皮膚に硬いできものができ、「これはイボだろうか」「治療は痛いのだろうか」と不安に感じていませんか。放置すべきか、受診すべきか迷う方も多いはずです。イボは自然に消えることもありますが、種類によっては自己判断での放置が悪化や再発につながります。この記事では、皮膚科の治療法と費用の目安、受診の目安を専門情報源に基づいて解説します。
この記事でわかること
・イボの種類と原因、老人性いぼとの違い
・液体窒素凍結療法など保険診療の治療法
・自己判断が危険なケースと受診の目安
・治療費用の目安とセルフケアの方法
監修:ヒロクリニック皮膚科・形成外科 統括院長 岡 博史(医学博士/日本皮膚科学会 皮膚科専門医)
1. イボ(尋常性疣贅)とは?ヒトパピローマウイルスとの関係
一般的に「イボ」と呼ばれる皮膚の盛り上がりの多くはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。医学的には尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)と呼びます。皮膚の小さな傷からウイルスが入り込み、数ヶ月かけて増殖することで、表面がざらついた突起になります。
HPVには200種類以上の型があり、感染する型によって現れる部位や見た目が異なります。代表的な種類は次のとおりです。
- 尋常性疣贅:手や指、足の甲などにできる、表面が硬くざらざらしたイボ。
- 足底疣贅:足の裏にできるタイプ。体重がかかる部分にできると魚の目と間違われやすいです。
- 青年性扁平疣贅:顔や手の甲に多発する、薄く平らなイボ。10〜20代に多く見られます。
足底のイボが魚の目のように扱われ、削るケアだけを続けて悪化してから受診するケースも珍しくありません。見た目は似ていても、原因はそれぞれ別物。判断に迷う場合は自己処置を避けてください。
なお、陰部や肛門周囲にできる尖圭コンジローマもHPVによるイボの一種です。ただし性感染症として扱われ、対応する診療科や治療の考え方が異なります。
手足のイボと同じ市販薬で対処しようとせず、該当部位にできものがあれば専門の診療科に相談してください。
2. その「できもの」、本当にウイルス性のイボですか?老人性いぼ・水いぼとの違い
「イボ」という言葉は日常会話では幅広く使われています。ウイルス性以外の皮膚病変を指すことも少なくありません。代表的な紛らわしい病変を整理します。

| 病名 | 原因 | 特徴 | 保険適用の目安 |
|---|---|---|---|
| 尋常性疣贅(ウイルス性いぼ) | HPV感染 | 硬くざらつく、接触でうつる | 液体窒素・外用薬は対象 |
| 老人性いぼ(脂漏性角化症) | 加齢・紫外線 | 茶色く盛り上がる、うつらない | 液体窒素は対象、美容目的レーザーは対象外 |
| 水いぼ(伝染性軟属腫) | ポックスウイルス感染 | 表面がつるっとして光沢がある | 摘除処置は対象 |
| 粉瘤・軟性線維腫 | 皮膚のう胞・摩擦 | 中央に開口部やくびれがある | 症状により対象 |
このなかで加齢に伴う老人性いぼ(脂漏性角化症)は、ウイルス感染ではありません。紫外線や皮膚の老化が原因の良性腫瘍です。
ウイルス性のイボとは治療の考え方が異なります。混同したまま自己流のケアを続けると、悪化することがあります。当院の診察でも、市販のイボ取りシールを老人性いぼに使い、皮膚を傷めてから来院する方を見かけます。
水いぼ(伝染性軟属腫)はHPVとは別のポックスウイルスによるもので、主に子どもに多く見られます。見分けが難しい場合は、自己判断せず皮膚科で診察を受けてください。
3. 自己判断は危険なケースも|受診の目安と鑑別診断
イボのように見える皮膚の変化のなかには、まれに悪性腫瘍が隠れているケースがあります。見た目だけで良性と判断するのは避けてください。
以下のようなサインがある場合は、早めの受診が必要です。

- 数週間〜数ヶ月で急に大きくなった
- 色にムラがある、または黒色・赤色が強い
- 出血しやすい、なかなか治らない潰瘍がある
- 境界がぼやけている、左右非対称である
このような特徴は、基底細胞癌や悪性黒色腫(メラノーマ)など皮膚がんに共通するサインと重なります。
特に足底の黒っぽいできものは、足底疣贅と悪性黒色腫の区別がつきにくいことがあります。専門医によるダーモスコピー診察が必要な場合もあります。関連解説は基底細胞癌の症状および悪性黒色腫の予防対策もご覧ください。
気になる変化があれば、市販薬で様子を見るより先に受診してください。早期の鑑別が、結果的に治療の負担を軽くします。
4. 皮膚科で行う保険診療のイボ治療
日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」では、代表的な治療法が検討されています。ここでは保険診療で行われる主な治療法を紹介します。
4.1 液体窒素凍結療法
マイナス196度の液体窒素をイボに当て、組織を凍結・破壊する治療法です。疣贅治療でもっとも広く行われている、いわば標準治療。凍結した部分は炎症反応を起こし、その過程で免疫の働きが刺激されると考えられています。

1〜2週間おきに通院し、数回から10回以上繰り返すことで徐々に小さくしていきます。1回で完全に消えることは少なく、根気強い通院が必要な点は事前に理解しておくとよいでしょう。
- メリット:保険適用で費用負担が少なく、多くの医療機関で受けられる。
- デメリット:処置時に痛みを伴い、水ぶくれや色素沈着が生じることがある。
4.2 電気焼灼法
電気メスでイボの組織を焼灼し、除去する方法です。液体窒素で効果が乏しい場合や、比較的大きなイボに用いられることがあります。局所麻酔をしたうえで処置するため、施術中の痛みは抑えられます。
- メリット:一度の処置で組織を除去でき、部位を選んで対応しやすい。
- デメリット:局所麻酔が必要になる場合があり、傷跡が残ることがある。
4.3 サリチル酸外用・ヨクイニン内服
痛みを抑えたい方には、外用薬や内服薬を用いる方法もあります。
サリチル酸外用は、角質を柔らかくしてイボを少しずつ薄くしていく治療です。医療用の製剤は市販品より濃度が高く、数日おきの貼り替えを繰り返します。
ヨクイニン内服はハトムギ由来の生薬成分です。体質改善を目的に、液体窒素療法と併用されることが多い治療です。即効性は高くありませんが、痛みが少なく子どもにも使いやすい選択肢です。
5. 難治性のイボに対する自費診療の選択肢
保険診療を数ヶ月続けても改善が乏しい場合は、自費診療の治療法を検討することがあります。
5.1 炭酸ガスレーザー
レーザーでイボの組織を蒸散させて除去する方法です。液体窒素で反応しにくい難治性のイボや、老人性いぼの美容目的の除去にも使われます。ピンポイントで組織を扱えるため、周囲への負担を抑えやすい治療です。
- メリット:難治例にも対応しやすく、傷の治りが比較的早い。
- デメリット:自費診療となり、費用は液体窒素より高くなる。
5.2 イミキモド(ベセルナクリーム)の適応と注意点
免疫を刺激してウイルスを排除する外用薬に、イミキモド(ベセルナクリーム)があります。PMDAの添付文書によると、承認された適応は尖圭コンジローマと日光角化症の2つに限られます。
手足にできる一般的な尋常性疣贅への使用は、承認された保険適用の範囲外です。「イボに効く」という情報も見かけますが、対象疾患を理解し、医師の判断のもとで検討してください。
6. 治療の流れと費用の目安
初診では視診とダーモスコピー(拡大鏡)による診察を行い、イボの種類を確認したうえで治療方針を決めます。一般的な通院の流れは次のとおりです。
- 初診・視診:症状の確認と治療方針の説明
- 液体窒素などによる処置:1〜2週間おきに継続
- 経過観察:イボが縮小・消失するまで通院を継続
液体窒素凍結療法は保険診療のため、3割負担で1回あたり数百円〜1,000円台が目安です。ただし部位や範囲、通院回数によって総額は変わります。自費診療のレーザー治療は医療機関ごとに設定が異なるため、事前に見積もりを確認してください。
当院では2008年8月から2026年6月までの累計で21,576件の皮膚外科手術に対応してきました。液体窒素で改善しない大きなイボや悪性腫瘍が疑われる場合も、院内で切除手術まで相談できます。
7. 治療後の生活で気をつけたいこと|セルフケアと予防
イボはHPV感染によって生じるため、治療後も日常のちょっとした習慣で再発や拡大を防げます。
- イボを爪でひっかいたり、無理に削ったりしない。
- 患部を触った後は手を洗い、タオルを共用しない。
- プールや公衆浴場では素足で歩かず、サンダルを使用する。
- 治療部位を清潔に保ち、絆創膏で保護する。
削る・つまむといった自己処置は、ウイルスを周囲に広げる自己接種のリスクがあります。気になっても触らないことが、悪化を防ぐ一番の近道です。
睡眠不足や過度なストレスは免疫の働きを弱め、イボが治りにくくなる一因になります。バランスのよい食事と十分な睡眠を心がけることも、治療と並行した対策のひとつです。診察の場面でも、生活習慣の乱れを訴える患者様には、治療と合わせて生活面の見直しをお伝えしています。
8. よくある質問(FAQ)
診察の際によく寄せられる質問をまとめました。
Q1. イボは自然に治りますか?
小さなイボは、数ヶ月から数年かけて自然に消えることがあります。ただし拡大したり数が増えたりする場合は、治療のほうが早期改善につながります。
Q2. イボは人にうつりますか?
尋常性疣贅はHPVの接触感染によりうつる可能性があります。タオルの共用や素足での公共施設利用は避けてください。
Q3. 液体窒素治療はどのくらい痛いですか?
ピリッとした痛みや、処置後に熱感を感じる方が多いです。痛みの感じ方には個人差があり、部位によっても異なります。足の裏など皮膚が厚い部位は、比較的強い刺激を感じやすい傾向があります。
Q4. 何回くらい通院が必要ですか?
液体窒素療法は1〜2週間おきに、数回から10回以上の通院が必要になることが多いです。イボの大きさや部位によって回数は変わります。
Q5. 市販のイボ取り薬を使ってもよいですか?
市販薬は軽度のイボに一時的な効果が見込めます。ただし老人性いぼや悪性腫瘍との見分けがつかないまま使うのは危険です。まずは皮膚科で診断を受けてください。
Q6. 子どもや妊娠中でも治療できますか?
子どもも液体窒素療法やヨクイニン内服で治療できますが、痛みへの配慮から回数や薬剤を調整します。妊娠中は使用できる薬剤に制限があるため、必ず事前に医師へ伝えてください。
9. まとめ|イボは自己処置せず専門医に相談を
イボは良性であることが多いものの、老人性いぼや皮膚がんとの見分けが難しいケースもあります。皮膚科の治療は、液体窒素凍結療法を中心に、電気焼灼法・外用薬・レーザーなど選択肢が豊富。
自己判断でのケアは悪化や誤った治療につながりかねません。市販薬やセルフケアで様子を見る前に、まず種類を見極めることが近道です。気になるできものがあれば、早めに皮膚科専門医の診察を受けることをご検討ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/yuzei_gl2019.pdf
- 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症とは」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/hpv/index.html
- PMDA(医薬品医療機器総合機構)ベセルナクリーム5% 医療用医薬品情報https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/6290701N1028_1
監修:岡 博史(ヒロクリニック皮膚科・形成外科 統括院長/医学博士/日本皮膚科学会 皮膚科専門医) 監修日:2026年7月9日
あわせて読みたい:水いぼ治療:皮膚科でのケアの実際/顔の黒いシミの症状・原因や治療法・予防法









