この記事の概要
SNPを用いた出生前親子DNA鑑定では、精度を確保するために必要なSNPの種類が重要です。このコラムでは、SNPの数と鑑定の正確性について詳しく解説します。
出生前親子DNA鑑定をSNPだけで行う場合、高い精度を得るには数千カ所規模のSNPを解析する必要があるとされています。SNPは1カ所あたりの情報量がSTRより少ないため、STRに比べて多くの地点を調べなければならないからです。この記事では、学術論文のデータをもとにSNP単体解析で必要とされる箇所数と、ヒロクリニックがSTRを中心とした解析を採用している理由を解説します。
この記事でわかること
- SNP単体の出生前親子鑑定に必要とされる箇所数の考え方
- 親子鑑定の精度を示すCPI・CPEという指標の意味
- STRであれば少ない箇所数でも高精度な鑑定ができる理由
- ヒロクリニックがSTR中心の解析を採用している背景

SNP単体解析の精度を示すCPI・CPEとは
親子鑑定の精度は、CPI(累積父性指数)とCPE(累積排除確率)という2つの指標で評価されます。親子鑑定分野の学術論文では、判定精度を示す指標としてCPI(Cumulative Paternity Index、累積父性指数)とCPE(Cumulative Probability of Exclusion、累積排除確率)が使われます。上の図は、法医学系の学術誌に掲載された論文で示されたシミュレーションデータの一部です。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| CPI(累積父性指数) | 解析対象の男性が本当に生物学的な父親である可能性を数値化したもの |
| CPE(累積排除確率) | 血縁関係のない男性を父親候補から正しく除外できる能力を数値化したもの |
CPI・CPEは、解析するマーカー(SNPやSTRの箇所)が多いほど100%に近づいていきます。1カ所あたりの情報量が少ないSNPで高い数値を狙う場合、必然的に解析箇所数を増やす必要が出てきます。逆に言えば、1カ所あたりの情報量が多いマーカーを使えば、少ない箇所数でも同水準のCPI・CPEに到達できるということです。この「1カ所あたりの情報量」の違いが、STRとSNPで必要な箇所数が大きく異なる理由につながっています。
妊娠6週からできる親子鑑定
周りにバレずにこっそり判定
論文が示す「SNP5,000カ所」という数値の根拠
学術論文では、SNP単体で実用的な精度を確保するために5,000カ所規模の解析パネルが使われた例が報告されています。この数値の出典は、Gao S, Li B, Mao Lら「A theoretical base for non-invasive prenatal paternity testing」(Forensic Science International, Volume 346, 111649, 2023年5月)です。非侵襲的出生前親子鑑定向けの理論モデル「PTAS(Prenatal paternity Test Analysis System)」を提案した論文で、SNPジェノタイピングによる解析を扱っています。
この論文では、実用的な判定精度を確保するために5,000カ所のSNPからなる解析パネルが用いられています。著者らのモデルでは、妊娠初期サンプル64件中63件、妊娠中期〜後期サンプル313件で父子関係を正確に判定できたと報告されています。妊娠初期は母体血液中に含まれる胎児由来cfDNAの割合(フィータル・フラクション)が低くなりやすく、判定の難易度が上がる時期です。この論文では、UMI(分子識別タグ)という技術を使って、低いフィータル・フラクションのサンプルでも検出感度を高める工夫がされています。判定できなかった1件についても、フィータル・フラクションが極めて低い状態でしたが、独自のタグ付け手法によって父子関係の傾向自体は検出できたと報告されている点も、この論文の技術的な特徴のひとつです。
5,000カ所という数はあくまでこの研究グループが採用したパネル設計の一例。SNP解析における業界共通の必須数を定めたものではありません。ただし、SNP単体で高精度を狙う場合には、STRに比べて格段に多い箇所数が必要になるという傾向を示すデータとして参考になります。実際、他の研究グループが発表しているSNP解析パネルも、数百カ所から数千カ所まで幅があり、パネル設計や目標とする精度によって必要な箇所数が変わることがわかります。解析対象の箇所数が増えるほど、シーケンシングにかかるコストや解析時間も増える傾向があるため、研究グループごとに精度とコストのバランスを考えてパネル設計を行っていると考えられます。
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STRなら少ない箇所数でも高精度な理由
STRは1カ所あたりの情報量がSNPより大きいため、少ない箇所数でも高いCPI・CPEに到達できます。SNPは1カ所につき2種類の型(例:AかGか)しか取らないため、1カ所あたりの識別力には限界があります。一方、STR(短鎖タンデム反復配列)は繰り返し回数のパターンが多様で、1カ所あたりの情報量がSNPより大きくなります。
そのため、STRを使えばSNPよりずっと少ない箇所数でも、同程度以上の判定精度に到達しやすくなります。妊娠7週からの早期解析でSTRの有効性を検証した論文については、出生前親子DNA鑑定に関する学術論文を紹介で詳しく解説しています。
STRとSNPそれぞれの特徴の違いをさらに詳しく知りたい方は、親族間のSTRとSNPの一致率(鑑定に重要)もあわせてご覧ください。なお、SNPにも「解析コストを抑えやすい」「特定の遺伝子多型を狙って調べやすい」といった利点があり、用途によってはSTRとSNPを組み合わせて使う研究報告もあります。単純にどちらが優れているというより、目的に応じてマーカーの種類と箇所数を設計することが重要です。
親子鑑定でSTRが広く使われてきた背景には、法医学分野での長年の運用実績も関係しています。STRを用いたDNA型鑑定は、国際的な個人識別・親子鑑定の標準的な手法として研究・検証が積み重ねられてきました。新しい技術であるSNP解析も研究が進んでいますが、実務での運用実績という点では、STRのほうが確立された手法だといえます。
STR解析とSNP単体解析の違い
必要な箇所数・1カ所あたりの情報量・法医学分野での実績という3点で、STRとSNPには明確な違いがあります。ここまでの内容を整理すると、以下のとおりです。
| 比較項目 | STR(短鎖タンデム反復配列) | SNP(一塩基多型) |
|---|---|---|
| 1カ所あたりの型の種類 | 繰り返し回数によって多様(数種類〜十数種類) | 基本的に2種類(例:AかGか) |
| 1カ所あたりの情報量 | 多い | 少ない |
| 高精度に必要な箇所数の目安 | 数十カ所程度でも高精度に到達しやすい | 数千カ所規模が必要になりやすい(論文例:5,000カ所) |
| 法医学分野での実績 | 長年の実績があり国際基準でも採用 | 研究・応用が進んでいるが発展途上の位置づけ |
| ヒロクリニックでの採用状況 | 52座位のSTR解析を標準採用 | 通常のケースでは単体解析を実施していない |
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ヒロクリニックがSTR中心の解析を採用している理由
ヒロクリニックの出生前親子鑑定は、STRを52座位解析することで99.99%以上の判定精度を実現しています。これは法医学分野で標準とされるFBIのCODIS(20座位)を上回る座位数です。
私自身、解析レポートを日々確認していますが、STRの座位数を十分に確保できているケースでは、判定結果に迷いが生じることはほとんどありません。解析には日本初導入の次世代シーケンサー「Qiagen社 MiSeq FGx System」を使用し、検体はバーコード管理のもと自社ラボ「東京衛生検査所」で解析しています。
SNP単体の解析パネルを別途組む運用は行っておらず、通常のケースはSTR解析のみで判定が完結します。座位数の詳しい考え方については、出生前DNA鑑定の正確性もご参照ください。妊娠6週0日からの早期対応、頬粘膜からの検体採取による父親候補への負担の少なさも、STRを中心とした解析体制だからこそ実現できている運用面のメリットです。全自動検査システムとバーコード管理による検体取り違え防止も、日々の解析精度を支える体制の一部です。
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本記事は、医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・岡博史(医師・医学博士、CAPラボディレクター、東京衛生検査所指導監督医)および博多駅前院院長・堤修一(医師・医学博士、元東京大学先端科学技術研究センター准教授、ゲノム医学・エピゲノム解析専門)の監修のもとに作成しています。学術論文の引用箇所は、掲載誌・巻号・DOIを確認のうえ記載しています。
よくある質問
SNP単体解析とSTR解析の違いについて、当院によく寄せられる質問をまとめました。検討中の方はあわせてご確認ください。
まとめ
SNP単体で高精度を目指すと数千カ所規模の解析が必要になりますが、STRなら少ない箇所数でも高精度な判定が可能です。SNP単体で高い判定精度を目指す場合、STRに比べて格段に多い箇所数の解析が必要になります。学術論文では5,000カ所規模のSNPパネルを用いた例が報告されており、SNPの1カ所あたりの情報量の少なさを裏付けるデータといえます。検査機関のウェブサイトなどで解析手法を確認する際は、STRかSNPか、また何カ所を解析しているかという点にも注目すると、その検査の精度を見積もる手がかりになります。
ヒロクリニックでは、1カ所あたりの情報量が多いSTRを52座位解析することで、99.99%以上の判定精度を実現しています。箇所数や解析手法について不明点がある方は、お申し込み前に担当医へご相談ください。
関連記事として、出生前親子DNA鑑定に関する学術論文を紹介、SNPにおける総合父性除外率(排除確率)もあわせてご覧ください。
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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定
ヒロクリニックのDNA出生前親子鑑定(NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Hall AL, Stephenson DN, Bieber FR, Maybruck J, Sharaf HM, Jackson MC, et al. Noninvasive prenatal paternity testing: a clinical characterization of 554 cases. Prenat Diagn. 2013 Aug;33(8):742-8.
- Chu T, Bunce K, Hogge WA, Peters DG. Noninvasive prenatal paternity testing using maternal blood. Prenat Diagn. 2013 Oct;33(10):948-53.





