STR(短鎖反復配列)とSNP(単一塩基多型)は、どちらもDNA鑑定で使われる遺伝的マーカーですが、親族間の一致率の出方が異なります。この記事では、STRとSNPそれぞれの特徴と、親子・兄弟・いとこといった関係性ごとの一致率の違い、そしてその理由をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- STRとSNPそれぞれの定義と特徴
- 親子・兄弟・いとこの関係別STR・SNP一致率
- 兄弟間のSTR一致率が25〜50%の幅を持つ理由
- 親族鑑定でSTRとSNPをどう使い分けるか
STR(短鎖反復配列)とSNP(単一塩基多型)とは
STR(短鎖反復配列)とSNP(単一塩基多型)は、どちらもDNA上の遺伝的マーカーであり、遺伝子解析において重要な役割を果たしますが、異なる特徴と用途があります。
STR(Short Tandem Repeat)
定義: STRは、DNAの特定の場所で数塩基が繰り返される短い配列です。たとえば、AATGが数回繰り返されるようなパターンです。
長さ: 通常、2〜6塩基の繰り返しが10〜100回程度存在します。
用途: STRは、個人ごとの繰り返し数の違いが大きいため、親子鑑定や法医学的な個人識別(DNA指紋など)で広く利用されています。STRは遺伝的多様性が高く、個人特定に有用です。
ヒロクリニックの出生前親子鑑定(NIPPT)でも、このSTRを中心的なマーカーとして採用しています。具体的には52座位程度のSTRマーカーを解析し、胎児と父親候補の一致率を統計的に算出することで、99.99%以上の精度による父子関係の判定を行っています。座位の数が多いほど、偶然の一致による誤判定のリスクを抑えられる点が、STR解析の強みです。この座位数は、法医学の分野で個人識別に用いられる標準的な範囲とも重なっており、FBIのCODIS(犯罪捜査用DNAデータベース)などでも同様の考え方でSTRマーカーが活用されています。
SNP(Single Nucleotide Polymorphism)
定義: SNPは、DNA配列の1つの塩基(A、T、C、G)の違いが個体間で異なる遺伝的変異です。たとえば、ある個体ではA、別の個体ではTが存在するような1塩基の違いです。
長さ: 単一塩基の変異であるため、STRよりもはるかに短い。
用途: SNPは、遺伝的な病気のリスク評価や集団遺伝学、進化研究でよく利用されます。また、疾患の関連性や祖先解析にも用いられることがあります。
| 関係 | STR一致率 (%) | SNP一致率 (%) |
| 親子 | 50% | 50% |
| 兄弟 | 25-50% | 50% |
| いとこ | 12.5% | 12.5% |
STR は、親子関係や兄弟関係の特定に効果的で、一致率は親子で50%、兄弟で25〜50%、いとこで12.5%程度です。
SNP は、広範囲の親族関係や祖先調査に適しており、親子で50%、兄弟で50%、いとこで12.5%の一致が見られます。
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どちらの手法も血縁関係を確認するのに有効ですが、目的に応じて適切な手法が選ばれます。
兄弟間のSTR(Short Tandem Repeat)の一致率が必ずしも50%ではなく、25%から50%の範囲に収まる理由は、遺伝子が両親からランダムに受け継がれるためです。以下にその詳細を説明します。
STRの遺伝に関して
兄弟間のSTR一致率が25〜50%という幅を持つのは、両親からの遺伝子の組み合わせがランダムに決まるためです。STRのパターンは、両親のDNAからランダムに選ばれるため、兄弟間で共有されるDNAの割合は変動します。具体的には、以下の理由で一致率が25%から50%の範囲になることが考えられます。
- 両親からの遺伝のランダム性:
- 両親それぞれが2セットの遺伝子(母と父から受け継いだもの)を持っており、子供がどちらの遺伝子を受け継ぐかはランダムです。兄弟が同じ遺伝子を受け継ぐ可能性は確実ではありません。
- 兄弟が両方とも父親の同じバージョンの遺伝子を受け継ぐ場合もあれば、異なるバージョンの遺伝子を受け継ぐこともあります。
- 組み合わせのバリエーション:
- 兄弟が同じ親から同じSTRマーカーを受け継ぐ場合、50%の一致率になります。しかし、片方の親から異なるバージョンのSTRを受け継ぐことがあるため、一部のマーカーが異なることになり、その結果、一致率が25%程度まで下がることがあります。
- 一卵性双生児と二卵性双生児の違い:
- 一卵性双生児は全く同じDNAを持つため、STRの一致率は100%になります。一方、二卵性双生児や通常の兄弟は、DNAの50%を共有していますが、遺伝子の組み合わせがランダムに選ばれるため、一致率が25%〜50%に変動します。
SNP(Single Nucleotide Polymorphism)の場合、親子間および兄弟間の一致率が概ね50%になる理由は、SNPが単一の塩基(DNAの構成要素)における変異を扱うためであり、遺伝子全体のパターンがより直線的に親から子に伝わるためです。
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SNPが兄弟間で50%の一致率になる理由
SNPが兄弟間でほぼ50%の一致率になるのは、個々のSNPが独立した変異地点として単純に遺伝するためです。STRのように繰り返し配列の組み合わせによる変動が大きくないため、兄弟間でも比較的安定した一致率が見られます。
1. SNPの特徴
SNPは、DNAの中で1つの塩基(A、T、C、G)が別の塩基に置き換わっている地点(多型)を調べる方法です。これらのSNPは全体の遺伝情報の中で膨大な数が存在しますが、親から子へと伝わる遺伝情報の一部として比較的単純な形で継承されます。
- 例えば、父親が持つSNPと母親が持つSNPのうち、どちらか一方が子に伝わるという形で親から子へ引き継がれます。
2. 兄弟間でのSNPの伝わり方
両親から子どもに伝わるSNPは、遺伝子の一部として50%がランダムに引き継がれます。
- 兄弟間では、SNPの50%が一致する理由は、両親からそれぞれ50%ずつDNAを受け継ぐからです。兄弟姉妹は共通の両親を持つため、理論的には全体の50%が共通する可能性があります。
しかし、SNPのランダム性により、特定のSNPが兄弟間で共有される可能性が高く、ほぼ50%の一致率になります。遺伝子は細かい単位であるSNPを通じて広範に受け継がれ、親子間や兄弟間でほぼ50%の一致が見られます。
3. SNPが50%である理由(対STRとの違い)
SNPの遺伝は、各SNPが独立した変異地点であるため、単純に遺伝します。つまり、個々のSNPはどちらの親から受け継ぐかがランダムに決まり、それが兄弟間で50%一致することが多くなります。
一方、STRは繰り返し配列の長さに基づくため、ランダムな組み合わせの影響が大きくなるので、兄弟間の一致率にばらつきが出やすいのです。
結論
SNPは単一の塩基レベルでの遺伝子変異を扱い、親子間や兄弟間で50%の一致が見られる理由は、遺伝子の50%がそれぞれの親から子に引き継がれるためです。SNPは単純なパターンで継承されるため、兄弟間での一致率が50%程度に安定するのです。
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親族鑑定でSTRとSNPをどう使い分けるか
親子関係の判定にはSTRを中心に用いるのが一般的ですが、推定父親同士が親族関係にある場合など、判定が難しいケースではSNPを組み合わせた解析が有効です。それぞれのマーカーの特性を理解しておくと、検査結果の見方も深まります。
たとえば、推定父親の候補が兄弟同士であるなど、近い血縁関係にある複数の男性の中から特定の一人を判定したい場合、STRだけでは両者のDNAパターンが似通っているため、判定に必要な一致率の差が出にくいことがあります。こうしたケースでは、より多くの座位を解析したり、SNPマーカーを組み合わせたりすることで、判定の精度を補強できます。法医学の分野でも、近親者間の判定には通常より多くのマーカーを用いることが一般的であり、単純に座位数を増やすだけでなく、統計的な計算モデル自体を近親者鑑定用に調整して精度を確保する手法が取られます。
ヒロクリニックのNIPPTでは、52座位のSTRマーカーを用いた解析を基本としていますが、判定が難しい個別のケースについては、検査前の診察で医師にご相談ください。近親者間での判定を希望される場合は、通常の父子鑑定よりも詳しい検体情報が必要になることがあります。
親族鑑定でよくあるケース
親族間のDNA一致率が問題になる場面としては、兄弟のどちらが父親かを確認したいケースや、祖父母と孫の血縁関係を確認したいケースが代表的です。いずれも、対象となる関係性によって用いるマーカーや判定の考え方が変わってきます。
- 兄弟のどちらが父親かを確認したい場合:STR一致率が25〜50%という幅を持つ兄弟間の特性を踏まえ、より多くのマーカーを解析することで判定の確度を高めます。
- 祖父母と孫の血縁関係を確認したい場合:親が不在などの事情で親子鑑定ができない場合に、祖父母を基準とした鑑定が検討されることがあります。一致率は親子・兄弟間よりも低くなるため、より慎重な解析が必要です。
- いとこ同士の関係を確認したい場合:一致率が12.5%程度と低いため、判定にはより高い精度の解析が求められます。
いずれのケースも、通常の父子鑑定と比べて一致率の差が小さくなるため、判定の難易度は上がります。ご自身のケースがどの関係性にあたるかによって、必要な検査内容や解析方法が変わりますので、検討段階でクリニックへご相談ください。一致率の理論値はあくまで平均的な目安であり、実際の解析では個々のマーカーごとの結果を統計的に組み合わせて総合的に判定します。
まとめ
STRとSNPは、どちらもDNA鑑定で使われる遺伝的マーカーですが、親子で50%、兄弟で25〜50%、いとこで12.5%という一致率の出方には違いがあります。STRは親子・兄弟関係の判定に、SNPは広範囲の親族関係や祖先調査に適しており、目的に応じて使い分けられています。
兄弟間のSTR一致率が25〜50%という幅を持つのは、遺伝子が両親からランダムな組み合わせで受け継がれるためであり、検査の誤りではありません。近親者間での判定を検討する際は、こうした一致率の特性を理解したうえで、必要に応じてより多くのマーカーを解析するなど、精度を補強する方法をクリニックにご相談ください。私自身、診療の中で「一致率の数字が思っていたものと違う」というご質問を受けることがありますが、STRとSNPそれぞれの遺伝の仕組みを理解いただくと、多くの場合は納得していただけています。
よくある質問
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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定
ヒロクリニックのDNA出生前親子鑑定(NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。
略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Ge J, Budowle B. How many polymorphic single nucleotide polymorphisms (SNPs) are needed for kinship testing? Forensic Sci Int Genet. 2012 Jul;6(4):487-493.
- Hepler AB, Weir BS. Object-oriented approach to calculating likelihood ratios for parentage and kinship testing. Forensic Sci Int Genet. 2008 Jun;2(3):241-250.





