やけど(火傷)の治し方は、受傷直後の応急処置とその後のケアによって大きく変わります。やけどは熱湯や火、高温の金属などに触れて皮膚や粘膜が損傷した状態です。電気による電撃熱傷や化学物質による化学熱傷、紫外線による日焼けも含まれます。本記事ではヒロクリニック形成外科・皮膚科の医師監修のもと、深達度別の治し方や水ぶくれの対処法を解説します。
この記事でわかること
- やけどの深達度(Ⅰ〜Ⅲ度)ごとの症状と治るまでの期間
- 受傷直後にすべき正しい応急処置の手順
- 水ぶくれができたとき・破れたときの対処法
- すぐに病院を受診すべき危険なサイン
- やけど跡(色素沈着・ケロイド)の治し方
目次
やけど(火傷)とは
医療用語で「熱傷」といわれるように、やけどとは熱によって皮膚組織や粘膜が傷を負うことです。熱以外にも、電気による電撃熱傷や硫酸などの化学物質による化学熱傷が挙げられます。紫外線による日焼けも、やけどの一種です。
やけどは、熱源の温度と皮膚に触れていた時間によって傷の深さが異なります。損傷の深さはⅠ〜Ⅲ度の3段階に分けられ、深く範囲が広いほど重症です。身体が小さく皮膚組織の薄い乳幼児や、感覚が鈍りやすい高齢者は、軽く見えても深いやけどになっている恐れがあるため注意しましょう。
深達度で異なる「治り方」
やけどの治し方や治療期間は、皮膚のどこまで損傷しているかで大きく変わります。深達度によって治療期間や跡の残りやすさは大きく異なるため、自己判断せず深さを見極めることが治し方の第一歩です。

| 深達度 | 損傷の深さ | 主な症状 | 治癒までの目安 | 跡の残りやすさ |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ度 | 表皮まで | 赤み・ひりつき | 数日程度 | 残りにくい |
| 浅達性Ⅱ度 | 真皮浅層まで | 強い痛み・水ぶくれ | 1〜2週間程度 | 多くは残らない |
| 深達性Ⅱ度 | 真皮深層まで | 痛み・水ぶくれ | 1ヶ月以上 | 瘢痕やひきつれが残りやすい |
| Ⅲ度 | 皮下組織・神経・血管まで | 無痛(神経損傷)、白色化や炭化 | 自然治癒はなく手術が必要 | 皮膚移植による治療が必要 |
Ⅲ度熱傷は神経損傷により、かえって痛みを感じにくいのが特徴。患部が蝋のように白い、または炭化して黒くなっている場合は重症のサインです。ためらわず救急要請や病院受診を検討しましょう。
やけどの治し方|受傷直後にすべき応急処置
やけどの治し方を左右するのは、受傷直後のわずか10分間の対応。日常で多いのは、調理中の油はねやアイロン、熱い飲食物、炎天下での強い日焼けなどによるやけどでしょう。次の4つの手順で、できるだけ早く応急処置をおこなってください。

ステップ1:流水で15〜30分冷やす
流水で15〜30分冷やすことが応急処置の最優先事項です。やけどの部位によって時間は前後しますが、冷やすのをやめると痛みが強くなる場合は、もうしばらく続けてください。氷や保冷剤を患部に直接当てるのは、かえって組織を傷める恐れがあるため避けましょう。
ステップ2:衣類の上からやけどをした場合は着衣ごと冷やす
衣服の上から熱源が触れてやけどをした場合は、無理に脱がさず、衣類の上から流水で冷やしてください。皮膚が衣類にくっついている状態で脱がすと、皮膚がめくれてしまうことがあります。
ステップ3:指輪・時計などを外す
患部が腫れる前に、指輪や時計、ベルトなど締め付けるものは早めに外しておきます。腫れてから無理に外そうとして皮膚を傷つけてしまうケースもあるため、受傷直後の対応が肝心です。
ステップ4:自己判断で薬を塗らず、痛みが続くなら受診する
病院へ行く前に市販の塗り薬などを使用すると、患部の状態が見えにくくなり、診察や治療の妨げとなることがあります。冷やしても痛みが治まらない、水ぶくれができている、範囲が広いといった場合は要注意です。市販薬に頼らず、すみやかに皮膚科や形成外科を受診してください。
統括院長の岡博史はこう話します。「やけどは受傷直後の数分の対応で、その後の治り方が大きく変わります。冷やすことと、自己判断で市販薬を使わないことの2点だけでも覚えておいていただきたいです」
低温やけどにも要注意
高温やけどだけでなく、低温やけどにも注意が必要です。低温やけどとは、発熱カイロや湯たんぽなど比較的低温(40〜50℃)のものに長時間接触することで生じるやけどを指します。
低温やけどは高温やけどと異なり自覚症状に乏しく、気づいた時には真皮層や皮下組織まで損傷しているケースも少なくありません。皮膚の薄い乳幼児や高齢者、自分で身体を動かせない方は、とくに注意してください。
水ぶくれができたとき・破れたときの対処法
真皮層まで及ぶやけどは、水ぶくれをともなうケースがほとんどです。水ぶくれは医療用語で水疱(すいほう)といいます。皮膚刺激や組織損傷によって表皮下にたんぱく質を含んだ水分がたまり、膨らんだ状態のことです。
水ぶくれは傷を細菌感染から守る天然の保護膜なので、自己判断で潰さないでください。潰してしまうと、傷口がむき出しになり感染リスクが高まります。
万が一、水ぶくれが破れてしまった場合は、清潔なガーゼで染み出す液体をやさしく押さえましょう。液体が入っていた皮は無理にはがさず、ワセリンを塗布したうえでキッチン用ラップなどで保護し、すみやかに病院を受診してください。破れた水ぶくれにガーゼや絆創膏を使うと、張り替えの際に皮膚がめくれることもあるため、ラップによる保護が推奨されています。
皮膚科では、抗生物質を含む軟膏やクリームが処方され、より早い治癒を目指すことが可能です。水ぶくれをともなうやけどは、自己判断せず必ず医師の診察を受けましょう。
痛み・赤み・かゆみはいつまで続く?
やけどの痛みや赤みが治まる期間は、深達度と応急処置の適切さによって異なります。前述の表のとおり、表皮までのⅠ度熱傷であれば数日程度でひりつきが治まりますが、深いやけどほど長引きます。
浅いやけどの場合は「上皮化」といい、損傷部位の周囲の細胞が広がって正常な皮膚へと自然治癒します。一方、深いやけどの場合は「瘢痕治癒」となり、損傷部位が縮んで治る過程で、ひきつれ(拘縮)が起こることも少なくありません。瘢痕の範囲が大きいと、顔の表情や身体の動きが制限されてしまうこともあります。
治癒過程では、かゆみが生じることもよくあります。ピンク色の新しい皮膚をかき崩してしまうと、治りが遅れることも。かゆみが強い場合は自己判断せず、医師に相談してステロイド外用薬などで対処してもらいましょう。
すぐに受診すべき危険なサイン
Ⅱ度以上のやけどは真皮層まで組織が損傷した状態で、もっとも注意すべきは細菌感染です。感染によって合併症を引き起こし、重症化することも少なくありません。次のような症状があれば、自己処置を続けず速やかに医療機関を受診しましょう。
- 水ぶくれができている、または広範囲に赤みが広がっている
- 患部が白っぽく変色している、または黒く炭化している
- 顔・手・関節・陰部など、跡や機能障害が残りやすい部位のやけど
- 患部から膿が出ている、強い臭いがある、熱っぽさが続く
- 乳幼児・高齢者・糖尿病など基礎疾患のある方のやけど
やけどの際、アロエやみそ、油などを患部に塗る民間療法も見られます。こうした方法は科学的な根拠がないうえに、感染リスクを高めます。アロエやみそなどの民間療法は避け、すみやかに医師の診察を受けてください。

糖尿病の方は特に注意が必要な理由
糖尿病をお持ちの方は、低温やけどを起こしやすいとされています。糖尿病が進行すると神経障害を生じ、温度に対する皮膚の感覚が鈍くなります。そのため、カイロや湯たんぽを長時間使用して低温やけどを起こすケースも少なくありません。
また、糖尿病の方は血行が悪く、通常よりも治癒に時間がかかる傾向があります。お風呂の温度設定や暖房器具の使用時間には、日頃から気を配りましょう。
やけど跡(色素沈着・ケロイド)の治し方
Ⅱ度以上のやけどは真皮層まで皮膚組織が損傷するため、跡が残るケースも少なくありません。跡の状態によって適した治し方は異なるため、まずは皮膚科・形成外科で状態を確認することをおすすめします。
皮膚科では、血行促進作用のあるヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)が処方されることがあります。色素沈着の改善や保湿を目的としたケアです。盛り上がったケロイド状の跡には、ステロイドテープや局所注射が用いられることもあるでしょう。
茶色いシミのような色素沈着であれば、美容皮膚科などでのレーザー治療も選択肢のひとつです。ただしこれらは自費診療となり、範囲や状態によっては高額になることもあるため、医師と相談のうえで検討してください。瘢痕拘縮が強く動きに支障が出ている場合は、手術も選択肢のひとつです。形成外科でおこなうやけどの傷跡治療では、皮膚の一部を移動させて拘縮を解除する方法が検討されます。
形成外科医の海老沢武志は「やけど跡は、受傷直後から保湿と紫外線対策を続けるだけでも色素沈着の目立ち方が変わる印象があります。跡が気になり始めてからでも遅くはありません。まずは一度状態を診せてください」と説明しています。傷跡修正の治療に適したタイミングは跡の種類によっても異なるため、気になる場合は早めの相談が安心です。
古いやけど跡と皮膚がんの関係
幼少期のやけど跡が、大人になってから気になるという方も多くいらっしゃいます。茶色い色素沈着やケロイド状の盛り上がりなど、時間が経過したやけど跡もある程度は目立ちにくくすることが可能です。
一方でまれに、熱傷瘢痕から有棘細胞癌(マージョリン潰瘍)という皮膚悪性腫瘍が生じることがあります。日本皮膚科学会のガイドラインでも報告されている変化です。発生までの経過は緩徐で、受傷から20〜30年程度という長い年月を経て見つかることが一般的とされています。古いやけど跡が悪性黒色腫や基底細胞癌などの皮膚がんと似た変化を示すこともあるため注意が必要です。出血・急な盛り上がり・潰瘍化といった異常に気づいた場合は、自己判断せず必ず皮膚科を受診しましょう。
やけどが生じた際はもちろん、時間が経過したやけど跡のお悩みについてもご相談いただけます。皮膚科と形成外科のどちらに相談すべきか迷う場合も、まずはヒロクリニック形成外科・皮膚科へご相談ください。
よくある質問
Q1. やけどをしたら、まず何をすればいいですか?
できるだけ早く、流水で15〜30分程度冷やしてください。衣類の上からやけどをした場合は、無理に脱がさず衣類の上から冷やします。冷やしても痛みが続く場合や水ぶくれができている場合は、皮膚科・形成外科を受診してください。
Q2. 水ぶくれは自分で潰してもいいですか?
自己判断で潰すのは避けてください。水ぶくれは細菌感染から傷を守る保護膜の役割を果たしています。破れてしまった場合は、ワセリンとラップで保護し、早めに医療機関を受診しましょう。
Q3. やけどの痛みはいつまで続きますか?
深達度によって異なります。表皮までのやけどなら数日程度、真皮浅層までなら1〜2週間程度、真皮深層まで及ぶ場合は1ヶ月程度、強い痛みが続くこともあります。
Q4. やけど跡は完全に消えますか?
深達度や体質によって異なりますが、保湿や紫外線対策、必要に応じたレーザー治療や手術によって目立ちにくくすることは可能です。跡の状態に応じて治療法が異なるため、皮膚科・形成外科での相談をおすすめします。
Q5. やけどは何科を受診すればいいですか?
受傷直後の炎症や水ぶくれの治療は皮膚科が担当します。跡が残った後の瘢痕治療やケロイドの手術的な治療は形成外科が対応することが一般的です。どちらに相談すべきか迷う場合は、まず皮膚科を受診すると安心です。
Q6. 低温やけどはなぜ気づきにくいのですか?
40〜50℃程度の熱源に長時間触れ続けることで、痛みを感じにくいまま皮膚の深い部分まで損傷が進むためです。就寝時のカイロや湯たんぽの使用には、とくに注意してください。
まとめ|正しい応急処置と早めの受診が治し方の基本
やけどの治し方は、応急処置などの初期対応がもっとも重要です。すぐに流水で冷やし、水ぶくれができた際はすみやかに病院を受診することで、症状の悪化を抑えられます。
やけど直後のケアも、時間が経過したやけど跡のお悩みも、自己判断は禁物。気になる症状があれば、早めにヒロクリニック形成外科・皮膚科へご相談ください。
本記事はヒロクリニック形成外科・皮膚科 統括院長 岡博史(医学博士・日本皮膚科学会皮膚科専門医)、形成外科医 海老沢武志(日本形成外科学会専門医)の監修のもと制作しています。
【参考文献】














