この記事の概要
この記事では、へその緒を利用した親子鑑定について解説しています。へその緒には赤ちゃんのDNAが含まれており、保存状態が良ければ数年後でも親子関係の確認が可能です。非侵襲的な方法で、出産後すぐに採取されたサンプルを用いて正確な鑑定が行えます。また、法的手続きにも利用できる信頼性の高い方法ですが、保存状態やサンプルの質に注意が必要です。鑑定の流れや利点、法的利用についても触れています。
へその緒を使った親子鑑定は、「出産直後に保存しておいたへその緒があるので、それで調べられないか」というご相談で話題にのぼることがあります。へその緒には赤ちゃんのDNAが含まれていますが、保存状態によって解析できるかどうかが大きく左右される検体です。
この記事では、へその緒を使った親子鑑定の仕組みと、実際に検討する際に知っておきたい注意点を解説します。
この記事でわかること
- へその緒にDNAが含まれる仕組み
- 保存状態によって結果の信頼性がどう変わるか
- 法的鑑定として使う場合に必要な条件
- ヒロクリニックで検討する際の考え方
へその緒にDNAが含まれる仕組み
へその緒には赤ちゃん由来の細胞が含まれているため、理論上はDNAを抽出して親子鑑定に利用できます。へその緒は、出産時に赤ちゃんと胎盤をつないでいた組織です。日本では、へその緒を記念として乾燥させて保存する家庭も少なくありません。
日本の産科医療では、退院時に乾燥させたへその緒を専用の桐箱(へその緒箱)に入れてお渡しする慣習が広く見られます。この慣習があるからこそ、「せっかく残しているのだから活用できないか」というご相談につながりやすい面があります。実際にご相談を受ける中でも、記念として保管していたへその緒を活用できないかと考える方は少なくありません。
ただし、へその緒には赤ちゃん自身の細胞だけでなく、出産時に付着した母体側の血液や組織が混ざっていることもあります。この混入は、解析の精度に影響する要因の1つです。
バレずにこっそり検査できる
出産後でも鑑定できます
保存状態が結果を左右する
へその緒からDNAを抽出できるかどうかは、保存年数そのものよりも保管環境の良し悪しに大きく左右されます。乾燥した状態で適切に保管されていれば、DNAを抽出できる可能性はあります。ただし、時間の経過とともにDNAは劣化していくため、保存年数が長いほど、解析に十分な量・質のDNAを得られる保証はありません。
湿気の多い環境での保管や、直射日光にさらされた状態が続くと、DNAの劣化がさらに進みます。「保存してあるから大丈夫」と決めつけず、実際に解析可能かどうかは検査機関に確認する必要があります。
私自身、へその緒での鑑定を希望される方には、まず現物の状態を確認させていただくようお伝えしています。乾燥具合や保管環境によって結果が大きく変わるため、事前の確認を省略できない検体だと感じています。
これから保存する場合に気をつけたい保管方法
今後の検査可能性を少しでも高めたい場合は、乾燥と湿気対策を意識した保管方法を選ぶことが重要です。へその緒は、出産後の乾燥処置を終えたあと、風通しの良い環境で完全に乾燥させてから保管します。
密閉した容器やビニール袋にそのまま入れてしまうと、内部に湿気がこもりカビや劣化の原因になることがあります。紙製の封筒や桐箱など、通気性のある容器での保管が一般的とされています。また、直射日光が当たる場所や、高温多湿になりやすい場所(浴室近く、キッチン周辺など)は避けたほうが安心です。将来的に検査を検討する可能性が少しでもある場合は、保管を始めた時期をメモしておくと、後で状態を判断する際の目安になります。

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へその緒を使うメリットと限界
へその緒を使う最大のメリットは、赤ちゃんに新たな採取をお願いする必要がないことです。すでに保管されている検体を使うため、乳幼児期の子どもに負担をかけずに済みます。
一方で、限界もあります。DNA量が不足していたり、劣化が進んでいたりすると、解析自体ができない、あるいは再検査が必要になることがあります。急いで結果を知りたい場合は、頬粘膜スワブなど、より安定して採取できる検体を選ぶ方が確実です。
| 検体 | 採取のしやすさ | DNA量の安定性 | 追加費用(税込) | 法的鑑定への利用 |
|---|---|---|---|---|
| 頬粘膜スワブ | いつでも簡単に採取可能 | 安定 | 不要(基本料金内) | 可能 |
| へその緒(乾燥保存) | すでに保管があれば追加採取は不要 | 保存状態に左右される | +33,000円 | 不可(私的鑑定のみ) |
| 毛髪 | 毛根付きの採取が必要 | 本数・毛根の有無に左右される | +33,000円 | 不可(私的鑑定のみ) |
へその緒を含む特殊検体は、頬粘膜スワブに比べて追加費用がかかるうえ、法的鑑定には利用できません。裁判所や入国管理局への提出を予定している場合は、検体の選び方に特に注意してください。
私は、へその緒での鑑定を急いでいる方には、あえて頬粘膜スワブとの並行検討をご提案することがあります。結果が出ないリスクを避け、安心して待てる方法を優先したいためです。
出生後のDNA鑑定で使える他の検体については、毛髪からのDNA抽出による出生後の親子鑑定もあわせてご覧ください。
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私的鑑定と法的鑑定、そもそもの違い
私的鑑定は家庭内での確認を目的とした検査、法的鑑定は裁判所や行政機関へ提出する証明力を持つ検査という違いがあります。へその緒を使った鑑定は私的鑑定に限られるため、まずどちらの鑑定が必要なのかを整理しておくことが大切です。結果の受け取り方も異なり、私的鑑定はメールでの報告が基本ですが、法的鑑定では医師直筆のサイン入り書類が別途郵送されます。
認知届や国籍取得の手続きなど、公的な証明が必要な場面では法的鑑定が求められます。一方、単に家族内の疑問を解消したいだけであれば、私的鑑定で十分なケースがほとんどです。目的が曖昧なまま検査を進めてしまうと、後から法的な用途に使えないことが分かり、再検査が必要になるケースもあります。費用や手続きの詳細はDNA鑑定の費用(私的・法的鑑定の比較)で解説しています。
法的鑑定として使う場合の条件
ヒロクリニックでは、へその緒のような特殊検体を法的鑑定に使うことはできません。裁判所や入国管理局などへ提出する法的鑑定は、必ずご来院いただいたうえで専用綿棒(スワブ)を採取する方式に限られます。へその緒を使った鑑定は、家庭内での確認を目的とした私的鑑定としてのみご案内しています。
これは、へその緒が出産時にさまざまな人の手に触れている可能性があり、DNAの混在によって判定不能となるリスクが高い検体であることに加え、採取・保管の経緯を客観的に証明することが難しいためです。法的な証拠能力が問われる場面では、一般的に、誰が・いつ・どのように検体を採取・保管したかを記録した書類(チェーン・オブ・カストディ)が重要視されます。法的鑑定が必要な場合は、へその緒ではなく、クリニックでの専用綿棒採取による検査を選んでください。
法的鑑定における検体採取の基本的な考え方は法的遺伝子鑑定の際の検体採取についてで解説しています。
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ヒロクリニックで検討する際の考え方
ヒロクリニックでは、頬粘膜スワブによる採取を標準の検体としつつ、へその緒を私的鑑定に限り特殊検体として受け付けています。ただし、通常の頬粘膜スワブに比べて判定不能となるリスクが高い点にはご留意ください。標準の頬粘膜スワブはいつでも安定して採取できるのに対し、へその緒は保存状態によって解析できるかどうかが大きく左右されるため、あらかじめ双方の違いを理解しておくことが大切です。
お子さんのDNA鑑定を検討する際に押さえておきたいポイントは子供のDNA鑑定は必要?メリットと注意点を解説でも紹介しています。
へその緒を検体として提出する際の注意点
へその緒を検体として提出する場合は、追加費用と返却不可という2点を必ず確認しておいてください。特殊検体を利用する場合、頬粘膜スワブによる基本料金に加えて、33,000円(税込)の追加費用が発生します。被検者を1名追加するごとに、さらに費用が加算される点も事前に確認しておくと安心です。
また、提出されたへその緒は検査工程で消費されるため、検査後に返却することはできません。出産の記念として大切に保管されてきたへその緒を、そのままの形で残しておきたいという場合は、提出を控えることをおすすめします。写真に撮って記録に残してから提出するというご家庭もあります。事前にご家族でよく話し合ったうえで、提出するかどうかをご判断ください。
へその緒以外の特殊検体という選択肢
へその緒以外にも、毛髪・歯ブラシ・爪など、日常的に使われたものから検体を採取できる場合があります。これらもへその緒と同様、頬粘膜スワブに比べるとDNA量が安定しにくい面がありますが、対象者に新たな採取をお願いしにくい事情がある場合の選択肢になります。反対に、たばこの吸い殻や遺骨・遺灰のように、熱や燃焼の影響でDNAが破壊されてしまい、検査自体を受け付けられない検体もあります。
いずれの特殊検体も、頬粘膜スワブに比べてDNAの抽出が難しい場合があります。万が一DNAが検出できず判定不能となった場合でも、原則として費用の返金はできません。複数の検体をお持ちの場合は、あわせて提出することで解析成功の可能性を高められることもありますので、事前にクリニックへご相談ください。
出産後の大切な思い出であるへその緒を鑑定に使うかどうかは、ご家族にとって簡単には決められない選択かもしれません。まずは現物の状態を確認してもらったうえで、無理のない形で検討を進めてください。迷う場合は、頬粘膜スワブでの検査とあわせて、どちらが状況に合っているかをクリニックに相談することをおすすめします。
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よくある質問
Q1. 何年前に保存したへその緒でも鑑定できますか?
保存年数だけでは判断できません。保管環境や乾燥状態によってDNAの劣化度合いが異なるため、現物を確認したうえでの判断が必要です。
Q2. へその緒だけで、母親のサンプルなしでも鑑定できますか?
へその緒には母体側の組織が混ざっていることがあるため、母親のサンプルをあわせて提出すると、解析の精度を保ちやすくなります。
Q3. へその緒を使った鑑定は裁判所の証拠として使えますか?
いいえ、へその緒は法的鑑定には利用できません。ヒロクリニックの法的鑑定は、必ずご来院いただいたうえでの専用綿棒(スワブ)採取に限られます。へその緒を使った鑑定は、家庭内での確認を目的とした私的鑑定としてのみご案内しています。
Q4. ヒロクリニックではへその緒での鑑定に対応していますか?
標準の検体は頬粘膜スワブですが、へその緒は私的鑑定に限り特殊検体として対応可能です。追加費用や返却不可などの条件があるため、まずはクリニックへご相談ください。
Q5. へその緒での解析に失敗した場合はどうなりますか?
DNA量が不足している場合、十分な結果が得られないことがあります。その場合は、頬粘膜スワブなど他の検体での再検査を検討することになります。なお、判定不能となった場合でも、原則として費用の返金はできません。
Q6. 提出したへその緒は、検査後に返却してもらえますか?
いいえ、返却はできません。提出されたへその緒は検査工程で消費されるため、検査後にお戻しすることができません。記念品として残されたい場合は、提出をお控えください。
Q7. へその緒での鑑定には追加費用がかかりますか?
はい。頬粘膜スワブによる基本料金に加えて、特殊検体の追加費用として33,000円(税込)がかかります。
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まとめ
へその緒は私的鑑定に限り検体として提出できますが、判定不能のリスクや追加費用、返却不可という条件を理解したうえで検討することが大切です。へその緒には赤ちゃんのDNAが含まれており、理論上は親子鑑定に利用できます。しかし、保存状態によって結果の信頼性が大きく変わるため、「保存してあるから確実」とは言い切れません。
急いで確実な結果を求める場合や、法的鑑定が必要な場合は、頬粘膜スワブなど安定して採取できる検体を選んでください。へその緒での鑑定を検討している場合は、まず現物の状態を検査機関に確認してもらいましょう。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Voskamp BJ, Fleurke-Rozema H, Elkemann M, Coens SJ, Bilardo CM, Snijders RJ, et al. Relationship of isolated single umbilical artery with intrauterine growth restriction, neonatal birth weight and preterm birth. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013;42(2):189-196.
- Hasegawa J, Matsuoka R, Ichizuka K, Sekizawa A, Okai T. Velamentous cord insertion into the lower third of the uterus is associated with intrapartum fetal heart rate abnormalities. Ultrasound Obstet Gynecol. 2006;27(4):425-429.
- de Laat MW, Nikkels PG, Franken C, van den Elzen AP, Visser GH. Umbilical cord coiling: a review. Am J Obstet Gynecol. 2005;193(3):571-579.
- Peesay MR. Nuchal cord and its implications. Children (Basel). 2017;4(12):108.





