家族が統合失調症と診断されたとき、多くの方が同じ壁にぶつかります。どう接すればいいのか分からない、という壁です。よかれと思った一言が本人を追い詰め、黙っていれば見放したように受け取られる。その板挟みで消耗しているご家族を、私は外来で何度も見てきました。

この記事は、統合失調症の家族の接し方を「気持ちの持ち方」として語りません。研究で確かめられている事実から整理します。中心に置くのは感情表出(EE:Expressed Emotion)という考え方です。そして、その知識を家族だけで抱えずに済ませるための家族教室・家族会という具体的な行き先も示します。

先に一つだけお伝えします。EEの研究は、家族を責めるためのものではありません。むしろ「家族が支援を受けるべき理由」を裏づける研究です。この点を取り違えないよう、順に説明します。

この記事でわかること

  • 感情表出(EE)とは何か。家族の接し方と再発の関係について研究が示している数字
  • 「高EE=家族が悪い」ではない理由と、批判・巻き込まれが起きる仕組み
  • 批判を減らし、温かさを増やすための具体的な言い換え
  • 家族教室・家族心理教育をどこで受けられるか。費用と申し込み先
  • 家族自身が疲れ切ったときに使える相談窓口と、受診を考える目安

予約の前に相談したいことがあれば、お電話(048-430-7000)や公式LINEからもお問い合わせいただけます。ご家族だけのご相談にも対応。

統合失調症の家族の接し方|まず外してほしい3つの誤解

接し方を変える前に、家族が抱えがちな3つの誤解を外すほうが先です。誤解を抱えたままだと、どんな技術も長続きしません。

誤解1:育て方が原因になった

最も多い誤解です。統合失調症の発症には複数の要因が関わり、親の育て方や本人の性格が原因ではありません。厚生労働省の解説でも、家族の関わり方が発症の原因であるという説明はとられていません。

「あのとき進学を勧めたせいか」と自問し続ける親御さんは大勢います。ただ、その自問はエネルギーを削るだけで、本人の回復には一つも寄与しません。病気の症状や経過そのものについては、統合失調症の初期症状とサインの記事で詳しく解説しています。

誤解2:説明すれば分かってもらえる

統合失調症では病識(自分が病気だという自覚)が持ちにくいことがあります。これは頑固さでも否認でもなく、症状の一部です。

ですから「病気だと認めさせる」ことを目標にすると、ほぼ必ず対立します。私が家族に勧めているのは、説得ではなく記録です。障害年金申請を扱う社労士の@syogai_nenkin_も、同じ趣旨を発信しています。ご家族が生活の様子を記録し、診察時に補足するだけで実態が伝わりやすくなる、という内容です。診察室で医師が見られるのは十数分だけ。家庭での様子を知っているのは家族だけです。

誤解3:家族が支えなければ回復しない

家族は治療チームの一員であって、治療の担い手ではありません。服薬管理も症状の監視も、本来は医療と福祉の仕事です。

家族が担当を増やしすぎると、関係が「親子」から「監視する側とされる側」に変わってしまいます。この配置の変化こそが、次に説明するEEの問題を生みます。

感情表出(EE)とは|接し方と再発の関係を示した研究

感情表出(EE)とは、家族が本人について語るときに表れる感情の強さを測る指標です。統合失調症の再発リスクとの関連が、半世紀にわたり確かめられてきました。家族心理教育の中核にある考え方です。

EEを構成する3つの要素

EEは家族への面接から評価され、主に次の3要素で構成されます。いずれも、家族なら誰でも思い当たる反応です。

  • 批判的コメント:「怠けている」「やる気がない」など、本人の行動を否定的に評価する発言
  • 敵意:本人の人格そのものを否定する態度。行動ではなく本人を問題とみなす状態
  • 情緒的巻き込まれすぎ:過剰な自己犠牲や過保護。本人の生活に家族が溶け込んでしまう状態

ここで注目してほしいのは3つ目です。巻き込まれすぎ、つまり頑張りすぎもEEを高めます。冷たい家族だけが高EEになるのではありません。むしろ献身的な家族ほど当てはまることがあります。

研究が示している数字

EEと再発の関連は、単発の研究ではなく複数のメタアナリシスで一致して確認されています。代表的な結果を整理します。

研究対象示された関連
Butzlaff & Hooley(1998年)27研究のメタアナリシスEEは統合失調症の再発を予測する、有意で頑健な因子
Ma ら(2021年)30研究・患者2,284名高EEでは1年以内の再発リスクが約4.9倍。批判的コメント単独でも約2.2倍
Ma ら(2021年)同上温かさ(warmth)は再発リスクを下げる方向に関連(オッズ比0.35)

3行目に注目してください。研究が測っていたのは批判の量だけではありません。温かさは再発を防ぐ方向に働いていました。つまり家族にできることは、我慢して黙ることではなく、温かさを足すことです。この違いは実践上とても大きい差になります。

高EEは家族の性格ではなく「消耗のサイン」です

ここが本記事で最も伝えたい点です。高EEは家族の性格ではなく、支援がないまま消耗した状況で誰にでも起こる反応です

根拠があります。家族に教育と支援を届ける介入を行うと、家庭内のEEが下がる。コクランの系統的レビューで、そう報告されています。家族への支援そのものが、家庭内のEEを下げるのです。性格なら変わりません。変わるということは、EEが状況によって生じる状態だという意味になります。

私の実感とも一致します。外来で批判的な言葉が増えている家族は、たいてい何年も一人で対応してきた方です。冷たいのではなく、限界まで来ている。ですからEEの話をお伝えするときは、必ず結論とセットにしています。「だから家族が支援を受ける番です」と。

今日から変えられる接し方の具体例

接し方の改善点は、批判を減らすことと温かさを増やすことの2方向に集約できます。完璧を目指す必要はありません。

統合失調症の家族が向かい合って穏やかに話している様子

批判の代わりに「観察したこと」を伝える

批判と観察の違いは、評価を足すかどうかにあります。同じ場面でも、言い方を変えるだけで届き方が変わります。

つい出てしまう言葉本人に起きること言い換えの例
「いつまで寝ているの」意欲低下(陰性症状)を怠けと評価され、批判として届く「今日は起きるのがしんどそうだね」
「ちゃんと薬飲んだ?」監視されていると感じ、薬の話題自体を避けるようになる「薬で困っていることはない?」
「そんな人いないよ」体験を否定され、次から話してくれなくなる「そう聞こえるのは怖かったね」
「私が支えなきゃ」(家族が自分に)抱え込みが進み、巻き込まれすぎに近づく「私が休むことも治療のうち」

4行目だけ、家族が自分に向ける言葉を入れました。EEの3要素に巻き込まれすぎが含まれる以上、自分への声かけも接し方の一部だからです。

温かさは意識して増やせます

温かさが保護的に働くという研究結果は、家族にとって実行しやすい指針です。特別なことは要りません。

できた家事に「助かった」と言葉にする。天気の話をする。一緒に食事をとる。この程度で十分です。会話の主題を病気から日常に戻す時間が、家庭の緊張をゆるめます。

幻聴や妄想を訴えられたとき

肯定も否定もせず、内容ではなく感情に応じてください。事実を正しても本人には届かず、孤立感だけが残ります。

「怖かったね」と気持ちに触れるほうが、本人は安心します。幻聴そのものへの対処法は専門的な領域です。詳しくは幻聴への対処法(認知行動療法とマインドフルネス)を読んでください。強い不安や興奮が出ているときの関わり方は、統合失調症のストレス対処と落ち着かせる方法で扱っています。

服薬は家族が管理しない

服薬の中断は再発につながりやすい要因です。だからといって家族が管理役になると、逆効果になりやすいのが難しいところ。

家族が薬を管理する役割を引き受けないでください。やめたい理由を聞き、その内容をそのまま主治医に伝える。この橋渡しが家族の役割です。薬の種類や副作用については統合失調症の薬物療法で解説しています。用量の調整は必ず主治医と本人の間で行ってください。

家族教室・家族心理教育とは|どこで受けられるのか

家族教室(家族心理教育)とは、家族が病気の知識と対処法を学ぶプログラムです。保健所や精神保健福祉センター、医療機関で受けられます。再発予防の効果が数字で確認されている介入です。

家族心理教育の効果は数字で確認されています

家族向けプログラムは「気休め」ではありません。薬物療法に上乗せする介入として、再発率を下げることが繰り返し示されています。

コクランの系統的レビュー(53件のランダム化比較試験)を見てみます。家族介入により再発が約45%減り、7人が受ければ1人の再発を防げる計算だと報告されました。入院の減少や服薬継続の改善も、あわせて確認されています。

さらに2022年のネットワークメタアナリシス。90試験・10,340名を統合した解析で、家族心理教育だけでも十分な効果が示されました。複雑な技能訓練を組み合わせたモデルより、むしろ良好な結果です。学ぶ場に家族が出向くこと自体に意味がある、と読み取れます。

家族教室が開かれている場所

主な窓口は4つです。どこから始めても構いません。迷う場合は、お住まいの地域の保健所に電話するのが一番早い方法です。

場所特徴費用の目安
保健所・保健センター地域住民向けの家族教室。数回の連続講座の形が多い無料のことが多い
精神保健福祉センター都道府県・政令市に設置。家族相談と家族教室の両方に対応無料のことが多い
精神科の医療機関主治医のいる病院・クリニックが開くプログラム医療費の自己負担が生じる場合あり
家族会・家族学習会同じ立場の家族が運営。経験の語り合いが中心会費程度

実施の有無・回数・費用は自治体によって差があります。窓口の探し方は厚生労働省のこころの相談窓口(精神保健福祉センター)で確認できます。

家族会・家族学習会という選択肢

専門職が教える教室とは別に、家族自身が運営する学習会があります。厚生労働省も、家族が抱えきれないと感じたときに家族会に参加する方法を紹介しています。

本を読むだけでは足りない、と感じている方は多いはずです。お母様が統合失調症だという@c_script0102は、その感覚を的確に書いています。本を読み漁っても書いてあるのはどれも同じで参考にならない。母の取説は本人と家族でつくるしかない、と。私もこの見方は正しいと思います。教科書に載るのは平均像だけ。目の前の一人に合わせた対応は、同じ立場の家族と話す場でしか手に入りません。

全国組織として「みんなねっと」(全国精神保健福祉会連合会、@minnanet)があります。2026年7月時点でも機関誌で「家族による家族学習会の魅力」を特集。家族心理教育プログラムへの参加を呼びかけています。地域の家族会は、保健所や精神保健福祉センターで紹介してもらえます。

家族が疲れたとき|あなたのケアも治療の一部です

家族自身の消耗は、放置すると本人の再発リスクにも跳ね返ります。ですから家族が休むことは、わがままではなく治療の一部です。

支える側に出やすいサイン

次のような変化が2週間以上続いていれば、家族自身の受診が必要なサインと考えてください。

  • 本人の物音で目が覚める。眠りが浅く、朝から疲れている
  • 以前は流せた言動に、強い怒りが湧くようになった
  • 友人の誘いを断り続け、家庭の話を誰にもしていない
  • 食欲が落ちた。または食べすぎが止まらない

2つ目は特に見落とされます。怒りが増えたことを「自分が冷たくなった」と解釈する家族が多いのですが、実際には疲労のサイン。EEでいう批判が増える手前の段階です。

家族だけでも相談できます

本人が受診を拒んでいても、家族の相談先はあります。ここは誤解されやすい点です。

本人が来なくても、家族だけで相談できます。精神保健福祉センターや保健所の家族相談がその窓口です。看護師・保健師の経験を持つ@Miki__Yunoも、同じ点に触れています。統合失調症の家族もカウンセリングを必要としており、家族療法は本人がいなくても実施できる、という内容です。当院でもご家族のみのご相談を受けています。

訪問看護やデイケア、自立支援医療などの制度を使えば、支える人数を家族の外に増やせます。地域の支援制度については統合失調症の地域支援とリカバリーで整理しています。就労や復職の段階に入った方は、統合失調症の復職・職場復帰支援もあわせて読んでください。

今すぐ話を聞いてほしいときの相談窓口

夜間や休日で医療機関につながらないときは、次の窓口が使えます。家族が使って構いません。

  • いのちの電話 フリーダイヤル:0120-783-556(無料)
  • #いのちSOS:0120-061-338(無料)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(無料)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556

窓口の一覧は厚生労働省のまもろうよ こころにまとまっています。ご本人・ご家族が直面する生活上の困難は、症状の先にある生活の課題でも触れています。

ヒロクリニック心療内科(川口院・池袋駅前院)では、ご家族のみのご相談にも対応しています。お電話は048-430-7000、公式LINEからもご予約いただけます。

再発のサインに気づいたときの動き方

再発の前には小さな変化が先に出ることが多く、家族が最初に気づく立場にあります。気づいた時点で主治医に連絡すれば、多くは大きな悪化を避けられます。

最も早く出やすいのは睡眠の変化です。眠れなくなる、生活リズムが崩れるという変化は、幻聴や妄想が強まるより前に現れることがあります。ほかに、口数が減る、外出を避ける、音や光に敏感になるといった変化。「前と何か違う」という家族の感覚は、それ自体が有力な情報です。

気づいたときの伝え方には注意が必要です。「薬飲んでないでしょ」と問い詰めると、本人は身構えます。「最近眠れてる?」と体調を尋ねる形にしてください。そのうえで、家族から主治医や訪問看護に連絡します。本人を説得してから受診させる必要はありません。

再発は治療の失敗ではありません。回復の見通しや、実際にどう回復していったのかについては、統合失調症の回復事例を読んでください。

よくある質問

外来やご家族からのご相談で特に多い質問をまとめました。

Q. 家族教室はどこで受けられますか。費用はかかりますか。

A. お住まいの地域の保健所・保健センター、精神保健福祉センター、主治医のいる医療機関が主な窓口です。自治体が開く家族教室は無料で参加できることが多く、家族会の学習会も会費程度で参加できます。ただし実施の有無・回数・費用は地域によって異なります。まずは保健所か精神保健福祉センターに電話で問い合わせてください。

Q. 本人が受診も服薬も嫌がります。家族はどうすればいいですか。

A. 統合失調症は病識を持ちにくい病気で、本人が「自分は病気ではない」と感じることは珍しくありません。家族が説得や管理の役割を引き受けると、関係が対立に変わりやすくなります。薬をやめたい理由(眠気やだるさなど)を否定せずに聞き、その内容を主治医に伝える橋渡しに徹してください。本人が受診しない段階でも、家族だけで主治医や相談窓口に相談できます。

Q. 感情表出(EE)が高いと再発しやすいと知り、自分を責めています。

A. EEの研究は、家族を責めるためのものではありません。高EEは家族の性格ではなく、支援がないまま長く消耗した状況で誰にでも起こる反応です。実際、家族に教育と支援を届ける介入によって家庭内のEEが下がることが確認されています。つまりEEは「変えられる状態」であり、変える手段は家族が我慢を重ねることではなく、家族が支援を受けることです。

Q. 本人が来なくても、家族だけで相談できますか。

A. できます。精神保健福祉センターや保健所の家族相談は、本人が同席しなくても利用できます。医療機関でも、家族のみの相談に対応している場合があります。家族自身に不眠・食欲低下・気分の落ち込みが続いているときは、家族自身が患者として受診する選択も検討してください。支える側の体調を守ることは、本人の安定にも直結します。

Q. 幻聴や妄想を訴えられたとき、話を合わせるべきですか。

A. 内容を肯定も否定もせず、本人が感じている恐怖や不安のほうに応じてください。「そんな人はいない」と事実を正しても、本人には届かず、話してくれなくなることがあります。「そう聞こえるのはつらいね」と気持ちに触れるほうが、緊張がやわらぎます。幻聴そのものへの対処法は専門的な内容になるため、当院の幻聴への対処法の記事もあわせて読んでください。

Q. 支えている家族自身が限界です。見放すことになりませんか。

A. 距離をとることは、見放すことではありません。家族が倒れてしまえば、支援そのものが続かなくなります。訪問看護やデイケア、地域の支援制度を使って、支える人数を家族以外に増やしてください。今すぐ話を聞いてほしいときは、いのちの電話 フリーダイヤル 0120-783-556(無料)に連絡できます。

まとめ

統合失調症の家族の接し方は、感情表出(EE)という枠組みで整理すると具体的になります。減らすのは批判、増やすのは温かさ。この2方向だけを覚えてください。

そして高EEは、家族の性格ではありません。支援がないまま消耗したときに、誰にでも起こる反応です。家族が支援を受けると下がることも確認されています。家族が支援を受けることが、本人の回復を支えるという順番です。

まずは保健所か精神保健福祉センターに電話し、家族教室の予定を尋ねてください。それが今日からできる最初の一歩です。ご家族だけのご相談も承っています。

参考文献

  • Butzlaff RL, Hooley JM. Expressed emotion and psychiatric relapse: a meta-analysis. Arch Gen Psychiatry. 1998;55(6):547-552. PMID: 9633674
  • Ma CF, Chan SKW, Chung YL, et al. The predictive power of expressed emotion and its components in relapse of schizophrenia: a meta-analysis and meta-regression. Psychol Med. 2021;51(3):365-375. doi:10.1017/S0033291721000209
  • Pharoah F, Mari J, Rathbone J, Wong W. Family intervention for schizophrenia. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(12):CD000088. PMID: 21154340
  • Rodolico A, Bighelli I, Avanzato C, et al. Family interventions for relapse prevention in schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry. 2022. PMID: 35093198
  • 厚生労働省「統合失調症|家族、友人として」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_into_sub2.html

本記事はヒロクリニック心療内科編集部が作成しました。統括院長・岡博史(医師・医学博士)の監修体制のもとで公開しています。記載内容は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の診断・治療方針に代わるものではありません。

医師監修 監修日:2025年10月22日

佐々木先生 (ささき)

医師・医学博士 ヒロクリニック医師

略歴

  • 2008年 佐賀大学卒業
  • 2019年 ヒロクリニック心療内科

資格・所属

  • 日本精神神経学会専門医
  • 日本精神神経学会指導医
  • 精神保健指定医

この記事は、ヒロクリニック心療内科の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。