頭蓋骨縫合早期癒合症1型(Craniosynostosis 1)

医師から頭蓋骨縫合早期癒合症1型、あるいはザートレ・チョッゼン症候群という診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃんや、幼少期のお子様に、聞き慣れない難しい病名が告げられ、大きな不安と戸惑いの中にいらっしゃることと思います。「頭の手術が必要かもしれない」と言われれば、親御さんとして動揺されるのは当然のことです。

この頭蓋骨縫合早期癒合症1型は、一般的にはザートレ・チョッゼン症候群(Saethre-Chotzen syndrome)という名前で呼ばれることが多い病気です。

これは、赤ちゃんの頭の骨のつなぎ目が、通常よりも早い時期に閉じてくっついてしまう病気の一つで、特定の遺伝子の変化が原因であることが分かっています。

この病気は、頭蓋骨縫合早期癒合症の中では比較的頻度が高く、また他のタイプ(クルーゾン症候群やアペール症候群など)に比べると、症状がマイルドであるケースも少なくありません。多くの患者さんが、適切な時期に治療を受けることで、通常の学校生活を送り、社会で活躍されています。

概要:どのような病気か

頭蓋骨縫合早期癒合症1型は、生まれつきの遺伝子の変化によって、頭蓋骨や顔面、手足の形成に特徴的な影響が出る先天性の疾患です。

まず、病気の基本となる頭蓋骨縫合早期癒合症について理解しましょう。

私たちの頭蓋骨は、ヘルメットのようなひとつの大きな骨でできているわけではありません。前頭骨、頭頂骨、後頭骨など、数枚のプレート状の骨がパズルのように組み合わさってできています。赤ちゃんの頃は、この骨と骨のつなぎ目である縫合線が開いていて、隙間があります。この隙間があるおかげで、急速に成長する脳に合わせて頭蓋骨も広がることができるのです。

しかし、この縫合線が成長の途中で、本来の時期よりも早く閉じて骨になってしまうことがあります。これを早期癒合といいます。骨がくっついてしまうと、その方向には頭が大きくなれないため、頭の形がいびつになったり、脳の逃げ場がなくなって頭の中の圧力である頭蓋内圧が高まったりします。

この病気にはいくつかのタイプがありますが、1型(ザートレ・チョッゼン症候群)は、TWIST1という遺伝子の変異によって引き起こされるタイプです。

頭の形の変化に加えて、まぶたが下がっている、耳の形に特徴がある、手足の指の間に水かきのような膜があるといった特徴を併せ持つことが多く、これらをまとめて症候群と呼んでいます。

発症頻度は2万5千人から5万人に1人程度と言われており、頭蓋縫合早期癒合症全体の中では比較的多いタイプの一つです。

主な症状

頭蓋骨縫合早期癒合症1型(ザートレ・チョッゼン症候群)の症状は、頭の形、顔立ち、手足の特徴、そして発達面の特徴に分けられます。お子さんによって症状の重さは非常に幅広く、一見しただけでは分からない軽度の方から、しっかりとした治療が必要な方まで様々です。

1. 頭の形の変化

最も代表的な症状です。頭の骨のどのつなぎ目が閉じてしまったかによって、頭の形が変わります。

短頭(たんとう)

おでこの上の部分にある冠状縫合というつなぎ目が、左右両方とも早く閉じてしまった場合に見られます。頭の前後が短くなり、ハチが張ったように横幅が広く、おでこが高く平らな形になります。

斜頭(しゃとう)

冠状縫合の片側だけが早く閉じてしまった場合に見られます。閉じた側のおでこが平らになり、反対側のおでこが出っ張るため、頭や顔が左右非対称になります。

2. 顔立ちの特徴

この病気には、いくつか特有のお顔立ちの特徴があります。

生え際が低い

おでこの髪の毛の生え際が、通常よりも低い位置にあることがよくあります。M字型ではなく、一直線に近い形をしていることもあります。

眼瞼下垂(がんけんかすい)

上のまぶたが下がっていて、目が細く見えたり、眠たそうに見えたりすることがあります。左右で差があることもあります。

顔の非対称

片側の縫合線が癒合している場合、眉毛の高さが違ったり、鼻が曲がっていたり(鼻中隔湾曲)、顔全体が少し曲がっているように見えることがあります。

耳の特徴

耳が小さかったり、耳の軟骨の一部(脚部)が突出していたりする特徴が見られることがあります。

3. 手足の特徴

合指症(ごうししょう)

手や足の指の間が、皮膚の膜でつながっていることがあります。特に人差し指と中指の間によく見られます。アペール症候群のように骨までガッチリとくっついていることは稀で、水かきのように皮膚だけでつながっている軽度なものが多いです。

幅広の親指

足の親指が幅広く、少し大きめであることがあります。

4. 頭蓋内圧亢進症状

脳が大きくなろうとする力に対して頭蓋骨が広がらないと、脳への圧力が強くなります。これを頭蓋内圧亢進といいます。

頭痛を訴える

頻繁に吐く

機嫌が悪い、元気がない

視力の低下(視神経が圧迫されるため)

1型の場合、他の症候群に比べて頭蓋内圧が高くなる頻度はやや低いと言われていますが、それでも注意深い観察が必要です。

5. 知的な発達

多くの患者さんにおいて、知的な発達は正常範囲内です。普通学級に通い、大学へ進学し、就職されている方もたくさんいます。

ただし、頭蓋内圧が高い状態が長く続いたり、染色体の欠失範囲が大きかったりする場合には、軽度から中程度の発達の遅れが見られることもあります。早期に適切な治療を行うことが、お子さんの持っている能力を守ることにつながります。

原因

なぜ、骨が早くくっついてしまうのでしょうか。その原因は、細胞の成長や分化をコントロールする遺伝子の働きにあります。

TWIST1遺伝子の変異

頭蓋骨縫合早期癒合症1型(ザートレ・チョッゼン症候群)の主な原因は、第7番染色体にあるTWIST1(ツイスト・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、骨や筋肉が作られる初期の段階で、細胞がどのように成長し、どのような形になるかを指令する重要な役割を持っています。

正常な状態では、TWIST1遺伝子は頭蓋骨の縫合線が適切な時期まで開いているようにコントロールしています。

しかし、この遺伝子に変異が起きると、その機能が低下したり失われたりします(ハプロ不全といいます)。

すると、骨を作る細胞(骨芽細胞)に対して「まだ骨になってはいけない」というブレーキが効かなくなり、本来よりも早い時期に縫合線が骨に変わってくっついてしまうのです。

遺伝のしくみ

この病気は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)という形式をとります。

これは、両親のどちらかがこの病気(TWIST1遺伝子の変異)を持っている場合、50パーセントの確率でお子さんに遺伝することを意味します。

この病気は症状の幅が広いため、お子さんが診断されて初めて、実はお父さんやお母さんも軽度のこの病気だったと判明することもあります。

一方で、ご両親は全くこの病気を持っておらず、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた突然変異(新生変異)であるケースも多くあります。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。妊娠中の生活習慣やストレスなどが原因で起きるものでもありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、頭の形や特徴的な所見の観察、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 身体診察

医師が頭の形を触って確認します。癒合している縫合線の上には、骨の盛り上がり(峰状隆起)が触れることがあります。

また、髪の生え際の位置、まぶたの下がり具合、耳の形、手足の指の状態などを詳しく観察します。これらが組み合わさっている場合、ザートレ・チョッゼン症候群の可能性が高まります。

2. 画像検査

レントゲン検査

スクリーニングとして行われることがあります。頭蓋骨の縫合線が透けて見えなくなっているかなどを確認します。

3D-CT検査

頭蓋骨の形を立体的に映し出す検査です。これが最も重要な検査の一つです。

どの縫合線が閉じているか、眼窩(目の入っている窪み)の形はどうか、頭蓋骨の内側に脳に押された跡(指圧痕)があるかなどを詳細に確認できます。手術の計画を立てるためにも必須の検査です。

MRI検査

骨ではなく脳の状態を調べます。脳室拡大(水頭症)がないかなどを確認します。

3. 眼科検査

眼底検査を行って、うっ血乳頭があるかどうかを調べます。うっ血乳頭とは、脳の圧力が高まったために目の奥の視神経がむくんでいる状態です。これは頭の手術が必要かどうかを判断する非常に重要なサインです。

また、眼瞼下垂(まぶたの下がり)が視力の発達を邪魔していないか(弱視のリスク)もチェックします。

4. 遺伝学的検査

確定診断のために、血液を採取してDNAを調べる検査が行われます。TWIST1遺伝子に変異があるかどうかを確認します。

症状が軽く診断が難しい場合や、次の妊娠を考えている場合などには特に有用な検査です。

治療と管理

治療の主な目的は、脳が成長するためのスペースを確保して脳圧を下げること、頭の形を整えること、そして目の機能や見た目を改善することです。基本的には形成外科と脳神経外科がチームを組んで手術を行います。

1. 頭蓋形成術

頭蓋骨を切って広げ、形を整える手術です。お子さんの年齢や症状に合わせて、いくつかの方法から選択されます。

前頭蓋形成術(前頭眼窩前進術)

おでこの骨と、目の上の骨の枠組み(眼窩上縁)を一緒に切り離し、前に出して固定する手術です。

これにより、平らだったおでこを丸くし、脳の前方のスペースを広げます。また、目の上の骨を前に出すことで、奥まっていた目を自然な位置に見えるようにします。

一般的には、生後6ヶ月から1歳頃に行われることが多いですが、脳圧が高い場合はもっと早く行うこともあります。

骨延長法(ディストラクション)

骨を切った後に延長器という装置を取り付け、毎日少しずつネジを回して骨の間を広げていく方法です。皮膚や筋肉をゆっくり伸ばしながら骨を広げられるため、一度に大きなスペースを作ることができ、後戻りも少ないというメリットがあります。後頭部の拡大などにも用いられます。

2. その他の手術

眼瞼下垂の手術

まぶたが下がって視野を妨げている場合や、見た目が気になる場合は、まぶたを引き上げる手術を行います。

軽度の場合は経過観察で良いこともありますが、視力の発達に悪影響がある場合は、3歳頃までに手術を行うこともあります。

合指症の手術

手足の指がつながっている場合、指を切り離して形成する手術を行います。手の機能にとって重要な指の場合は、1歳から2歳頃に行うことが一般的です。

3. 長期的なフォローアップ

一度手術をしたら終わりではありません。お子さんの成長に合わせて、頭蓋骨が再び癒合していないか、脳圧が再び上がっていないかを定期的にチェックする必要があります。

小学校入学前後や、思春期の成長期には、顔のバランスや噛み合わせの変化なども含めて、長期的に経過を見ていくことが大切です。

まとめ

頭蓋骨縫合早期癒合症1型(ザートレ・チョッゼン症候群)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

TWIST1遺伝子の変異により、頭の骨の継ぎ目が早く閉じてしまう病気です。

主な特徴

短頭や斜頭などの頭の変形、低い髪の生え際、まぶたの下がり(眼瞼下垂)、小さな耳、手足の水かき(合指症)などが特徴です。

予後

知的な発達は多くの場合正常範囲内です。適切な治療により、通常の社会生活を送ることができます。

治療の鍵

脳神経外科や形成外科による手術で、脳のスペースを確保し、頭やおでこの形を整えます。

家族のケア

専門チームによる長期的なサポートが必要です。

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