MiSeqによる次世代シーケンス解析の魅力

検査

この記事の概要

MiSeqは、米国のIllumina社が提供する次世代シーケンサー(NGS)の一つで、主にターゲットシーケンシング、小規模な全ゲノム解析、遺伝子発現解析、および微生物ゲノム解析に適したシーケンサーです。MiSeqは、より大規模なシーケンス機器(HiSeqやNovaSeq)に比べてコンパクトで、研究室や臨床検査における中小規模のシーケンス解析に適したモデルとして位置づけられています。

MiSeqは、Illumina社が展開する次世代シーケンサー(NGS)の中でも、小〜中規模の解析に適したモデルです。ヒロクリニックの自社ラボ「東京衛生検査所」でも、親子鑑定のSTR解析にMiSeqをベースにしたシステムを採用しています。DNA親子鑑定の精度は、採用する検査手法だけでなく、実際に使用する機器のスペックにも大きく左右されます。

この記事では、MiSeqの基本スペックと技術的な特徴、そして実際の検査現場でどのように活用されているかを、自社での運用も交えて解説します。「なぜこの機種を選んだのか」「精度をどう担保しているのか」という、意外と説明される機会の少ない部分まで踏み込んでご紹介します。

この記事でわかること

  • MiSeqの基本スペックとSBS技術の仕組み
  • MiSeqが臨床・法医学領域で使われる理由
  • ヒロクリニックがMiSeq FGxを導入した経緯
  • 検査現場での実際の運用体制

MiSeqの基本スペック

MiSeqは、最大リード長300塩基対×2(ペアエンド)、最大データ出力15Gbというスペックを持つシーケンサーです。同社のMiniSeqの2倍のリード長・データ出力に対応しており、より幅広い用途に使えます。

項目MiSeqのスペック
最大リード長300bp×2(ペアエンド)
最大データ出力15Gb
シーケンス方式SBS(Sequencing by Synthesis)技術
ラン時間キットにより数時間〜約56時間(600サイクル時)
主な用途ターゲットシーケンス、STR解析、微生物叢解析など

MiSeqは、蛍光標識したヌクレオチドをDNA鋳型に1塩基ずつ取り込ませ、その蛍光シグナルを読み取って配列を決定するSBS技術を採用しています。ペアエンドシーケンス(DNA断片の両端から読む方式)に対応しているため、長い領域でも高い精度で配列を組み立てられます。

開発元のIllumina社は、世界的に広く使われているシーケンサーを手がける企業で、研究機関や臨床検査、法医学分野など幅広い領域で同社の機器が採用されています。MiSeqシリーズはその中でも、卓上に設置できるコンパクトさと、実務で扱いやすい解析規模を両立させたモデルという位置づけです。

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MiSeqが臨床・法医学領域で選ばれる理由

MiSeqが臨床・法医学領域で選ばれやすいのは、リード長とデータ出力のバランスが、STR解析のような反復配列を扱う用途に合っているためです。短すぎるリード長では長いアレル(型)を読み切れず、逆に大規模機種は1検体あたりのコストが割高になりがちです。

  • 十分なリード長:300bp×2のペアエンドで、幅広いSTR座位のアレルを読み切れます。
  • 適度な処理規模:数十検体規模のバッチ処理に無理のないデータ出力量です。
  • 専用キットとの組み合わせ:フォレンジック用途向けに検証されたキットと組み合わせて使える基盤があります。

MiSeqとMiniSeqの違いをスペック単位で比較したい方は、MiSeqとMiniSeqの違いで表にまとめています。MiniSeqがSTR解析に向かない理由はMiniSeqではSTR解析が難しい理由をご覧ください。機種選定の段階で、扱う検体数や求める精度に対してスペックが過不足ないかを見極めることが、安定した検査運用につながります。

手のひらに浮かぶDNAの二重らせんと分子構造のイメージ画像

ヒロクリニックがMiSeq FGxを導入した経緯

ヒロクリニックの自社ラボ「東京衛生検査所」では、Qiagen(Verogen)社のMiSeq FGx Forensic Genomics Systemを日本で初めて導入しました。MiSeq本体に、ForenSeq DNA Signature Prep Kitという専用の解析キットを組み合わせた、フォレンジック用途向けのシステムです。

公表されている検証データでは、STR型判定でキャピラリー電気泳動法(CE法)との一致率100%(1,260検体)、SNP判定でビーズアレイ法との一致率99.1%超という結果が示されています。世界では10万件以上の実績を持つシステムで、私はCAPラボディレクターとして、この実績の裏付けとなる精度管理データを日々確認しています。導入時には機器そのものの性能だけでなく、こうした第三者的な検証データが十分に蓄積されているかどうかも重視しました。

東京衛生検査所は次世代シーケンサーを5台保有し、CAP・ISO9001の認証を受けた検査体制のもとで運用しています。検体はバーコードで管理し、医療機関からの直接配送によって取り違えのリスクを抑えています。機器の性能を実際の精度につなげるには、こうした周辺の管理体制が欠かせないと感じています。高性能な機器を導入しても、検体管理や解析ソフトウェアの運用ルールが整っていなければ、その性能を安定して発揮することはできません。

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検査現場での実際の運用

ヒロクリニックでは、STR法(Short Tandem Repeat)による解析を採用しています。SNP法(一塩基多型)よりも1座位あたりの個人識別力が高く、少ない座位数でも高い判定精度を得やすいという特徴があります。DNA上の繰り返し配列の長さには個人差が大きく現れるため、複数の座位を組み合わせて比較することで、非常に高い精度で親子関係を判定できます。

STR法は法医学分野で標準的に使われている手法で、FBIのCODISでも採用されています(CODISでは13〜20座位程度が用いられます)。ヒロクリニックでは、これを大きく上回る52座位規模の解析を行うことで、99.99%以上の精度を実現しています。全国のクリニックで採血した検体を東京衛生検査所に集約し、一貫した体制でMiSeqベースのシステムによる解析を行っています。解析の仕組みをさらに詳しく知りたい方は、STRを用いた尤度比の計算方法もご参照ください。

検査所の第三者認証について詳しくはCAPとは、衛生検査所登録の意味については衛生検査所登録している検査所での鑑定の意味で解説しています。

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MiSeqとキャピラリー電気泳動法(CE法)との違い

MiSeqのようなNGS機器は、従来から使われてきたキャピラリー電気泳動法(CE法)に比べて、一度に解析できる情報量が大きく異なります。どちらも法医学分野で実績のある手法ですが、原理と得意分野には違いがあります。

CE法は、DNA断片を電気泳動でサイズ分離し、STR型を座位ごとに読み取る手法です。長年の実績と機関間での互換性の高さから、現在も多くの検査機関で標準的に使われています。一方、MiSeqのようなNGS機器はDNA断片を大量に並列で読み取れるため、同じ検体からより多くの座位情報を一度に取得できます。

先述のとおり、ヒロクリニックが公表しているSTR型判定でのCE法との一致率100%(1,260検体)という検証データは、原理の異なる2つの手法で結果に整合性があることを示すものであり、MiSeq FGxシステムの信頼性を裏付ける根拠のひとつになっています。

MiSeq FGxによる解析の流れ

MiSeq FGxを用いた解析は、検体からのDNA抽出、ライブラリ調製、シーケンス、データ解析という工程を経て進みます。各工程で品質チェックが行われ、精度が担保された状態で次の工程に進みます。

  1. DNA抽出:頬粘膜や血液などの検体から、DNAを精製します。
  2. ライブラリ調製:ForenSeq DNA Signature Prep Kitを用いて、対象となるSTR領域を増幅し、シーケンスに適した形に整えます。
  3. シーケンス:MiSeq本体でSBS技術により、蛍光シグナルを読み取りながら配列を決定します。
  4. データ解析:得られた配列データを専用ソフトウェアで解析し、各座位のアレル型を判定します。

私(堤)自身、東京大学在籍時に次世代シーケンサーを用いたゲノム解析研究に携わっていましたが、フォレンジック用途では研究用途以上に検体管理と精度検証の厳密さが求められると実感しています。ヒロクリニックでは各工程を標準化することで、担当者による判定のばらつきを抑えています。

監修者情報

本記事は、ヒロクリニック統括院長・医学博士の岡博史と、ゲノム医学・次世代シーケンス解析を専門とする医学博士の堤修一が医療情報を監修しています。岡はCAPラボディレクター・東京衛生検査所指導監督医として日々の精度管理データを確認し、堤は元東京大学先端科学技術研究センター准教授としてゲノム医学・エピゲノム解析の学術研究に携わった実績があります。

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よくある質問

ここでは、MiSeqおよびMiSeq FGxシステムについて、よくいただくご質問にお答えします。使用機器や解析手法について詳しく知りたい方は、検査の仕組みを理解する参考にしてください。

MiSeqとMiSeq FGxは同じものですか?

MiSeq FGxは、MiSeq本体にフォレンジック用途向けの専用ソフトウェアと解析キットを組み合わせたシステムです。基本的なシーケンス性能はMiSeqと共通していますが、法医学用途での検証が行われている点が異なります。

MiSeqのデータ出力はどのくらいですか?

最大で15Gb程度のデータを生成できます。リード長は最大300塩基対×2(ペアエンド)に対応しています。

ヒロクリニックの検査精度はどのくらいですか?

STR法による52座位規模の分析で、99.99%以上の精度を実現しています。詳しくは出生前DNA鑑定の正確性をご覧ください。

MiSeqとNGSは何が違うのですか?

NGS(次世代シーケンサー)は装置の総称で、MiSeqはIllumina社が提供するNGS機種の一つです。同じNGSでも、機種によってリード長やデータ出力、想定する用途が異なります。

MiSeq FGxはヒロクリニックが独自開発した機器ですか?

いいえ。Qiagen(Verogen)社が開発・販売しているシステムです。ヒロクリニックは、このシステムを日本で初めて導入し、東京衛生検査所で運用しています。

MiSeqとキャピラリー電気泳動法(CE法)はどちらが優れていますか?

単純な優劣ではなく、原理や得意分野が異なります。CE法は長年の実績があり互換性が高い手法、MiSeqのようなNGS機器は一度に多くの座位情報を取得できる手法です。ヒロクリニックでは両手法の一致率検証データも公表しています。

MiSeq FGxの解析にはどのくらいの時間がかかりますか?

シーケンスのラン時間はキットの設定により数時間から約56時間程度です。これに加えてDNA抽出・ライブラリ調製・データ解析の工程が必要なため、検体到着から結果報告までの総所要時間は別途かかります。

まとめ

MiSeqは、リード長とデータ出力のバランスに優れ、STR解析のような反復配列を扱う用途に適した次世代シーケンサーです。ヒロクリニックでは、フォレンジック用途向けに検証されたMiSeq FGx Systemを日本で初めて導入し、東京衛生検査所での親子鑑定に活用しています。機器の性能だけでなく、検体管理・解析工程の標準化・第三者認証といった周辺体制まで含めて理解することが、検査結果への信頼につながると考えています。

検査の仕組みや精度について気になる点があれば、お申し込み前でもご相談いただけます。使用機器や検証データなど、技術的な裏付けを確認したうえで検査を選びたいという方は、遠慮なくお問い合わせください。

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医師監修 監修日:2024年10月19日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年10月19日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Quail MA, Smith M, Coupland P, Otto TD, Harris SR, Connor TR, et al. A tale of three next generation sequencers: comparison of Ion Torrent, PacBio and Illumina MiSeq platforms. BMC Genomics. 2012;13:341.
  2. Loman NJ, Misra RV, Dallman TJ, Constantinidou C, Gharbia SE, Wain J, et al. Performance comparison of NGS platforms for genetic analysis. Nat Biotechnol. 2012;30(5):434-439.
  3. Glenn TC. Field guide to next-generation DNA sequencers. Mol Ecol Resour. 2011;11(5):759-769.

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