多発性骨端異形成症3型(筋症を伴う、または伴わない)

赤ちゃん

医師から「多発性骨端異形成症」、あるいはさらに詳しく「3型」や「筋症を伴う可能性がある」という診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

お子様の足の痛みや歩き方が気になって受診した結果、あるいは偶然撮影したレントゲンで指摘され、この聞き慣れない病名を知ることになったのかもしれません。診断を受けたばかりの時は、骨の病気という言葉の響きや、将来歩けなくなるのではないかという不安、遺伝子の病気であることへの戸惑いなど、様々な感情が押し寄せていることと思います。

多発性骨端異形成症は、骨の成長する部分である「骨端」の形が変化することで、関節の痛みや動きにくさを生じる病気です。その中でも「3型」は、特定の遺伝子の変化によって起こるタイプで、稀に筋肉の力が少し弱くなる症状を伴うことがあるのが特徴です。

この病気は、命に関わるような重篤な臓器の病気を合併することはほとんどありません。適切な管理とケアを行うことで、痛みとうまく付き合いながら、学業や仕事、趣味を楽しみ、自立した社会生活を送っている患者さんがたくさんいます。

概要:どのような病気か

多発性骨端異形成症は、英語でMultiple Epiphyseal Dysplasiaと表記され、医療現場では頭文字をとってMED(エム・イー・ディー)と呼ばれます。

この病名を分解して解説すると、病気の全体像が見えてきます。

  • 多発性:体の一箇所だけでなく、両側の股関節、膝、足首、手首など、全身の多くの関節に症状が現れることを意味します。
  • 骨端:骨の端っこの部分のことです。子供の骨には、端っこに「骨端線」や「骨端核」と呼ばれる軟骨の層があり、ここで骨が伸びて成長していきます。この部分が病気の主役です。
  • 異形成症:形が正常とは異なって形成される状態を指します。

つまり、全身の骨の端っこ部分の成長や形成がうまくいかず、関節の形がいびつになったり、噛み合わせが悪くなったりする病気です。

MEDには原因となる遺伝子の違いによっていくつかのタイプ(1型から6型など)に分類されており、今回解説する「3型」はその一つです。

3型の特徴として、医学書には「筋症(ミオパチー)を伴う、または伴わない」と記載されることがあります。これは、骨や軟骨の症状に加えて、筋肉の疲れやすさや力の入りにくさが軽度に見られる患者さんがいるためです。ただし、すべての3型の方に筋肉の症状が出るわけではなく、骨の症状だけのこともあります。

頻度は、MED全体で1万人に1人から2万人に1人程度と言われており、骨系統疾患(骨の病気のグループ)の中では比較的頻度の高いものの一つです。しかし、症状が軽度で見過ごされているケースも多く、正確な数はわかっていません。

主な症状

多発性骨端異形成症3型の症状は、年齢とともに変化し、個人差も大きいです。全く無症状で大人になってから診断される方もいれば、幼児期から症状が出る方もいます。ここでは代表的な症状を、成長の段階に沿って解説します。

1. 幼児期から学童期の症状

この時期に最初のサインに気づくことが多いです。

  • 歩き方の特徴
    歩き始めが遅いことはあまりありませんが、歩き始めてから「よちよち歩き」がなかなか治らないことがあります。左右に体を揺らして歩く動揺性歩行(アヒル歩き)が見られることがあります。これは股関節の収まりが悪いためや、後述する筋力の影響によるものです。
  • 関節の痛み(特に夕方や運動後)
    「足が痛い」「疲れた」と訴えることが増えます。特にたくさん遊んだ後や夕方に痛がり、翌朝にはケロッとしていることもあります。そのため、いわゆる「成長痛」と間違われることがよくあります。痛みは膝や股関節、足首に出やすいです。
  • すぐに抱っこをせがむ
    長い距離を歩くのを嫌がったり、すぐに疲れて座り込んだりすることがあります。これは単なる甘えではなく、関節の痛みや違和感、あるいは3型特有の筋力の弱さが原因である可能性があります。
  • 手足の指の特徴
    手指が太く短い(短指症)ことがあります。

2. 思春期から青年期の症状

骨の成長が終わる時期に差し掛かると、症状が変化します。

  • 低身長
    手足の骨の伸びが少し悪くなるため、身長の伸びが緩やかになります。最終的な身長は、正常範囲内の下の方におさまることが多いですが、中等度の低身長になることもあります。極端に身長が低いということは稀です。
  • 関節の可動域制限
    関節の形が変わってくるため、関節が完全に伸びなかったり、曲げにくかったりすることがあります。特に肘が真っ直ぐ伸びない(伸展制限)ことがよく見られますが、日常生活にはあまり支障がないことが多いです。

3. 成人期以降の症状

  • 変形性関節症
    長年、形のいびつな関節を使っていると、軟骨がすり減り、変形性関節症を若いうちから発症することがあります。特に股関節(変形性股関節症)に痛みが出やすく、30代や40代で人工関節の手術が必要になることもあります。

4. 3型に特徴的な「筋症(ミオパチー)」の症状

3型(および一部の他のタイプ)では、骨の症状に加えて筋肉の症状が見られることがあります。

「ミオパチー」というと怖い響きがしますが、進行性の筋ジストロフィーのように歩けなくなるような重篤なものではなく、比較的軽度なことが多いです。

具体的には以下のような様子が見られることがあります。

  • 階段の上り下りが苦手。
  • しゃがんだ状態から立ち上がるのが遅い。
  • 運動会などで走るのが他の子より遅い。
  • 全身の筋肉の張りが少し弱い(低緊張)。

これらの筋肉の症状は、骨の病気による痛みのために動かさないから筋力がつかないのか、それとも筋肉自体の問題なのか、区別がつきにくいこともあります。

原因

なぜ、骨の端っこの形が変わったり、筋肉に影響が出たりするのでしょうか。その原因は、体を作る材料である「タンパク質」の設計図のミスにあります。

コラーゲンの異常

私たちの骨や軟骨は、コンクリートの建物に例えられます。カルシウムなどのミネラルがコンクリートだとすれば、その強度を保つための鉄筋の役割をしているのが「コラーゲン」というタンパク質です。

軟骨には、数種類のコラーゲンが網の目のように組み合わさって存在し、クッション性や強度を保っています。

多発性骨端異形成症3型の原因は、COL9A3(コル・ナイン・エー・スリー)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、「9型コラーゲン」という種類のコラーゲンを作るための設計図です。9型コラーゲンは、軟骨の中で他の主要なコラーゲン(2型コラーゲンなど)同士を結びつける「架け橋」のような重要な役割をしています。

設計図にミスがあるため、作られる9型コラーゲンの形がおかしくなったり、量が足りなくなったりします。すると、軟骨の中の網目構造が弱くなり、体重がかかる関節の軟骨が潰れやすくなったり、骨への成長がスムーズにいかなくなったりします。これが、関節の変形や低身長の原因です。

なぜ筋肉にも症状が出るのか

COL9A3遺伝子は、主に軟骨で働いていますが、実は筋肉と骨をつなぐ部分などでも微量に働いている可能性があります。また、異常なコラーゲンが細胞の中に溜まってしまい、細胞自体にストレスを与えることで、間接的に筋肉の細胞にも影響を与えるのではないかという説もありますが、詳細なメカニズムはまだ研究段階です。

遺伝のしくみ

多発性骨端異形成症3型は、常染色体顕性遺伝(以前の優性遺伝)という形式をとることが一般的です。

これは、ご両親のどちらかが同じ病気である場合、50パーセントの確率でお子さんに遺伝するというものです。

しかし、ご両親は全く症状がなく、遺伝子にも異常がないのに、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が突然起きて発症する「突然変異」のケースも少なくありません。

遺伝子の変化は、誰のせいでもありません。生命が誕生する過程で、誰にでも起こりうる偶然の現象です。Shutterstock詳しく見る

医者

診断と検査

診断は、症状の問診、レントゲン検査、そして遺伝子検査などを組み合わせて行われます。

1. レントゲン検査(X線検査)

診断の決め手となる最も重要な検査です。全身の骨、特に骨盤(股関節)、膝、手、背骨などを撮影します。

MEDでは以下のような特徴的な所見が見られます。

  • 骨端核の出現遅延:骨の端っこの丸い部分(骨端核)が、年齢の割に小さかったり、現れるのが遅かったりします。
  • 骨端の不整・扁平化:大腿骨頭(股関節のボールの部分)などが、きれいな丸ではなく、ギザギザしていたり、平べったくなっていたりします。
  • 二重膝蓋骨:膝のお皿が二重に見えるような層状の特徴が出ることがあります(特に3型などで見られることがあります)。

医師はこれらの画像を見て、ペルテス病(股関節の血流が悪くなる病気)や、脊椎骨端異形成症(背骨にも強い変化が出る病気)など、似たような他の病気と見分けます。

2. 血液検査

一般的な血液検査では異常は見られません。

ただし、筋力低下などの症状がある場合、筋肉の壊れ具合を示すCK(クレアチンキナーゼ)という値を調べることがあります。3型で筋症を伴う場合でも、このCK値は正常か、ほんの少し高い程度であることが多いです。

3. 遺伝学的検査

確定診断のために、血液からDNAを取り出し、COL9A3遺伝子などに変異があるかを調べることがあります。

遺伝子検査を行うことで、MEDのどのタイプか(1型なのか3型なのかなど)がはっきりし、将来の見通しや治療方針、遺伝カウンセリングに役立ちます。ただし、すべての患者さんで必ず遺伝子の変異が見つかるわけではなく、原因不明とされることもあります。

治療と管理

残念ながら、現在の医学では遺伝子の変化そのものを治して、骨の形を元通りにする根本的な治療法はありません。

治療の目的は、痛みをコントロールすること」「関節の機能を長く保つこと」「日常生活の質(QOL)を維持すること」の3点です。

1. 保存的療法(手術以外の方法)

子供のうちは、基本的に手術以外の方法で様子を見ます。

  • 痛みの管理
    痛みが強い時は、湿布を使ったり、鎮痛剤(痛み止め)を内服したりします。
  • 活動の調整
    痛みが強い時期には、激しい運動(ジャンプを繰り返すバスケットボールやバレーボール、長距離走など)を控えて、関節を休めます。体育の授業も見学や軽減が必要になることがあります。しかし、全く動かないと筋力が落ちて余計に関節に負担がかかるため、痛みのない範囲で動くことは大切です。
  • 体重管理
    体重が重くなると、それだけ股関節や膝への負担が増します。太りすぎないように食事や生活習慣に気をつけることは、最も有効な治療の一つです。
  • 適度な運動
    関節への負担が少なく、筋力を維持できる運動として、水泳や水中ウォーキング、自転車こぎなどが推奨されます。特に3型で筋力が弱い場合は、無理のない範囲で筋肉を使うことが大切です。

2. 外科的治療(手術)

保存的療法では痛みがコントロールできない場合や、関節の変形が進んで歩行が難しくなった場合に検討されます。

  • 骨切り術(こつきりじゅつ)
    子供から若年成人の時期に行われることがあります。骨を切って角度を変え、関節の噛み合わせを良くする手術です。
  • 人工関節置換術
    成人以降、軟骨がすり減って変形性関節症が進行し、痛みがひどい場合に行われます。人工の関節に入れ替えることで、痛みを取り除き、歩きやすくします。最近の人工関節は性能が良く、長持ちするため、生活の質を劇的に改善することができます。

3. 小児慢性特定疾病の利用

日本では、多発性骨端異形成症は「小児慢性特定疾病」の対象疾患(骨系統疾患グループ)に含まれています。申請が通れば、18歳未満(継続で20歳未満)のお子様の医療費の一部が助成される制度です。

重症度などの基準があるため、必ずしも全員が対象になるわけではありませんが、診断を受けたら主治医や病院のソーシャルワーカーに相談してみることをお勧めします。指定難病については、成人の場合「骨系統疾患」として広義に扱われることもありますが、個別の認定基準を確認する必要があります。

学校生活と日常生活での注意点

お子さんが学校生活を送る上で、いくつかの配慮が必要になることがあります。

  • 体育の授業
    マラソンや激しい球技などは、関節への負担が大きいため、見学や内容の変更をお願いすることがあります。水泳は積極的に参加して良い種目です。先生と相談して、「痛い時は無理せず休む」というルールを作っておくと安心です。
  • 通学
    荷物が重いと関節に負担がかかるため、置き勉(教科書を学校に置いておく)を許可してもらうなどの工夫が有効です。階段の上り下りが多い場合は、エレベーターの使用を相談することもあります。
  • 洋式スタイルの生活
    膝や股関節に負担がかかる「正座」や「和式トイレ」は避け、椅子とテーブルの生活、洋式トイレの使用が望ましいです。学校のトイレが和式ばかりでないか確認しておきましょう。

まとめ

多発性骨端異形成症3型についての重要なポイントを振り返ります。

  • 病気の本質: COL9A3遺伝子の変化により、9型コラーゲンに異常が生じ、骨の端っこの成長や軟骨の形成に影響が出る病気です。
  • 主な症状: 関節の痛み(特に股関節や膝)、アヒル歩き、軽度の低身長が見られます。3型では軽度の筋力低下を伴うことがあります。
  • 経過: 小児期は痛みが出たり消えたりしますが、大人になると変形性関節症による痛みが続くことがあります。
  • 治療: 痛みのコントロール、体重管理、適度な運動が基本です。将来的に手術が必要になることもあります。
  • 生活: 激しい運動は避ける必要がありますが、水泳などは推奨されます。周りの理解を得て、無理のない範囲で活動することが大切です。

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