SNPを用いた尤度比の求め方

親子鑑定 NIPPT DNA鑑定 SNP 尤度比の求め方

この記事の概要

SNPを用いた尤度比の計算方法について解説します。遺伝子データを基に親子関係や血縁関係の確率を高めるための基礎知識を学びましょう。

SNPを用いた尤度比の計算は、ある遺伝子型が「親子関係がある」場合と「親子関係がない」場合のどちらで起こりやすいかを、確率の比で示す方法です。この記事では、仮の数値を使った具体例をもとに計算の流れを解説します。実際の鑑定でどの手法が使われているかも含めて整理しますので、専門用語に不慣れな方もご参照ください。

この記事でわかること

  • SNPと尤度比の基本的な考え方
  • 仮の数値を使った尤度比の計算手順
  • 複数のSNPを組み合わせる場合の考え方
  • ヒロクリニックの検査でSTR法を採用している理由

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SNP(一塩基多型)と尤度比の基本

SNP(Single Nucleotide Polymorphism)は、DNA配列の中で1つの塩基が個人によって異なる箇所を指します。親子鑑定では、親候補と子の遺伝子型を比較し、その一致パターンが「親子関係がある」という仮説と「親子関係がない」という仮説のどちらの下で起こりやすいかを、尤度比(LR:Likelihood Ratio)という指標で評価します。

尤度比の計算は、大きく3つのステップに分かれます。

  • SNPデータの収集:親子候補それぞれのDNAからSNPの型を調べます。
  • 一致確率の計算:親子関係がある場合とない場合、それぞれの仮説のもとで観測された型が出現する確率(尤度)を求めます。
  • 尤度比の算出:2つの尤度を割り算し、どちらの仮説がどれだけ支持されるかを数値化します。

仮の数値で理解する尤度比の計算例

ここでは、計算の流れを理解しやすくするため、あくまで説明用に設定した仮の数値を使って計算例を示します。実際の鑑定データではない点にご注意ください。

仮定の設定

あるSNP座位について、親候補の遺伝子型を「AA」、子の遺伝子型も「AA」とします。また、説明のために集団中のアリルAの頻度を仮に10%と設定します。

仮定として集団中のアリルAの頻度を0.1(10%)と設定した式

親子関係がある場合の尤度

親候補が「AA」の場合、子に「AA」の型が観測される尤度は1とします(このSNP座位で親から必ずAが伝わると仮定した単純化モデルです)。

親子関係がある場合の尤度L親子を1とする式

親子関係がない場合の尤度

親子関係がない場合、子が偶然「AA」の型を持つ確率は、集団中のアリル頻度に依存します。仮定したアリル頻度0.1を使うと、L非親子=p_A²=0.1²=0.01となります。

親子関係がない場合の尤度L非親子はアリル頻度の2乗0.01とする式

尤度比(LR)の算出

2つの尤度を割り算すると、LR=1÷0.01=100となります。

尤度比LRはL親子をL非親子で割って100になる式

この仮の計算例では、尤度比100は「親子関係がある」という仮説が「ない」という仮説より100倍支持されることを意味します。ただし、これは1つのSNP座位・仮の数値だけを使った単純化モデルです。実際の鑑定結果を示すものではありません。

尤度比は、事前確率と組み合わせることで「父権肯定率」という指標に変換できます。事前確率を0.5(親子関係がある可能性とない可能性を五分五分とする基準値)とした場合、父権肯定率(W)はW=LR÷(LR+1)という式で求められます。先ほどの仮の例(LR=100)をこの式に当てはめると、W=100÷(100+1)≒99.01%となり、「親子関係がある」という仮説が約99%支持されるという意味になります。ここでも数値はあくまで説明用の仮の例であり、実際の鑑定では複数座位を組み合わせた総合尤度比をもとに、この計算が行われます。

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複数のSNPを組み合わせた場合の考え方

実際の鑑定では、1つのSNP座位だけで判断することはありません。複数のSNP座位それぞれについて同様の計算を行い、各座位の尤度比を掛け合わせることで、最終的な総合尤度比を求めます。座位の数が増えるほど、統計的な判断材料は増えていきます。たとえば、2つのSNP座位でそれぞれの尤度比が仮に100だったとすると、総合尤度比は100×100=10,000となります。座位数を重ねるごとに、このように数値は掛け算的に大きくなっていく仕組みです(あくまで理解のための仮定であり、実際の値は座位ごとに異なります)。

この計算で使うアリル頻度は、どの集団(民族的背景)のデータを参照するかによって変わります。検査対象者の背景と、参照する集団遺伝データベースが適切に対応しているかどうかも、結果の精度を左右する要素のひとつです。実際の鑑定機関では、検証された集団遺伝データベースを用いてこの点を担保しています。

STRを用いた尤度比の求め方はこちらで解説しています。SNPとSTR、それぞれの考え方の違いを比べてみてください。

実際の鑑定でSTR法が使われる理由

ヒロクリニックの出生前親子鑑定では、SNP法ではなくSTR(短鎖タンデムリピート)法を採用しています。STR法は1座位あたりの型の種類が多く、SNP法に比べて個人識別力・多型性が高いという特徴があります。法医学分野の標準的な手法として、FBIのCODIS(犯罪者DNAデータベース)でも採用されている方式です。

当院では52座位のSTRを分析し、99.99%以上の精度を実現しています。実際の解析には、東京衛生検査所が保有する次世代シーケンサーを使用しており、検証された手法と精度管理のもとで結果を報告しています。統計的な仕組みそのものはSNP法もSTR法も共通していますが、実務で使われるマーカーの種類は検査機関によって異なる点を押さえておいてください。

まとめ

SNPを用いた尤度比は、SNPデータの収集、一致確率の計算、尤度比の算出という3ステップで求められます。今回紹介した数値はあくまで理解を助けるための仮の例であり、実際の鑑定は集団遺伝データベースや複数マーカーを用いたより精緻な計算に基づいて行われます。ヒロクリニックではSTR法を用いた検証済みの手法で、精度の高い結果をお届けしています。

よくある質問

尤度比100は、100%親子関係があるという意味ですか?

いいえ、そうではありません。尤度比は「どちらの仮説がどれだけ支持されるか」を示す相対的な指標です。
実際の父性肯定確率を求めるには、事前確率(一般的に0.5を用いることが多い基準値)を組み合わせたベイズ推定などの計算が必要です。

SNP法とSTR法、どちらが優れているのですか?

一概にどちらが優れているとは言えませんが、STR法は1座位あたりの多型性が高く、法医学分野で長年の実績があります。
ヒロクリニックではSTR法を採用し、52座位の分析で99.99%以上の精度を実現しています。

アリル頻度はどこから調べればよいのですか?

実際の鑑定では、検証された集団遺伝データベースのアリル頻度を用います。
この記事で使用した数値(10%)は説明のための仮の値であり、実データではありませんのでご注意ください。

自分で尤度比を計算して鑑定の代わりにできますか?

計算の考え方を理解する目的では有用ですが、正式な鑑定結果として使うことはできません。
実際の鑑定には検証済みの検査機器・データベース・精度管理体制が必要です。正確な結果が必要な場合は、専門の検査機関にご依頼ください。

複数のSNPを使う場合、座位の数はどのくらい必要ですか?

必要な座位数は検査機関や採用する手法によって異なります。
ヒロクリニックではSNP法ではなくSTR法(52座位)を採用し、高い精度を確保しています。

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医師監修 監修日:2024年8月27日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年8月27日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Zimmermann B, Hill M, Gemelos G, Demko Z, Banjevic M, Baner J, et al. Noninvasive prenatal aneuploidy detection of chromosomes 13, 18, 21 and X, Y using targeted sequencing of single-nucleotide polymorphisms. Prenat Diagn. 2012;32(13):1233-41.
  2. Nicolaides KH, Syngelaki A, Gil MM, Quezada MS, de Paco Belles L, et al. Validation of single nucleotide polymorphism-based non-invasive prenatal testing for fetal trisomies in a routinely screened first-trimester population. Prenat Diagn. 2013;33(6):575-9.

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