父性否定確率

親子鑑定 NIPPT DNA鑑定 父性否定確率

父性否定確率とは、DNA親子鑑定の結果から、検査対象の男性が生物学的な父親ではないと判定される確率のことです。父性指数(Paternity Index: PI)という統計値をもとに算出され、値が大きいほど父子関係が否定される可能性は低くなります。この記事では、父性否定確率の考え方と、実際の鑑定でどのように扱われるかを解説します。

この記事でわかること

父性否定確率とは何か

父性否定確率は、実際の鑑定で得られたDNA型の比較結果をもとに、その男性が生物学的な父親でない確率を数値化したものです。前の記事で解説した「排除確率(PE)」が検査手法そのものの識別力を表すのに対し、父性否定確率個別のケースごとに変わる、その鑑定固有の数値である点が異なります。

父性否定確率は「1から父性肯定確率を引いた値」として求められます。そのため、まず父性肯定確率がどのように算出されるかを理解することが近道になります。

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父性指数(PI)とは

父性指数(PI: Paternity Index)は、子どものDNA型が「検査対象の男性から伝わった場合」と「無関係な男性からたまたま伝わった場合」の、それぞれの起こりやすさを比較した値です。統計学では、こうした2つの可能性を比較する値を尤度比(ゆうどひ)と呼びます。

PIは座位(STR型を調べるマーカーの位置)ごとに計算し、分析したすべての座位のPIを掛け合わせたものが総合PIになります。分析する座位が多いほど、無関係な男性がすべての座位でたまたま一致する可能性は下がるため、総合PIは大きな値になります。

父性肯定確率はどう算出されるのか

父性肯定確率(W)は、総合PIに「父親である事前確率」を組み合わせて算出します。事前確率とは、DNA型を調べる前の時点で「父親である可能性」をどの程度と見積もるかを表す値で、実務上は特定の情報がない中立な状態として50%と仮定するのが一般的です。

事前確率を50%とした場合、父性肯定確率は次の式で求められます。この考え方は、スウェーデンの研究者エッセン・メラーが提唱した統計的な枠組みをもとにしており、現在も世界の親子鑑定機関で広く使われています。

W = PI ÷ (PI + 1)

例えば、総合PIが1000だった場合、父性肯定確率は次のようになります。

W = 1000 ÷ (1000 + 1) = 1000 ÷ 1001 ≈ 0.999(99.9%)

したがって、この場合の父性否定確率は「1−0.999=0.001(約0.1%)」です。PIの値が大きくなるほど、父性否定確率は小さくなります。ヒロクリニックでは52座位のSTR型を分析しており、多くのケースで総合PIが非常に大きな値となるため、父性肯定確率99.99%以上という結果が得られています。

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結果報告書を確認する親子のイメージ

実際の鑑定での考え方

実際の親子鑑定では、母親のDNA型が含まれているかどうかや、使用する遺伝マーカーの数によって計算の詳細は変わります。一般的に、20座位前後のSTRマーカーを使用すると、高い精度で父性の判定が可能になります。国際的な運用では、父性肯定確率99.9%以上を法的鑑定の目安とする基準が広く使われており、座位数の多い検査ではこれを上回る数値が示されることも少なくありません。

なお、事前確率を50%以外の値に設定するケースもあります。例えば、他の状況証拠から父親である可能性が高いと考えられる場合には、事前確率を高く設定した計算が用いられることもありますが、ヒロクリニックでは中立性を保つため、標準的な50%を前提とした計算を採用しています。

共同監修者の堤修一(医学博士、元東京大学先端科学技術研究センター准教授)は「父性否定確率は、あくまで統計的な事前確率をもとにした計算値です。理論上ゼロにはならないという性質を理解したうえで、数値の大きさそのものよりも、何座位を分析した結果なのかを確認することが大切です」と説明しています。

私自身、結果報告書をお渡しする際に「0.1%でも否定される可能性が残るのが不安」というお話を伺うことがあります。統計的な確率である以上、理論上100%と表記しないのが法医学分野の考え方であるとお伝えしつつ、数値の背景にある座位数や解析精度もあわせてご説明するようにしています。

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よくある質問

父性否定確率と排除確率(PE)はどう違いますか?

排除確率(PE)は検査手法そのものの識別力を示す指標で、個別のケースに依存しません。父性否定確率は、実際に得られたDNA型の比較結果から算出される、そのケース固有の数値です。詳しくは排除確率(Probability of Exclusion: PE)とはで解説しています。

事前確率を50%とするのはなぜですか?

DNA型を調べる前の時点で、特定の情報がない中立な状態を表すためです。法医学分野で標準的に使われている前提であり、DNA型の比較結果そのものに影響を与えるものではありません。

父性否定確率が0%にならないのはなぜですか?

統計的な確率として算出する以上、理論上は0%と表記しないのが法医学分野の一般的な考え方だからです。実務上は99.99%以上の父性肯定確率という表記で、判定の信頼性を十分に示せるとされています。

座位数が少ないと父性否定確率はどうなりますか?

分析する座位数が少ないと総合PIが小さくなりやすく、父性否定確率は相対的に大きくなる傾向があります。座位数が明記された検査機関を選ぶことが、結果を正しく理解するうえで役立ちます。

結果の数値の見方に不安がある場合はどうすればよいですか?

自己判断はせず、検査機関に直接問い合わせてください。特に法的な手続きに関わる場合は、報告書の数値をどう扱うかで対応が変わることもあるため、弁護士など専門家への相談もあわせて検討してください。

まとめ

父性否定確率は、父性指数(PI)と事前確率をもとに算出される父性肯定確率から求められます。総合PIが大きいほど父性否定確率は小さくなり、分析する座位数が多いほど総合PIは大きくなります。ヒロクリニックでは52座位のSTR法分析により、父性肯定確率99.99%以上という結果を得ています。

検査手法そのものの識別力については排除確率(Probability of Exclusion: PE)とは、父性肯定率・否定率の基本については父性肯定率・否定率とはで解説しています。「父親ではない」と判定される一般的な割合については父子鑑定で「父親ではない」と判定される確率とはもあわせてご覧ください。

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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定

ヒロクリニックDNA出生前親子鑑定NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。

医師監修 監修日:2024年9月18日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年9月18日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Essen-Möller E. Die Beweiskraft der Ähnlichkeit im Vaterschaftsnachweis; theoretische Grundlagen. Mitt Anthrop Ges Wien. 1938;68:9-53.
  2. Gjertson DW, Brenner CH, Baur MP, Carracedo A, Guidet F, Luque JA, et al. ISFG: Recommendations on biostatistical evaluation of DNA analysis in paternity cases. Forensic Sci Int Genet. 2007 Dec;1(3-4):223-31.

記事の監修者