頭蓋骨縫合早期癒合症4型(Craniosynostosis 4)

医師から頭蓋骨縫合早期癒合症4型という診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

聞き慣れない病名、そして頭の手術が必要になるかもしれないという事実に、計り知れない不安を感じておられることと思います。特に、この4型というタイプは、医療の世界でも比較的新しく定義された分類であり、日本語で書かれた一般向けの詳しい情報はまだ多くありません。

この病気は、医学的にはERF関連頭蓋骨縫合早期癒合症とも呼ばれます。赤ちゃんの頭の骨のつなぎ目が通常よりも早く閉じてしまうことで、頭の形が変わったり、脳への圧力がかかったりする病気です。

しかし、決して絶望的な病気ではありません。形成外科や脳神経外科を中心としたチーム医療によって、適切な時期に治療を行うことで、お子さんの健やかな成長を支えることができます。

概要:どのような病気か

頭蓋骨縫合早期癒合症4型は、生まれつきの遺伝子の変化によって、頭蓋骨の成長に影響が出る疾患です。

まず、病気の基本となる頭蓋骨縫合早期癒合症について説明します。

私たちの頭蓋骨は、ひとつの大きな骨でできているわけではありません。数枚のプレート状の骨がパズルのように組み合わさってできています。赤ちゃんの頃は、この骨と骨のつなぎ目である縫合線が開いていて、隙間があります。この隙間があるおかげで、急速に成長する脳に合わせて頭蓋骨も広がることができるのです。

しかし、この縫合線が成長の途中で、本来の時期よりも早く閉じて骨になってしまうことがあります。これを早期癒合といいます。骨がくっついてしまうと、その方向には頭が大きくなれないため、頭の形がいびつになったり、脳の逃げ場がなくなって頭の中の圧力(頭蓋内圧)が高まったりします。

では、4型とは何でしょうか。

頭蓋骨縫合早期癒合症には、クルーゾン症候群やアペール症候群など、遺伝子の原因によっていくつかのタイプに分けられるものがあります。4型は、ERF(イー・アール・エフ)という特定の遺伝子の変異によって引き起こされるタイプを指します。

この病気の大きな特徴として、他のタイプに比べて発症時期が遅い場合があること、複数の縫合線が癒合しやすいこと、そして見た目の特徴が比較的軽度な場合があるものの、頭蓋内圧が高くなりやすいという点が挙げられます。2013年頃に原因遺伝子が特定された比較的新しい疾患概念であるため、診断が見過ごされてきたケースも過去にはあったと考えられています。

主な症状

頭蓋骨縫合早期癒合症4型の症状は、頭の形、顔立ち、そして神経学的な症状に分けられます。ただし、症状の出方はお子さんによって個人差が大きく、生まれた直後から分かることもあれば、数歳になってから気づかれることもあります。

1. 頭の形の変化

頭の骨のどのつなぎ目が閉じてしまったかによって、頭の形が変わります。

舟状頭(しゅうじょうとう)
頭が前後には長く、横幅が狭い、船のような形になることがあります。これは頭の真ん中を縦に走る矢状縫合が閉じた場合に見られます。

短頭(たんとう)
後頭部が平らになり、頭の前後径が短くなることがあります。

クローバー葉頭蓋
複数の縫合線が同時に閉じてしまうと、頭が三つ葉のクローバーのように膨らんだ独特の形になることがあります。4型では複数の縫合が癒合する複合型の癒合が比較的多く見られます。

2. 顔立ちの特徴

4型のお子さんには、クルーゾン症候群に似た顔立ちの特徴が見られることがありますが、一般的にクルーゾン症候群よりはマイルドなことが多いです。

眼球突出
目の周りの骨が浅いため、目が少し前に出ているように見えることがあります。まぶたが閉じにくいほど重度になることは稀ですが、目が大きくクリッとして見えることが特徴です。

眼間開離
両目の間隔が離れて見えることがあります。

中顔面低形成
顔の真ん中あたり(鼻や上あごの周辺)の骨の成長がゆっくりなため、顔の中央が少しへこんだように見えたり、相対的に下あごが出ているような受け口になったりすることがあります。

3. 遅発性の発症

これが4型の非常に重要な特徴です。

多くの頭蓋骨縫合早期癒合症は生まれた時にすでに頭の形に異常がありますが、ERF遺伝子変異による4型の場合、生まれた時は正常か、ごく軽度の変形だけで、生後数ヶ月から数歳にかけて徐々に癒合が進み、頭の形が変わってくることがあります。

そのため、最初は異常なしと言われていたのに、幼児期になってから診断がつくというケースもあります。

4. 頭蓋内圧亢進症状

脳が大きくなろうとする力に対して頭蓋骨が広がらないと、脳への圧力が強くなります。これを頭蓋内圧亢進といいます。

頭痛を訴える(言葉が話せない赤ちゃんの場合は、機嫌が悪い、頭を叩くなど)

吐き気や嘔吐がある

元気がない、ぐったりしている

視力の低下(視神経が圧迫されるため)

特に4型は、見た目の変形がそれほど強くなくても、この頭蓋内圧が高くなりやすい傾向があるため、注意深い観察が必要です。

5. その他の症状

キアリ奇形
小脳の一部が脊髄の方へ落ち込んでしまう状態で、4型の患者さんでは合併しやすいことが知られています。

発達への影響
多くの患者さんは知的な発達は正常範囲内ですが、言葉が遅い、運動がゆっくりといった発達の遅れが見られることもあります。また、多動などの行動面の特徴が見られることもあります。

原因

なぜ、骨が早くくっついてしまうのでしょうか。その原因は、細胞の成長をコントロールする遺伝子の働きにあります。

ERF遺伝子の変異

頭蓋骨縫合早期癒合症4型の原因は、第19番染色体にあるERF(イー・アール・エフ)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、ETS2リプレッサー因子というタンパク質を作る設計図です。

少し専門的になりますが、このERFタンパク質は、骨の形成に関わる他の遺伝子の働きを抑えるブレーキのような役割を持っています。骨が作られすぎないように、適切なタイミングで成長を止める調整役です。

ERF遺伝子に変異が起きると、このタンパク質の量が減ったり、機能が落ちたりして、ブレーキが効かなくなります。

その結果、骨を作る細胞が過剰に働き、まだ閉じてはいけない時期に縫合線で骨が作られ、骨同士がくっついてしまうのです。

遺伝のしくみ

この病気は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)という形式をとります。

これは、両親のどちらかがこの病気(ERF遺伝子の変異)を持っている場合、50パーセントの確率でお子さんに遺伝することを意味します。

しかし、ご両親は全くこの病気を持っておらず、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた突然変異(新生変異)であるケースも多くあります。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。妊娠中の生活習慣やストレスなどが原因で起きるものでもありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、頭の形や顔立ちの観察、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 身体診察

医師が頭の形を触って確認します。癒合している縫合線の上には、骨の盛り上がり(峰状隆起)が触れることがあります。また、大泉門(おでこの上の柔らかい部分)が早く閉じているか、盛り上がっていないかを確認します。

2. 画像検査

レントゲン検査
スクリーニングとして行われることがあります。縫合線が透けて見えなくなっているかなどを確認します。

3D-CT検査
頭蓋骨の形を立体的に映し出す検査です。どの縫合線が閉じているか、頭蓋骨の内側に脳に押された跡(指圧痕)があるかなどを詳細に確認できます。手術の計画を立てるためにも必須の検査です。

MRI検査
骨ではなく脳の状態を調べます。キアリ奇形の有無や、脳室拡大(水頭症)がないかを確認します。Shutterstock

3. 眼科検査

眼底検査を行って、うっ血乳頭があるかどうかを調べます。うっ血乳頭とは、脳の圧力が高まったために目の奥の視神経がむくんでいる状態です。これは頭の手術が必要かどうかを判断する非常に重要なサインです。

4. 遺伝学的検査

確定診断のために、血液を採取してDNAを調べる検査が行われます。ERF遺伝子に変異があるかどうかを確認します。

4型は他の症候群と区別がつきにくいこともあるため、遺伝子検査によって確定診断を得ることは、今後の治療方針や合併症の予測をする上で非常に重要です。

治療と管理

治療の主な目的は、脳が成長するためのスペースを確保して脳圧を下げること、そして頭の形を整えることです。基本的には手術による治療が行われます。

1. 頭蓋形成術

頭蓋骨を切って広げ、形を整える手術です。お子さんの年齢や症状に合わせて、いくつかの方法から選択されます。

後頭蓋拡大術
頭の後ろ側の骨を広げる手術です。主に1歳未満の乳児期に行われることが多く、脳のスペースを後ろ側に広げることで脳圧を下げます。

前頭蓋形成術
おでこや目の周りの骨を前に出して、おでこの形を整えるとともに、脳の前の部分のスペースを確保します。

骨延長法(ディストラクション)
骨を切った後に延長器という装置を取り付け、毎日少しずつネジを回して骨の間を広げていく方法です。皮膚や筋肉をゆっくり伸ばしながら骨を広げられるため、一度に大きなスペースを作ることができ、体への負担も分散されます。4型のお子さんでは、この方法が選択されることがよくあります。

2. 手術の時期

4型の場合、症状がゆっくり進行することがあるため、手術の時期は慎重に決められます。

脳圧が高いサイン(うっ血乳頭や激しい頭痛など)がある場合は、年齢に関わらず早急に手術が必要です。

一方で、緊急性がない場合は、骨がしっかりしてくる1歳以降や、あるいは症状が顕著になってくる幼児期後半から学童期に手術が行われることもあります。

クルーゾン症候群などに比べて、より高い年齢(4歳以降など)で初回の手術が必要になるケースも報告されています。

3. 長期的なフォローアップ

一度手術をしたら終わりではありません。お子さんの成長に合わせて、頭蓋骨が再び癒合していないか、脳圧が再び上がっていないかを定期的にチェックする必要があります。

特に4型は、一度手術をして広げた骨が、再び早くくっついてしまう再癒合のリスクがあると言われています。そのため、成人になるまで長期的な経過観察が必要です。

4. 発達のサポート

言葉の遅れや運動の遅れがある場合は、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)などの療育を受けることが推奨されます。

また、学校生活においては、体育の授業での頭への衝撃に注意するなど、個別の配慮が必要になる場合があります。

まとめ

頭蓋骨縫合早期癒合症4型(ERF関連)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質
ERF遺伝子の変異により、頭の骨の継ぎ目が早く閉じてしまう病気です。

特徴的な経過
生まれた時には目立たず、幼児期になってから頭の変形や脳圧の上昇が現れる遅発性のケースがあります。

主な症状
舟状頭やクローバー葉頭蓋などの頭の変形、眼球突出、キアリ奇形、頭蓋内圧亢進などがあります。

治療の鍵
脳神経外科や形成外科による手術で、脳のスペースを確保します。骨延長術などが用いられます。

長期管理
手術後も再癒合のリスクがあるため、大人になるまで定期的な検査と経過観察が大切です。

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