早期乳児てんかん性脳症6型(Early Infantile Epileptic Encephalopathy 6: EIEE6)

医者

医師から早期乳児てんかん性脳症6型、あるいはアルファベットでEIEE6という診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

まだ小さな赤ちゃんに「てんかん性脳症」という重みのある診断が下され、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病名は医学的な分類に使われる専門的な用語であり、インターネットで検索しても難しい論文ばかりが出てきてしまい、これからどうすればよいのか、将来どうなるのかという見通しが立ちにくく、孤独を感じてしまっている方もいるかもしれません。

まず最初にお伝えしたい重要なことがあります。この早期乳児てんかん性脳症6型という病気は、臨床の現場や患者会の活動などにおいては、一般的に「ドラベ症候群(Dravet Syndrome)」という名前で呼ばれている病気と、ほぼ同じものを指しています。

ドラベ症候群であれば、日本にも活発に活動している患者家族会があり、専門医による研究も進んでおり、治療薬の開発も活発に行われています。決して、誰も知らない未知の病気ではありません。

この病気は、乳児期に発熱などをきっかけとした長いけいれんで発症し、その後も発作のコントロールや発達の面で丁寧なサポートが必要となる難治性のてんかんです。しかし、原因となる遺伝子が特定されたことで、この病気に適したお薬や、逆に避けるべきお薬などが明確になり、管理の方法は年々進歩しています。

概要:どのような病気か

早期乳児てんかん性脳症6型(EIEE6)は、生後1年未満、特に生後6ヶ月前後の乳児期に発症するてんかんの一種です。

この病気は、特定の遺伝子の変化によって脳内の神経の興奮を抑える機能がうまく働かなくなることで引き起こされます。

最大の特徴は、発熱によって誘発されるけいれん発作が非常に長く続くことです。

多くの赤ちゃんは、風邪を引いたり、予防接種を受けたりして熱が出た時に初めての発作を経験します。最初は「熱性けいれん」と診断されることが多いですが、一般的な熱性けいれんと異なり、発作が数十分以上続いたり、体の片側だけがピクピクしたり、短期間に何度も繰り返したりするという特徴があります。

1歳を過ぎる頃から、熱がなくても発作が起きるようになり、発作の種類も多彩になっていきます。また、この頃から言葉の遅れや歩行の不安定さなど、発達の停滞や退行が見られるようになることがあり、これを「てんかん性脳症」と呼びます。これは、頻繁なてんかん発作や脳波の異常が、脳の発達そのものに影響を与えてしまう状態を指します。

この病気は国の指定難病および小児慢性特定疾病に認定されており、長期的な医療費の助成やサポートを受けることができる体制が整えられています。

主な症状

EIEE6(ドラベ症候群)の症状は、年齢とともに変化していくのが特徴です。大きく分けて、発症初期、幼児期、学童期以降という3つのステージで見ていきましょう。

1. 発症初期(生後1歳未満)

多くの赤ちゃんは、それまで順調に育っていましたが、生後5ヶ月から8ヶ月頃に初めての発作を起こします。

きっかけとして最も多いのが発熱です。38度以上の高熱だけでなく、37.5度前後の微熱でも発作が起きることがあります。また、お風呂上がりなどの体温上昇がきっかけになることもあります。

この時期の発作の特徴は、以下の通りです。

発作重積状態

けいれんが止まりにくく、30分以上続くことがあります。これを重積状態といいます。救急車で病院に行き、薬を使って止める必要がある場合が多いです。

半身けいれん

全身ではなく、体の右側だけ、あるいは左側だけがガクガクと動く発作が見られることがあります。また、発作ごとに左右が入れ替わることもあります。

繰り返し起きる

一度発作が起きると、その後も熱が出るたびに発作を繰り返す傾向があります。

2. 幼児期(1歳から4歳頃)

1歳を過ぎると、熱がなくても発作が起きるようになります。また、発作のバリエーションが増えてきます。

ミオクロニー発作

体の一部や全身が一瞬ビクッとする発作です。物を投げ飛ばしてしまったり、転んでしまったりすることがあります。

非定型欠神発作

急に動作が止まり、ぼーっとする発作です。呼びかけても反応がなくなります。

焦点意識減損発作

意識が曇り、口をもぐもぐさせたり、手をもじもじさせたりするような動作を伴う発作です。

この時期は、発作が頻発しやすく、治療が最も難しい時期の一つと言われています。

また、発達面での変化も現れ始めます。言葉が出るのが遅い、多動で落ち着きがない、歩く時にふらつくといった様子が見られるようになります。これまで出来ていたことが出来なくなる「退行」が見られることもあり、ご家族にとっては非常に辛い時期かもしれませんが、適切な治療と療育で支えていくことが大切です。

3. 学童期以降

5歳から6歳を過ぎると、激しいけいれん発作の頻度は少しずつ減っていく傾向にあります。その代わりに、夜間の睡眠中に起きる発作が中心になることがあります。

この時期になると、発作のコントロールに加えて、運動機能や知的な発達へのサポートが生活の中心になっていきます。

歩く時に足を開いてバランスを取りながら歩く特徴的な歩き方や、しゃがみ込むような姿勢(クラウチング歩行)が見られることがあります。

原因

なぜ、熱が出ると発作が起きたり、止まりにくかったりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にある「イオンチャネル」という小さな部品の設計図にあります。

SCN1A遺伝子の変異

EIEE6の患者さんの約80パーセント以上で、第2番染色体にあるSCN1A(エスシーエヌワンエー)という遺伝子に変異が見つかります。

この遺伝子は、脳の神経細胞が電気信号を伝えるために必要な「ナトリウムチャネル」という部品を作る設計図です。

脳の中には、電気信号を出して「動け」と命令するアクセルの役割を持つ興奮性神経と、「止まれ」「落ち着け」と命令するブレーキの役割を持つ抑制性神経があります。

SCN1A遺伝子が作るナトリウムチャネルは、特にこのブレーキ役の神経(抑制性神経)が働くために非常に重要な役割を担っています。

遺伝子の変異により、このナトリウムチャネルがうまく作られなかったり、機能が弱かったりすると、ブレーキ役の神経が十分に働けなくなります。

すると、脳の中でアクセルばかりが踏まれた状態になり、電気信号の暴走、つまり「てんかん発作」が起きてしまうのです。

また、このナトリウムチャネルは温度変化に敏感であるため、発熱や体温上昇によって機能がさらに低下しやすく、それが熱による発作の誘因となると考えられています。

遺伝について

この病気は「常染色体顕性遺伝(優性遺伝)」という形式をとりますが、患者さんの多くは、ご両親から遺伝したのではなく、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた「新生突然変異(de novo変異)」によるものです。

つまり、ご両親のどちらかが原因を持っているわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事や生活習慣、ストレスなどが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

医療

診断と検査

診断は、特徴的な発作の症状、脳波検査、そして遺伝子検査などを組み合わせて行われます。

1. 臨床診断

医師は、発作が始まった年齢、発熱との関連、発作の長さや形などを詳しく聞き取ります。

「1歳未満で発症」「発熱による長い発作」「片側のけいれん」といった特徴が揃っている場合、EIEE6(ドラベ症候群)の可能性を強く疑います。

2. 脳波検査

頭に電極をつけて、脳の電気活動を記録します。

発症してすぐの時期は、脳波に異常が見られない(正常である)ことが多いのがこの病気の特徴の一つでもあります。

成長とともに、てんかん特有の波(棘徐波など)が見られるようになったり、光の刺激に対して過敏に反応したりする様子が確認されるようになります。

3. 画像検査(MRI・CT)

脳の形に異常がないかを調べます。

通常、EIEE6の患者さんの脳には、腫瘍や奇形などの構造的な異常は見られません。初期には「異常なし」と言われることがほとんどですが、これは他の病気ではないことを確認するために重要な情報です。年齢が進むと、脳が少し萎縮するなどの変化が見られることもあります。

4. 遺伝学的検査

確定診断のために、血液を採取してDNAを調べる検査が行われます。

SCN1A遺伝子に変異があるかどうかを調べます。

この検査で変異が見つかれば診断は確定しますが、数パーセントから十数パーセントの患者さんではSCN1A遺伝子に変異が見つからないこともあります。その場合でも、症状が典型的であれば臨床的に診断され、治療が開始されます。

治療と管理

EIEE6(ドラベ症候群)の治療は、てんかん発作を減らすこと、発作が起きた時に速やかに止めること、そして避けるべき薬を使わないことの3点が非常に重要です。

1. 薬物療法(抗てんかん薬)

この病気には、効果が期待できるお薬と、逆に発作を悪化させてしまう可能性があるお薬があります。専門医による適切な薬の選択が不可欠です。

効果が期待できる主な薬

バルプロ酸ナトリウム:基本的なお薬として広く使われます。

クロバザム:発作を抑える効果が高いお薬です。

スチリペントル:ドラベ症候群のために開発されたお薬で、バルプロ酸やクロバザムと併用することで高い効果を発揮します。

トピラマート:複数の発作タイプに効果が期待されます。

フェンフルラミン:近年承認された新しいお薬で、発作抑制効果が高いとして注目されています。

カンナビジオール(CBD):大麻草由来成分ですが幻覚作用はなく、難治性てんかんの治療薬として承認されています。

2. 禁忌薬(避けるべき薬)

ナトリウムチャネルを遮断する作用を持つお薬は、この病気の原因である「ナトリウムチャネルの機能低下」をさらに助長してしまうため、発作を悪化させる危険性があります。

具体的には、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインなどが挙げられます。

これらは一般的なてんかん治療ではよく使われる優秀なお薬ですが、EIEE6の患者さんには原則として使いません。診断がつく前にこれらが処方され、発作が悪化したことで診断につながるケースもあります。

3. 緊急時の対応(発作重積への備え)

発作が5分以上続く場合や、意識が戻らないうちに次の発作が起きた場合は、救急車を呼ぶとともに、医師の指示に従って家庭での緊急処置を行います。

現在日本では、ブコラム(ミダゾラム口腔用液)というお薬が承認されています。これは、頬の粘膜に薬液を注入することで発作を止めるお薬で、自宅や外出先で保護者が使用することができます。

また、ダイアップ(ジアゼパム)という坐薬を使うこともあります。

どのお薬をどのタイミングで使うか、あらかじめ主治医と「緊急時対応マニュアル」を作っておくことが命を守るために大切です。

4. 体温管理と生活の工夫

発熱や体温上昇が発作の引き金になるため、日々の生活での体温管理が重要です。

発熱時

風邪などで熱が出そうな時は、早めに解熱剤を使ったり、発作予防のお薬(ダイアップなど)を使ったりするよう医師から指示されることがあります。

入浴

熱いお湯や長風呂は体温を上げてしまうため、ぬるめのお湯で短時間の入浴を心がけます。夏場はシャワーだけで済ませることもあります。

夏の暑さ対策

気温が高い日は外出を控えたり、クールベスト(冷却ベスト)や保冷剤を使って体を冷やしたりする工夫が必要です。エアコンによる室温管理も欠かせません。

予防接種

ワクチン接種後の発熱で発作が起きることがありますが、感染症にかかった時のリスクの方がはるかに大きいため、予防接種は受けることが推奨されます。接種後に解熱剤を予防的に飲むなどの方法があるため、主治医と相談してスケジュールを組みましょう。

5. 療育(リハビリテーション)

発達の遅れや運動機能の低下に対しては、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)などの療育を受けることが大切です。

お子さんの「できること」を増やし、生活しやすくするためのサポートを行います。また、歩行が不安定な場合は、保護帽(ヘッドギア)をかぶったり、車椅子やバギーを利用したりして安全を確保します。

まとめ

早期乳児てんかん性脳症6型(EIEE6)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

SCN1A遺伝子の変異により、脳内のブレーキ役の神経がうまく働かず、発熱などをきっかけに激しい発作を起こす病気です。一般的にはドラベ症候群と呼ばれます。

主な特徴

1歳未満での発症、発熱による長い発作(重積)、多彩な発作タイプ、発達への影響などが挙げられます。

治療の鍵

バルプロ酸、クロバザム、スチリペントルなどの有効な薬を組み合わせます。一方で、カルバマゼピンなどのナトリウムチャネル遮断薬は避ける必要があります。

生活のケア

発熱時の対応、ブコラムなどの緊急薬の準備、入浴や夏の暑さ対策などの体温管理が重要です。

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