この記事の概要
Nature科学雑誌に掲載された、出生前親子DNA鑑定に関する最新の研究を紹介。信頼性や技術的進歩について世界的権威の視点から解説します。
妊娠早期のSTR解析による出生前親子鑑定を検証した学術論文が、Nature Portfolio(ネイチャー・ポートフォリオ)が刊行する学術誌「Scientific Reports」に掲載されています。この論文では、妊娠7週から採血した検体でも高い精度で父子関係を判定できたと報告されています。この記事では、論文の内容とヒロクリニックの解析との違いを、掲載誌の位置づけも含めて正確に紹介します。
この記事でわかること
- 紹介する論文の正式な掲載誌名と、Nature本誌との違い
- 論文で報告されている解析箇所数と検出精度
- 妊娠初期に胎児DNAの検出が難しくなるケースの割合
- ヒロクリニックのSTR解析との違い

掲載されたのはNature本誌ではなくScientific Reports
この論文が掲載されたのは「Nature」という雑誌そのものではなく、Nature Portfolioが刊行する姉妹誌「Scientific Reports」です。まず訂正と補足です。Scientific Reportsは自然科学・医学分野を幅広くカバーするオープンアクセス誌。Nature本誌とは査読基準や掲載範囲が異なります。同じ出版グループの学術誌という点で権威性はありますが、「Nature誌に掲載された」という表現は正確ではないため、この記事では掲載誌名を訂正してご紹介します。
Scientific Reportsは、査読プロセスを経て掲載可否が決まる学術誌である一方、Nature本誌に比べて掲載範囲が広く、専門分野に特化した研究も数多く扱っています。学術的な信頼性という点では十分に評価できる媒体ですが、メディアや記事の中で「Nature掲載」と紹介される場合、本誌なのか姉妹誌なのかが曖昧にされているケースも見受けられます。正確な情報を届けるため、この記事では掲載誌名を明記したうえで内容をご紹介します。
論文の出典は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文タイトル | Early noninvasive prenatal paternity testing by targeted fetal DNA analysis |
| 著者 | Géraldine Damour, Karine Baumer, Hélène Legardeur, Diana Hall |
| 掲載誌 | Scientific Reports(Nature Portfolio) |
| 巻・論文番号・発行日 | Volume 13, Article 12139(2023年7月26日) |
| DOI | 10.1038/s41598-023-39367-0 |
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
DIP-STRとは何か
DIP-STRとは、挿入欠失多型(DIP)と短鎖タンデム反復配列(STR)を組み合わせた法科学分野のマーカーで、母体血液にごくわずかに含まれる胎児由来のDNAを効率よく検出するために設計されています。妊婦さんの血液には母親自身のDNAが大部分を占めており、そこに父親から受け継いだ胎児由来のアレル(対立遺伝子)がわずかに混ざっている状態です。DIP-STRは、この「混合した生体試料」の中から特定のアレルを見分ける精度に優れたマーカーとして、法医学分野で開発されてきました。
通常のSTR解析は、母体と胎児のDNAが単純に混ざり合った状態からでは、どちらの由来かを区別しにくいという課題があります。DIP-STRはこの課題に対応するため、父親だけが持つ特徴的な配列を選択的に検出できるよう設計されたマーカーです。この論文は、DIP-STRを妊娠初期の血液検体に応用し、その有効性を検証した研究として位置づけられます。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
論文が報告する解析箇所数と検出精度
論文では47カ所のDIP-STRマーカーを用いて、87症例の妊婦から採取した血液を分析し、妊娠早期でも高い精度で父子関係を判定できたと報告されています。採血は最も早いケースで妊娠7週から実施されました。
妊娠初期(第1三半期)に採取した検体では、胎児由来のアレル(対立遺伝子)を検出できなかった偽陰性のケースが約6%報告されています。具体的には、検証対象となった164カ所の胎児アレルのうち10カ所で検出に至らなかったとされています。一方、妊娠中期・後期の検体では、この偽陰性率はほぼゼロに近づいたと報告されています。
つまり、SNP単体であれば数千カ所規模の解析が必要になるのに対し、STRなら47カ所程度でも高い精度の判定が可能だという点が、この論文の重要なポイントです。SNP解析に必要な箇所数の詳細は、SNPだけの出生前親子DNA鑑定なら何種類のSNPが必要か?で解説しています。
研究の対象と方法
この研究は87症例の妊婦を対象に、妊娠期間を通じて採取した血液検体を用い、統計的な枠組みで父子関係を評価しています。採血の対象には、無月経7週(妊娠7週相当)という早い時点で採取された検体も含まれており、第1三半期(妊娠初期)における解析の妥当性を検証した点が、この研究の特徴です。
研究チームは、DIP-STRマーカーの解析結果を統計モデルに当てはめることで、父子関係を確率的に評価する枠組みを構築しました。妊娠初期からの非侵襲的な出生前親子鑑定を、統計的な裏付けとともに検証した点で、この分野の研究に一定の意義を持つ論文だといえます。
研究結果が示す実務的な意味
この論文の結果は、妊娠初期に検査を受ける場合は再採血が必要になる可能性を想定しておく必要があることを示しています。妊娠初期(第1三半期)の検体では、胎児由来アレルの検出に至らなかった偽陰性のケースが約6%報告されている一方、妊娠中期・後期になるとこの割合はほぼゼロに近づくと報告されています。
この傾向は、フィータルフラクション(母体血液中に占める胎児由来DNAの割合)が妊娠週数とともに増加していく一般的な傾向とも整合しています。週数が早いタイミングで検査を希望される場合は、フィータルフラクションが十分な水準に達しているかどうかを確認しながら進めることが重要です。ヒロクリニックでは、この点を踏まえたうえで妊娠6週からの検査に対応しています。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
ヒロクリニックのSTR解析との違い
ヒロクリニックの出生前親子鑑定では、論文より多い最大52座位のSTRを解析し、妊娠6週からの検査に対応しています。論文で報告された47カ所より多い座位数を採用している形です。座位数が多いほど、偶然の一致による誤判定のリスクを下げやすくなります。
| 項目 | 論文(Damour et al., 2023) | ヒロクリニック |
|---|---|---|
| 解析マーカー | 47カ所のDIP-STR | 最大52座位のSTR |
| 検査対象に含む週数 | 無月経7週相当から(第1三半期を含む) | 妊娠6週0日から検査可能 |
| 対象症例数 | 87症例 | 非公開 |
| 妊娠初期の偽陰性率 | 約6%(第1三半期) | 非公開 |
この比較からもわかるとおり、論文とヒロクリニックの検査は、同じSTR系のマーカーを用いながらも、座位数・対応週数・運用体制の面で異なります。座位数が多いほど、偶然に一致してしまう確率を理論上下げやすくなるため、ヒロクリニックでは精度を重視した設計を採用しています。
また、ヒロクリニックでは妊娠6週から採血による検査を受け付けています。私自身、妊娠初期のご相談を数多くお受けしてきましたが、週数が早いほど胎児DNAの割合(フィータルフラクション)が少なく、再採血をお願いするケースが出やすい傾向を実感しています。フィータルフラクションについては、DNA出生前親子鑑定に必要なFFはいくつ?で詳しく解説しています。
座位数や解析精度の全体像については、出生前DNA鑑定の正確性もあわせてご覧ください。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
非侵襲的出生前親子鑑定(NIPAT)という技術のなかでの位置づけ
非侵襲的出生前親子鑑定(NIPAT)には、SNPを用いる方式とSTR(DIP-STRを含む)を用いる方式があり、この論文はSTR方式の検証を進めた研究として位置づけられます。母体血液から胎児由来のDNAを検出する技術自体は共通していますが、どのタイプのマーカーを、何カ所解析するかによって、必要な検体量や解析コスト、判定に必要な統計モデルが変わってきます。
SNP方式は1カ所あたりの情報量が少ない代わりに、数百〜数千カ所という膨大な数を解析することで精度を担保する設計です。一方、STR方式は1カ所あたりの多型性(個人差の大きさ)が高いため、より少ない解析箇所数でも高い判定精度を実現しやすいという特徴があります。この論文が47カ所という比較的少ない箇所数で高精度な判定を報告できた背景には、STR系マーカーが持つこの特性があると考えられます。
この論文から出生前親子鑑定を検討する方が知っておきたいポイント
この論文から読み取れる実務上のポイントは、検査を受ける時期と、利用するマーカーの種類・解析箇所数を確認することの2点です。出生前親子鑑定を検討する際は、次のような点をあらかじめ確認しておくと安心です。
- 検査可能な最短の妊娠週数(医療機関によって異なる)
- 使用するマーカーの種類(SNPかSTRか)と解析箇所数
- 妊娠初期に検査を受けた場合、再採血が必要になる可能性があるかどうか
- 私的鑑定と法的鑑定のどちらが必要か
学術論文で報告されている数値は、あくまで研究時点でのデータです。実際の検査を検討する際は、各医療機関が採用している検査仕様(座位数・対応週数など)を個別に確認することをおすすめします。気になる点があれば、お申し込み前に担当医へご相談ください。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
よくある質問
まとめ
この記事で紹介した論文は、Nature本誌ではなくNature Portfolio刊行のScientific Reportsに掲載されたものです。47カ所のDIP-STR解析で、妊娠早期でも高い精度の父子判定が可能だと報告されています。
ヒロクリニックでは、これを上回る最大52座位のSTRを解析し、妊娠6週からの検査に対応しています。週数や解析方法について気になる点がある方は、お申し込み前に担当医へご相談ください。
関連記事として、SNPだけの出生前親子DNA鑑定なら何種類のSNPが必要か?、親族間のSTRとSNPの一致率(鑑定に重要)もあわせてご覧ください。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定
ヒロクリニックのDNA出生前親子鑑定(NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Fan HC, Gu W, Wang J, Blumenfeld YJ, El-Sayed YY, Quake SR. Non-invasive prenatal measurement of the fetal genome. Nature. 2012 Jul 19;487(7407):320-324.
- Kitzman JO, Snyder MW, Ventura M, Lewis AP, Qiu R, Simmons LE, Gammill HS, Rubens CE, Shendure J, Eichler EE. Noninvasive whole-genome sequencing of a human fetus. Sci Transl Med. 2012 Jun 6;4(137):137ra76.





