NextSeqとは?大規模解析向けシーケンサーを解説

親子鑑定 NIPPT DNA鑑定 ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)

この記事の概要

NextSeqは、Illumina社が提供する次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer, NGS)の一つで、高スループットなデータ取得を可能にするモデルです。NextSeqは、中規模から大規模なシーケンシングプロジェクトに対応しており、より多くのデータを短時間で生成できることが特徴です。主に全ゲノムシーケンシング(WGS)、トランスクリプトーム解析(RNA-seq)、エクソームシーケンシングなどの大規模解析に利用されます。

NextSeqは、Illumina社の次世代シーケンサー(NGS)の中で、MiSeqやMiniSeqよりも大規模なデータ処理に対応するモデルです。全ゲノム解析やRNAシーケンスなど、大量のデータを必要とするプロジェクトで使われています。

この記事では、NextSeqの基本スペックと用途、そしてMiSeq・MiniSeqとの位置づけの違いを解説します。ヒロクリニックの親子鑑定でNextSeqではなくMiSeqベースの機器を使っている理由もあわせて紹介します。

この記事でわかること

  • NextSeqの基本スペックと特徴
  • NextSeqが向いている用途
  • MiSeq・MiniSeqとの位置づけの違い
  • 親子鑑定にNextSeqが使われない理由

NextSeqの基本スペック

NextSeq 500/550は、High Outputキット使用時で最大約120Gb、最大リード長150塩基対×2(ペアエンド)というスペックを持つシーケンサーです。MiSeqの最大出力15Gbと比べると、8倍規模のデータを1回のランで生成できます。

項目NextSeq 500/550のスペック
最大データ出力(High Output)約120Gb
最大データ出力(Mid Output)約39Gb
最大リード長150bp×2(ペアエンド)
シーケンス方式SBS技術(2チャンネル化学)
主な用途全ゲノム解析、RNA-seq、エクソーム解析、大規模ターゲット解析

NextSeqは、4種類の塩基を2つの蛍光信号で識別する「2チャンネル化学」を採用しており、4チャンネル方式のMiSeqよりも1サイクルあたりの読み取りを高速化しています。その分、リード長自体はMiSeqの300bp×2より短い150bp×2にとどまり、「広く・速く読む」設計であることがわかります。

NextSeqが採用しているSBS(Sequencing by Synthesis)法は、DNA鎖を合成しながら1塩基ずつ蛍光シグナルを読み取っていく方式です。フローセルと呼ばれるガラス基板の表面に検体由来のDNA断片を固定し、塩基が結合するたびに発光する蛍光を高解像度カメラで撮影して配列を決定します。多数の断片を同時並行で読み取れるため、1回のランで大量のサンプル・領域を処理できる点がSBS法を採用する大型シーケンサー全般の強みです。

SBS法によるシーケンシングでは、フローセル上でDNA断片を増幅する「クラスター生成」という工程を経てから、実際の配列読み取りに入ります。この工程でどれだけ均一にクラスターを形成できるかが、最終的なデータの質を大きく左右します。NextSeqのように多検体・広範囲を一度に処理する機種では、クラスター密度の管理やラン設計の精度が、装置の性能を引き出すうえで欠かせない要素になります。

お腹の赤ちゃんのお父さんを調べる
法的鑑定もできる

NextSeqが向いている用途

NextSeqは、1回のランで数百サンプルを並列処理できるため、大量のデータを扱う研究・臨床用途に向いています。主な用途は次のとおりです。

  • 全ゲノムシーケンシング(WGS):ヒトを含む生物のゲノム全体を解析する用途です。
  • エクソームシーケンシング:遺伝子のコード領域に絞って、多数のサンプルを並列に解析する用途です。
  • トランスクリプトーム解析(RNA-seq):組織・細胞で発現する遺伝子を網羅的に調べる用途です。

いずれも、対象範囲が広く多検体を一度に処理する用途です。逆に、特定の座位だけを高い再現性で読みたい用途では、NextSeqの広さよりもMiSeqのリード長のほうが実務的に重要になります。

研究機関では、まず小規模なパイロット解析をMiSeqやMiniSeqで行い、対象領域やプロトコルが固まった段階でNextSeqに移行して検体数を増やす、という使い分けをするケースもあります。臨床検査の現場でも、がん遺伝子パネル検査のように多数の遺伝子を同時に調べる検査ではNextSeqクラスの機種が採用されることが一般的です。プロジェクトの規模が大きくなるほど、1検体あたりのシーケンスコストを抑えられる点もNextSeqが選ばれる理由のひとつです。

顎に手を当てて考える女性のイメージ写真

MiSeq・MiniSeqとの位置づけの違い

Illumina社のシーケンサーは、対象とするプロジェクトの規模に応じて複数のクラスに分かれています。NextSeqは、MiSeq・MiniSeqよりも大規模な用途を担うポジションです。

機種最大データ出力の目安最大リード長想定規模
MiniSeq7.5Gb150bp×2小規模
MiSeq15Gb300bp×2小〜中規模
NextSeq 500/550120Gb150bp×2中〜大規模
NovaSeq数Tb規模機種・キットにより異なる大規模(全ゲノム解析等)

興味深いのは、データ出力量ではNextSeqがMiSeqを大きく上回る一方、最大リード長はMiSeqの300bp×2の方がNextSeqの150bp×2より長いという点です。「データ量が多い=あらゆる用途に優れている」わけではなく、リード長が必要な解析には別の機種選定が求められます。さらに大規模な最先端のNovaSeqとはもあわせてご覧ください。

機種選定は、単純に「新しいモデルほど優れている」という発想では決められません。検体数・必要なリード長・許容できるコストと納期のバランスを見て、プロジェクトごとに最適な機種を選ぶのが基本的な考え方です。同じIllumina社のプラットフォームでも、装置ごとに得意分野が異なる点を理解しておくと、検査結果の解釈にも役立ちます。

たとえば、限られた予算で少数の遺伝子領域だけを確認したい場合は、MiniSeqのような小型機種のほうがコストと納期のバランスに優れます。一方、多数のサンプルを一括で処理したい研究プロジェクトでは、NextSeqやさらに大規模なNovaSeqが選ばれる傾向にあります。「大は小を兼ねる」わけではなく、目的に合わせて機種を選び分けることが、無駄なコストや納期の遅れを避けるポイントです。装置の導入コストだけでなく、ランニングコストやメンテナンス体制まで含めて比較検討することも、実務上は欠かせない視点になります。

お腹の赤ちゃんのお父さんを調べる
法的鑑定もできる

親子鑑定にNextSeqが使われない理由

ヒロクリニックの親子鑑定では、NextSeqではなくMiSeqをベースにしたQiagen社のMiSeq FGx Systemを採用しています。理由は、STR解析に必要なリード長(アレルの端まで正確に読み切る長さ)が、NextSeqの150bp×2よりもMiSeqの300bp×2の方が適しているためです。

親子鑑定は、多検体を大量に処理するスピードよりも、1検体ごとの判定精度が優先される検査です。私はCAPラボディレクターとして日々の精度管理データを確認する立場にありますが、用途に対してオーバースペックな機種を選ぶことよりも、STR解析で検証実績のある組み合わせを選ぶことのほうが結果の安定につながると考えています。

MiSeq FGx Systemは日本で初めて導入した機器で、世界では10万件以上の実績があります。STR法による52座位規模の分析で99.99%以上の精度を実現しています。詳しくはMiSeqによる次世代シーケンス解析の魅力をご覧ください。MiniSeqとの違いはMiSeqとMiniSeqの違いを比較表で解説にまとめています。

共同監修の堤修一は、東京大学先端科学技術研究センターでゲノム医学・エピゲノム解析の研究に携わってきました。大規模シーケンサーは「広く浅く」多検体を処理する設計思想である一方、親子鑑定に求められるのは「特定の座位を確実に、繰り返し同じ結果で読み切る」再現性です。この観点からも、STR解析にはリード長を確保できるMiSeq系のプラットフォームが適していると考えられます。

お腹の赤ちゃんのお父さんを調べる
法的鑑定もできる

シーケンサー選びでよくある誤解

「出力量が大きい機種ほど高性能」という理解は、必ずしも正しくありません。NextSeqの解説を通じてよくいただく質問や誤解を整理しておきます。

  • 誤解1:データ出力量が多いほど精度が高い。データ出力量は「1回のランでどれだけの情報量を読めるか」を示す指標であり、1つの座位を正確に読み切れるかどうかとは別の観点です。用途によっては、出力量よりもリード長や解析対象の絞り込み精度のほうが結果を左右します。
  • 誤解2:新しい機種を使っていれば安心。機種の新しさよりも、目的に合った検証済みのワークフローで運用されているかどうかが重要です。親子鑑定のように再現性が問われる検査では、実績のある組み合わせを継続して使うことに合理性があります。
  • 誤解3:どの検査機関でも同じ機種・同じ条件で検査している。実際には、検査機関ごとに採用しているシーケンサーやSTR解析のプロトコルが異なります。検査を依頼する前に、どのような機器・体制で解析しているかを確認しておくと安心です。

NextSeqを含む大規模シーケンサーは、研究や大規模な臨床検査の現場を支える重要な機器です。一方で、親子鑑定のように「特定の座位を、高い再現性で確実に判定する」ことが目的の検査では、単純な出力量の大きさよりも、目的に合わせた機器選定とワークフローの検証実績が結果の信頼性を支えています。検査を依頼する際は、料金や納期だけでなく、どのような機器・体制で解析しているかにも目を向けていただくと、より納得感を持って検査を受けていただけるはずです。

お腹の赤ちゃんのお父さんを調べる
法的鑑定もできる

よくある質問

NextSeqについて、当院に寄せられることの多い質問をまとめました。機種選定の参考にご覧ください。

NextSeqの最大の特徴は何ですか?

2チャンネル化学によって高速に塩基を読み取れる点と、High Outputキット使用時で最大約120Gbという大きなデータ出力量が特徴です。

NextSeqとMiSeqはどちらのリード長が長いですか?

MiSeqの方が長く対応しています。MiSeqは最大300塩基対×2、NextSeqは最大150塩基対×2です。データ出力量ではNextSeqが上回りますが、リード長ではMiSeqが上回ります。

NextSeqとNovaSeqはどう違いますか?

NovaSeqはNextSeqよりもさらに大規模なデータ出力に対応した機種です。詳しくは最先端のNovaSeqとはをご覧ください。

ヒロクリニックの親子鑑定でNextSeqは使われていますか?

いいえ。STR解析に必要なリード長を確保できるMiSeqをベースにしたMiSeq FGx Systemを使用しています。

NextSeqはどのような研究機関で使われていますか?

大学や研究機関、臨床検査機関などで、全ゲノム解析やがん遺伝子パネル検査、大規模なRNAシーケンスに広く利用されています。

シーケンサーを選ぶときに、出力量以外に確認すべきポイントはありますか?

はい。最大リード長、必要なサンプル数、ラン1回あたりのコストと納期のバランスを総合的に確認することが重要です。用途によっては、出力量の大きさよりもリード長の長さが結果の精度に直結する場合があります。

まとめ

NextSeqは、大量のデータを短時間で処理できる、中〜大規模プロジェクト向けの次世代シーケンサーです。全ゲノム解析やRNAシーケンスなど、多検体・広範囲の解析に強みがあります。

一方、ヒロクリニックの親子鑑定では、STR解析に必要なリード長を確保できるMiSeqベースのシステムを採用しています。検査に使用している機器や体制について気になる点があれば、お気軽にご相談ください。

本記事は、医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・岡博史(医師・医学博士、CAPラボディレクター、東京衛生検査所指導監督医)および博多駅前院院長・堤修一(医師・医学博士、元東京大学先端科学技術研究センター准教授、ゲノム医学・エピゲノム解析専門)の監修のもとに作成しています。機種のスペックは変更される場合がありますので、最新情報はIllumina社公式サイトをご確認ください。

お腹の赤ちゃんのお父さんを調べる
法的鑑定もできる

医師監修 監修日:2024年10月19日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年10月19日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Reuter JA, Spacek DV, Snyder MP. High-throughput sequencing technologies. Mol Cell. 2015;58(4):586-597.
  2. Goodwin S, McPherson JD, McCombie WR. Coming of age: ten years of next-generation sequencing technologies. Nat Rev Genet. 2016;17(6):333-351.

記事の監修者