MiniSeqとはどんな次世代シークエンサーか

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この記事の概要

MiniSeqは、次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer, NGS)の一種で、米国のIllumina社が提供している小型でユーザーフレンドリーなシーケンサーです。MiniSeqは、研究室でのDNAやRNAの高速解析を可能にする装置で、主に小規模なゲノム解析、ターゲットシーケンシング、遺伝子発現解析などの用途に使用されます。

MiniSeqは、Illumina社が展開する次世代シーケンサー(NGS)の中でも、小型・低コストを重視したエントリーモデルです。研究室に置きやすいサイズと扱いやすさが特徴で、小規模なターゲットシーケンスに使われてきました。

この記事では、MiniSeqの基本スペックと用途、そして2025年に発表された販売終了の動きまで、現時点でわかっている情報を整理します。親子鑑定でSTR解析に使われない理由はMiniSeqではSTR解析が難しい理由で詳しく解説しています。

この記事でわかること

研究機関での機種選定はもちろん、親子鑑定という法科学分野の検査でなぜMiniSeqが使われないのかを知りたい方にも役立つ内容です。

  • MiniSeqの基本スペックと特徴
  • MiniSeqが向いている用途・向いていない用途
  • 2025年の販売終了と今後のサポート予定
  • 他のIllumina製シーケンサーとの位置づけの違い

MiniSeqの基本スペック

MiniSeqは、Illumina製シーケンサーの中で最もコンパクトなクラスに位置づけられる機種です。公表されているスペックでは、最大リード長は150塩基対×2(ペアエンド)、最大データ出力は7.5Gbとなっています。

項目MiniSeqのスペック
最大リード長150bp×2(ペアエンド)
最大データ出力7.5Gb
シーケンス方式SBS(Sequencing by Synthesis)技術
ラン時間キットにより数時間〜24時間程度
主な用途ターゲットシーケンス、小規模な遺伝子発現解析

MiSeqやNextSeqと同じSBS技術(蛍光標識したヌクレオチドを1塩基ずつ取り込ませて配列を決定する方式)を採用しているため、基本的な読み取り精度の考え方は共通しています。違いは、リード長とデータ出力の上限にあります。

MiniSeqは2016年1月に発表された機種で、当時は「手頃な価格で始められるNGS」として紹介されました。試薬キットにはHigh-output・Mid-output・Rapidの3種類があり、必要なデータ量やスピードに応じて選べる設計になっています。最も出力の大きいHigh-outputキットでも約7.5Gbが上限で、他機種と比べると小回りの利くポジションです。

SBS技術の基本的な流れ

SBS技術は、DNA鎖を複製する過程で塩基ごとに発する蛍光を検出し、配列を1塩基ずつ読み取る方法です。大まかな流れとしては、まず検査対象のDNAを断片化してアダプターを付加する「ライブラリ調製」を行い、その断片をフローセルと呼ばれる基板上で増幅する「クラスター生成」を経て、蛍光標識したヌクレオチドを取り込ませながら配列を読み取っていきます。

MiniSeqでは、この一連の工程がキット化されており、専門的な分子生物学の知識がなくても一定の手順でランを実施できるよう設計されています。ラン時間はキットの種類によって数時間から24時間程度と幅があり、必要なデータ量に応じて選択します。この汎用性の高さが、研究室単位での導入を後押ししてきた理由のひとつです。

導入コストの面から見たMiniSeqの立ち位置

MiniSeqが多くの研究室に選ばれてきた理由のひとつは、NGS機器の中で比較的手が届きやすい価格帯にあったことです。大型機種と比べて本体価格・設置スペースともに小さく、ランニングコストとなる試薬キットも用途に応じて選べるため、初めてNGSを導入する研究室の入り口として位置づけられてきました。

一方で、扱えるデータ量には上限があります。サンプル数が増えたり、より広いゲノム領域を対象にしたりする場合は、MiSeqやNextSeqなど上位機種への切り替えが必要になります。導入時点での用途だけでなく、将来的にどこまで解析規模を広げる可能性があるかを見据えて機種を選ぶことが、後々の機器更新の手間を減らすポイントになります。

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MiniSeqが向いている用途

MiniSeqは、限られた範囲を対象にした小規模プロジェクトに向いています。具体的には、次のような研究・検査での活用例が知られています。

  • ターゲットシーケンシング:特定の遺伝子やゲノム領域を絞って解析する用途です。
  • 小規模な遺伝子発現解析:RNAシーケンスによって、特定条件下の遺伝子発現の傾向をつかむ用途です。
  • 微生物ゲノムの簡易解析:菌種の同定など、比較的小さいゲノムを対象にした解析です。

いずれも、対象領域が限定的でデータ量をそれほど必要としない用途です。逆に、広い範囲を高いカバレッジで読む必要がある解析には向いていません。親子鑑定のSTR解析もその一例で、詳しい理由はMiniSeqではSTR解析が難しい理由にまとめています。

なぜ法科学分野のSTR解析にはMiniSeqが使われないのか

親子鑑定で使うSTR(短鎖タンデムリピート)解析には、対象となる複数座位を安定した精度で読み切れる検証済みのシステムが必要です。法科学分野向けのライブラリ調製キットは、Illumina社のMiSeqをベースにした専用機(例えばMiSeq FGx Systemのような法科学向けプラットフォーム)での動作を前提に開発・検証されているものが一般的で、汎用エントリーモデルであるMiniSeq向けには、そうした検証済みのSTR解析キットが提供されていません。

私自身、検査データを日常的に確認する立場として感じるのは、機種のスペック上の数値だけでなく「その用途向けに検証されたキットとワークフローが存在するか」が実務上は同じくらい重要だということです。ヒロクリニックの親子鑑定では、STR解析用に検証されたMiSeq FGx Systemを採用し、MiniSeqのような汎用エントリーモデルは使用していません。

青く光るDNAの二重らせん構造のイメージ画像

MiniSeqは2025年9月末で新規販売が終了しています

Illumina社は、MiniSeqを含む一部機種のEnd of Life(販売終了)を発表しており、MiniSeqの新規受注は2025年9月30日で終了しています。既存機器のサポートや試薬供給は2029年12月31日まで継続される予定とされています。

後継機種としては、同社の案内でMiSeq i100シリーズが挙げられています。すでにMiniSeqを導入している研究室・検査機関では、当面は運用を続けながら、今後の機器更新を検討する時期に入っています。この情報は、Illumina社の公式なEnd of Life案内にもとづいています。

既存ユーザーが今後検討したいポイント

MiniSeqをすでに運用している研究室・検査機関にとって、当面の課題は試薬供給が続く2029年末までのロードマップづくりです。具体的には、現行のワークフローで扱っているサンプル数やデータ量が後継機種でどこまで維持できるか、試薬コストがどう変わるかといった点を早めに確認しておくと、機器更新のタイミングで解析が滞るリスクを抑えられます。

  • 現行ワークフローの棚卸し:どのキット・プロトコルをMiniSeqで運用しているかを整理します。
  • 後継機種との互換性確認:ライブラリ調製から解析ソフトまで、後継機種で流用できる部分と変更が必要な部分を洗い出します。
  • 移行スケジュールの検討:試薬供給期限(2029年12月31日)から逆算して、余裕のある移行計画を立てます。

研究室単位での機種選定と異なり、ヒロクリニックのような検査サービスでは、機種変更が結果の再現性や過去データとの整合性に直結します。そのため当院の自社ラボ「東京衛生検査所」では、法科学分野での実績が積み上がっているMiSeq FGx Systemを継続して採用する方針です。

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他のIllumina製シーケンサーとの位置づけ

Illumina社のシーケンサーは、対象とするプロジェクトの規模に応じていくつかのクラスに分かれています。MiniSeqは、その中で最も小規模なクラスに位置します。

機種最大データ出力の目安想定規模
MiniSeq7.5Gb小規模
MiSeq15Gb小〜中規模
NextSeq 500/550120Gb中〜大規模
NovaSeq数Tb規模大規模(全ゲノム解析等)

MiSeqの特徴はMiSeqによる次世代シーケンス解析の魅力、NextSeqの特徴はNextSeqとは?、より大規模なNovaSeqについては最先端のNovaSeqとはで解説しています。プロジェクトの規模に合わない機種を選ぶと、コストや解析精度の面で無理が生じます。用途に応じた機種選定が欠かせません。

私自身、検査結果を確認する立場として日々さまざまな解析データに触れていますが、機種ごとの得意・不得意を理解したうえで使い分けることが、安定した結果につながると感じています。ヒロクリニックの親子鑑定では、STR解析に適したMiSeq FGx Systemを採用しています。

MiniSeqとMiSeq FGx Systemは何が違うのか

MiniSeqが汎用の研究用エントリーモデルであるのに対し、MiSeq FGx Systemは法科学分野向けに構成された専用プラットフォームです。ハードウェアの土台こそMiSeqシリーズと共通する部分がありますが、STR解析やSNP解析に対応したライブラリ調製キット、解析ソフトウェアと一体で運用される点が大きく異なります。

ヒロクリニックが導入しているMiSeq FGx Systemは、世界で10万件以上の実績を持つ機器です。汎用機であるMiniSeqにはない、法科学分野に特化した検証プロセスを経ている点が、親子鑑定という用途において重要な違いになります。検査機器の選定は、単純なスペック比較だけでなく「その用途に向けて検証されているかどうか」で判断する必要があります。

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よくある質問

MiniSeqはどのような研究に向いていますか?

特定の遺伝子やゲノム領域を絞って解析するターゲットシーケンシングや、小規模な遺伝子発現解析、微生物ゲノムの簡易解析などに向いています。

MiniSeqとMiSeqの違いは何ですか?

最大リード長・最大データ出力ともにMiSeqの方が上回ります。詳しい比較はMiSeqとMiniSeqの違いで表にまとめています。

MiniSeqはもう購入できないのですか?

Illumina社の案内によると、新規受注は2025年9月30日で終了しています。既存機器のサポート・試薬供給は2029年12月31日まで継続される予定です。

ヒロクリニックの親子鑑定でもMiniSeqを使っていますか?

いいえ。ヒロクリニックの自社ラボ「東京衛生検査所」では、STR解析に適したMiSeq FGx Systemを使用しています。

MiniSeqとNextSeqはどちらが高性能ですか?

データ出力量ではNextSeqが上回ります(最大120Gb程度に対しMiniSeqは7.5Gb)。ただし「高性能」かどうかは用途によるため、小規模な解析にはMiniSeqのコンパクトさが向いている場合もあります。

まとめ

MiniSeqは、小規模なターゲットシーケンスや遺伝子発現解析に向いた、コンパクトで扱いやすい次世代シーケンサーです。一方で、2025年9月末に新規販売が終了しており、今後は後継機種への移行が進んでいく見込みです。

親子鑑定のように高い再現性が求められる用途では、目的に応じた機種選定が欠かせません。ヒロクリニックの検査体制について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

研究用途でMiniSeqの導入や機種選定を検討している方は、対象とするサンプル数・必要なデータ量・将来的な拡張可能性の3点を軸に比較すると判断しやすくなります。反対に、法的な証明力が求められる親子鑑定のような検査では、機器のスペックだけでなく「その用途向けに検証されたシステムかどうか」を必ず確認してください。ヒロクリニックでは、STR解析用に検証されたMiSeq FGx Systemと、専属医師が管理する自社ラボ「東京衛生検査所」の体制により、安定した精度での検査を提供しています。

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医師監修 監修日:2024年10月19日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年10月19日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Lo YMD, Corbetta N, Chamberlain PF, Rai V, Sargent IL, Redman CW, et al. Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum. Lancet. 1997 Aug 16;350(9076):485-7.
  2. Fan HC, Blumenfeld YJ, Chitkara U, Hudgins L, Quake SR. Noninvasive diagnosis of fetal aneuploidy by shotgun sequencing of DNA from maternal blood. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Oct 21;105(42):16266-71.
  3. Chiu RWK, Kantarijian AJ, Zheng YWL, Lau TK, Chan KCA, Redman CW, et al. Non-invasive prenatal assessment of trisomy 21 by multiplexed maternal plasma DNA sequencing: large scale clinical validation study. BMJ. 2011 Jan 11;342:c7401.
  4. Bianchi DW, Platt LD, Goldberg JD, Abuhamad AZ, Sehnert AJ, Rava RP, et al. Genome-wide fetal aneuploidy detection by maternal plasma DNA sequencing. Obstet Gynecol. 2012 May;119(5):895-901.
  5. Benn P, Cuckle H, Pergament E. Non-invasive prenatal testing for aneuploidy: current status and future prospects. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013 Jul;42(1):15-33.

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