Forensic Sequence STRucture Guide (FSSG)

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Forensic Sequence STRucture Guide(FSSG)は、法医学分野でSTR(Short Tandem Repeat:短鎖反復配列)を次世代シーケンサーで解析する際に使われる国際的な参照配列ガイドです。ヒロクリニックが導入している次世代シーケンサー「MiSeq FGx System」のようなシーケンシング型のSTR解析。こうした解析は、FSSGのような標準化の取り組みによって支えられています。施設や機器が違っても、結果を正しく比較できる仕組みです。本記事では、STRの基礎知識からFSSGの役割、ヒロクリニックの検査との関係までを分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • STR(短鎖反復配列)とは何か
  • FSSGが法医学のどんな場面で使われているか
  • 従来の型判定とシーケンシング(配列解析)の違い
  • この標準化がヒロクリニックの検査精度にどうつながっているか

STR(短鎖反復配列)とは?

STRは、DNA上で2〜6塩基程度の短い配列が連続して繰り返されている部分です。この繰り返しの回数は人によって異なり、同じ型を持つ他人が偶然一致する確率は非常に低いため、親子鑑定や個人識別に広く使われています。米国のCODIS(Combined DNA Index System)をはじめ、多くの国の法医学DNAデータベースがSTR型を基礎としています。

個人識別の手法としては、STRのほかに1塩基の違いを比較するSNP(一塩基多型)も知られています。どちらもDNA上の個人差を利用する点は共通していますが、比較する対象や必要な座位数には違いがあります。両者の違いを整理すると、次のとおりです。

項目STR(短鎖反復配列)SNP(一塩基多型)
比較する対象繰り返し配列の型(回数)1塩基の違い
1座位あたりの多型性高いSTRより低い
高精度を得るための座位数比較的少ない座位数で足りるSTRより多くの座位数が必要
代表的な用途親子鑑定・法医学的個人識別(CODISなど)個人識別のほか、体質・疾患リスクの研究などにも利用

ヒロクリニックがSTR法を採用しているのは、比較的少ない座位数でも高い識別力を確保しやすいという、この多型性の高さが理由の一つです。参考までに、米国CODISの中核となる座位(コアローカス)は、2017年の拡張により従来の13座位から20座位に増えています。ヒロクリニックが解析するSTR52座位は、この国際的な中核座位数を大きく上回る規模で、より高い識別力を確保する設計になっています。

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FSSGとは何か

FSSGは、国際的な法医学DNA分析の標準化団体であるISFG(International Society for Forensic Genetics)の関連プロジェクトとして整備された、STR配列の参照データ集です。運営するのはヨーロッパ法科学研究所ネットワーク(ENFSI)。「STRidER」というプラットフォームを通じて、常に最新版が公開・更新されています。ISFGは、法医学的なDNA型鑑定の手法や解釈に関する国際的な指針を発表している学術団体で、各国の検査機関は、こうした指針を参考にしながら、自国の実務にあわせた運用を行っています。

2018年、法医学系の学術誌「Forensic Science International: Genetics」に論文が掲載されました。ヒトゲノム参照配列GRCh38に対応させた形で、常染色体STR・Y染色体STR・X染色体STRの参照配列を整理・公開したという内容です。GRCh38は、国際的なゲノム研究コンソーシアムが公開しているヒトゲノムの標準的な参照配列で、多くの遺伝子解析研究で基準として使われています。学術誌に掲載された内容を土台に、STRidER上で継続的にアップデートされる仕組みになっている点が、FSSGの信頼性を支えています。

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従来のSTR分析とシーケンシングの違い

従来のSTR分析は、繰り返し配列の「長さ」を電気泳動で測定する方法(キャピラリー電気泳動法)が主流でした。これに対し、次世代シーケンサー(NGS/MPS)を使う方法では、繰り返し部分の塩基配列そのものを直接読み取ります。

この違いによって、次のようなメリットが生まれます。

  • 識別力の向上: 長さが同じでも配列が異なる「隠れた多型」を検出でき、他人との偶然の一致をさらに減らせます。
  • 一度に多くの座位を解析できる: 1回のシーケンシングで、常染色体STR・Y-STR・X-STRなど多数の座位をまとめて読み取れます。
  • 劣化サンプルへの対応力: 断片化したサンプルでも、短い配列単位で情報を読み取れる場合があります。

一方で、シーケンシングによる型判定は、どの参照配列を基準に「型」を数えるかによって結果の表記がずれる可能性があります。FSSGのような共通の参照配列ガイドがあることで、異なる検査機関・異なる機器で解析しても、同じ基準で型を比較できるようになります。

従来法とシーケンシングの違いを整理すると、次のとおりです。技術の進化に伴って、識別できる情報の種類が広がってきた点がポイントです。

項目従来のSTR分析(キャピラリー電気泳動法)シーケンシング(NGS/MPS)
測定対象繰り返し配列の「長さ」繰り返し部分の塩基配列そのもの
隠れた多型の検出検出しにくい検出できる
一度に解析できる座位数限られる多数の座位をまとめて解析可能
共通基準の必要性比較的少ないFSSGのような参照配列ガイドが重要

この表からも分かるように、シーケンシングは識別力や解析効率で優れる一方、共通の参照配列という土台があってはじめて、異なる機関同士の結果を正しく比較できるようになります。技術の進化と標準化は、常に両輪で進んでいくものだと感じています。

DNAの二重らせん構造のイメージ

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ヒロクリニックの検査との関係

ヒロクリニックの出生前親子鑑定では、次世代シーケンサー「MiSeq FGx System」を用いてSTR52座位を解析しています(Qiagen社製、日本初導入。世界で10万件以上の導入実績があります)。これはまさにFSSGが対象とする、シーケンシングによるSTR型判定の実例です。自社の遺伝子専門検査所「東京衛生検査所」で一貫して解析し、国際的な参照配列の枠組みに準拠した手法を採用。総合父性除外率99.99%以上という高い精度を実現しています。

解析を担う「東京衛生検査所」は、次世代シーケンサーを複数台保有する遺伝子専門検査所で、CAP(米国臨床病理学会)認定・ISO9001認証を取得し、専属医師の管理下で運用されています。検体はバーコードで管理され、医療機関からの直接配送によって取り違えや紛失のリスクを抑えています。こうした体制の一つひとつが、検査結果の信頼性を支えています。

私自身、次世代シーケンサーによる解析結果を確認する際は、参照配列のバージョンが最新のものと一致しているかを必ずチェックしています。参照配列がずれていると、型の表記自体が変わってしまうことがあるため、この確認作業は精度管理の基本だと感じています。同じサンプルであっても、参照配列のバージョンが異なれば型の数え方がずれてしまうことがあるため、解析のたびにバージョンを照合する作業を欠かさないようにしています。

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よくある質問

ここでは、FSSGやSTR解析について寄せられることが多い質問に、技術的な観点からお答えします。専門用語が多い分野ですが、できるだけ分かりやすく解説します。

Q1. FSSGは誰が使うものですか?

主に法医学の研究者や検査機関が、STR配列データを解析・比較する際に参照する専門的な資料です。検査を受ける方が直接操作するものではありませんが、検査の信頼性を支える国際的な基盤の1つです。一般の利用者が直接目にする機会は少ないものの、検査結果の正確性を裏側で支える存在だといえます。

Q2. なぜ配列を読むシーケンシングの方が優れているのですか?

従来の長さ測定では区別できなかった「同じ長さだが配列が異なる型」を見分けられるため、識別力がさらに高まります。ただし、正確な比較には共通の参照配列基準が不可欠で、その役割をFSSGのような枠組みが担っています。識別力の向上は、親子鑑定における除外率の高さにも直接つながっています。

Q3. ヒロクリニックの検査はFSSGに準拠していますか?

ヒロクリニックが採用する次世代シーケンサーによるSTR解析は、国際的な参照配列の枠組みに沿った手法です。詳細な内部プロトコルについては検査所にお問い合わせください。検査手法の透明性についてご質問がある場合も、あわせてお問い合わせいただけます。

Q4. STRとSNPはどう違いますか?

STRは繰り返し配列の型を比較する手法で、多型性が高く少ない座位数でも高精度な識別が可能です。SNPは1塩基の違いを比較する手法で、多型性がSTRより低い分、同等の精度を得るにはより多くの座位数が必要とされます。親子鑑定の分野では、この多型性の高さから、STR法が国際的に広く採用されています。

Q5. この技術は今後も更新されますか?

FSSGはSTRidERプラットフォーム上で継続的に更新されており、新しい参照配列やゲノムアセンブリへの対応が今後も行われる見込みです。法医学分野の技術は日々進化しています。ヒロクリニックも、こうした国際標準の更新動向を踏まえながら、検査体制を維持していきます。

Q6. なぜ検査結果の「型」の表記がずれることがあるのですか?

参照配列のバージョンが機関によって異なると、同じ配列であっても型の数え方がずれてしまうことがあります。FSSGのような共通の参照配列ガイドは、この表記のずれを防ぐために使われています。異なる検査機関の結果を比較する場面では、この共通基準の有無が特に重要になります。

Q7. ヒロクリニックの検査方法は、FSSGが対象とする技術とどう関係していますか?

ヒロクリニックが採用する次世代シーケンサーによるSTR型解析は、FSSGが対象とする「シーケンシングによるSTR型判定」の実例です。共通の参照配列という枠組みを土台に、精度の高い解析を行っています。国際的な標準に沿った手法を採用することは、検査結果の信頼性を裏付ける要素の一つだと考えています。

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まとめ

FSSG(Forensic Sequence STRucture Guide)は、次世代シーケンサーによるSTR解析の結果を、施設や機器を超えて正しく比較するための国際的な参照配列ガイドです。ヒロクリニックが採用する「MiSeq FGx System」によるSTR52座位の解析は、こうした国際標準に沿った技術に支えられています。共通の参照配列という土台があることで、異なる検査機関の結果でも同じ基準で比較できるようになり、検査の信頼性を裏付ける仕組みの一つになっています。STRを使った計算方法に興味のある方は、あわせてSTRを用いた尤度比の計算方法や総合父性除外率(排除確率)とはもご覧ください。

参考文献: Phillips C, Gettings KB, King JL, Ballard D, Bodner M, Borsuk L, Parson W. “The devil’s in the detail”: Release of an expanded, enhanced and dynamically revised forensic STR Sequence Guide. Forensic Science International: Genetics. 2018;34:162-169. https://doi.org/10.1016/j.fsigen.2018.02.017
STRidER(ENFSI STRs for Identity ENFSI Reference database): https://strider.online/nomenclature

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医師監修 監修日:2024年9月17日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年9月17日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Parson W, Ballard D, Budowle B, Butler JM, Gettings KB, Gill P, Gusmão L, Heilsberg DR, Hollard C, Jackson P, Kline MC, Lareu MV, Maroñas O, Marshall PL, Meiklejohn KA, Phillips C, Pratt JM, Radheshi G, Scheible R, Sherlock PD, Templeton GR, de Knijff P. Recommendations of the DNA Commission of the International Society for Forensic Genetics (ISFG) on the transition to next-generation sequencing (NGS) of STRs. Forensic Sci Int Genet. 2016 May;22:150-163.
  2. Gettings KB, Borsuk LA, Baldwin AM, Kiesler KM, Vallone PM. STR sequence nomenclature: consensus and collaborative transition to next generation sequencing. Forensic Sci Int Genet. 2016 Nov;25:e14-e17.
  3. Bodner M, Bastisch I, Butler JM, Fenech R, ForenSeq Consortium, Gusmão L, Heilsberg DR, Hellmann AP, Hidding M, Hohoff C, de Knijff P, Parson W. Recommendations of the DNA Commission of the International Society for Forensic Genetics (ISFG) on STR sequence nomenclature. Forensic Sci Int Genet. 2016 May;22:e1-e2.
  4. Gettings KB, Borsuk LA, Vallone PM. Forensic Sequence Structure Guide (FSSG). National Institute of Standards and Technology (NIST) [Internet]. Gaithersburg (MD): NIST; [cited 2023].

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