この記事のまとめ
早期乳児てんかん性脳症6型(一般にドラベ症候群と呼ばれます)は、生後1年未満に発熱をきっかけとした長いけいれんで発症しやすく、その多くがSCN1A遺伝子の新たな変化で起こる、指定難病のてんかんです。乳児期に始まったあと、さまざまな型の発作が現れ、発達がゆっくりになりやすい病気。診断は臨床経過・脳波・遺伝学的検査を組み合わせて進みます。治療では効果が期待できる薬を選び、ナトリウムチャネル遮断薬など悪化させうる薬を避けることが柱です。多くは親から受け継いだものではなく、妊娠中の過ごし方が原因でもありません。出生前のNIPT(新型出生前診断)は主に特定の染色体を調べる検査で、この病気は一般的な対象ではない点も、あわせてお伝えします。
この記事でわかること
- 早期乳児てんかん性脳症6型(ドラベ症候群)とはどんな病気で、なぜドラベ症候群と同じものなのか
- 発症初期から学童期まで、年齢とともに変わっていく発作と発達の特徴
- 原因となるSCN1A遺伝子の変化と、多くが新たな変化(孤発例)である遺伝のしくみ
- 診断・治療の考え方と、出生前検査(NIPT)でわかる範囲・わからない範囲
医師から早期乳児てんかん性脳症6型という診断名を告げられ、情報を探してこのページにたどり着いたご家族へ。まだ小さな赤ちゃんに重みのある病名がつき、大きな不安の中にいらっしゃることと思います。まずお伝えしたいことがあります。この病名は、臨床の現場や患者家族会では「ドラベ症候群」と呼ばれてきた病気と、ほぼ同じものを指します。
ドラベ症候群であれば、日本にも活発に活動する患者家族会があり、専門医の研究も進んでいます。決して、誰も知らない未知の病気ではありません。この記事では、難病情報センターなど公的な情報をもとに、病気の特徴と管理の考え方を整理します。あわせて、出生前検査でわかることと限界も、できるだけ正確にお伝えします。
早期乳児てんかん性脳症6型(ドラベ症候群)とは
早期乳児てんかん性脳症6型は、生後1年未満、多くは生後4〜12か月頃に、発熱に伴う長いけいれんで発症しやすいてんかんで、一般にドラベ症候群と呼ばれます。脳の神経の興奮を抑える働きがうまく保てなくなることで起こる病気。まずは、その全体像から見ていきます。
最初の発作は、風邪や予防接種などで熱が出たときに現れることが多いです。当初は熱性けいれんと診断されることも少なくありません。ただ、一般的な熱性けいれんと違い、けいれんが数十分と長く続いたり、体の片側だけがピクピクしたりする特徴があります。短い間に何度も繰り返すこともあります。
1歳を過ぎる頃からは、熱がなくても発作が起きるようになります。発作の種類も多彩になり、言葉や歩行など発達の歩みがゆっくりになることがあります。頻繁な発作や脳波の異常が脳の発達に影響する状態を、てんかん性脳症と呼びます。この病気は国の指定難病および小児慢性特定疾病にあたり、医療費の助成など支援の体制が整えられています。
あくまで一般的な傾向で、経過には個人差があります
「ドラベ症候群」と同じ病気です
病名が複数あることに戸惑う方は少なくありません。私も相談の場で「調べても呼び方が違って混乱する」という声をよく聞きます。学術的な分類名が早期乳児てんかん性脳症6型、臨床でなじみの深い呼び名がドラベ症候群。ほぼ同じ病気を指すと考えて差し支えありません。呼び名の違いで、必要以上に不安を抱かないでください。
発達への影響が気がかりな方は、妊娠や検査と発達の関わりを整理した妊娠と知的障害のリスクを解説した記事もあわせて参考にしてください。全体像を知ることが、落ち着いた一歩につながります。
主な症状|年齢とともに変わる発作と発達
この病気の症状は、発症初期・幼児期・学童期以降の3つの時期で、発作の型や発達の様子が移り変わっていくのが特徴です。それぞれの時期で気をつける点が変わります。順を追って見ていきましょう。
発症初期(生後1歳未満)
多くの赤ちゃんは、それまで順調に育っています。ところが生後5〜8か月頃に、初めての発作を起こします。きっかけで最も多いのが発熱です。38度以上の高熱だけでなく、微熱や入浴後の体温上昇が引き金になることもあります。
この時期に目立つのが、けいれんが止まりにくい発作重積です。30分以上続くこともあり、救急受診で薬を使って止める必要が出てきます。全身ではなく体の片側だけがガクガクと動く半身けいれんも見られます。一度発作が起きると、熱が出るたびに繰り返す傾向があります。
幼児期(1歳から4歳頃)
1歳を過ぎると、熱がなくても発作が起きるようになります。発作のバリエーションも増える時期。体が一瞬ビクッとするミオクロニー発作、急に動作が止まってぼんやりする非定型欠神発作、意識がくもって口をもぐもぐさせる焦点意識減損発作などが加わります。
この頃は発作が頻発しやすく、コントロールが難しい時期のひとつです。あわせて、言葉の遅れ、多動、歩行のふらつきといった発達面の変化も現れ始めます。できていたことが一時的にできなくなることもあり、ご家族にはつらい時期かもしれません。療育と適切な治療で支えていってください。
学童期以降
5〜6歳を過ぎると、激しいけいれん発作の頻度は少しずつ減っていく傾向があります。その代わり、夜間の睡眠中に起きる発作が中心になることも。足を開いてバランスをとる歩き方や、しゃがみ込むような姿勢が見られることがあります。この段階では、運動機能や知的な発達へのサポートが生活の中心になっていきます。
発達の歩みが気がかりなときは、発達の特性と出生前検査の関係をまとめた発達障害とNIPTの関係を解説した記事も参考になります。焦らず、お子さんのペースに寄り添うことが支えになります。
原因|SCN1A遺伝子の変化と遺伝のしかた
この病気の多く(およそ7〜8割)は、脳の神経が電気信号を伝えるために働くSCN1A遺伝子の変化で起こり、その大半は親から受け継いだものではなく、お子さんの代で初めて生じた新たな変化です。なぜ熱で発作が起きやすいのかも、この遺伝子(SCN1A)の役割から説明できます。
ブレーキ役の神経がうまく働かなくなる
この遺伝子は、神経細胞のナトリウムチャネルという部品の設計図です。脳には、信号を出して「動け」と伝えるアクセル役の神経と、「落ち着け」と伝えるブレーキ役の神経があります。この設計図が変化すると、特にブレーキ役の神経が十分に働けなくなります。
すると脳の中でアクセルばかりが踏まれた状態になり、電気信号が暴走してしまいます。それがてんかん発作です。ナトリウムチャネルは温度変化に敏感なため、発熱で機能がさらに落ちやすく、熱による発作の引き金になると考えられています。
多くは親から受け継がない「新たな変化」
この病気は常染色体顕性遺伝(顕性遺伝)という形をとります。ただ、患者さんの多くは、ご両親から受け継いだのではありません。お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた、新たな変化(孤発例)によるものが大半です。
つまり、ご両親のどちらかが原因を持っていたわけではありません。妊娠中のお母さんの食事や生活習慣、ストレスが原因で起こるものでもありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象です。自分を責める必要はありません。

診断と検査|臨床経過・脳波・遺伝学的検査
診断は、特徴的な発作の経過に、脳波検査や遺伝学的検査を組み合わせて進められ、原因となる遺伝子の変化が確認されると診断の裏づけになります。ひとつの検査だけで決まるものではありません。段階を追って確かめていきます。
はじめに、医師が発作の様子を詳しく聞き取ります。発作が始まった年齢、発熱との関連、発作の長さや形が手がかりです。「1歳未満で発症」「発熱による長い発作」「片側のけいれん」がそろうと、この病気を強く疑います。
脳波検査では、頭に電極をつけて脳の電気活動を記録します。発症してすぐの時期は脳波に異常が見られないことも多く、それ自体がこの病気の特徴のひとつ。頭部の画像検査では、腫瘍や奇形といった構造の異常がないことを確認します。初期は異常なしと言われることがほとんどで、それは他の病気ではないと確かめる大切な情報です。
そして、血液からDNAを調べる遺伝学的検査で、この原因遺伝子の変化を確認します。変化が見つかれば診断の大きな裏づけになります。一方で、一部の患者さんでは変化が見つからないこともあります。その場合も、経過が典型的であれば臨床的に診断され、治療が始まります。検査結果の読み方に不安があるときは、検査結果の見方を解説した記事もご覧ください。
治療と管理|避けるべき薬・発熱時の備え・発達支援
治療の柱は、効果が期待できる薬で発作を減らすこと、発作が起きたときに速やかに止めること、そして悪化させうる薬を避けることの3つです。薬の選び方に、この病気ならではの注意点があります。専門医と相談しながら進めてください。
実際の処方は主治医が判断します
効果が期待できる薬
基本の薬として、バルプロ酸ナトリウムが広く使われます。発作を抑える力が高いクロバザム、この病気のために開発され、併用で力を発揮するスチリペントールも柱です。近年は、発作を抑える効果で注目されるフェンフルラミンや、大麻草由来の成分でありながら幻覚作用のないカンナビジオールも、難治性てんかんの薬として承認されています。複数の薬を組み合わせて、その子に合う方法を探していきます。
避けることが多い薬
この病気では、避けることが多い薬があります。ナトリウムチャネルを遮断する作用の薬です。もともとの原因であるナトリウムチャネルの働きの低下を、さらに強めてしまう可能性があるためです。具体的には、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインなどが挙げられます。
これらは一般的なてんかんではよく使われる薬です。ただ、この病気では発作を悪化させることがあるため、原則として使いません。診断がつく前にこれらが使われ、発作が悪化したことが診断のきっかけになる場合もあります。だからこそ、正確な診断が管理の出発点になります。
発熱時と緊急時の備え
発熱が発作の引き金になるため、日々の体温管理が大切になります。熱が出そうなときの早めの対応、ぬるめのお湯で短時間の入浴、夏場の暑さ対策などを、主治医と相談しながら整えます。予防接種は、接種後の発熱より感染症そのもののリスクの方が大きいため、受け方を相談しながら進めるのが基本です。
発作が長く続いたときの備えも欠かせません。日本では、頬の粘膜に注入して発作を止めるミダゾラム口腔用液(ブコラム)が承認され、家庭でも使えます。ジアゼパムの坐薬を使うこともあります。どの薬をどのタイミングで使うか、あらかじめ主治医と手順を決めておくことが、いざというときの支えになります。
発達や運動機能へのサポートには、理学療法や作業療法、言語聴覚療法といった療育が役立ちます。歩行が不安定なときは、保護帽やバギーで安全を確保します。難病の療養に関わる公的な情報は、難病情報センターや、発達の支援について発達障害情報・支援センターでも確認できます。制度を上手に使ってください。
出生前検査でわかること・限界と検査との向き合い方
NIPT(新型出生前診断)は主に特定の染色体(21・18・13トリソミーなど)を調べる非確定的な検査で、SCN1A遺伝子が関わるこの病気は、一般的なNIPTの対象ではありません。この点を、正しく知っておいてください。検査でわかる範囲には、はっきりとした線引きがあります。
NIPTは、お母さんの血液に含まれる、細胞の外を流れるDNA(cfDNA)を調べる検査です。対象となる染色体の数の変化について、可能性が高いか低いかを知る手がかりになります。ただし、あくまでスクリーニングであり、結果を確定させるには羊水検査などの確定検査が必要です。そして、SCN1Aのような単一の遺伝子が関わる病気は、一般的な検査の対象には含まれていません。
早期乳児てんかん性脳症6型は、生まれる前ではなく、多くが生後の発作の経過と検査を通して診断される病気です。出生前に一般的な検査で見つけられるものではない、という前提を知っておくと、検査結果の受け止め方も落ち着きます。NIPTでわかる範囲を広く整理したダウン症以外にNIPTでわかることを解説した記事もあわせてご覧ください。
迷う気持ちは自然なもの
出生前検査を受けるかどうかで、心が揺れるのは自然なことです。私は相談の場で、受けると決めていた方が直前で迷い、迷いながら受けたという声を数多く聞いてきました。Xでも@sisisi195275806さんが、絶対に受けると思っていたのに、いざ妊娠したらすごく迷い、それでも受けて良かったと率直につづっていました。結論が出ていても揺れる。その揺れそのものが、真剣に向き合った証だと感じます。
一方で、受けないという選択も、同じように尊いものです。夫婦で話し合い、納得して決めた答えに、正解や不正解はありません。Xでは@8a0iceNrs25さんが、夫と相談し、素敵な医師と出会って話を聞いたうえで受けないと決め、素敵な覚悟だと言ってもらえたと書いていました。受ける・受けないのどちらであっても、ふたりで考え抜いた選択には重みがあります。迷ったときは、遺伝カウンセリングで専門家に相談してみてください。
よくある質問
Q. 早期乳児てんかん性脳症6型とドラベ症候群は違う病気ですか?
ほぼ同じ病気を指します。早期乳児てんかん性脳症6型は学術的な分類名で、ドラベ症候群は臨床の現場や患者家族会でなじみの深い呼び名です。呼び方が複数あるだけで、別の病気ではありません。日本には患者家族会があり、専門医の研究や治療薬の開発も進んでいます。
Q. この病気は親から遺伝したのでしょうか?
多くの場合、親から受け継いだものではありません。患者さんの大半は、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた、新たな変化(孤発例)によるものです。ご両親のどちらかが原因を持っていたわけではなく、妊娠中の食事や生活習慣が原因でもありません。誰にでも起こりうる偶然の現象で、自分を責める必要はありません。
Q. 熱が出ると発作が起きやすいのはなぜですか?
原因となるナトリウムチャネルが、温度変化に敏感なためです。原因遺伝子の変化でブレーキ役の神経が弱くなっているところに、発熱が加わると機能がさらに落ちやすくなります。その結果、発作が起きやすくなると考えられています。発熱時の早めの対応や体温管理を、主治医と相談して整えてください。
Q. 使ってはいけない薬があると聞きました。本当ですか?
この病気では、避けることが多い薬があります。ナトリウムチャネルを遮断する作用のある薬で、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインなどが挙げられます。発作を悪化させる可能性があるためです。一方で、バルプロ酸ナトリウムやクロバザム、スチリペントールなどは効果が期待できます。薬の選択は必ず専門医が判断しますので、自己判断で変えないでください。
Q. NIPTでこの病気はわかりますか?
一般的なNIPTでは、この病気は対象に含まれていません。NIPTは主に21・18・13トリソミーなど特定の染色体を調べる非確定的な検査で、SCN1Aのような単一遺伝子が関わる病気は一般的な対象外です。早期乳児てんかん性脳症6型は、多くが生後の発作の経過と検査を通じて診断されます。検査でわかる範囲は、遺伝カウンセリングで確認してください。
Q. 利用できる公的な支援はありますか?
この病気は国の指定難病および小児慢性特定疾病にあたり、医療費の助成や療養の支援を受けられる体制が整えられています。難病の療養情報は難病情報センター、障害のあるお子さんへの支援はこども家庭庁の障害児支援の情報で確認できます。お住まいの自治体の窓口や主治医にも、利用できる制度を相談してみてください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科学会認定 出生前コンサルト小児科医/小児科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本小児科学会 小児科専門医/日本アレルギー学会 所属/小児科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
