最先端のNovaseqとは

デジタル解析システムのイメージ写真

この記事の概要

NovaSeqは、Illumina社が提供する最先端の次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer, NGS)で、非常に高いスループット(大量のデータ生成能力)を特徴としています。NovaSeqは、現在市場に出回っているIlluminaのシーケンサーの中でも最も高性能なモデルで、大規模な全ゲノムシーケンシング(WGS)やトランスクリプトーム解析(RNA-seq)、エクソーム解析など、大量のデータを必要とするプロジェクトに最適です。

NovaSeqは、幅広いデータスループットオプションを備えたIllumina社の次世代シーケンサーで、大量サンプルの解析や複雑なゲノムの網羅的解析に使用されるリーダーモデルです。ヒロクリニックの自社ラボでも、遺伝子解析の基盤技術のひとつとして、こうした次世代シーケンサーを活用しています。この記事では、NovaSeqの特徴・用途・利点を、公表されているスペックに基づいて分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • NovaSeqの主な特徴(スループット・スピード・化学反応)
  • フローセルの種類ごとのデータ生成量
  • NovaSeqの主な用途
  • ヒロクリニックの検査体制における位置づけ

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1. NovaSeqの主な特徴

NovaSeqの最大の特徴は、高いデータスループットと、プロジェクト規模に応じて選べる複数のフローセルオプションです。ここでは、Illumina社が公表している仕様をもとに、主な特徴をひとつずつ整理していきます。

高スループット

NovaSeqの特徴のひとつが、高いデータスループットです。もっとも生成量の多いS4フローセルを2枚同時に使用するデュアルフローセル構成の場合、1回のランで最大6,000 Gb(6 Tb)ほどのデータを生成できます。これは、他の多くのIlluminaシーケンサーと比較しても高い水準です。

柔軟なスループットオプション

NovaSeqは、フローセル(Flow Cell)を使い分けることで、プロジェクトの規模に応じてデータスループットを調整できます。これにより、小規模から大規模なシーケンスプロジェクトまで対応可能です。Illumina社が公表している、ペアエンド150塩基対(2×150bp)読み取り時の主な仕様は、次のとおりです。

フローセル想定規模最大データ生成量(2×150bp)目安ラン時間
SPフローセル小規模・コスト重視約250 Gb約25時間
S1フローセル小〜中規模約500 Gb約25時間
S2フローセル中規模約1,250 Gb(1.25 Tb)約36時間
S4フローセル大規模約3,000 Gb(3 Tb)約44時間

S4フローセルを2枚同時に使用するデュアルフローセル構成では、この2倍にあたる最大6,000 Gb(6 Tb)ほどのデータを1回のランで得られます。プロジェクトの目的や必要なサンプル数に応じて、最適なフローセルを選択できる点が実務上の強みであり、無駄なコストをかけずに必要な規模の解析を実現できます。

比較的短時間でのデータ取得

NovaSeqは、比較的短時間でのデータ生成が可能です。ペアエンド150塩基対(150 bp × 2)のリードを使用した場合、フローセルの種類によって約25時間から44時間程度で大量のデータを生成できるため、時間のかかる全ゲノム解析大規模RNAシーケンスプロジェクトでも、比較的短い期間で結果を得ることができます。従来型のシーケンサーでは同規模のデータ取得に数日から数週間を要していたことを踏まえると、この所要時間の短さは大きな進歩といえます。

SBS技術(シーケンシングバイシンセシス)

  • シーケンシングバイシンセシス(SBS)技術
    NovaSeqもIlluminaの他のシーケンサー同様に、SBS技術を利用しています。この技術は、蛍光標識されたヌクレオチドを一塩基ずつ取り込んでいく過程をリアルタイムで検出し、DNA配列を決定する方式です。高精度かつ高スループットなデータ生成が可能です。
  • 2チャンネルSBS化学
    NovaSeq 6000は、2つの蛍光色素と2回の撮像で4種類の塩基すべてを判定する「2チャンネルSBS化学」を採用しています。なお、Illumina社が近年展開している上位モデル「NovaSeq X」シリーズでは、これをさらに発展させた「XLEAP-SBS化学」という新しい化学反応が採用されており、従来比で高速化・高精度化が図られています。導入している機種によって採用されている化学反応が異なる点には注意が必要です。

デュアルインデックス化オプション

NovaSeqは、デュアルインデックス化をサポートしており、1回のランで多数のサンプルを同時にシーケンスできます。デュアルインデックス化とは、各サンプルに2種類の識別タグ(インデックス配列)を付与したうえで、まとめて1回のランで解析し、後から配列データをサンプルごとに正しく振り分ける手法です。これにより、複数サンプルを効率的に処理し、1サンプルあたりの検査コストや所要時間を削減できます。

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NovaSeqとヒロクリニックの検査体制における位置づけ

ヒロクリニックの自社ラボ「東京衛生検査所」では、目的に応じて複数の次世代シーケンサーを使い分けています。NovaSeqのような高スループット機は、広範なゲノム情報を網羅的に解析する用途に適した技術です。

一方、出生前親子鑑定における父権肯定確率の算出では、法医学分野での実績が豊富なSTR(Short Tandem Repeat)分析に特化した機器を用いています。つまり、NovaSeqのような高スループット機は主に広範なゲノム解析の場面で力を発揮する技術であり、親子鑑定そのものの判定に使用する解析手法とは役割が異なります。目的に応じて適した解析手法・機器を使い分けている点が、東京衛生検査所の検査体制の特徴です。

私自身、患者さまから「同じ機械で全部の検査をしているのですか」と聞かれることがありますが、実際には検査の目的によって最適な機器・手法を選んでいるとお答えしています。親子鑑定のように高い個人識別力が求められる検査と、広範なゲノム情報を網羅的に把握したい検査とでは、求められる性能の方向性が異なるためです。こうした使い分けの背景を知っていただくと、検査結果への理解も深まるのではないかと感じています。

次世代シーケンサーによる遺伝子解析のイメージ

2. NovaSeqの用途

NovaSeqは、大規模なシーケンシングプロジェクトや、高いスループットを必要とする研究・検査サービスに広く利用されています。主な用途は以下のとおりです。

2.1 全ゲノムシーケンシング(WGS)

NovaSeqは、ヒト全ゲノムシーケンシングのモデル機種のひとつとして使用されており、大規模集団の全ゲノム解析が可能です。個別ゲノムプロファイリングや、疾患関連の大規模ゲノム変異解析に適しています。1回のランで複数人分の全ゲノムをカバーすることができ、がん研究集団ゲノム解析プロジェクトなどで利用されています。全ゲノムシーケンシングでは、ヒトゲノム全体(約30億塩基対)を対象とするため、1サンプルあたりのデータ量が大きくなりますが、NovaSeqの高スループット性能により、複数サンプルを並行して処理することが可能です。

2.2 トランスクリプトーム解析(RNA-seq)

NovaSeqは、RNAシーケンス(RNA-seq)を利用した遺伝子発現解析においても、大規模データを比較的短期間で取得できるため、トランスクリプトーム解析に利用されています。多数のサンプルのRNAプロファイリングを一度に実行できる点が強みです。

2.3 エクソームシーケンシング

エクソームシーケンシングは、遺伝子のコード領域を対象にしたシーケンスで、疾患関連遺伝子変異を網羅的に解析する手法です。NovaSeqでは多数のサンプルのエクソームシーケンスを並列で行うことができ、大規模な遺伝子変異プロジェクトに向いています。

2.4 ターゲットシーケンシング

NovaSeqは、がん遺伝子パネル遺伝性疾患解析パネルのようなターゲットシーケンシングにも使用され、あらかじめ絞り込んだ遺伝子領域の変異を検出することができます。多重化されたサンプルを効率よく解析できるため、費用対効果の高い解析手法として活用されています。

2.5 メタゲノム解析

NovaSeqは、メタゲノム解析(環境DNA解析)にも使用され、環境中の微生物群集の多様性解析や、病原体のモニタリング、進化研究などに利用されています。

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3. NovaSeqの利点

NovaSeqの利点は、高いスループットと比較的短い所要時間を両立しながら、幅広い解析用途に対応できる汎用性の高さにあります。主な利点を整理すると、次のとおりです。

  1. 高いスループット:デュアルフローセル構成で最大6,000 Gb(6 Tb)ほどのデータ生成能力を持ち、大規模プロジェクトや多数サンプルの解析を比較的短期間で行えます。
  2. 比較的短時間でのデータ取得:フローセルの種類によって差はありますが、約25時間から44時間程度で大量のシーケンスデータを生成できるため、時間のかかる大規模解析プロジェクトでも比較的短期間で結果を得ることが可能です。
  3. コスト効率の向上:高スループットと多数のサンプルを処理できる特性により、1サンプルあたりのコストを抑えやすく、大規模研究において効率的です。
  4. 幅広い応用範囲:全ゲノム解析、RNAシーケンス、エクソーム解析、ターゲットシーケンス、メタゲノム解析など、幅広いアプリケーションに対応できます。

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よくある質問

NovaSeqについて、よくいただくご質問をまとめました。専門的な内容も含まれますが、検査の仕組みを理解するための参考としてご活用ください。

NovaSeqは、どんなときに使われる装置ですか?

全ゲノムシーケンシング、RNAシーケンス、エクソームシーケンス、ターゲットシーケンス、メタゲノム解析など、幅広いゲノム解析用途で使われる次世代シーケンサーです。大量のサンプルを比較的短期間で解析できる点が特徴です。

NovaSeqは親子鑑定の判定そのものに使われていますか?

ヒロクリニックの出生前親子鑑定における父権肯定確率の算出は、法医学分野での実績が豊富なSTR分析に特化した機器で行っています。NovaSeqのような高スループット機は、主に広範なゲノム解析の場面で活用される技術です。

NovaSeqのフローセルにはどんな種類がありますか?

SP・S1・S2・S4の4種類があり、プロジェクトの規模に応じて選択します。ペアエンド150塩基対で比較すると、SPが約250 Gb、S1が約500 Gb、S2が約1,250 Gb、S4が約3,000 Gbのデータを生成できます。

1回のランにはどのくらいの時間がかかりますか?

ペアエンド150塩基対の場合、フローセルの種類によって約25時間から44時間程度です。小規模なフローセルほど短時間で完了する傾向があります。

NovaSeqとNovaSeq Xは同じ装置ですか?

異なるモデルです。NovaSeq 6000は2チャンネルSBS化学を採用しているのに対し、Illumina社の上位モデルであるNovaSeq Xシリーズは、より新しいXLEAP-SBS化学を採用しています。同じ「NovaSeq」という名称でも、世代によって仕様が異なる点にご注意ください。

まとめ

NovaSeqは、Illumina社の次世代シーケンサーのなかでも高いデータスループットと柔軟なフローセルオプションを備え、大規模なゲノム解析プロジェクトに適した機種です。全ゲノムシーケンシングやエクソーム解析、RNAシーケンスなど、多数のサンプルを同時に解析し、比較的短期間で大量のデータを生成できるため、高スループット解析を必要とする研究機関や検査サービスに広く利用されています。

ヒロクリニックの自社ラボでは、こうした高スループット機によるゲノム解析と、親子鑑定に特化したSTR分析用の機器とを目的に応じて使い分けることで、それぞれの検査に適した精度と体制を確保しています。技術的な仕組みを知ることで、検査結果や精度の背景にどのような技術が使われているのかをイメージしやすくなるはずです。技術面でご不明な点があれば、検査前の段階でお気軽にお問い合わせください。

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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定

ヒロクリニックDNA出生前親子鑑定NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。

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医師監修 監修日:2024年10月19日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年10月19日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Lo YM, Corbetta N, Chamberlain PF, Rai V, Sargent IL, Redman CW, et al. Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum. Lancet. 1997 Aug 16;350(9076):485-7.
  2. Fan HC, Blumenfeld YJ, Chitkara U, Hudgins L, Quake SR. Noninvasive diagnosis of fetal aneuploidy by shotgun sequencing DNA from maternal blood. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Oct 14;105(41):16266-71.
  3. Chiu RW, Chan KC, Gao Y, Lau VY, Zheng W, Leung TY, et al. Noninvasive prenatal diagnosis of fetal chromosomal aneuploidy by massively parallel genomic sequencing of DNA in maternal plasma. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Dec 23;105(51):20458-63.
  4. Bianchi DW, Parker RL, Wentworth J, Madankumar R, Saffer C, Das AF, et al. DNA sequencing versus standard prenatal aneuploidy screening. N Engl J Med. 2014 Feb 27;370(9):799-808.
  5. Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, Laurent LC, Ranzini AC, Brar H, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. N Engl J Med. 2015 Apr 23;372(17):1589-97.

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