親子鑑定のSTRからFF(胎児分画率) を求める方法

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この記事の概要

親子鑑定における胎児分画率(FF:Fetal Fraction)は、特に非侵襲的出生前親子鑑定(NIPT:Non-invasive Prenatal Paternity Test)において重要です。この値は、母親の血液に含まれる胎児のDNA(cfDNA:cell-free DNA)が全体のDNAの中で占める割合を示しています。胎児分画率が低すぎると、鑑定の精度が下がり、正確な結果が得られない可能性があるため、胎児分画率を正確に測定することが重要です。

親子鑑定のSTR解析からFF(胎児分画率)を求めるには、母体血液中のcfDNAを母親由来と胎児由来に分け、STRマーカーのピーク比を比較する方法が使われます。胎児分画率は、出生前親子鑑定の精度を左右する重要な指標です。この記事では、STR法によるFFの求め方と、判定の基準について解説します。

この記事でわかること

  • STRとFF(胎児分画率)の関係
  • STR解析からFFを求める4つの手順
  • 胎児分画率の基準値と判定の考え方
  • FFが低い場合にどうなるか

STRとFF(胎児分画率)の関係

STRとFFはどちらも出生前親子鑑定の精度を支える別々の指標であり、STR解析の結果をもとにFFを算出して初めて信頼できる判定が成立します。STR(Short Tandem Repeat、短鎖反復配列)とは、DNAの特定領域にある繰り返しパターンのことです。個人ごとに繰り返し回数が異なるため、親子鑑定における個人識別のマーカーとして使われます。

一方、FF(Fetal Fraction、胎児分画率)とは、母体血液中に含まれるcfDNA(セルフリーDNA)のうち、胎児由来のDNAが占める割合を指します。妊娠6週以降になると、胎盤から母体血液中へ胎児のDNA断片が一定量流れ込むようになり、これを解析することで出生前の親子鑑定が可能になります。

STR法でFFを求める場合、母親と胎児で異なるパターンを示すSTRマーカーに着目します。母親由来のピークと、母親にはない胎児由来のピークの強度比を計算することで、血液中に含まれる胎児DNAの割合を推定できる仕組みです。

なぜFFの計算が欠かせないのか

FFを計算せずに親子鑑定の判定だけを行うと、胎児由来のDNAがそもそも不足している状態で結果を出してしまう恐れがあります。母体由来のDNAばかりを解析してしまえば、正しい判定にはたどり着けません。

そのため、STR解析による親子鑑定では、判定そのものと同じくらいFFの算出プロセスが重視されます。FFという「土台」が整っていて初めて、STRマーカーの一致率が意味を持つといえます。

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STR解析からFFを求める4つの手順

STR解析からFFを求める作業は、cfDNAの分離・STRマーカー解析・ピーク比計算・結果確認という4つの手順に沿って進みます。それぞれの手順で確認すべきポイントが異なるため、順を追って見ていきましょう。

手順1.母親と胎児のcfDNAを分離する

母親の血液からcfDNAを採取し、母体由来のDNAと胎児由来のDNAを区別します。胎児由来のDNAは、主に胎盤(トロホブラスト)から母体の血液に流れ込むため、母体由来のDNAに比べて量が少なくなります。この分離作業がFF算出の出発点です。

手順2.特定のSTRマーカーを解析する

STRマーカーは、特定の遺伝子領域に存在する短い繰り返し配列であり、個人ごとに異なるパターンを持ちます。母親と推定父親のDNAを比較し、胎児のSTRプロファイルを母親のものと照合します。

親子鑑定でSTR解析を行うPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査の様子

手順3.胎児分画率(FF)を計算する

母親と胎児の共通のSTRマーカーおよび異なるSTRマーカーのピーク比を用いて、胎児由来のDNAの割合を計算します。具体的には、母親のcfDNAと胎児のcfDNAのピーク強度を比較し、その比率から胎児分画率を導きます。当院の検査基準では、胎児由来のDNAの分画率が4%以上であれば、信頼性の高い結果が得られるとしています。

手順4.結果を確認する

胎児分画率が計算された後、親子鑑定の結果としての信頼性を確認します。分画率が基準を下回る場合は再採血による再検査が必要になることもあります。数値を確認しないまま判定を進めることはありません。

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胎児分画率の基準値と判定の考え方

胎児分画率が4%以上であれば、胎児由来のDNAが十分に含まれていると判断でき、信頼性の高い鑑定結果につながります。通常、妊娠6週0日以降に実施される非侵襲的な出生前親子鑑定では、この水準を満たすことが推奨されています。

胎児分画率(FF)判定の目安
4%以上信頼性の高い結果が得られる水準
4%未満精度が不十分となる可能性があり、再採血を検討

胎児分画率は、親子鑑定の信頼性を確保するための重要な指標です。正確な検査結果を得るためには、この値が基準を満たしていることが前提になります。

FFが低くなる主な要因

胎児分画率は妊娠週数や母体の状態によって変動するため、基準値を下回る背景にはいくつかの共通した要因があります。検査現場で確認される代表的な要因は次の通りです。

  • 妊娠週数が早すぎる(胎盤からのDNA放出量がまだ少ない)
  • 母体の体重が重く、母体由来のcfDNA量が相対的に多い
  • 採血から解析までの検体管理に時間がかかった

私自身、解析結果を確認する際にFFが基準をわずかに下回るケースに立ち会うことがあります。そうした場合は無理に判定を出さず、再採血を提案する運用を徹底しています。精度を犠牲にしてまで結果を急ぐことはありません。

私が監修する中でも、FFの数値そのものより「基準を満たした状態で判定できているか」を重視するよう検査チームに伝えています。数値の意味を正しく理解することが、結果への納得感につながると感じています。

STR法とSNP法、FF算出方法の違い

FFの算出方法にはSTR法とSNP法があり、当院は個人識別力の高さからSTR法を主軸に採用しています。両者の違いを整理しました。

項目STR法SNP法
解析対象短鎖反復配列の繰り返し回数一塩基多型のパターン
個人識別力多型性が高く識別力に優れるマーカー数を増やして精度を補う
法医学分野での実績FBIのCODIS等でも採用される標準的手法近年利用が広がる手法
当院の採用状況採用(主軸として使用)SNPとの組み合わせも検証

ヒロクリニックでは、法医学の標準的手法として実績のあるSTR法を軸に据えています。STRは多型性が高く、個人識別力に優れている点が採用理由です。SNPとの組み合わせについてはSNPとSTRの組み合わせがSNP単体より優れているかで詳しく解説しています。

当院の検査体制がFF算出の精度を支える仕組み

FFの算出結果は、解析に使う機器や検査体制の精度によって大きく左右されます。ヒロクリニックでは日本で初めて導入した次世代シーケンサー「MiSeq FGx System」を使用し、世界で10万件以上の実績を持つこの機器でSTR解析とFF算出を行っています。

検体は採取した段階からバーコードで管理され、他の検体との取り違えを防ぐ仕組みになっています。医療機関から自社ラボである東京衛生検査所へ直接配送する体制のため、検体の紛失リスクも抑えられています。私自身、検査フローの設計に関わる中で、検体を人の手で極力操作しない仕組みがFFの信頼性向上に直結していると実感しています。

解析を担う東京衛生検査所は、次世代シーケンサーを5台保有する遺伝子専門の検査所です。CAPおよびISO9001の認証を取得しており、専属医師の管理下で運用されています。全自動検査システムを採用することで、ヒューマンエラーを防止しながら迅速な結果報告を実現している点も特徴です。当院独自のSTR解析は52座位を用いており、法医学分野で一般的なFBI CODIS標準の座位数より多く設計している点も精度向上につながっています。

医療監修は、統括院長でCAPラボディレクターを務める岡博史と、ゲノム医学・エピゲノム解析を専門とする堤修一の2名体制で行っています。STRマーカーの解析結果やFFの数値に疑問がある場合も、医師が診察の中で説明する体制を整えています。

FF算出はNIPT(染色体異常スクリーニング検査)とは目的が異なります

FFはNIPTでも出生前親子鑑定でも算出されますが、判定に使う目的はそれぞれ異なります。NIPTは胎児の染色体異常の可能性を調べるスクリーニング検査であるのに対し、出生前親子鑑定は父子関係の有無を判定するための検査です。

NIPTにおけるFFは、染色体異常を正確に判定するための基準値として使われます。一方、出生前親子鑑定におけるFFは、STRマーカーの判定に十分な胎児由来DNAが含まれているかを確認するために用いられます。同じ「FF」という指標でも、検査の目的によって評価の視点が異なる点に注意が必要です。

当院では、出生前親子鑑定において胎児の性別報告を無料で行っていますが、染色体異常の判定は対象外としています。染色体異常のスクリーニングをご希望の場合は、NIPTなど別の検査をご案内していますので、検査をお申し込みの際にはどちらの検査をご希望かを明確にしておくことが大切です。

FF算出でよくある誤解と注意点

FFは高ければ高いほど良いという単純な指標ではなく、基準値を満たしているかどうかが判定の可否を左右します。現場でよく寄せられる質問や、誤解されやすいポイントを整理しました。

誤解の1つ目は「FFが高いほど精度が上がる」という考え方です。実際には基準となる4%を超えていることが重要であり、必要以上に高い数値を追求する意味はありません。基準を満たした時点で、STRマーカーの判定に十分な胎児由来DNAが確保されていると考えます。

2つ目は「再採血が必要になった場合、判定自体に問題がある」という誤解です。再採血は精度を担保するための想定内のプロセスであり、判定結果に誤りがあったことを意味するものではありません。当院では基準を下回った状態のまま判定を進めることはなく、必ず数値を確認したうえで次のご案内をしています。

3つ目は「FFの値は母体の年齢や体質だけで決まる」という誤解です。実際には妊娠週数や採血から解析までの検体管理の速さなど、複数の要因が組み合わさって数値が変動します。単一の原因だけで判断することはできません。私的鑑定・法的鑑定のいずれを選択した場合でも、FFの基準は同じ考え方で運用しています。

FFの数値そのものは専門的な内容ですが、当院では診察の中で医師が結果を分かりやすく説明する時間を設けています。「自分の検査結果が基準を満たしているか不安」「再採血と聞いて心配になった」といったお気持ちを持つ方は少なくありません。数値の意味を理解したうえで結果を受け取っていただけるよう、疑問点はその場で確認できる体制を整えています。

よくある質問

胎児分画率(FF)とは何ですか?

母体血液中のcfDNA全体のうち、胎児由来のDNAが占める割合のことです。妊娠週数が進むにつれて上昇する傾向があります。

FFが4%未満だとどうなりますか?

胎児由来のDNAが不足し、精度の高い判定が難しくなる場合があります。当院では基準を下回った場合、無理に結果を出さず再採血をご案内しています。

STR法とSNP法、FFの求め方に違いはありますか?

STR法は母子で異なるSTRマーカーのピーク比から算出し、SNP法は一塩基多型のパターンから算出します。当院ではSTR法を採用しています。詳しくは親子鑑定にSTR以外にSNPも必要ですか?をご覧ください。

何回の採血が必要ですか?

基本的には1回の採血で解析します。FFが基準を下回った場合のみ、再採血をお願いすることがあります。

FFの数値は結果報告書に記載されますか?

検査の信頼性を示す指標として、報告書内でFFの水準に触れる場合があります。詳しい記載内容は検査プランによって異なりますので、お問い合わせください。

まとめ

STR解析によるFF(胎児分画率)の算出は、cfDNA分離・STRマーカー解析・ピーク比計算・結果確認という4つの手順で行われ、4%以上という基準が判定の信頼性を支えています。ここまでの内容を振り返ります。

ヒロクリニックでは、次世代シーケンサー「MiSeq FGx System」と52座位のSTR分析を組み合わせ、99.99%以上の精度での判定を行っています。ゲノム医学を専門とする医師の監修のもと、FFが基準を満たしているかを確認した上で結果を報告する体制を整えています。

関連記事として、親子鑑定におけるSTRの重要性は?STRの小数点表記について出生前DNA鑑定の正確性もあわせてご覧ください。SNPとの違いが気になる方はSNPとSTRの組み合わせがSNP単体より優れているかもご参照ください。

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医師監修 監修日:2024年10月3日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年10月3日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Sparks AB, Wang ET, Struble CA, Barrett W, Zinberg R, Colley C, et al. Noninvasive prenatal paternity testing by targeted sequencing of single nucleotide polymorphisms. Am J Obstet Gynecol. 2013 Oct;209(4):381.e1-8.
  2. Lo YM, Corbetta N, Chamberlain PF, Rai V, Sargent IL, Redman CW, et al. Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum. Lancet. 1997 Aug 16;350(9076):485-7.

記事の監修者