SNP(一塩基多型)を用いた出生前親子鑑定は、母体血液中の胎児DNAを解析することで、妊娠早期から非侵襲的に父子関係を確認できる検査方法です。ただし、SNPには1座位あたりの情報量が少ないという特性もあります。この記事では、SNP法の仕組みとメリット・限界を、STR法との違いも含めて解説します。
SNPとは
SNPとは、DNA配列中の1つの塩基が個人によって異なる部分を指す遺伝マーカーで、ヒトゲノム中に数百万か所存在します。SNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)は、DNA配列中の1つの塩基が個人によって異なる部分を指します。ヒトゲノム中に数百万か所存在し、個人間の遺伝的な違いを示すマーカーとして広く利用されています。
SNPは1か所ごとの変異パターンが単純な分、大量の座位をまとめて自動解析しやすいという特徴があります。この特性を活かして、親子鑑定や祖先解析、疾患関連遺伝子の研究など幅広い分野で使われています。
SNPは親子間だけでなく、ヒトという種全体に共通する部分が大半を占めるため、1か所だけを見ても個人を特定する力は限定的です。そこで実際の検査では、数千から数万か所のSNPを組み合わせることで、統計的に十分な精度を確保する設計になっています。
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SNPを用いた出生前親子鑑定の仕組み
SNP法による出生前親子鑑定は、胎児DNA採取→両親DNA採取→SNP解析→統計判定という4つの手順で進みます。SNP法による出生前親子鑑定は、次の4つの手順で進みます。
- 胎児由来DNAの採取: 妊婦の血液中に含まれる胎児由来の遊離DNA(cfDNA)を採血で取得します。妊娠6週前後から母体血液中に一定量含まれるようになります。
- 母親・推定父親のDNA採取: 母親と推定父親のDNAを、口腔粘膜スワブなどで採取します。
- SNP解析: 胎児のcfDNAと、母親・推定父親のDNAについて、多数のSNP座位のパターンを比較します。
- 結果の判定: 一致するSNPパターンの割合から、統計的に父子関係の有無を判定します。
胎児由来DNAの割合(胎児分画率)が低すぎると、判定に必要な精度が得られません。検査時期や体質によって胎児分画率は変動するため、採血のタイミングは医療機関の指示に従ってください。
SNP法のメリット
SNP法の主なメリットは、非侵襲的に検査できる点と、大量解析による結果の安定性です。SNP法には、次のようなメリットがあります。
- 非侵襲性: 母体からの採血のみで検査でき、羊水穿刺のような胎児へのリスクを伴いません。
- 大量解析による安定性: 数千〜数万か所のSNPをまとめて解析するため、1座位あたりの誤差が結果全体に与える影響を抑えやすい特性があります。
- 早期実施: 妊娠早期から検査を開始できます。
SNP法の限界
SNP法の限界は、1座位あたりの個人識別力が低く、近親者間の判別が難しくなる場合がある点です。一方で、SNP法には理解しておくべき限界もあります。SNPは1座位あたりの変異パターンが少なく、個人識別力は1座位単独では高くありません。
そのため、十分な精度を得るには非常に多くの座位を同時に解析する必要があります。また、近親者間(兄弟同士など)の判別では、SNPだけでは差が出にくい場面もあり、判定にはより慎重な統計処理が求められます。
もう一つの技術的な課題は、母体血液中に母親自身のDNAと胎児由来のDNAが混在している点です。子は母親から半分の遺伝情報を受け継ぐため、母親由来のSNPと胎児由来のSNPは大部分が共通しています。この共通部分の中から胎児固有のパターンを統計的に切り分ける高度な解析処理が必要になり、この工程の精度が最終的な判定結果を左右します。
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胎児分画率(FF)が結果を左右する
胎児分画率(FF)は、母体血液中の胎児由来DNAの割合を示す数値で、SNP法・STR法いずれの判定精度も左右する重要な要素です。SNP法・STR法いずれの解析方法でも、母体血液中に含まれる胎児由来DNAの割合を示す「胎児分画率(Fetal Fraction、FF)」が、判定精度を左右する重要な要素です。
FFは妊娠週数や体質によって変動し、値が低すぎると十分な精度で判定できません。検査を受けるタイミングは、医療機関の案内に従ってください。私自身、FFの値が基準に届かず再採血をご案内するケースを実際に確認してきました。FFについて詳しくは、DNA出生前親子鑑定に必要なFFはいくつ?で解説しています。
なお、母体血液中の胎児由来cfDNAは出産後速やかに母体の血流から消失していくことが知られています。そのため、以前の妊娠の影響が次回以降の検査結果に残るという心配は基本的にありません。
出生前親子鑑定と他の遺伝子検査との違い
出生前親子鑑定とNIPT(新型出生前診断)は、名称が似ていますが目的も解析対象も異なる別の検査です。妊娠中に受けられる遺伝子検査には、出生前親子鑑定のほかにも複数の種類があります。目的が異なるため、混同しないよう注意してください。
出生前親子鑑定は父子関係の確認を目的とした検査です。一方、いわゆる「NIPT」は胎児の染色体異常の可能性を調べる検査であり、目的も解析対象も異なります。両者を混同すると、検査で得られる情報を誤解してしまう可能性があるため注意してください。妊娠中に受けられる遺伝子検査全般については、妊娠中にできる遺伝子検査一覧|5種類を比較で整理しています。
| 検査名 | 目的 | 侵襲性 |
|---|---|---|
| 出生前親子鑑定(NIPPT) | 父子関係の確認 | 非侵襲的(採血のみ) |
| NIPT(新型出生前診断) | 胎児の染色体異常リスクの評価 | 非侵襲的(採血のみ) |
| 絨毛検査 | 胎児の染色体・遺伝子異常の確定診断 | 侵襲的(絨毛採取、流産リスクを伴う) |
| 羊水検査 | 胎児の染色体・遺伝子異常の確定診断 | 侵襲的(羊水穿刺、流産リスクを伴う) |
このように、同じ「妊娠中に受けられる検査」でも目的と体への負担は大きく異なります。申し込み前に、自分が確認したいのは血縁関係なのか、染色体異常のリスクなのかを整理しておくと、検査選びで迷いにくくなります。
STR法との違い
ヒロクリニックの出生前親子鑑定は、SNP法ではなくSTR(短鎖タンデム反復配列)法を採用しています。ヒロクリニックの出生前親子鑑定では、SNPではなくSTR(Short Tandem Repeat、短鎖タンデム反復配列)法を採用しています。両者の特性を比較しました。
| 項目 | SNP法 | STR法 |
|---|---|---|
| 1座位あたりの情報量 | 少ない(多座位で補う) | 多い(多型性が高い) |
| 必要な座位数の目安 | 数千〜数万か所 | 52座位程度 |
| 近親者間の判別 | 差が出にくい場合がある | 比較的判別しやすい |
| 法医学分野での採用実績 | 研究・一部の商用検査で利用 | FBIのCODIS等、法医学的標準として広く採用 |
SNP法とSTR法は、どちらも科学的に確立された技術です。座位あたりの情報量ではSTRが優位とされ、少ない座位数でも高い個人識別力を得られる点が、法医学分野で長く採用されてきた理由のひとつです。
STR法は、1990年代から法医学分野の標準的な手法として世界各国で採用されてきた実績があり、FBIのCODIS(犯罪捜査用DNAデータベース)でも採用されています。一方SNP法は、次世代シーケンサーの普及とともに解析コストが下がったことを背景に、近年利用が広がってきた比較的新しい手法です。それぞれ発展してきた背景が異なるため、単純にどちらが新しい・古いという優劣ではなく、目的に応じた使い分けが重要になります。
ヒロクリニックがSTR法を採用する理由
ヒロクリニックは、52座位のSTR分析と次世代シーケンサー「MiSeq FGx System」により99.99%以上の精度での判定を実現しています。ヒロクリニックでは、52座位のSTR分析により99.99%以上の精度での判定を実現しています。解析には日本初導入となる次世代シーケンサー「Qiagen社 MiSeq FGx System」を使用し、検体はバーコード管理のもと自社ラボ「東京衛生検査所」で解析します。
私自身、これまでSTR法による解析結果を数多く確認してきましたが、少ない座位数で高い識別力が得られる点は、迅速な結果報告にもつながっていると感じます。検査は妊娠6週から可能で、医師の診察・説明のもとで進めます。
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よくある質問
まとめ
SNPを用いた出生前親子鑑定は、母体血液中の胎児DNAを非侵襲的に解析できる一方、1座位あたりの情報量が少ないという特性を持つ検査方法です。SNPを用いた出生前親子鑑定は、母体血液中の胎児DNAを非侵襲的に解析する検査方法です。大量の座位をまとめて解析することで安定した結果を得られる一方、1座位あたりの情報量が少ないという特性も持っています。
ヒロクリニックでは、少ない座位数で高い個人識別力を発揮するSTR法を採用し、52座位の分析で99.99%以上の精度を実現しています。検査方法について迷う場合は、担当医に直接ご相談ください。
関連記事として、SNPだけの出生前親子DNA鑑定なら何種類のSNPが必要か?、親族間のSTRとSNPの一致率(鑑定に重要)、ヒロクリニックのNIPPT検査項目もあわせてご覧ください。
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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定
ヒロクリニックのDNA出生前親子鑑定(NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Chu T, Bunce K, Hogge WA, Peters DG. A novel approach to noninvasive prenatal paternity testing. Prenat Diagn. 2012 Nov;32(11):1113-9.
- Ryan A, Banjevic M, Demko ZP, et al. Noninvasive prenatal paternity testing using maternal plasma. Am J Obstet Gynecol. 2013 Aug;209(2):139.e1-9.





