STRのリピート数と親子鑑定について

遺伝

STR(短鎖反復配列)のリピート数は、DNA中の決まった配列が何回繰り返されているかを示す値で、親から子へそのまま受け継がれます。このリピート数のパターンを親子で比較することが、DNA親子鑑定の基本的な仕組みです。本記事では、STRとは何か、リピート数がどのように親子鑑定へ使われるのかを、具体例を交えて解説します。

この記事でわかること

  • STR(短鎖反復配列)の基本的な仕組み
  • リピート数が親子鑑定にどう使われるか
  • 実際の判定手順と精度の目安

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STR(短鎖反復配列)とは

STR(Short Tandem Repeat、短鎖反復配列)とは、DNA中に存在する2〜6塩基対の短い配列が、連続して繰り返されている部分です。例えば「AGAT」という4塩基の配列が連続して何度も並んでいる場合、それがSTRにあたります。

STRはヒトゲノム中に多数存在し、繰り返しの回数(リピート数)は個人ごとに異なります。この個人差の大きさが、個人識別や親子鑑定にSTRが使われる理由です。診察でリピート数の仕組みを説明すると、多くの方が図を見て納得される印象があります。

リピート数は親から子へそのまま受け継がれる

STRのリピート数は、各個人が父親由来・母親由来のそれぞれ1つずつ、合計2つの値を持っています。子のリピート数は、必ずどちらかの親のリピート数と一致します。この規則性を利用して、親子関係の有無を判定します。

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リピート数の個人差が、なぜ判定の決め手になるのか

リピート数のばらつきが大きい座位ほど、偶然に同じ数値が並ぶ可能性は低くなり、判定の信頼性が高まります。この仕組みを、身近な例で見ていきます。

ダイヤル錠を思い浮かべてください。数字を1つだけ合わせても、他人と偶然に同じ数字になることは珍しくありません。複数のダイヤルをすべて同時に合わせるとなると、偶然に一致する確率は大きく下がります。

STRのリピート数も、この考え方と同じです。比較する座位の数を増やすほど、偶然の一致は起こりにくくなります。

座位を1つだけ見ても判定できない理由

1つの座位だけでリピート数が一致しても、それが血縁によるものか、偶然によるものかを区別できません。複数の座位すべてで一致が確認できて初めて、統計的に高い確率で親子関係を示せます。

血縁関係を遺伝子のレベルでどう捉えるかについては、血縁関係とは遺伝子的にはどういうことかでも解説しています。あわせてご覧いただくと、STR分析の位置づけがより理解しやすくなります。

STR法とSNP法の違いを一般的にたとえると

STR法は「回数」の違いを比べる方法で、SNP法は「1文字」の違いを比べる方法です。STR型は繰り返し回数によって個人差が大きく現れるため、少ない座位数でも高い識別力を発揮します。

一方のSNP法は1塩基単位の違いを見る手法で、1座位あたりの情報量はSTR法より少なくなります。ヒロクリニックの出生前・出生後親子鑑定でSTR法を採用しているのは、この個人識別力の高さが理由です。

親子鑑定でSTRを使う手順

親子鑑定では、複数のSTRマーカー(遺伝子座)を同時に調べ、DNAプロファイルを作成して比較します。具体的な手順は次のとおりです。

  1. サンプル採取:被験者のDNAサンプルを採取します。血液、唾液、口腔粘膜などが一般的です。
  2. DNA抽出:採取したサンプルからDNAを取り出します。
  3. STR分析:PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で対象のSTRマーカーを増幅し、蛍光標識などを使ってリピート数を検出します。
  4. プロファイル作成:各マーカーのリピート数を組み合わせ、個人ごとのDNAプロファイルを作成します。
  5. 比較・判定:親と子のプロファイルを比較し、すべてのマーカーで一致が見られるかを確認します。

具体例で見るリピート数の比較

ある1つのSTRマーカーについて、母親と子のリピート数が次のような結果だったとします。

被験者マーカーAのリピート数
母親12, 14
12, 15

この場合、子のリピート数「12」は母親から受け継いだものと考えられます。もう一方の「15」は、父親候補のリピート数と一致するかを確認します。1つのマーカーだけでは判断せず、複数のマーカーを組み合わせて総合的に判定するのが実際の鑑定の進め方です。実際の結果報告書の読み方は父親と子供のSTRを比較した場合で具体例を紹介しています。

リピート数の一致から「父権肯定確率」へ

複数のマーカーでリピート数の一致を確認したあと、鑑定書には尤度比(ゆうどひ)という統計指標をもとに算出した「父権肯定確率」が記載されます。これは、一致した結果が偶然に起こる確率と比べて、どれだけ父子関係がある可能性が高いかを数値化したものです。尤度比の考え方を詳しく知りたい方は尤度比とは?基準の見方をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

私自身、鑑定結果の説明をする際に「一致したマーカーの数だけを見て安心してよいのか」という質問を受けることがあります。実際には、マーカーごとの出現頻度をもとに統計的な計算を行ったうえで、最終的な確率が算出される仕組みです。検査精度全般についてはDNA鑑定の精度とは?方法と信頼性を解説で詳しく説明しています。

判定精度を左右するマーカー数

STR分析は、多くのマーカーを組み合わせるほど誤判定の可能性を抑えられます。ヒロクリニックが採用するSTR法は、52座位のマーカーを分析し、99.99%以上の精度で親子関係を判定する手法です。SNP法と比べて個人識別力・多型性が高く、FBIのCODIS(犯罪者DNAデータベース)でも採用されるなど、法医学分野で標準的に使われています。

統括院長の岡博史は「マーカーの数だけでなく、検体の取り違えを防ぐ管理体制も精度を支える重要な要素です」と話しています。ヒロクリニックでは、検査機器にQiagen社「MiSeq FGx System」(日本初導入)を採用し、自社ラボ「東京衛生検査所」で解析まで一貫して行っています。

犯罪捜査で使われるFBIのCODIS(DNAデータベース)では、13〜20座位程度が標準的な分析数とされています。ヒロクリニックではこれを上回る52座位を組み合わせて分析し、偶然の一致による誤判定のリスクを抑えています。

比較項目CODIS(犯罪捜査用DNAデータベース)ヒロクリニックの親子鑑定
分析する座位数13〜20座位程度52座位
主な用途犯罪捜査・個人識別出生前・出生後の親子鑑定

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よくある質問

STR法とSNP法はどう違いますか。

STR法は繰り返し配列の回数を比較する手法で、個人差が大きく識別力に優れています。SNP法は1塩基単位の違いを見る手法で、法医学分野の親子鑑定にはSTR法が広く使われています。

リピート数が1つのマーカーで一致しない場合、親子ではないのですか。

突然変異など、まれに1つのマーカーだけ一致しないケースがあります。そのため、複数のマーカーを総合的に判定する必要があり、1つの不一致だけで親子関係を否定することはありません。

STR分析はどんな検体で行えますか。

血液、唾液、口腔粘膜などが一般的です。出生前親子鑑定では母体の血液と父親候補の口腔粘膜を使用します。

マーカー数が多いほど、必ず精度は高くなりますか。

一般的には、マーカー数が多いほど誤判定の可能性は下がります。ただし、検体の管理体制や解析機器の精度も結果を左右するため、マーカー数だけで検査機関を選ばないでください。

結果報告書には、リピート数がそのまま記載されますか。

マーカーごとのリピート数と、それをもとに算出した父権肯定確率が記載されます。数値の読み方が分からない場合は、担当医に確認してください。

座位ごとにリピート数の種類は異なりますか。

はい。座位ごとに取り得るリピート数の範囲は異なります。個人差が大きい座位ほど、親子鑑定に適した座位として使われます。

1つの座位だけリピート数が一致すれば、親子と判定できますか。

いいえ。1つの座位の一致だけでは、偶然に一致した可能性を否定できません。複数の座位すべてで一致を確認したうえで、統計的に判定します。

FBIのCODISと当院の座位数が違うのはなぜですか。

CODISは犯罪捜査での個人識別を目的とし、13〜20座位程度が標準です。ヒロクリニックでは親子鑑定に適した精度を追求し、52座位を分析しています。

STR法は親子鑑定以外にも使われていますか。

はい。犯罪捜査における個人識別や、災害時の身元確認など、法医学分野で幅広く活用されています。

まとめ

STRのリピート数は、親から子へそのまま受け継がれる性質を利用して、親子関係を判定する基本的な指標です。複数のマーカーを組み合わせることで、高い精度での判定が可能になります。ヒロクリニックでは52座位のSTRマーカーと自社ラボの管理体制により、精度と信頼性を両立しています。

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医師監修 監修日:2024年8月5日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年8月5日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Edwards A, Civitello A, Hammond HA, Caskey CT. DNA typing and genetic mapping with polymorphic simple sequence repeats. Am J Hum Genet. 1991 Oct;49(4):746-56.
  2. Butler JM. Genetics and genomics of core STR loci. J Forensic Sci. 2006 Mar;51(2):253-65.

記事の監修者