背中や首、みぞおちにしこりを見つけると、「がんではないか」と不安になる方も少なくありません。その多くは脂肪細胞でできた良性の脂肪腫です。ただし、まれに脂肪肉腫という悪性腫瘍が隠れているケースもあります。
この記事では、脂肪腫の特徴・原因・治療法を解説します。あわせて、がん(脂肪肉腫)との見分け方や受診の目安も医師監修のもとで紹介します。
監修:岡 博史(ヒロクリニック形成外科・皮膚科 統括院長/医学博士)
日本皮膚科学会 皮膚科専門医・日本医師会認定産業医
この記事でわかること
- 脂肪腫の特徴や発生しやすい部位、主な種類
- 脂肪腫と粉瘤(アテローム)の違い
- 脂肪腫と脂肪肉腫(がん)を見分けるポイントと受診の目安
- 良性・悪性を調べるための検査方法
- 治療にかかる費用の目安とヒロクリニックでの治療の特長
脂肪腫とは
脂肪腫(しぼうしゅ)とは、皮膚の下にできる良性の腫瘍のことです。まずは基本的な特徴や、発生しやすい部位・種類を確認しましょう。
脂肪腫は脂肪細胞からなる柔らかな腫瘍です。発症頻度が高く、一般的に「しこり」や「おでき」と呼ばれています。脂肪細胞のある部位であれば、どこにでも発生する可能性があります。ただし、おもに首の後ろ(後頚部)・背中やみぞおち、臀部など胴体に多く見られます。
脂肪腫のしこりの大きさは、数ミリ径から10センチ径以上におよぶものまでと個人差があります。脂肪腫は40代から60代に多く見られる皮膚の病気です。少しずつ成長し、手術により脂肪のかたまりを摘出する以外に治療法はありません。
自然消滅(治癒)することはありません。皮膚の下のしこりが消えた場合、それは脂肪腫ではなく別の皮膚疾患と考えられます。
脂肪腫の特徴と原因
脂肪腫は皮膚の下にできた「脂肪のかたまりによる良性の腫瘍」です。ドーム状に盛り上がる皮膚に変色などの異常は認められず、指で押すと柔らかいしこりで痛みはありません。通常は個発(一つ)の腫瘍ですが、まれに多発性の脂肪腫が発生するケースも見られます。
脂肪腫が発生する原因は、はっきりとは解明されていません。しかし、糖尿病や肥満、高脂血症の方は脂肪腫ができやすいとされるため、食生活などには注意が必要です。なお多発性の脂肪腫(家族性多発性脂肪腫症)の場合、遺伝が原因といわれています。
脂肪腫の発症する部位
脂肪腫は脂肪細胞のある部位であれば、身体のどこにでも発生する腫瘍です。皮膚の下に生じる「浅在性脂肪腫」と、筋肉内・筋肉間に生じる「深在性脂肪腫」の2つがあります。
おもに後頚部(首の後ろ)・肩・背中・みぞおち・臀部・太ももに発症します。頭皮や顔、足に生じることはまれで、その場合は他の皮膚疾患が疑われます。
最初は小さい脂肪腫が、10センチ径以上に成長することも珍しくありません。痛みはないものの、部位によっては他人の目が気になりストレスを感じる方もいらっしゃいます。脂肪腫は内服薬や外用薬で改善することはありません。手術によって摘出する治療法となるため、大きくなるほど手術跡も大きくなってしまいます。
脂肪腫のおもな種類
脂肪腫にはさまざまな種類があります。多くは皮下に生じる良性の腫瘍です。ただし、痛みを生じるものや神経障害を引き起こすものもあるため注意が必要です。
一般的に多く見られる「線維脂肪腫」
脂肪腫のなかで最も多くみられる良性の腫瘍です。脂肪細胞の中に膠原線維が認められ、被膜に包まれています。皮下に発生する柔らかなしこりで痛みはありません。首の後ろや背中など、刺激や圧がかかりやすい部位にできやすい傾向があります。放置すると、大きく成長することも少なくありません。
首の後ろに多く見られる「筋脂肪腫」
筋脂肪腫は皮膚の深い部位に発生し、筋肉内にある症例も少なくありません。後頚部(首の後ろ)に多く生じるとされています。腫瘍が筋肉に浸み込むように発生する場合もあり、摘出がしにくい脂肪腫です。完全に取り除くために正常な筋肉の切除をともない、切開部が大きくなるケースもあります。
痛みのある「血管脂肪腫」
血管脂肪腫は胴体だけでなく、腕にも発生する皮下腫瘍です。大きさは1センチ径ほどで、脂肪細胞の隙間に毛細血管が認められます。多発性でやや硬いしこりであることが多いのも特徴です。自発痛(触れなくても痛い)や圧痛(押すと痛い)が認められることもあります。
乳幼児に発生する「びまん性脂肪腫」
びまん性脂肪腫は乳幼児(2歳以下)に発生するまれな疾患です。「びまん」とは「全体に広がる」ことを意味し、発生部位は胴体や腕・脚など全身に至ります。皮下だけでなく筋肉や内臓にも脂肪腫が見られることも少なくありません。
左右対称に多発する「良性対側性脂肪腫」
肩や上腕(二の腕)・胸部・腹部・太ももなどに、脂肪腫が左右対称に多発するまれな疾患です。はっきりとした原因は解明されていませんが、アルコールを多く摂取する方に多く見られる傾向があります。
淡黄色に皮膚が盛り上がる「脂肪腫様母斑」
臀部(お尻)や太ももに多く発生する腫瘍です。個発性と多発性タイプがあります。10歳以下で多く見られるのは、淡黄色の腫瘍が連なり島のように皮膚が盛り上がる多発性です。成人の場合は、ドーム状に皮膚が盛り上がる個発性が多いとされています。
胎児期に起こる「脊髄脂肪腫」
脊髄脂肪腫とは、胎児期に背骨が癒着できず2つに分かれる病気のことです。肛門のやや上に脂肪腫があることで脊髄神経が引っぱられ、神経障害を引き起こすとされています。排尿・排便の障害や、下肢の変形・知覚障害・運動障害を生じることも少なくありません。
脂肪腫と粉瘤の違いと見分けかた
脂肪腫と並び、多く見られる皮膚疾患に粉瘤(ふんりゅう)が挙げられます。脂肪腫は脂肪細胞が被膜に包まれた良性の腫瘍です。一方、粉瘤(アテローム)は皮下にできた袋状の組織に、垢や皮脂が溜まった状態を指します。
粉瘤も脂肪腫と同様に良性の皮下腫瘍で、皮膚にドーム状の盛り上がりを有します。しかし中心部には小さな黒い穴が見られ、悪臭を発することもあります。粉瘤が自然消滅することはなく、袋状の組織を摘出する手術が治療法です。粉瘤の特徴について詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
涙丘や目周りのしこり・できものは眼科を受診
脂肪腫は首や背中、みぞおちなどに多く見られる良性腫瘍ですが、まれに顔に生じるケースもあります。しかし涙丘(目頭の内側)やまぶた、まつ毛のきわのしこりは、他の皮膚疾患のケースも少なくありません。涙丘や目周りのしこりに気づいた際は、眼科を受診しましょう。

脂肪腫とがん(脂肪肉腫)の見分け方・受診の目安
脂肪腫と脂肪肉腫は症状が似ているため、見た目や自己判断だけで区別するのは危険です。ここでは、受診の判断材料となる特徴と検査方法を紹介します。
今回の記事作成にあたり、日本形成外科学会や国立がん研究センターなどの情報をあらためて確認しました。その中で実感したのは、脂肪腫と脂肪肉腫は専門医でも触診だけでの判断が難しいという点です。実際の診療では、画像検査や生検を組み合わせて総合的に診断しています。
良性(脂肪腫)と悪性(脂肪肉腫)を分ける特徴
以下の表は、脂肪腫と脂肪肉腫でよくみられる特徴の違いをまとめたもの。受診するかどうかを考える際の参考にしてください。
| 項目 | 脂肪腫(良性) | 脂肪肉腫など(悪性が疑われる所見) |
|---|---|---|
| 硬さ | やわらかく弾力がある | 硬い、または弾力に乏しい |
| 可動性 | 皮膚の下でよく動く | 周囲の組織に固定され動きにくい |
| 増大速度 | 数か月〜数年かけてゆっくり大きくなる | 数週間〜数か月で急速に大きくなる |
| 大きさの目安 | 数mm〜数cm程度で経過することが多い | 5cm以上、または急激に大きくなった |
| できる深さ | 皮下の浅い位置に多い | 筋肉の近くなど深い位置にある |
| 痛み | 通常は無痛 | 圧痛や自発痛をともなうことがある |
ただし、これらはあくまで目安であり確定診断ではありません。表の特徴に当てはまらない脂肪肉腫や、逆に当てはまる脂肪腫も存在します。気になるしこりは自己判断せず、受診してください。
すぐに受診したほうがよい危険なサイン
次のサインが一つでもあれば、早めに皮膚科や形成外科を受診しましょう。
- 直径5cm以上ある、または急速に大きくなっている
- しこりが硬く、押しても動かない
- 押さなくても痛む、または強く押すと痛みがある
- 皮膚の深い部分や筋肉の近くにできている
- 数週間〜数か月で明らかにサイズが変わった
上記に当てはまらなくても、しこりに気づいて不安を感じたときは受診して構いません。「たいしたことはないだろう」と数か月〜数年放置してから受診される方も少なくありません。早めの相談が、安心につながります。
病院で行われる検査方法
受診すると、まず医師が触診で大きさや硬さ、可動性を確認します。
触診だけで判断が難しい場合は、超音波検査やMRI・CT検査で腫瘍の内部構造や深さを調べます。それでも良性・悪性の判断がつかないときは、針や小さな切開で組織の一部を採取する生検を行います。採取した組織は病理検査にかけ、確定診断します。
自己判断で放置せず、気になるしこりは早めに検査を受けることが大切です。より詳しい鑑別のポイントはがんと混同されやすい脂肪腫の特徴を解説した記事でも紹介しています。

お問い合わせ・予約
「このしこりは脂肪腫なのか、それとも他の病気なのか分からない」という方もいらっしゃるでしょう。一人で悩まず、ヒロクリニック形成外科・皮膚科にご相談ください。
電話:川口院 0120-241-929 / 池袋駅前院 0120-915-967
アクセスや診療時間の詳細は公式サイトをご確認ください。
脂肪腫の治療について
脂肪腫は自然に消えることがなく、手術で摘出する以外に根本的な治療法はありません。ここでは手術の流れや費用の目安を紹介します。
手術の流れと傷跡への配慮
脂肪腫の摘出手術では、しこりの大きさに合わせて皮膚を切開し、被膜ごと脂肪のかたまりを取り除きます。しこりが大きいほど切開範囲も広がるため、手術跡(傷跡)が目立ちやすくなる傾向があります。小さいうちに摘出するほど傷跡は小さく済みやすいもの。気になった時点での早めの受診が肝心です。
手術が必要かどうかの見極め方はこちらの記事で解説しています。手術後のケアについては治療経過をまとめた記事もあわせてご確認ください。
脂肪腫に限らず、皮膚のできものが気になりピンセットなどで自分で取ろうとする方もいらっしゃいます。腫瘍の組織が残っていると再発するケースがあり、雑菌が入ることで感染症を招く可能性も否定できません。悪性腫瘍であった場合は大変危険ですので、自己処置は絶対におやめください。
治療にかかる費用の目安
脂肪腫の摘出手術は、医学的に必要と判断される場合、健康保険の対象です。小さな脂肪腫であれば、保険診療(3割負担)で1万円前後が目安となるケースが多く見られます。ただし、しこりの大きさや部位、麻酔の方法によって費用は変動します。正確な金額は、受診時に医師へご確認ください。
ヒロクリニック形成外科・皮膚科の脂肪腫治療
ヒロクリニック形成外科・皮膚科では手術時の痛みや、手術跡に配慮した脂肪腫治療を心がけています。「小さいしこりだけど良性か悪性か気になる」という方もいらっしゃいます。「手術の失敗が怖い、傷跡を残したくない」など、不安なことは何でもご相談ください。

よくある質問
ここでは、脂肪腫について診療の中でよく聞かれる質問をまとめました。今回の記事作成でも、費用や傷跡への不安に関する質問が特に多いことがうかがえました。気になる項目があれば参考にしてください。
Q. 脂肪腫は放置しても大丈夫ですか?
A. 小さく痛みがなければ、すぐに悪化するものではありません。ただし自然に消えることはなく、放置すると大きくなり手術跡も広がります。気になる場合は、早めに受診してください。
Q. 脂肪腫と粉瘤はどう違いますか?
A. 脂肪腫は脂肪細胞のかたまりですが、粉瘤は皮膚の下にできた袋に垢や皮脂がたまったものです。粉瘤は中心に小さな黒い穴が見られ、悪臭をともなうことがある点が異なります。
Q. 脂肪腫かどうか自分で確認する方法はありますか?
A. 目視や触診だけでの自己判断は危険です。柔らかく動きやすいしこりでも、悪性腫瘍であるケースは否定できません。気になるしこりに気づいたら、皮膚科や形成外科を受診してください。
Q. 手術後、傷跡はどのくらい残りますか?
A. 傷跡の大きさは、脂肪腫のサイズと切開範囲に左右されます。小さいうちに摘出するほど、傷跡は目立ちにくくなる傾向があります。
Q. 脂肪腫は再発しますか?
A. 被膜ごと完全に摘出できれば、再発の可能性は低いとされています。筋肉内にできた筋脂肪腫など、摘出が難しい部位では再発リスクがやや高まります。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. 皮膚科・形成外科のどちらでも診察が可能です。手術が前提となる場合は、傷跡のケアに詳しい形成外科での相談もおすすめです。涙丘や目周りのしこりは眼科の受診をご検討ください。
まとめ
脂肪腫は良性の腫瘍で、多くは慎重に経過をみても差し支えありません。ただし、5cm以上への急な増大や、硬く固定されたしこりには注意が必要です。痛みをともなう場合も、脂肪肉腫などの悪性腫瘍が隠れている可能性があります。
背中や首のしこりに気づいたら、自己判断で放置しないことが大切です。早めにヒロクリニック形成外科・皮膚科までご相談ください。早期の受診こそ、傷跡を小さく抑え不安を解消する近道。
【参考文献】
気になる症状やお肌のできものは、川口駅前徒歩3分の川口の皮膚科・形成外科 ヒロクリニック川口院にご相談ください。皮膚科・形成外科の専門医が対応します。










