月経前症候群(PMS)とは?原因や症状、治療法を解説【医師監修】 | ヒロクリニック

医師監修記事

月経前症候群(PMS)とは?原因や症状、治療法を解説【医師監修】

月経前症候群(PMS)

月経前症候群(略称:PMS)という病気は、定期的に訪れる月経周期前の3日から10日前後の日程で続く精神的な不調や身体的な関連症状の総称を指しており、通常では月経が開始すると共に症状が軽快または消失する状態を意味します。 今回は、月経前症候群がどのような病気なのか、その病気の原因、症状、治療などを中心に詳しく解説していきます。 目次 月経前症候群とはどのような病気か 月経前症候群の原因 月経前症候群の症状 月経前症候群の治療 まとめ 月経前症候群とはどのような病気か 本邦では、定期的に訪れる月経や生理周期を有する女性のおよそ8割の方々が月経前に何らかの症状があると指摘されています。 さらに、それら症状が日常的な生活に支障や困難をきたすほどに強く出現する割合は女性全体のおおむね5%前後と伝えられています。 特に、思春期前後の女性では月経前症候群の罹患頻度が通常よりもさらに多くなるとの報告もされています。 月経前症候群では、月経が訪れる前に約3日間から10日間程度継続する精神的あるいは身体的な不調症状を呈する状態であることが知られており、月経が開始するにつれて自覚症状が軽快ないし消失するのが特徴のひとつです。 また、月経に関連した精神的な不調や身体的症状を認める場合を月経前症候群(略称:PMS)、そしてその重症化したタイプを月経前不快気分障害(略称:PMDD)と呼称しています。  月経前症候群の原因 一般的に、女性には個々に若干の違いはありますが、おおむね25〜38日間の性周期があると言われており、月経の始まりから月経終了、そして次の月経が訪れるまでがひとつの周期的なサイクルが形成されています。 そうした性周期の前半部分では、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンというホルモンが多く分泌されて、卵巣内部の卵胞自体が成熟する「卵胞期」という段階が訪れます。 その後、性周期の前半が開始されてから14日目前後に成熟した卵胞から卵子が排出されて排卵される流れが自然です。 排卵した後には妊娠準備のために黄体からエストロゲンと異なるもうひとつの女性ホルモンとして知られているプロゲステロンが生理的に多く分泌されるフェーズが訪れます。 この時期は「黄体期」と呼ばれており、およそ2週間ほどして妊娠が成立しなければ、妊娠するために準備されていた子宮内膜が剥脱して月経が生じることによって、次の性周期に移行する運びとなります。 個々のケースによって大きく症状の重症度が異なる本疾患の明確な原因は判明していませんが、排卵後に訪れる月経前のいわゆる黄体期に分泌される女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に変動することが発症と深く関与していると想定されています。 これらの黄体期の後半に卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンと呼ばれるプロゲステロンが急激に変動して分泌低下することで、脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことに繋がり、月経前症候群を引き起こす直接的な原因と考えられています。 なお、月経前症候群は女性ホルモンの低下だけが原因ではなく、日々の過剰なストレスなどによって脳内のホルモンや神経細胞に関連する伝達物質が悪影響を受けて発症するとも指摘されています。 月経前症候群の症状 月経前症候群の精神症状としては情緒不安定、ちょっとしたことでイライラ感を募らせる、抑うつ症状、不安を抱いて睡眠が障害されることなどが挙げられます。 自律神経症状としては、全身ののぼせ感や食欲不振、頭重感やめまい症状、倦怠感や疲労感などを自覚することも経験されますし、身体的症状は、腹痛、頭痛、腰痛、全身のむくみ、そして乳房の張りなどの症状を自覚することも多いと言われています。 急な環境の変化や、ハードワークによる緊張状態が続いた時など、ストレスがたまっていると、月経前症候群の症状を自覚しやすくなることが知られており、基本的には性格的に律儀で真面目、几帳面で完璧主義の方では月経前症候群の症状を認められやすいと考えられています。 また、カフェイン入りのコーヒーを普段からよく飲む場合、バランスの悪い食事をしている場合、あるいは風邪や病気で免疫力が低下して自律神経が乱れている際には月経前症候群の症状が重症化する傾向が認められます。 月経前症候群には主に身体症状と精神症状があり、いずれにしても非常に多彩な症状が出現することが特徴のひとつであり、これらの症状は月経が訪れる3日から10日程度前から始まって月経開始と共に改善傾向を示すことが多いです。 精神症状を顕著に認める場合は、月経前の不快な気分障害を認めるタイプもあることが知られており、特に精神神経症状や精神状態の悪化所見がひどい際には、月経前症候群と違って月経前不快気分障害(英語表記:premenstrual dyspholic disorder : 略称PMDD)の可能性もあります。  月経前症候群の治療 一般的に、月経前症候群に対する治療策のひとつの手段として、薬物による治療、あるいは薬にたよらない治療方法が検討されます。 医療機関では、月経前症候群の症状と類似している気分障害やうつ病などの精神神経疾患と鑑別することも重要な視点となります。 月経前症候群と診断された際には、比較的症状が軽微な場合には生活カウンセリングや生活習慣改善のための衛生指導が実施されます。 月経前症候群に随伴する症状を改善させるためには、有酸素運動を主体とした適度な運動、禁煙、節酒、そして日常生活におけるストレスの解消方法などを中心に指導を行います。 重症な場合には、イライラ感や怒り感情が強くなって他者を無意識に罵倒することもあるだけでなく、そういった症状を周囲に十分理解してもらえないしんどさから自ら社会から離脱して引きこもりになるケースもあります。 普段の日常生活では、自分のライフリズムを知って気分転換やリラックスする時間を出来るだけ設ける、あるいは自分が心地良いと思えるようなセルフケア方法を検索して探してみるのも月経前症候群の症状を改善させる治療策になる可能性があります。 月経前に月経前症候群を疑う悩ましい症状を自覚した際には、それらの出現症状を自分なりに記録して、月経周期との関連性を確認することも重要なポイントです。 月経前に情緒不安定になっているのは、神経が緊張して興奮している状況が考えられると同時に、女性ホルモンのバランスも乱れている可能性が考えられ、女性ホルモンのバランスを整えるためにコーヒーや紅茶などのカフェインが多量に入っている飲料を出来る限り控えましょう。 また、情緒不安定を緩和させて精神状態を安定させる作用を有するビタミンB群、カルシウム、マグネシウムなどのビタミンやミネラル成分を積極的に摂取するように心がけましょう。 植物のエストロゲンとも呼ばれる女性ホルモンに似た働きのある豆腐、豆乳などに含まれるイソフラボンやブロッコリーなどに含有されている神経伝達物質の代謝に関与しているビタミンEを摂取してリラックスできる場合もあります。 精神神経症状や自律神経症状に対しては、精神安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの薬物療法(脳内の活性物質セロトニンを維持する治療法)を使用することがありますし、市販のサプリメント療法、漢方薬を使用する東洋学的漢方療法やピルなどを用いた排卵抑制療法(排卵を抑える治療法)も月経前症候群の症状を緩和させる治療選択肢のひとつと言えるでしょう。 まとめ 月経前症候群は、通常では月経が開始する3日から10日ほど前から吐き気や頭痛、眠気などの身体的症状や不安感やイライラする感情など精神的に不快な症状を呈することが知られており、これらの症状は月経が開始すると同時に改善していくのが特徴として挙げられます。 一般的に、月経のある女性の大部分は月経前に何らかの不快症状を感じると言われています。 日常生活に支障を来すほどの症状を認める場合には月経前症候群を疑い、その症状が軽度な場合には、生活習慣の改善などを行うことで状態が改善することも多いと考えられています。 一方で、症状が重症化すると著しい気分変調を来す気分障害と呼ばれる精神疾患のひとつとして捉えられることもありますので、できるだけ事前に月経前症候群にならないために工夫して対策を講じることが重要なポイントです。 具体的にいつからひどい症状が出現して続くのかをセルフチェックした上で病院の担当医に相談して、適切な診断に結び付けてもらうようにしましょう。 今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。 【参考文献】

過敏性腸症候群の原因と症状・ストレスとの関係性について【医師監修】

過敏性腸症候群の原因と症状・ストレスとの関係性について

過敏性腸症候群とは、大腸に炎症や腫瘍などの病気は認められないものの、腹部の不快感や便秘、下痢などの症状が長期間に続く状態のことです。この記事では近年、増加傾向にある過敏性腸症候群のおもな原因と治療法について医師が解説します。

更年期に見られる症状と原因・治療法の男女差についての詳細【医師監修】

更年期

更年期とは「閉経を迎える前後5年間」のことです。閉経平均年齢を50歳前後として、一般的に45〜55歳を更年期と呼び、その時期に起こるさまざまな症状を更年期障害と定義します。この記事では更年期障害の原因と症状、治療法について医師が解説します。

アルコール依存症の診断基準とストレスの関係性について【医師監修】

アルコール依存症の診断基準とストレスの関係性

お酒の歴史は紀元前までさかのぼり、神への捧げ物や人々のコミュニケーションツールとされてきました。一方で過度な飲酒を繰り返し、アルコール依存症などに陥るケースも少なくありません。この記事ではアルコールが招くさまざまな病気を医師が解説します。

五月病とは?適応障害の原因、症状、治療法の詳細解説【医師監修】

五月病

春を迎える頃に多く耳にする五月病。新年度の環境変化に心が追いつかず鬱々とした状態を指しますが、放置することで悪化し、適応障害やうつ病を引き起こすことも少なくありません。この記事ではストレスによっておこる心の病気について医師が解説いたします。 目次 五月病の原因は環境変化による心のゆらぎ 適応障害とは 適応障害の診断基準 うつ病とは 適応障害とうつ病の違いとは 適応障害の症状 適応障害の対処法 うつ病の症状 うつ病の治療 適応障害によるおもな症状 適応障害の心の症状 適応障害のからだの症状 適応障害になりやすい人の特徴 身近な人が適応障害となった場合の対策と接し方 適応障害からうつ病へ 適応障害の再発 うつ病発症後の自殺による死亡は6日以内 今日からできる適応障害の対策 適応障害の抜け出し方は心療内科に相談を 五月病の原因は環境変化による心のゆらぎ 五月病とは新年度の進学や就職、転居などの環境変化に心が追いつかず、学生および新入社員が「学校や会社に行きたくない」「気分がふさぎ体調が優れない」など、憂うつな状態のことをいいます。また、ゴールデンウィーク明けに、これらの症状を訴える方も多くいらっしゃいます。 五月病は一般的に”軽いうつ病”ともいわれますが、医学的にはストレスを起因とする適応障害といえるでしょう。適応障害は放置することで、うつ病へと移行することも少なくありません。 適応障害とは 適応障害とは特定可能なストレスを起因とする心の病気のことです。入学や入社または転職を始めとし、結婚・離婚・死別など、これまでいた環境と異なる状況がストレスとなり、気分が落ち込んだり、からだの不調によって日常生活に支障をきたすとされています。 これらのことから、適応障害は学生や新入社員など若い人だけではなく、性別や年齢を問わず誰もが発症の可能性のある病気といえるでしょう。 なお適応障害の診断基準はDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)で定められ、うつ病とは異なる病態となります。 適応障害の診断基準 上記をすべて満たすことで適応障害と診断されます。なお「死別反応」とは家族やパートナーなど、親しい存在の死別にともなう悲しみや、抑うつ状態のことです。心の病気とは関係なく、正常な感情による反応とされています。 悲しみ・怒り・悩みなど、人は生きていく上でさまざまな感情(反応)が沸き起こります。しかし、それらの反応が過剰でなく、日常生活を送るうえで支障がないのであれば、適応障害とはいえないでしょう。 うつ病とは うつ病とは、仕事や趣味などの活動に対する興味・喜びが低下し、日常生活に支障をきたすような強い抑うつを感じている状態のことです。 うつ病はおもに強いストレスや、悲しみをともなう出来事などを原因として発症するといわれています。その原因に対して不釣り合いなほど強く、悲しみや抑うつ・不安などを長い期間感じることにより、「仕事中も涙が止まらない」「気分がふさぎ、起き上がることもできず寝てばかり」などの状態により、休職(休学)や退職(退学)を余儀なくされるケースも少なくありません。このほか、うつ病の原因はホルモンバランスや薬の副作用、遺伝などが挙げられます。 適応障害とうつ病の違いとは 適応障害とうつ病には似た症状も多く認められます。しかし、適応障害とうつ病は、診断基準も治療法も異なる病態です。 適応障害の症状 適応障害の症状はストレスとなる原因から離れることにより、症状が軽快しやすいとされています。また、趣味や自身が興味のあることについては楽しむことができます。睡眠や食欲は個人差がありますが、ストレスの原因から離れている場合、問題なくとれているケースも少なくありません。 適応障害の対処法 うつ病の症状 うつ病の症状は適応障害と異なり、職場や人間関係などストレスの原因から離れたとしても軽快しづらいとされています。適応障害の場合、自身の好きなことや趣味は楽しむことができますが、うつ病はこれまで好きだったことや、楽しかったことへの興味が失われてしまいます。また不眠や食欲減退なども挙げられます。 うつ病の治療 適応障害によるおもな症状 適応障害の症状は個人差があり、うつ病と似た症状も多く挙げられます。いずれも早期の診察と適切な治療が大切です。気分がふさぐ、抑うつ的、不眠や食欲低下(もしくは過食)などの症状が続いた際は、すみやかに心療内科で診察を受けましょう。 適応障害の心の症状 適応障害のからだの症状 適応障害になりやすい人の特徴 適応障害はストレスを原因とする心の病気です。環境の変化が怖い、気が弱いなどストレス耐性が低い人や、完璧主義であったり真面目な人ほど、適応障害になりやすいといわれています。なお、DSM-5によると適応障害の男女比率は1:2とされ、独身女性に多く見られる症状といわれています。 身近な人が適応障害となった場合の対策と接し方 家族や職場の同僚が適応障害と診断された場合、ストレスを原因とする病気であることを理解することが最も大切です。たとえば職場でのパワハラがストレスの原因であれば、パワハラ行為者と被害者との距離を保つよう配置換えを行う、出社を強制するのでなく可能な限り、在宅勤務を行える環境に整えることなどが挙げられるでしょう。 家族であれば接し方にも注意が必要です。適応障害はうつ病と異なり、自身に興味のあることや趣味を楽しむことができます。個人差はありますが、睡眠や食欲は問題のないケースも少なくありません。その様子を「大人の甘え」や「さぼり癖」などと非難せず、当事者の話に耳を傾け、つらい状況をサポートする姿勢を心がけましょう。 適応障害からうつ病へ 適応障害はストレスの原因の始まりから3ヶ月以内に発症したのち、ストレスの原因が解消され、6ヶ月以上続くことなく軽快する、とされています。しかしストレスとなる環境、または人間関係が改善されず適応障害の症状が長引き、うつ病へ移行することも少なくありません。 適応障害の再発 適応障害はストレスに始まり、ストレスを遠ざけることで、抑うつ状態から抜け出すことが可能とされています。しかし適応障害を発症した原因であるストレスに再び対峙した際、適応障害が再発する可能性は高く、適応障害からうつ病へ移行すると約60%の確率で再発のおそれがあるといわれています。 …

心と身体の不調を引き起こす冬バテの原因、症状、治療法の詳細解説【医師監修】

冬バテ

季節性の体調不調、「夏バテ」があるように寒さの厳しい時季には「冬バテ」が起こりやすいといわれています。またその症状は夏バテよりも深刻となるケースも少なくありません。この記事では冬バテの原因と治療法を医師が解説いたします。 目次 冬バテとは 冬バテのおもな原因 自律神経の乱れとは 冬バテの原因は寒暖差による自律神経の乱れ 冬バテのおもな症状 冬に風邪をひきやすい理由 冬バテによる気分の落ち込みと、うつ病の違いとは 冬バテによる気分の落ち込み うつ病 寒さ到来の前に冬バテ対策 冬バテの受診科について 冬バテの治療方法や内服薬について 冬バテなど季節性の心身の不調は早期受診を 冬バテとは 暑い季節に起こる食欲低下や、身体のだるさなどを引き起こす夏バテがあるように、寒い季節には冬バテといわれる季節性の体調不良が引き起こります。「バテ」とは、もちろん医学用語ではありません。元は「果てる」が語源とされ、ヘトヘトに疲れ、まさに精も根も尽き果てた状態を表すといえるでしょう。 夏バテのおもな症状は食欲低下・不眠・倦怠感などが挙げられます。一方、冬バテに多く見られる症状は、疲労感・倦怠感・頭痛・肩こり・不眠のほか、風邪やインフルエンザなどの感染症を繰り返してしまうことが特徴とされています。 冬バテのおもな原因 冬バテはおもに秋から冬へにかけて引き起こることが多いとされています。厳しい残暑から突然の冬日など、その寒暖差により自律神経が乱れ、さまざまな症状(体調不良)があらわれるといえるでしょう。また、室内でも暖房のきいた部屋から寒い風呂場への移動なども、身体にとっては急激な寒暖差となります。 自律神経の乱れとは 自律神経とは、体温調節・心臓・呼吸・消化など、ヒトが生きていく上で欠かすことのできない機能を無意識下でコントロールしている神経のことです。 自律神経は「交感神経(興奮や緊張)」と「副交感神経(リラックス)」の2種類の神経がバランスをとりながら、身体の機能調節を行なっています。仕事や運動時には交感神経が優位となり、休憩や睡眠時には副交感神経が優位となります。自律神経の乱れとは、このバランスが崩れ、身体に大きな負荷がかかることです。 冬バテの原因は寒暖差による自律神経の乱れ 体温調節を司る自律神経は、冬場の寒暖差により一日中、交感神経と副交感神経のスイッチを絶え間なく切り替えている状態です。これらの状態が全身の臓器に大きな負荷を与え、さまざまな症状を引き起こします。これらのことから冬バテとは、寒暖差による自律神経の乱れが原因といえるでしょう。 冬バテのおもな症状 冬バテは自律神経の乱れから引き起こされるため、自律神経失調症と似た症状が多く生じます。 冬バテの症状はさまざまであり、上記の症状が同時に生じることも多く見られます。倦怠感や肩こりなど、受診を迷うような軽微な症状であったとしても、治療の遅れによって慢性化することも少なくありません。季節の変わり目に心身の不調を感じた際は、早めに診察を受けることが大切です。 冬に風邪をひきやすい理由 気温の下がる冬は風邪やインフルエンザ、ウイルス性胃腸炎などの感染症罹患率が上昇するとされています。ヒトの健康は体温に左右されるともいわれ、体温が1℃下がると免疫力が約30%低下するとともに、基礎代謝も約10%低下するとされています。 免疫力とは体内に侵入したウイルスや菌などを排除する役割をもちます。しかし、冷えや加齢などにより免疫力が低下することで、さまざまな病気を引き起こします。また、基礎代謝とは生命活動に最低限必要とされるカロリー(エネルギー)のことです。特別な運動をせずとも脳や心臓・肝臓などの臓器を動かし、体温維持などに消費されるカロリーであることから、基礎代謝の低下はすべての身体機能が下がることといえます。 寒さによる冬バテが長く引くことで自律神経が乱れ、冷えを招き、それが風邪やインフルエンザなどの感染症を引き起こすことも少なくありません。これらのことから、冬バテの悪化を防ぐためにも身体を温め、体温を一定に保ち免疫力の低下を防ぐことが何よりも大切といえるでしょう。 冬バテによる気分の落ち込みと、うつ病の違いとは 冬バテの症状の中には「気分の落ち込み」「やる気や集中力の低下」が挙げられます。これらの症状は冬季うつ・ウインターブルーなどとも呼ばれ、うつ病と共通する症状があるものの、厳密にはうつ病と異なる診断がなされます。 冬バテによる気分の落ち込み うつ病 なお、うつ病には米国精神医学会DSM5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)による明確な診断基準が存在します。症状が冬バテによる気分の落ち込みによるものか、うつ病によるものかは自己判断せず、早期に心療内科を受診しましょう。 寒さ到来の前に冬バテ対策 冬バテは寒暖差による自律神経の乱れを原因とします。そのため、季節の変わり目に体温を一定に保つことが、最も重要な冬バテ対策といえるでしょう。また、自律神経を整えるためにストレスをためない・解消法を見つける、血行を促すための適度な運動、冷たい食べ物を避けた食事など、生活習慣を見直すことが大切です。 なお、コーヒーや紅茶などは温かい飲み物であっても、カフェインにより交感神経が刺激され、自律神経の乱れを招くおそれもあります。カフェインの過度な摂取や就寝前の飲用には注意が必要です。 またアルコールやタバコに含まれるニコチンも同様に、交感神経を刺激する作用があります。これらの刺激物は自律神経へ影響を与えるだけでなく、他の重篤な疾患を引き起こす原因とされています。 冬バテの受診科について 冬バテのおもな原因は自律神経の乱れにあります。寒暖差の激しい秋から、寒さが増す冬にかけて頭痛やイライラ、風邪などの感染症を繰り返してしまうといった冬バテ症状があらわれた場合は、心療内科を受診しましょう。 冬バテの治療方法や内服薬について 冬バテの症状には個人差があり、いくつかの症状が同時に生じるケースも少なくありません。おもな治療方法として、食事や就寝時間などの生活指導が行われ、頭痛やめまいなど症状ごとに対症療法(症状を緩和するための治療)が行われます。 自律神経に作用する漢方も市販薬として多く発売されています。しかし、正しい治療を行うためには、自律神経の乱れが寒暖差によるものか、ホルモンバランスによるものかを診察する必要があります。安易な自己判断と市販薬によるセルフケアは、症状によっては悪化を招くこともあるでしょう。冬バテ症状があらわれた際は、必ず医師の診察により適切な検査と治療を行うことが大切です。 冬バテなど季節性の心身の不調は早期受診を 冬バテは風邪やインフルエンザなどの罹患率も上昇します。ヒロクリニックは心療内科のほか内科も併設されているため、冬場に感染症を繰り返してしまう場合は、症状などをご相談ください。 冬バテに限らず、季節の変わり目は寒暖差により自律神経が乱れ、心身の不調を招きやすいとされています。年間を通し、心身ともに健やかな生活を送るためには、体温の安定やバランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。 【参考文献】

心療内科におけるめまいと耳鳴りについて原因と治療法の詳細解説【医師監修】

心療内科におけるめまいと耳鳴り

「めまい」と「耳鳴り」は特定の病気ではなく様々な症状のことです。めまいであれば歩くとフラフラする、耳鳴りであればキーンと音が聴こえるなどが挙げられます。この記事では自然治癒の難しい、めまいや耳鳴りの原因と治療法を医師が解説します。 目次 めまいと耳鳴りの症状とは おもなめまいの症状 めまいや耳鳴りの原因 めまい検査とは めまいと耳鳴りを伴うメニエール病とは めまい症状を特徴とするその他の原因と病気 良性発作性頭位めまい症 前庭神経炎 化膿性内耳炎 自律神経失調症 不安神経症・強迫性障害 適応障害 うつ病 ヒロクリニック心療内科によるめまいや耳鳴りの改善法 めまいと耳鳴りの症状とは 「めまい」と「耳鳴り」の症状(感覚)には個人差があり、その原因もそれぞれ異なるとされています。例えば、めまいであれば患者Aは「地面がグルグルと回転して吐き気がする」ことを訴え、患者Bは「歩くと左右から引っ張られるような感じで真っ直ぐの歩行が難しい」などが挙げられます。 耳鳴りの場合も患者Aは「日中に微かにドクドクと心音のように聴こえる」と我慢できるレベルの症状であり、患者Bは「大きなキーン音が鳴り止まず会社に行けない」と深刻な症状を訴えるケースなどが挙げられます。めまい・耳鳴りの症状や原因は一人ひとり異なることから、診断や治療、改善に時間を要することも少なくありません。 めまいの特徴として、耳鳴りを同時に発症することもあり、いずれの症状も仕事や家事など日常生活に支障をきたすといえるでしょう。また、吐き気や嘔吐を伴うめまいの場合は外出や人と会うことが困難となり、うつ状態になることもあるため早めの受診が必要です。 めまいと耳鳴りは年齢や性別を問わず起こる症状です。しかし、1ヶ月以上症状が続く慢性的なめまいは高齢者に多いとされています。 おもなめまいの症状 めまいや耳鳴りの原因 めまいは平衡感覚に関係する、「内耳」「脳幹と小脳」「耳と脳幹・小脳をつなぐ神経路」に生じた何らかの原因によって症状が引き起こるとされています。 内耳とは聴覚器官と平衡器官という2つの主要部位から構成されています。どちらも内耳神経といい脳につながり、音や平衡感覚の信号を伝える役割をもちます。複雑な内耳の構造のいずれかが障害されることで、めまいや突発性難聴・聴力の低下、耳鳴りなどを引き起こすとされています。 めまい検査とは ヒトが平衡を保つためには「眼」「内耳」「手足などの筋肉」と3つの器官から集めた情報を脳に正しく伝達し、脳は受け取った情報を身体の各部位に命令を送る必要があります。 また、めまいの症状と原因は数多くあり、内耳の病気のほか、頸椎の障害や脳出血・脳腫瘍、血液や血圧の病気などを調べることが重要です。これらのことから、めまいの治療をおこなうためには耳鼻咽喉科や内科を単体で受診するのではなく、総合医療クリニックでしっかりめまい検査をおこないましょう。 めまいと耳鳴りを伴うメニエール病とは メニエール病とは、めまいと耳鳴りを伴う耳の病気です。メニエール病の一般的なイメージとして、女性に多く見られるストレス性の病気とされることも多いですが、性別を問わず発症するとされています。 メニエール病のおもな原因は内耳にあるリンパ液が増え、それぞれの機能が正常に働かないことで引き起こるとされています。また、ストレスも大きく関与する病気であることから30〜40代の、いわゆる働き世代に多くみられる病気です。 メニエール病のおもな症状として挙げられるのは、めまい・ふらつき・難聴・耳鳴り・耳がつまったような感覚などです。しかし、「めまい=メニエール病」ではなく、メニエール病には厳密な診断基準があります。 メニエール病とされる診断基準は「難聴を伴うめまい」「症状の反復(繰り返し)」「他の病気の否定」この3つの条件が必須とされます。 めまい症状を特徴とするその他の原因と病気 メニエール病以外にも、めまい症状を特徴とする病気は多くあります。いずれも地面が回るような回転性めまいや耳鳴り、吐き気・嘔吐を伴うようであれば重篤な病気が原因であることも少なくありません。早期の受診を心がけましょう。 良性発作性頭位めまい症 良性発作性頭位めまい症とは、ふいに頭を動かしたり首を回すことなどで内耳の規管が刺激され起こる症状です。ごく短い時間の回転性のめまいや、ふらつきが生じます。「良性」とあるように良性発作性頭位めまい症は一般的に問題のない症状ですが、高齢になるほど起こりやすく、めまいによる転倒などには注意が必要です。 前庭神経炎 前庭神経炎とは前庭と呼ばれ、平衡感覚を司る内耳の一部が炎症することで引き起こる病気です。ウイルスが原因とされ、激しいめまいが数日間続き、投薬や理学療法などで徐々に治まるとされています。 化膿性内耳炎 化膿性内耳炎とは、内耳に細菌が感染することで引き起こる病気です。めまい(ふらつき)や難聴のほか、痛みや発熱を生じることも多くあります。治療には抗菌薬の投与や、鼓膜に穴を開けて液体の排出がおこなわれます。 自律神経失調症 自律神経失調症とは、ストレスなどにより交感神経(興奮)と副交感神経(リラックス)の切り替えが正常に働かず、自律神経の乱れにより生じるとされています。自律神経失調症は、めまい・耳鳴り・疲労感や不眠など症状はさまざまです。 不安神経症・強迫性障害 不安神経症や強迫性障害といった不安障害は、ストレスなどにより不安や恐怖といった感情が過剰につきまとい、日常生活に支障をきたす症状です。例えば「電車に乗っていたら事故が起こるような気がして途中下車してしまう」など精神面の症状や、めまいや耳鳴り・吐き気など身体的に生じる症状があるとされています。不安障害(特にパニック障害)では、気が遠くなるような感覚をめまいと感じて訴える患者さんもいらっしゃいます。 適応障害 適応障害とは、個人にとって特定の状況や出来事がつらく耐えがたく感じ、それらに適応できず、めまいや耳鳴り・動悸や吐き気、下痢などを生じるとされています。精神と身体に症状があらわれますが、ストレスとなる状況や出来事と距離をおくことで症状は軽減します。しかし、ストレスの原因から離れることができないと症状が悪化し、慢性化することも少なくありません。 うつ病 うつ病とは、精神および身体的ストレスなどにより、脳がうまく機能しない状態とされています。また、ものの考え方が悲観的・否定的になり、心身ともに様々な不調が現れます。精神的な症状には、意欲の減退や仕事能力の低下・抑うつ症状などが挙げられ、身体的には、めまいや不眠・肩こりや頭痛などが生じます。 なお、自律神経失調症・不安神経症・強迫性障害・適応障害・うつ病の各疾患では、ふわふわと足元が浮くような感覚が生じる、浮動性めまいの症状が現れることも少なくありません。 ヒロクリニック心療内科によるめまいや耳鳴りの改善法 以上のことから、めまいやそれに伴う耳鳴りなどの原因は様々です。耳鼻咽頭科や内科を受診し、多くの検査をおこなっても身体的な問題はなく、治療法が見つからないまま長期間のめまいや耳鳴り症状に悩む方は少なくありません。 めまいや耳鳴り症状はストレスが原因であることも非常に多く、とくに働き世代の方が発症しやすいとされています。また、ヒロクリニック心療内科では通勤電車の中で発症し、途中下車した駅から受診の問い合わせをしてきた患者さまもいらっしゃいます。 めまいや耳鳴りは吐き気や嘔吐など他の症状を引き起こしやすく、日常生活に支障をきたします。心因性のめまいや耳鳴りであれば、適切な診断と薬物療法・認知行動療法などにより症状が軽減するでしょう。 めまいや耳鳴りの症状を医師に相談するだけでも、症状が軽くなる患者さまは多くいらっしゃいます。また、「ストレスのせい」「少し休めば治る」など安易に自己判断することは症状悪化につながる可能性もあります。 …

むずむず脚症候群の症状と原因や治療法について【医師監修】

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群とは、その名の通り下肢にむずむずと不快な異常感覚や痛みが生じる病気のことです。不快感から不眠や、じっとしていられないなど生活に支障をきたすことも少なくありません。この記事では原因やおもな症状と治療法を医師が解説いたします。 目次 むずむず脚症候群とは むずむず脚症候群の原因 むずむず脚症候群の受診科 むずむず脚症候群の検査と診断 むずむず脚症候群の治療法や対処法 軽度のむずむず脚症候群の治療法や対処法 症状の強いむずむず脚症候群の治療法 むずむず脚症候群のご相談はヒロクリニック心療内科へ むずむず脚症候群とは むずむず脚症候群とは、レストレスレッグス症候群や下肢静止不能症とも呼ばれる病気のことです。”むずむず”と言われるように、おもな症状として下肢(脚)に虫が這うような異常感覚が生じるとされています。 とくに、ふくらはぎに多く現われ、その他の症状には「ピリピリとした痛み」「焼けるような熱感」「皮膚の中で水が動くような感覚」などが挙げられます。これらの不快症状は脚を動かすことで軽減するため、脚をバタバタ動かす、じっとしていられないなど日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 むずむず脚症候群の不快な症状は、夕方から夜間に強く現れます。そのため寝付きが悪く、また睡眠中に、膝や足首・足指などが無意識に動く不随意運動をともなうことが多いため、不眠になるケースも多く見られ、日中の眠気や疲労感・集中力の低下などを引き起こす病気といえるでしょう。 むずむず脚症候群の原因 むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群・下肢静止不能症)が起こる仕組みは、はっきりと解明されていません。しかし、むずむず脚症候群のおもな原因は脳内の神経物質であるドパミン(ドーパミン)の作動経路に何らかの障害が生じることで、むずむずとした不快症状を引き起こすと考えられています。また、むずむず脚症候群はドパミンの機能障害のほかに、鉄分の不足や遺伝なども挙げられ、男性より女性に多くみられる傾向があります。 むずむず脚症候群は、明確な原因が分からない一次性(特発性)と、むずむず脚症候群を引き起こす原因となる病気による二次性とに分けられます。 一次性(特発性)のむずむず脚症候群の場合、家族内(血縁者)に同じ症状をもつことも多く、これにより遺伝的な関連も指摘される病気です。 二次性のむずむず脚症候群では、鉄欠乏症貧血(鉄分不足によるドパミン合成と代謝障害)やビタミンB・葉酸などの栄養不足、生理・妊娠などが挙げられます。その他、糖尿病・甲状腺機能異常・パーキンソン病・関節リウマチ・腎不全・うつ病なども、むずむず脚症候群を引き起こす原因とされています。 なお、二次性のむずむず脚症候群は、薬物が原因となることも少なくありません。抗うつ薬・抗精神薬・抗ヒスタミン薬などが挙げられ、また身近なカフェインやニコチン、アルコールも、むずむず脚症候群を引き起こす原因とされています。 むずむず脚症候群の受診科 脚のむずむずとした不快症状や、ピリピリとした痛みが続いた場合、「何科を受診したらいいのか分からない」と病院選びに悩む方が多くいらっしゃいます。むずむず脚症候群を疑った際は、神経内科(内科)や心療内科を受診しましょう。 むずむず脚症候群は進行すると脚以外の部位にも生じることもあるため、脚の不快症状が続く、または、むずむず脚症候群の原因となる病気や、内服薬がある場合は早めの受診が大切です。 むずむず脚症候群の検査と診断 むずむず脚症候群の検査は、おもに問診と血液検査によって行われます。また、必要があれば睡眠ポリグラフ検査が行われます。 むずむず脚症候群の不快症状や痛みなどが現われた時期や、症状が強く感じる時間帯、症状が治まる時間帯や状況、病歴や内服薬などを詳細に診断し、適切な治療により早期改善を目指します。 むずむず脚症候群の治療法や対処法 むずむず脚症候群の治療法には薬を使用しない「非薬物療法」と「薬物療法」の2つがあります。軽度の症状であれば、食事や運動など生活習慣の改善を行ないます。症状が強い場合は定められた薬剤による治療を行なうとされています。 軽度のむずむず脚症候群の治療法や対処法 ・鉄分の補給:とくに女性の場合、生理や妊娠中は鉄分が不足しやすいため注意が必要です。検査によっては鉄剤を服用します。 ・食生活の見直し:栄養不足や栄養バランスの乱れにより、むずむず脚症候群を引き起こすことも少なくありません。ビタミンBや葉酸など積極的に摂取することを心がけましょう。 ・カフェインを控える:コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは、鉄分の吸収を妨げることから、むずむず脚症候群の症状がある場合、摂取量に注意が必要です。また、チョコレートなどの刺激物も控えましょう。 ・アルコールや喫煙を控える:アルコールやタバコは、むずむず脚症候群の悪化を招くとされています。 ・適度な運動:むずむず脚症候群は運動不足、もしくは過度な運動によって症状が悪化するとされています。ウォーキングなど軽い運動を心がけましょう。 ・マッサージ:脚へのマッサージは、むずむず脚症候群の症状を軽減するとされています。 ・シャワーや入浴による温熱刺激:温熱刺激により、むずむず脚症候群の症状が軽減するとされています。適切なお湯の温度は個人差があるため、症状が軽くなる温度を日々チェックすると良いでしょう。 ・ツボ(経絡)刺激:むずむず脚症候群の症状を軽減するとされるツボがあります。おもに足の裏にある湧泉(ゆうせん)が挙げられますが、背中や手などにも症状が軽減するツボがあるといわれています。軽度のむずむず脚症候群であれば医師に相談のもと、鍼灸院などを検討しても良いでしょう。 ・漢方薬:むずむず脚症候群に有効性が認められた漢方薬はありません。しかし、抑肝散(ヨクカンサン)など神経の高ぶりを抑え、不眠症などに用いる漢方薬を処方することもあります。 症状の強いむずむず脚症候群の治療法 症状の強いむずむず脚症候群の治療は、おもに薬物療法によって行われます。神経興奮を抑える内服薬やドパミン伝達を活性化させる内服薬、もしくは貼付剤が処方されます。 むずむず脚症候群のご相談はヒロクリニック心療内科へ むずむず脚症候群の症状は個人差があります。むずむずと虫が這い回るような感覚や、ピリピリとした痛みや熱感など、その不快症状はさまざまです。何らかの原因で、むずむず脚症候群を発症すると、「じっとしていられない」「寝付けない」など日常生活に支障をきたしてしまいます。 昨今ではインターネット経由で、むずむず脚症候群を改善するとされる漢方薬なども簡単に入手することができます。しかし、むずむず脚症候群の適切な治療を行うためには、その原因を突き止めることが最も重要です。むずむず脚症候群によって痛みがある場合は、医師の診察によりロキソニンなどの鎮痛剤が処方されますが、これも自己判断で市販薬を使用する前に必ず受診を行いましょう。 ヒロクリニックは総合医療クリニックです。心療内科のほか内科や皮膚科などが併設され、各科と連携した治療を行っております。脚に生じる、むずむすとした不快症状や痛みが、むずむず脚症候群によるものか、他の疾患に原因があるのかを適切な検査・診断と治療によって早期改善を目指すことが可能です。また、むずむず脚症候群の受診の際は、これまでに罹患した病気や、現在の服薬状況をしっかり医師へ伝えることが非常に重要とされています。 むずむず脚症候群は放置することで脚だけでなく、腕など全身に症状が及ぶケースも少なくありません。むずむず脚症候群を疑う症状が生じた際は、どんなに軽度でもすぐに診察を受け、一日でも早い検査と治療を行いましょう。 【参考文献】

慢性疼痛が心身に与える影響と検査・治療法について【医師監修】

慢性疼痛が心身に与える影響と検査・治療法

疼痛(とうつう)とは痛みのことで、火傷などの急性疼痛と長期間続く慢性疼痛とがあります。慢性疼痛には侵害受容性・神経障害性・心因性の原因が混在し、仕事や日常生活に大きな影響を与えるでしょう。この記事では慢性疼痛の原因や治療法を医師が解説します。 目次 疼痛とは 急性疼痛と慢性疼痛の違い 慢性疼痛とは 慢性疼痛によるおもな随伴症状 慢性疼痛の受診の前に必要なこと 痛みを「見える化」する 慢性疼痛の診察・検査 慢性疼痛のおもな検査 筋力検査 深部腱反射検査 知覚検査 血液検査 画像検査 電気生理検査 心因性の慢性疼痛の原因と検査法 心因性慢性疼痛のおもな検査 自律神経検査 心理検査 慢性疼痛のおもな治療法 心と身体の痛みが長期に続く場合は心療内科へ相談を 疼痛とは 疼痛(とうつう)とは痛みのことを指します。痛みとはヒトの身体に備わった健康と生命を守るための危険信号といえるでしょう。そのため、疼痛は病院の受診理由として最も多い症状とされています。 疼痛には火傷や擦り傷・打撲などの「急性疼痛」と、数ヶ月から数年に渡って続く「慢性疼痛」の2つがあります。急性疼痛であれば、症状の治癒とともに痛みは治まりますが、慢性疼痛は、侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・心因性疼痛が混在することも多く、その病態は非常に複雑です。 ヒトの感じる疼痛(痛み)は様々です。刺すような鋭い痛みやジワジワとする鈍い痛みなど、医師への説明が難しいケースも少なくありません。また疼痛への耐性も個人差が大きく、小さな切り傷でも強い痛みを感じる方もいれば、骨にヒビが入っていても病院へ行かず、自然治癒してしまう方もいらっしゃいます。 急性疼痛と慢性疼痛の違い 事故などによる強い急性疼痛は、血圧上昇のほかに心拍数増加や発汗、瞳孔(黒目)の散大などが現れます。 一方、慢性疼痛はストレス・睡眠障害・食欲減退・活動意欲喪失・抑うつ(うつ病)を引き起こすとされています。これらのことから、慢性疼痛は痛みそのものが病態であり、慢性疼痛が心身に与える影響は非常に大きいといえるでしょう。 慢性疼痛とは 慢性疼痛とは一般的に3ヶ月以上持続する痛みのことです。慢性疼痛は大きく3つに分けられ、「侵害受容性疼痛(ケガなどによる痛み)」「神経障害性疼痛(神経痛による痛み)」「心理社会的疼痛(心因性の痛み)」が挙げられますが、これらの要因すべてが複雑に絡み合うことで引き起こる混合性疼痛も少なくありません。 慢性疼痛はQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の低下を引き起こし、痛みが長期化するほど仕事や日常生活に支障をきたします。これにより慢性疼痛は、抑うつ症状(うつ病)を引き起こすことも多い病態とされています。 なお、慢性疼痛による痛みがストレスや抑うつ症状(うつ病)を引き起こしているのか、抑うつ症状が慢性疼痛を引き起こしているのかは医学的にはっきりとした結論は出ていません。しかし、原因の分からない痛みが3ヶ月以上続くのであれば、早めの診察が必要です。 慢性疼痛によるおもな随伴症状 ・食欲不振・睡眠障害・便秘・生活動作の抑制・不安・破局的思考(ネガティブ思考)・抑うつ(うつ病)・性欲減退など 慢性疼痛の受診の前に必要なこと ケガなどの覚えがないのに原因不明の痛みが長期に続く、または手術後など通常の治療期間を過ぎたにも関わらず痛みが持続する場合、慢性疼痛を疑います。早期の受診が大切ですが、痛みの原因が分からないのであれば何科を受診すればよいのか迷われる方も多いでしょう。 肩や腰の痛みや、手足の痺れなどがあれば整形外科などになりますが、迷われた場合は、かかりつけのクリニックでよいでしょう。症状などによっては専門の医療機関を紹介してもらえます。 痛みを「見える化」する 慢性疼痛の受診の前には、痛みの発生時期や痛みのある部位・痛みの強さを自身で把握することが大切です。痛みの感じ方や程度には個人差があるため、客観的な評価をすることができないため、例えば「痛みがない状態を0として、最も強い痛みを10とする」など、疼痛評価スケールをメモしてもよいでしょう。 通院中も「いつどんな時に、どんな痛みを感じたか」など、ご自身の慢性疼痛による苦痛をメモや表などにして可視化することは、原因が複雑な慢性疼痛の治療に有益といえます。簡単な走り書きでもかまいませんので、ぜひお試しください。 慢性疼痛の診察・検査 慢性疼痛の診察では、これまでの病歴などの問診や痛みの起こる部位を診たうえで、痛みの原因を調べていきます。必要に応じて、血液検査や画像診断などもおこないます。 慢性疼痛のおもな検査 ●筋力検査 筋力低下の有無を調べ、特定の筋肉に筋力低下がある場合は脊髄や末梢神経の損傷の可能性があります。 ●深部腱反射検査 膝の下を専用のハンマーで叩き反射異常を調べ、反射低下や消失がある場合は末梢神経の損傷の可能性があります。 ●知覚検査 痛みのある部位の痛覚・触覚・温度覚の異常を調べ、これらの知覚に異常がある場合は中枢神経や末梢神経の損傷の可能性があります。 ●血液検査 感染症や貧血、肝機能・腎機能など全身の状態を調べます。 ●画像検査 X線検査(レントゲン)により骨の状態などを調べ、異常がある場合はCTやMRI検査をおこないます。 ●電気生理検査 …

吹き出すような汗(多汗症)の原因と治療法【医師監修】

汗は体温が上がり過ぎないように身体の熱を冷ます”うち水”のような役割があります。しかし快適な温度の環境下で急に汗が吹き出るといった異変が現れた場合、病気が原因であることも。この記事では多汗にまつわる病気や、受診すべき診療科の説明をいたします。 目次 健康的な汗と危険な汗の見分け方 汗が止まらない!考えられる病気とは 汗による受診の目安とセルフチェックポイント 汗が止まらない場合に受診すべき診療科目 止まらない汗は必ず早期受診を 健康的な汗と危険な汗の見分け方 ヒトは運動や高気温の環境下によって汗をかき、体温をコントーロルしています。車のエンジンがオーバーヒートにより壊れてしまうように、私たちの身体も体温が上がりすぎると臓器に異常をきたし、生命の危機を招きます。そのため、ヒトの身体は汗をかき、汗が蒸発することで身体を冷やすのです。このように、体温を一定に保つための汗を「温熱性発汗」といい、ヒトの身体に備わった機能となります。 温熱性発汗のほかに、緊張や不安によっても汗をかきます。これを「精神性発汗」といい、温熱性発汗と汗をかく部位が異なります。温熱性発汗は手と足の裏をのぞく全身に汗をかき、精神性発汗は脇と手、足の裏に短時間かく汗とされています。 その他、日常的に見られる汗は「味覚性発汗」があり、これは唐辛子など辛いものを食べた時など、おもに顔にかく汗のことをいいます。これらは健康な方であれば誰しもがかく汗であり、一時的であれば問題はありません。しかし、強いストレスや病気によって引き起こる危険な汗も多くあります。 汗が止まらない!考えられる病気とは 危険な汗の特徴として、「急に汗が出る」「寒くないのに(暑くないのに)汗をかく」「寝ている時に汗をかく」などが挙げられます。これらの多汗症状は、さまざまな病気によって引き起こされている場合があるため、異変を感じた際は早めに医師へご相談ください。 ●自律神経失調症 自律神経とは、心臓や呼吸・体温調節・消化など、ヒトが生きていく上で欠かすことのできない機能を無意識下でもコントロールしている神経のことです。一方、走る・座るなど自身の意思で動かすための神経を運動神経といいます。 自律神経は「交感神経(興奮・緊張)」と「副交感神経(リラックス)」2種類の神経が、まるでシーソーのようにバランスをとり身体の機能を調節しています。日中の仕事や運動時には交感神経が優位となり、休憩や睡眠時には副交感神経が優位となります。このバランスが崩れてしまうことを「自律神経失調症」といいます。 自律神経失調症の原因はさまざまです。強いストレスや過度の緊張状態が長期間続く、または慢性的な睡眠不足、環境の変化などが挙げられます。本来、副交感神経が優位になるはずの睡眠時に交感神経が優位となり、目が冴えてしまうなど興奮・緊張とリラックスのバランスが崩れてしまうことで、身体に大きな負荷がかかってしまうのです。 自律神経はすべての器官を支配しているため、多くの症状があらわれます。その症状が他の病気を引き起こすといったことも少なくありません。また自律神経失調症の症状のなかには「何もしていないのに異常なほど汗をかく」といった多汗症状が多くみられます。 緊張する場面でないにもかかわらず、脇や手のひら・足の裏などに大量の汗をかいてしまう場合は、自律神経失調症が疑われます。また、この汗は制汗剤などで抑えることはできません。医師の診察を早めに受けましょう。 ●更年期 更年期とは一般的に45〜55歳頃、閉経を挟んだ前後約10年間のことを指します。閉経に向けて変化する身体に対応できず、さまざまな不調や不快な症状を「更年期症状」といいます。症状には個人差があり、症状が軽い方から重い方までと幅があるとされています。 更年期症状は加齢により卵巣機能が衰え、エストロゲンの分泌が出にくくなることで起こります。エストロゲン分泌をコントロールする脳の下垂体が、卵巣にエストロゲン分泌を何度司令しても卵巣がエストロゲンを分泌しないため脳の混乱を招き、やがてそれが自律神経に伝わることで、さまざまな症状を引き起こすとされています。更年期症状と自律神経失調症の症状が似ているといわれるのはこのためです。 更年期症状は多種多様です。おもな症状はホットフラッシュと呼ばれる、顔のほてりやのぼせ・イライラ・不眠・動悸が挙げられます。また自律神経失調症同様に、「寒いのに汗をかく」・「急に汗をかく」など、多汗症状も少なくありません。 女性が45歳を過ぎて、上記のような症状が続くようであれば、婦人科で更年期検査(血液検査)を受けると良いでしょう。症状の原因が更年期症状なのか、自律神経失調症なのか、検査結果によって治療方針が異なります。もちろん、それ以外の病気が隠れている場合もあることから、身体の不調や異常な汗に気づいた際は早めの受診が大切です。 ●甲状腺機能亢進症 甲状腺とは、のど仏のすぐ下にある蝶が羽を広げたような形の臓器のことです。甲状腺は身体の代謝や成長を調節する甲状腺ホルモンをつくります。甲状腺機能亢進症とは一般的に「バセドウ病」と呼ばれ、甲状腺機能亢進症の原因は未だ解明されていません。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう、女性に多い病気です。 おもな症状は、甲状腺の腫れ・眼球突出・疲れやすくなる・イライラ・食事をしても痩せてしまう・脈が速くなる・動悸などが挙げられます。また暑がりとなり「寒いのに汗をかく」といった症状も多くみられます。一方、甲状腺機能低下症は寒がりとなり「汗をかかない」といった症状が現れます。 甲状腺機能亢進症の治療法は、一般的に薬物療法です。その他には放射性ヨウ素(アイソトープ)治療、手術の3つの方法が挙げられます。 甲状腺機能亢進症の中には妊娠による一過性のものがあります。妊娠8〜12週くらいに甲状腺ホルモンが高くなるケースも少なくありません。しかしこの場合は一過性のため、自然治癒が見込めます。 いずれにせよ検査が必要とされるため、首元の腫れや、寒いのに汗を異常にかくといった症状を感じた際は早期受診を心がけましょう。 ●低血糖 低血糖とは、ヒトの身体の血糖値が低下した際に、脳などがエネルギー不足の状態に陥ることです。その時に出るさまざまな症状のことを、低血糖症状といいます。血糖値はおよそ70mg/dL以下になると交感神経症状が現れ、おもに脈拍が速くなる・顔色が青白くなる・手足の震え、そして「汗をかく」といった自律神経症状が引き起こされます。 低血糖症状の原因はさまざまで、ダイエットによる炭水化物(糖質)の不足・空腹時の運動・インスリンなど薬の過剰摂取が挙げられます。低血糖症状は重症化すると昏睡や命の危険にかかわるため注意が必要です。とくに脳の代謝に必要な栄養素は糖質のみであることから、過度な糖質制限などはおこなわないようにしましょう。 万が一、低血糖とみられる症状が現れた際は、甘い飲み物や食べ物で応急処置をおこなうことが大切です。医療機関では初期の低血糖症状であれば、グルコース(ブドウ糖)点滴などで処置をおこないます。過度なダイエットなど一時的な低血糖症状であれば、食生活を見直すことで改善します。しかし、思わぬ病気が隠れている場合も少なくないため、血液検査などで低血糖症状を引き起こした原因を検査することが大切です。 ●悪性リンパ腫(B症状) 悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の大きく2病型に分かれ、寝汗をかくなどの全身症状を伴うとB症状ありと分類されます。リンパ球ががん化・増殖し、リンパ腫細胞から炎症を引き起こす物質により、激しい寝汗をかいてしまいます。盗汗(とうかん)とも呼ばれ寝具が濡れ、睡眠が妨げられるほど大量の汗が特徴です。 悪性リンパ腫は年齢や進行状態によって治療方針が異なります。おもに薬物療法や放射線療法、造血幹細胞移植などが挙げられます。 悪性リンパ腫以外にも感染症など、激しい寝汗をかく病気は少なくありません。睡眠が妨げられるほどの激しい寝汗が続くようであれば、一刻も早い受診が必要です。 汗による受診の目安とセルフチェックポイント もともと汗っかきの場合、多汗による受診を迷う方も少なくありません。なお、病気が疑われる汗には下記のような症状が挙げられます。セルフチェックをおこない、ひとつでも当てはまるようであれば、早めの受診が必要とされます。 このように日常生活に支障をきたすような汗をかく際は、早めに医師に相談しましょう。 汗が止まらない場合に受診すべき診療科目 発汗には自律神経が大きくかかわります。脇汗のニオイなどの悩みであれば皮膚科を受診すると良いでしょう。症状や治療法によっては保険適用となります。 しかし、吹き出すような汗や、多汗以外にも不眠・動悸などの症状がある方は自律神経失調症の可能性が考えられます。内科などで検査をおこなっても多汗の原因が分からない、または疲労感やうつ症状、イライラなどの症状のある場合は心療内科を受診してみましょう。 止まらない汗は必ず早期受診を インターネットには「多汗症 治し方」「自律神経失調症 自分で治す」などの検索ワードが多く見られます。もちろん多汗症状を治すために生活環境を整えることや、心穏やかに過ごすことはとても大切です。しかし、多汗症状には重篤な病気を原因とすることも少なくありません。安易な自己判断をおこなわず、必ず医師へご相談ください。 ヒロクリニック心療内科では、これまで多くの多汗をともなう症状の患者さまの治療にあたってきました。また、ヒロクリニックは総合医療クリニックであり、内科や皮膚科も併設されております。各診療科の医師が連携をとり、適切な治療をおこなうことで多汗症状の早期回復を目指すことが可能です。 多汗のお悩み、身体と心の不調をぜひ一度お聞かせください。多汗の原因を特定し、一日でも早く快適で健康的な生活を取り戻しましょう。 【参考文献】

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