症だと思っていません。7時間眠っているのだから問題ないはず、と考えるためです。
ところが、こんなサインが並びます。
- 朝、起きた瞬間から体が重い
- 休日にたっぷり寝ても、だるさが抜けない
- 眠りが浅い感じがして、物音ですぐ目が覚める
- 日中、頭にもやがかかったようになる
近年、国の睡眠対策でも睡眠休養感という言葉が使われるようになりました。厚生労働省の睡眠対策のページに「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が公開されています。睡眠時間の確保とあわせ、休養感を高めることが取り上げられました。眠った時間より、休めた実感。熟眠障害はまさにここが欠ける型です。
ただし、この型でいちばん注意したいのは次の見出しの内容です。熟眠障害だと思っていたら、別の病気が隠れていた。そういうことが、実際に起こります。
その症状は不眠症ではないかもしれません
4タイプに当てはめる前に、確認していただきたいことがあります。不眠症とよく似た症状を出す、別の睡眠の病気があるためです。

この見分けは、記事のなかで最もお伝えしたい部分です。ここを飛ばすと、いくら睡眠習慣を整えても改善しません。
| 紛らわしい状態 | 不眠症と違うサイン | 間違えやすい型 |
|---|---|---|
| 睡眠時無呼吸症候群 | 大きないびき/呼吸が止まると指摘された/朝の頭痛/起床時に口が渇く | 熟眠障害・中途覚醒 |
| むずむず脚症候群 | 夕方以降、脚の奥がむずむずする/動かすと楽になる | 入眠困難 |
| 概日リズム睡眠・覚醒障害 | 眠る時刻が後ろにずれている/遅く寝れば朝までよく眠れる | 入眠困難 |
とくにいびきと無呼吸は、ご本人がまず気づけません。ご家族に指摘されて、はじめて分かります。私の診察でも、熟眠障害のご相談から睡眠時無呼吸症候群が見つかった例が何度もあります。
X上にも、よく似たサインを並べた発信がありました(@MyPace55Ch)。朝起きると頭が痛い。口が渇く。寝ても疲れが取れない。仕事中に急に眠くなる。心当たりがあれば睡眠外来やかかりつけ医へ、と促しています。この4つが並んだら、単なる不眠として扱わないでください。
また、夕方以降に脚の奥がむずむずして眠れない場合。これは寝つきの悪さではなく、脚の症状が眠りを妨げている状態です。眠る努力ではなく、症状そのものへの対応が要ります。
症状が「受診したほうがよいサイン」に変わる目安
受診の目安は、期間・頻度・日中の支障という3つの条件で考えます。この3つがそろったときが、相談していただきたいタイミングです。

睡眠障害国際分類では、夜の症状が週3回以上・3か月以上続く場合を慢性の不眠として扱います。それより短ければ短期の不眠と整理されます。
| 条件 | 目安 |
|---|---|
| 頻度 | 週3回以上、夜の症状がある |
| 期間 | 3か月以上続いている |
| 日中の支障 | 倦怠感・集中力低下・気分の落ち込み・眠気などがある |
ただ、3か月を待つ必要はありません。日中の支障が出ているなら、その時点でご相談ください。早いほうが、立て直しは楽になります。3か月という数字は、あくまで分類上の線引きです。
もう少し細かく確かめたい方へ。不眠症チェック|あなたの睡眠は大丈夫?にチェックリストを用意しています。まず自分で試したい方は不眠症のセルフケアへ。
放置した場合に何が起こるかは不眠症を放置するとどうなる?で解説しています。受診先の科で迷う場合は不眠症は何科?が参考になります。
ヒロクリニック心療内科では、川口院・池袋駅前院で睡眠のご相談を承っています。眠れないという一言から始めていただいて構いません。お電話は048-430-7000です。
気分の落ち込みが強く、つらいお気持ちを今すぐ聞いてほしいときは、公的な相談窓口もご利用ください。いのちの電話のフリーダイヤルは0120-783-556(無料)です。こころの健康相談統一ダイヤルは0570-064-556。厚生労働省のまもろうよ こころにも、窓口の一覧がまとまっています。
よくある質問
診察室で実際によく伺うご質問をまとめました。ご自身の状況に近いものからお読みください。
Q. 不眠症の症状は4タイプのうち1つだけ出るのですか?
A. 1つとは限りません。入眠困難と中途覚醒が同時に出る混合型は、診察室でもよく拝見します。X上にも「入眠困難と途中覚醒と早期覚醒」と3つ並べた投稿があります。複数の型が重なるのは珍しくありません。まずは一番つらい型から整理してください。
Q. 何日くらい眠れなければ不眠症の症状といえますか?
A. 日数だけでは決まりません。夜の症状が週3回以上あり、3か月以上続く。さらに日中の支障がある。この状態が慢性的な不眠症の目安です。3か月未満でも日中がつらければ相談して構いません。期間が短いうちに整えるほうが立て直しは楽です。
Q. 寝つきは良いのに疲れが取れません。これも不眠症の症状ですか?
A. 熟眠障害というタイプに当てはまる可能性があります。睡眠時間は足りているのに休んだ感じが残らない状態です。ただし、いびきや朝の頭痛を伴う場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性もあります。自己判断が難しい領域ですので、一度ご相談ください。
Q. 早朝に目が覚めるのは年齢のせいではないですか?
A. 加齢でも早く目覚めやすくはなります。区別の目安は、目覚めた後のつらさです。すっきり起きられて日中も問題なければ、加齢による変化と考えて差し支えありません。予定より2時間以上早く目覚め、気分の落ち込みを伴う場合は受診をご検討ください。
Q. 市販の睡眠改善薬を飲み続けても大丈夫でしょうか?
A. 長く続けることは想定されていません。市販薬は一時的な不眠を対象としたもので、慢性的な症状には設計されていないためです。効かないからと量を増やすのは避けてください。2週間ほど使っても変わらなければ、医療機関で原因の側を確認しましょう。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. 心療内科または精神科が窓口になります。睡眠外来がある医療機関でも構いません。ヒロクリニック心療内科では川口院・池袋駅前院で睡眠のご相談を承っています。どの科か迷う場合は、詳しくは不眠症は何科を受診すべきかの記事をご覧ください。
まとめ|自分の型が分かれば、次の一手が決まります
不眠症の症状は4タイプに分かれます。入口でつまずく入眠困難、途中で切れる中途覚醒、出口が早い早朝覚醒、中身が薄い熟眠障害。まず自分がどこでつまずいているかを見てください。
そのうえで、3つのことを覚えていただければ十分です。夜のサインだけでは判断しないこと。型は重なるし移り変わること。いびきや脚のむずむずがあれば、不眠症以外の可能性を考えること。
そして、日中の支障が出ているなら期間を待たずにご相談ください。眠れない夜を一人で数え続ける必要はありません。型が分かれば、打ち手は必ず見つかります。
佐々木先生 (ささき)
医師・医学博士 / ヒロクリニック医師
略歴
- 2008年 佐賀大学卒業
- 2019年 ヒロクリニック心療内科
資格・所属
- 日本精神神経学会専門医
- 日本精神神経学会指導医
- 精神保健指定医
この記事は、ヒロクリニック心療内科の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。