発達性およびてんかん性脳症14型(Developmental and epileptic encephalopathy 14)

医療

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 14という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは生後数ヶ月のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症14型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE14(ディー・イー・イー・ジュウヨン)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってKCNT1関連神経発達障害やKCNT1関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

さらに、症状の特徴から乳児遊走性焦点発作(MMPSI)という診断名がついている場合もありますが、遺伝子レベルでの原因がDEE14ということになります。

この病気は、生後間もない時期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れが見られるという特徴があります。その原因として、KCNT1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や14型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、特にお薬選び(プレシジョン・メディシン)において重要な指針を得たということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症14型(DEE14)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE14は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この14型は、KCNT1(ケー・シー・エヌ・ティー・ワン)という遺伝子の変異によって引き起こされることが2012年頃の研究で明らかになりました。

DEE14は、乳児期に発症するてんかんの中でも、特に治療が難しく、重度の症状を呈することが多いタイプとして知られています。しかし、原因遺伝子が特定されたことで、既存の薬を応用した新しい治療法の可能性も模索されている、研究が活発な分野でもあります。

主な症状

DEE14の症状は、特徴的なてんかん発作、重度の発達の遅れ、そして身体的な特徴の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後6ヶ月以内、特に生後数週間から3ヶ月頃までの非常に早い時期にてんかん発作が始まります。

乳児遊走性焦点発作(MMPSI)

DEE14の患者さんで最も特徴的に見られる発作のパターンです。

焦点発作といって、体の一部(例えば右の手足や顔など)がピクピク動く発作が起きるのですが、その発作が数分から数時間の間に、右側から左側へ、あるいは左手から右足へというように、体のあちこちに移動(遊走)していく現象が見られます。

これは脳の中で、てんかんの震源地があちこちに移動していることを示しています。

この発作は非常に頻繁に起きることが多く、一日のうちに何度も、時には絶え間なく続くこともあります。

その他の発作

強直発作(手足が突っ張る)、ミオクロニー発作(一瞬ビクッとする)、てんかん性スパズム(お辞儀をするような動き)など、様々なタイプの発作が組み合わさって現れることがあります。

難治性

DEE14のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の回数を減らし、生活に支障が出ないようにコントロールしていくことが目標になります。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。

重度の発達遅滞

発作が始まる前は順調に育っているように見えることもありますが、発作が始まると発達が停滞したり、できていたことができなくなったりする退行が見られることがあります。

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、最重度の知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことが多いですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)が見られるようになることもあります。

小頭症

生まれた時の頭の大きさは正常範囲内でも、成長とともに頭囲(頭の大きさ)の増え方が緩やかになり、相対的に頭が小さくなる小頭症が見られることがあります。これは脳の成長がゆっくりであることを反映しています。

3. その他の身体症状

DEE14のお子さんには、神経以外の身体的な課題も見られることがあります。

不機嫌や易刺激性

わけもなく泣き続けたり、少しの刺激で激しく泣いたりする状態が続くことがあります。これは脳の興奮性が高まっていることや、感覚過敏などが関係している可能性があります。

哺乳障害と摂食障害

生まれた直後から、おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害が見られることがあります。また、離乳食が始まっても、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

自律神経症状

発作に伴って、顔が赤くなったり青くなったり、呼吸が不規則になったりする自律神経の症状が見られることがあります。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にある電気信号を調整するイオンチャネルの故障にあります。

KCNT1遺伝子の役割

DEE14の原因は、第9番染色体にあるKCNT1(ケー・シー・エヌ・ティー・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、ナトリウム活性化カリウムチャネルという、脳の神経細胞の表面にある小さな穴(通り道)を作るための設計図です。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。この電気信号を発生させたり、止めたりするために、細胞の内外でナトリウムやカリウムといったイオンが出入りします。

KCNT1遺伝子が作るカリウムチャネルは、細胞の中にナトリウムが入ってきて興奮した後に、カリウムを細胞の外に出すことで、興奮した神経を鎮めたり、次の信号を送る準備をしたりする役割を担っています。

遺伝子の変化による影響

KCNT1遺伝子に変異が起きると、このカリウムチャネルの働きがおかしくなります。

DEE14で最も多く見られるのは、機能獲得型変異と呼ばれる変化です。

これは、チャネルの機能が失われるのではなく、逆に働きすぎてしまう、つまりカリウムイオンの通り道が開きっぱなしになったり、開きやすくなりすぎたりする状態です。

一見、カリウムを出して鎮める働きが強くなると、神経は静かになりそうに思えますが、実際には逆のことが起こります。

カリウムが過剰に出ていくことで、神経細胞が素早くリセットされ、次の興奮をすぐに起こせるようになってしまいます(高頻度発火といいます)。

その結果、神経細胞が異常に興奮しやすい状態が続き、激しいてんかん発作が引き起こされると考えられています。

また、このチャネルは脳の発達段階においても重要な役割を果たしているため、その機能異常が脳の発達そのものを妨げ、重度の遅れにつながります。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE14のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にKCNT1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

赤ちゃん

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE14、特に乳児遊走性焦点発作の症状がある場合、脳波は非常に特徴的な変化を示します。

発作が起きている場所(焦点)が、右の脳から左の脳へ、あるいは後ろから前へと、時間の経過とともに移動していく様子が記録されます。

また、背景活動(発作がない時の脳波)が全体的にゆっくりになっている徐波化が見られることもあり、これは脳機能への影響を示唆しています。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が萎縮して小さくなっている様子や、髄鞘化(神経の伝達速度を上げるための被覆)が遅れている様子が見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE14は症状だけでは他の難治性てんかんと区別が難しいこともありますが、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてKCNT1遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療(プレシジョン・メディシン)

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

一般的な抗てんかん薬(フェノバルビタール、バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザムなど)が試されますが、DEE14の発作はこれらに抵抗性を示すことが多いです。臭化カリウムやスチリペントルなどが有効な場合もあります。

ここで重要なのが、原因遺伝子がKCNT1であると分かったことによる精密医療(プレシジョン・メディシン)の可能性です。

KCNT1変異が機能獲得型(働きすぎ)であることから、このチャネルの働きをブロックする作用のある薬が効果を示すのではないかと考えられています。

その代表的な薬がキニジンです。

キニジンは元々、不整脈の治療薬ですが、KCNT1チャネルを塞ぐ作用を持っています。海外および国内の一部の症例で、キニジンを使用することで発作が劇的に減少したり、発達が改善したりしたという報告があります。

ただし、キニジンは心臓への副作用のリスクがあるため、使用には心電図のモニタリングなどの慎重な管理が必要です。また、全ての患者さんに効くわけではなく、変異のタイプによって効果が異なります。

現在、より副作用が少なく効果的なKCNT1阻害薬の開発も世界中で進められています。

2. ケトン食療法

お薬でコントロールが難しい場合、ケトン食療法という、脂肪分を多くし糖質を極端に少なくした特殊な食事療法が選択肢に入ることがあります。KCNT1関連てんかんの患者さんで有効だったという報告もあります。

3. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、逆に筋肉の突っ張り(痙縮)に対してアプローチします。

関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行ったり、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したりします。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(スイッチやおもちゃ、絵カードなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

4. 日常生活のケア

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

呼吸管理

呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使用したり、吸入を行ったりします。夜間の呼吸状態を見守るためにモニターを使用することもあります。

感染症対策

筋緊張が弱く、呼吸の力が弱いお子さんは、風邪をこじらせて肺炎になりやすい傾向があります。手洗いなどの基本的な感染対策に加え、流行期には人混みを避ける、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策が大切です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症14型(DEE14)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

KCNT1遺伝子の変異(主に機能獲得型)により、カリウムチャネルが働きすぎ、脳の過剰興奮や発達への影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳児期早期に始まる難治性てんかん(特に乳児遊走性焦点発作)、重度の発達遅滞、小頭症などが特徴です。

治療の希望

一般的な薬は効きにくいですが、キニジンなどのチャネル阻害薬による精密医療の可能性が探られています。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、リハビリ、栄養管理、呼吸管理など、全身をトータルでケアすることが大切です。

関連記事

  1. NEW 赤ちゃん
  2. NEW 医者
  3. NEW ハート
  4. NEW 赤ちゃん
  5. NEW 医療
  6. NEW 医者