火傷跡には、色素沈着・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮といった種類があります。種類によって、適した治療法は異なります。受傷から時間が経っていても、跡の種類を見極めることが治療選びの第一歩です。
保存的治療やレーザー、手術を組み合わせれば、目立ちにくくできる可能性があります。本記事のテーマは、火傷跡の種類・治療の選択肢・治療を検討するタイミングの3点。ヒロクリニック形成外科・皮膚科の医師監修のもと解説します。
この記事でわかること
- 色素沈着・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮の見分け方
- 形成外科で受けられる保存的治療とレーザー治療
- 瘢痕切除術・皮膚移植術・皮弁形成術など外科的治療の種類
- 保険診療と自費診療の違い、費用の目安
- 治療を始めるべきタイミングと医療機関の選び方
目次
火傷跡の主な種類|色素沈着・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮
火傷跡とひとくくりにいっても、実際の状態はさまざまです。跡の種類によって治療の考え方が変わります。まずは自分の跡がどのタイプに近いかを知ることが大切です。代表的な4つのタイプを紹介します。

炎症後色素沈着
火傷跡でもっとも多くみられるのが、茶色っぽいシミのように残る炎症後色素沈着です。炎症の刺激でメラニン色素が過剰につくられて生じます。紫外線を浴びると濃くなりやすい性質があります。多くは半年から1年程度かけて徐々に薄くなりますが、色調が残る場合もあります。
肥厚性瘢痕
肥厚性瘢痕は、傷が治る過程でコラーゲンが過剰につくられ、赤みを帯びて盛り上がった状態です。受傷部位の範囲内にとどまって盛り上がるのが特徴です。数年かけて徐々に平らになることも少なくありません。深達性Ⅱ度以上の火傷や、治癒に時間がかかったケースで生じやすいとされています。
ケロイド
ケロイドは肥厚性瘢痕と似ています。盛り上がりが受傷部位の周囲にまで広がっていく点が大きな違いです。かゆみや痛みを伴うこともあります。自然に縮小しにくい性質を持ちます。体質による影響も指摘されており、胸や肩など皮膚の張力が強い部位にできやすい傾向があります。
瘢痕拘縮
関節をまたぐ部位に深い火傷を負うと、傷が縮みながら治る過程でひきつれが生じることがあります。関節を伸ばしにくくなる状態を、瘢痕拘縮と呼びます。見た目の問題だけではありません。腕や指、首などの動きが制限され、日常動作に支障が出る場合もあります。
受傷直後の応急処置や深達度ごとの経過は、火傷の治し方|応急処置と早く治す4つのコツで詳しく解説しています。跡の状態が気になり始めた段階では、本記事の治療の選択肢もあわせてご確認ください。
治療を検討するタイミング|未成熟瘢痕と成熟瘢痕の違い
火傷跡は、受傷直後から色や硬さが変化し続けます。この経過は「未成熟瘢痕」と「成熟瘢痕」の2段階に分けて考えると理解しやすくなります。治療のタイミングを判断する目安にもなります。
| 段階 | 時期の目安 | 状態の特徴 | この時期の対応 |
|---|---|---|---|
| 未成熟瘢痕 | 受傷後おおむね3〜6ヶ月程度 | 赤みが強く、盛り上がりやかゆみが続きやすい | 保湿・紫外線対策・圧迫療法などの保存的ケアが中心 |
| 成熟瘢痕 | 受傷後1年前後が目安 | 赤みが落ち着き、色や硬さが安定してくる | レーザーや手術など積極的な治療を検討しやすい時期 |
未成熟瘢痕の段階は、瘢痕が自然に落ち着いていく途中の時期です。経過をみながら保湿や圧迫療法を続けるのが基本になります。赤みや盛り上がりが強くなる場合は、この時期からステロイドテープなどの治療を始めることもあります。
「跡が残ってから何年も経っているから、もう治療できない」と考える必要はありません。成熟した古い瘢痕でも、状態に応じたレーザーや手術の選択肢は残されています。
統括院長の岡博史はこう話します。「火傷跡は、時間の経過だけで治療の可否が決まるわけではありません。数年前の跡でも、手術やレーザーで改善が見込めるケースは珍しくないので、まずは一度状態を見せていただきたいです」
治療に適した時期は、跡の種類によっても異なります。詳しくは傷跡修正のタイミングは?形成外科での治療に適した時期で取り上げています。
保存的治療でできる火傷跡のケア
火傷跡の程度が軽い場合や、未成熟瘢痕の時期には、手術を伴わない保存的治療で経過を整えられます。
- シリコンジェルシート・圧迫療法:患部を一定の圧力で覆い、肥厚性瘢痕の盛り上がりや赤みを抑える目的で用います。毎日の継続使用が前提です。
- ステロイドテープ・局所注射:炎症を抑え、盛り上がりを平らにする効果が期待されます。ケロイドや肥厚性瘢痕への外用や局所注射で使われます。
- 保湿と紫外線対策:治癒後の皮膚はバリア機能が低下しています。日焼け止めや衣類での保護を続けることが、色素沈着を目立たせない一助になります。

保存的治療は、身体への負担が比較的少ない治療です。ただし効果が出るまで、数ヶ月単位の時間がかかります。自己判断で市販の保湿剤だけに頼らず、医師の指導を受けながら継続することが大切です。
盛り上がりが強くなる、かゆみや痛みが増すといった変化がみられたら、早めに皮膚科・形成外科へ相談してください。
レーザー治療で色味や凹凸を目立ちにくくする
赤みや色素沈着が中心の火傷跡には、レーザー治療も選択肢のひとつです。レーザーの種類は、跡の色調や凹凸の有無によって使い分けます。
- 血管系レーザー:赤みの原因となる毛細血管に反応させ、赤みを軽減する目的で使用します。
- フラクショナルレーザー:皮膚に微細な穴を作り、コラーゲンの生成を促す治療です。凹凸や硬さの改善を目指します。詳しい仕組みは皮膚科で行うフラクショナルレーザーの効果で解説しています。
- 美白系レーザー・外用薬の併用:色素沈着が強い場合に、レーザーと美白外用薬を組み合わせて経過をみます。
レーザー治療は、自費診療となるのが一般的です。施術後は赤みや軽いかさぶたが数日続くこともあります。効果の出方には個人差があり、複数回の施術を重ねながら経過をみていく治療です。
ニキビ跡の治療で用いるレーザーと、共通する部分も多くあります。ニキビ跡を目立たなくする形成外科の最新レーザー治療もあわせて参考になります。
形成外科の外科的治療|瘢痕切除術・皮膚移植術・皮弁形成術
保存的治療やレーザーだけでは改善が難しいケースもあります。盛り上がりが強いケロイド、広範囲の瘢痕、関節の動きを妨げる瘢痕拘縮など。こうした場合には、外科的治療を検討します。手術は見た目の改善だけでなく、関節の可動域を取り戻す目的もあります。
- 瘢痕切除術:肥厚性瘢痕やケロイドを切除し、皮膚の張力を調整しながら縫合する手術です。範囲が狭い瘢痕に適しています。
- 皮膚移植術:身体の別の部位から健康な皮膚を採取し、火傷跡の部位に移植します。広範囲の瘢痕や、深い組織欠損を伴うケースで検討されます。
- 皮弁形成術(Z形成術など):皮膚とその下の組織を血流を保ったまま移動させる手術です。関節部や顔面など、拘縮解除に用いられます。
- 皮膚拡張法(エキスパンダー法):瘢痕の周囲にバルーン状の器具を埋め込み、健常な皮膚を徐々に伸ばして瘢痕部分と置き換えます。周囲の皮膚と質感が近い仕上がりが期待できます。

形成外科医の鳥海正博は「関節をまたぐ拘縮は、見た目だけの問題ではありません。日常の動作に直結します。腕が伸ばしにくい、首を動かしづらいといった症状があれば、手術を検討する価値があります」と説明しています。
どの手術が適しているかは、瘢痕の範囲・深さ・部位や、患者の年齢、皮膚の状態などを総合的に考慮して判断します。手術方針は一人ひとり異なります。複数の選択肢を医師と相談しながら決めていくことが望ましいです。
保険診療と自費診療の違い、費用の目安
火傷跡の治療は、内容によって保険診療と自費診療のどちらかに分かれます。事前に費用や通院回数の目安を把握しておくと、治療計画を立てやすくなります。
| 治療法 | 診療区分の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ステロイドテープ・外用薬 | 保険診療となる場合が多い | 症状や医師の診断により異なります |
| 瘢痕拘縮の解除手術 | 保険診療となる場合が多い | 機能障害を伴う場合が対象になりやすい傾向 |
| 色調改善目的のレーザー | 自費診療となることが一般的 | 照射範囲・回数により総額が変動 |
| 美容目的の瘢痕切除・皮弁形成 | 自費診療となる場合がある | 目的や範囲により保険適用の可否が異なる |
同じ「瘢痕切除術」でも、区分は目的によって変わります。機能障害の改善が目的か、見た目の改善が主目的かで、保険診療と自費診療のどちらになるかが変わることがあります。費用の総額は治療範囲や回数で大きく異なります。カウンセリングの段階で見積もりを確認しておきましょう。
ヒロクリニック形成外科・皮膚科では、2008年8月から2026年6月までの累計手術件数が21,576件です。皮膚・皮下腫瘍摘出術など、幅広い外科的処置に対応してきた実績があります。
形成外科を選ぶ際のチェックポイント
火傷跡の治療は長期にわたることも多い治療です。医療機関選びが、治療結果を左右する重要な要素になります。次のポイントを参考にしてください。
- 形成外科専門医が在籍しているか
- 熱傷・瘢痕治療の症例に対応してきた実績があるか
- 保存的治療からレーザー、手術まで複数の選択肢を提示してくれるか
- 費用や治療期間について事前に説明があるか
- 術後の経過観察やアフターケア体制が整っているか
気になる症状や希望は、医師に率直に伝えましょう。治療方針を共有しながら進められるかも大切な判断材料です。不安が残る場合は、セカンドオピニオンの活用も一つの方法です。
よくある質問
Q1. 火傷跡は自然に消えますか?
浅い火傷による赤みや色素沈着は、時間の経過とともに目立たなくなることがあります。ただし肥厚性瘢痕やケロイド、瘢痕拘縮は、自然には解消しにくい傾向があります。状態に応じた治療の検討が望ましいです。
Q2. 火傷跡の治療はいつから始められますか?
保湿や圧迫療法などの保存的ケアは、受傷後早い段階から始められます。レーザーや手術は、赤みが落ち着く成熟瘢痕の時期以降に検討するのが一般的です。数年前にできた古い跡でも、治療の選択肢が残っている場合があります。
Q3. 肥厚性瘢痕とケロイドはどう違うのですか?
どちらも盛り上がった瘢痕です。肥厚性瘢痕は受傷部位の範囲内にとどまります。ケロイドは周囲の正常な皮膚にまで広がっていく点が異なります。見た目だけでの判断が難しいこともあるため、医師の診察をおすすめします。
Q4. 火傷跡の治療は保険が使えますか?
瘢痕拘縮の解除手術など、機能障害の改善が目的の治療は、保険診療の対象となる場合があります。一方、色調改善目的のレーザー治療などは、自費診療になるのが一般的です。詳しくは診察時に確認してください。
Q5. 手術後、傷跡はどのくらいで落ち着きますか?
手術で新たにできた縫合部の傷跡も、火傷跡と同じ経過をたどります。未成熟瘢痕から成熟瘢痕へと変化していきます。おおむね半年から1年程度で、赤みや硬さが落ち着くのが一般的な経過です。
Q6. 子どもの頃の火傷跡でも治療できますか?
成人してから受診しても、レーザーや手術による治療を検討できる場合があります。体の成長にあわせて瘢痕が突っ張るように感じたら、拘縮が進んでいる可能性もあるため、早めに相談してください。
まとめ|跡の種類を見極めて自分に合う治療を選ぶ
火傷跡には、色素沈着・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮といった種類があります。状態によって、適した治療は異なります。保存的ケアからレーザー、外科的治療まで、選択肢は幅広く用意されています。
「もう何年も前の跡だから」とあきらめる前に、まずは形成外科で状態を診てもらうことをおすすめします。気になる症状があれば、早めにヒロクリニック形成外科・皮膚科へご相談ください。
本記事はヒロクリニック形成外科・皮膚科 統括院長 岡博史(医学博士・日本皮膚科学会皮膚科専門医)、形成外科医 鳥海正博(日本形成外科学会専門医・医学博士)の監修のもと制作しています。
【参考文献】













