フォンテーヌ・プロジェロイド症候群(Fontaine Progeroid Syndrome)

医療

医師から「フォンテーヌ・プロジェロイド症候群」という非常に稀な病名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは検査を続けてきたお子様に診断が下り、驚きとともに、これからどのような未来が待っているのかという大きな不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数が極めて少ない希少疾患の一つであり、日本語で書かれた詳しい情報はほとんどありません。インターネットで検索しても英語の専門的な医学論文ばかりが出てきてしまい、具体的にどうすればよいのか分からず、孤独を感じてしまっている方もいるかもしれません。

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群は、生まれつき頭の骨や顔立ち、皮膚、手足などに特徴が現れる遺伝性の疾患です。「プロジェロイド」という言葉は「早老症のような」という意味を持ちますが、これは皮膚が薄かったり皮下脂肪が少なかったりする特徴が、一見すると早く歳をとったように見えることから名付けられた医学用語です。実際に寿命が極端に短いとか、急速に老化が進んでしまうというわけではありませんので、まずはその点について過度に恐れすぎないでください。

近年、遺伝子研究が進み、この病気の原因が少しずつ解明されてきました。それに伴い、適切な管理方法やサポートの在り方も整理されつつあります。

概要:どのような病気か

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群は、英語でFontaine Progeroid Syndromeと表記され、医療現場では頭文字をとってFPSと呼ばれることがあります。

この病気は、2000年代後半にフランスの医師フォンテーヌらによって報告され、その後の研究でSLC25A24という特定の遺伝子に変化があることが原因であると特定されました。また、症状が非常によく似ている疾患にゴーリン・チャウドリー・モス症候群(Gorlin-Chaudhry-Moss syndrome)というものがありますが、現在ではこれらは同じ原因、あるいは非常に近い関係にある疾患グループであると考えられています。

この病気の全体像を一言で説明するのは難しいですが、主な特徴としては、頭蓋骨の継ぎ目が早く閉じてしまう頭蓋骨縫合早期癒合症、皮膚が薄く皮下脂肪が少ないこと、手足の指や爪の形成不全などが挙げられます。

「プロジェロイド(早老様)」という名前がついているため、有名なハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(早老症)と同じように考えられがちですが、病気のメカニズムや経過は異なります。フォンテーヌ・プロジェロイド症候群の患者さんは、生まれた時から特徴的な外見を持っていますが、適切な医療的ケアを受けることで成長し、発達していくことができます。

非常に稀な病気であるため、一般的な小児科医でも出会ったことがないケースがほとんどです。しかし、形成外科、脳神経外科、遺伝科、小児科などがチームとなって支える体制が整っている専門病院であれば、適切なサポートを受けることができます。

主な症状

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群の症状は、頭、顔、皮膚、手足など、全身の外見的な特徴として現れることが多いです。お子さんによって症状の出方や重さは異なりますが、代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. 頭と顔の特徴

この病気で最も早期に気づかれ、治療の対象となるのが頭と顔の特徴です。

頭蓋骨縫合早期癒合症

赤ちゃんの頭の骨は、いくつかのパーツに分かれていて、その継ぎ目(縫合線)が成長とともに広がっていくことで脳が大きくなるスペースを作ります。しかし、この病気では、その継ぎ目の一部が生まれる前や生後早い段階で閉じて(くっついて)しまうことがあります。これを頭蓋骨縫合早期癒合症といいます。

骨がくっついてしまうと、頭が特定の方向に大きくなれず、頭の形がいびつになったり、脳への圧迫が心配されたりすることがあります。おでこが出っ張っている、頭が前後に短い、あるいは逆に長いといった特徴が見られます。

大泉門の異常

赤ちゃんのおでこの上にある柔らかい部分(大泉門)が、通常より大きかったり、閉じるのが遅かったりすることがあります。逆に、縫合早期癒合の影響で早く閉じてしまうこともあります。

顔貌の特徴

お顔立ちにもいくつか共通した特徴が見られます。

目が少し離れている(眼間開離)、目が大きく少し飛び出しているように見える(眼球突出)、まぶたが下がっている(眼瞼下垂)、鼻が小さく鼻筋が細い、口が小さい(小口症)、唇が薄い、耳の位置が低いといった特徴です。

また、頬の脂肪が少ないため、頬骨が目立つこともあります。

2. 皮膚と皮下脂肪の特徴

「プロジェロイド(早老様)」と呼ばれる理由となるのが、この皮膚の特徴です。

皮膚の菲薄化と静脈の透見

皮膚が非常に薄く、その下にある血管(静脈)が青く透けて見えることがあります。特におでこや頭皮、胸部などで目立ちやすいです。

皮下脂肪の減少

生まれつき、あるいは成長に伴って、皮膚の下にある脂肪(皮下脂肪)が少なくなります。お尻や手足の脂肪が少ないため、筋肉や骨の形が浮き出て見えたり、皮膚にしわが寄りやすかったりします。

皮膚の弾力性低下

皮膚を引っ張ると伸びにくかったり、硬かったりすることがあります。

3. 手足と爪の特徴

手足の指先にも、診断の手がかりとなる重要な特徴が現れます。

爪の形成不全

手足の爪が生まれつき小さかったり(低形成)、全くなかったり(無爪症)することがあります。あるいは、爪が薄くて割れやすい、形がいびつであるといったこともよく見られます。

指の短縮と骨の溶解

指、特に小指などが短いことがあります。レントゲンを撮ると、指の一番先端にある骨(末節骨)が小さかったり、一部が溶けたようになっていたりすることがあります。これを末節骨溶解といいます。

4. 成長と栄養の特徴

身体の成長に関しても注意深い観察が必要です。

子宮内発育不全と低体重

お母さんのお腹の中にいる時から小さめで、生まれた時の体重や身長が平均より低い低出生体重児として生まれることが多いです。

体重増加不良

生まれてからも体重が増えにくい傾向があります。これは皮下脂肪がつきにくいという体質的な理由に加え、口が小さいためにミルクを飲むのが苦手だったり、消化吸収の力が弱かったりすることが関係している場合があります。

5. 発達と神経の特徴

知的な発達に関しては個人差が非常に大きいです。

発達の遅れ

首のすわり、お座り、歩行などの運動発達や、言葉の発達が全体的にゆっくりになる傾向があります。軽度の遅れで済むお子さんもいれば、中等度から重度の知的障害を伴うお子さんもいます。

しかし、ゆっくりながらもお子さんなりのペースで確実に成長していきます。

6. その他の症状

おへそのヘルニア

おへそが飛び出ている臍ヘルニアが見られることがあります。

歯科的な問題

あごが小さいため、歯が生えるスペースが狭く、歯並びが悪くなったり(叢生)、歯の生える時期が遅れたり、生まれつき歯の本数が少なかったりすることがあります。

原因

なぜ、頭の骨が早く閉じたり、皮膚が薄くなったりするのでしょうか。その原因は、細胞の中にある小さな器官と遺伝子の働きにあります。

SLC25A24遺伝子の変異

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群の主な原因は、SLC25A24という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、細胞の中でエネルギーを作り出す工場である「ミトコンドリア」に関係しています。

もう少し詳しく説明すると、ミトコンドリアの内側と外側で物質をやり取りするためのドアのような役割(輸送体)を担っているのが、この遺伝子から作られるタンパク質です。具体的には、ATP-Mg(エーティーピー・マグネシウム)やリン酸といった物質を輸送しています。

この遺伝子に変異が起きると、ミトコンドリアの中でのエネルギー産生や代謝のバランスが崩れてしまいます。

ミトコンドリアは全身の細胞にとって重要なエネルギー源ですが、特に骨や結合組織(皮膚や脂肪など)を作る細胞がこの影響を受けやすく、その結果として頭蓋骨の形成異常や皮下脂肪の減少といった症状が現れると考えられています。

遺伝の仕組み

この病気は「常染色体顕性遺伝(以前の優性遺伝)」という形式をとります。

これは、理論上は親から子へ50パーセントの確率で伝わる形式です。

しかし、フォンテーヌ・プロジェロイド症候群の患者さんのほとんどは、ご両親は健康で遺伝子にも異常がなく、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起きた「新生突然変異(de novo変異)」によるものです。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

医者

診断と検査

診断は、特徴的な見た目の観察、レントゲンやCTなどの画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 臨床診断(見た目の特徴)

医師は、赤ちゃんの全身を詳しく診察します。

診断の大きな手がかりとなるのは、「頭蓋骨縫合早期癒合症」に加えて、「手足の爪の異常」や「皮膚の薄さ・皮下脂肪の減少」といったプロジェロイド(早老様)の特徴が揃っていることです。

単なる頭蓋骨縫合早期癒合症だけではこの病気とは診断されず、全身の特徴を総合的に見て判断します。

2. 画像検査

頭部CT検査(3D-CT)

頭の骨の形を詳しく調べるために行います。どの縫合線が閉じているか、脳への圧迫がないかなどを立体的に確認します。手術の計画を立てる上でも非常に重要な検査です。

レントゲン検査

手足の写真を撮り、指先の骨(末節骨)の状態を確認します。骨が小さい、あるいは溶けているような像が見られれば、診断の強力な裏付けとなります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

SLC25A24遺伝子に変異があるかどうかを調べます。

この検査で変異が見つかれば、診断は確定します。診断が確定することで、他の似たような病気(例えばハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群や他の頭蓋縫合早期癒合症症候群)と区別することができ、将来の見通しや適切な治療方針を立てやすくなります。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの健やかな成長を助け、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群の管理には、形成外科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、歯科など、多くの専門家のチームワークが必要です。

1. 頭と顔の治療(形成外科・脳神経外科)

頭蓋形成術

頭蓋骨縫合早期癒合症によって脳の発達が妨げられる可能性がある場合や、頭の変形が著しい場合は、手術を行います。

固まってしまった骨の継ぎ目を切り離し、骨を組み替えたり、延長器という器具を使ったりして、脳が大きくなるためのスペースを広げ、頭の形を整えます。手術の時期や方法は、癒合の状態や全身の体調を見て慎重に決定されます。

2. 栄養と食事の管理

体重を増やし、体力をつけることが大切です。

高カロリーのミルクや栄養剤を使ったり、消化の良い食事を工夫したりします。

口が小さくて食べるのが難しい場合は、食事の形態を工夫したり、摂食指導(食べる練習)を受けたりします。場合によっては、鼻からチューブを入れて栄養を補うこともありますが、これは一時的な助けとして使われることが多いです。

3. 皮膚と爪のケア

皮膚の保護

皮膚が薄く傷つきやすいため、保湿剤をこまめに塗って乾燥を防ぎ、皮膚を保護します。また、皮下脂肪が少なく骨が出っ張っている部分(お尻や背中など)は、長時間同じ姿勢でいると床ずれ(褥瘡)ができやすいため、クッション性の高い寝具を使ったり、こまめに体位を変えたりする工夫が必要です。

体温調節

皮下脂肪が少ないと、体温を保つのが苦手になります。寒い場所では服を一枚多く着せる、暑い場所ではこまめに水分をとらせるなど、衣服や室温での調整を気にかけてあげてください。

爪のケア

爪が変形していたり割れやすかったりするため、深爪にならないように丁寧に整え、保湿します。

4. 発達支援と療育

お子さんの発達段階に合わせた療育(リハビリ)が重要です。

理学療法(PT)

体の動きを促し、筋肉の発達を助けます。関節が硬くならないような運動も取り入れます。

作業療法(OT)

手先の細かい動きや、遊びを通じた発達支援を行います。指先に特徴があっても、その子なりの手の使い方を習得できるようにサポートします。

言語聴覚療法(ST)

言葉の遅れがある場合、コミュニケーションの練習を行います。また、食べる機能の訓練も担当します。

5. 歯科治療

虫歯の予防と、歯並びの管理が大切です。あごが小さく歯磨きがしにくいことがあるため、定期的に歯科検診を受け、フッ素塗布やクリーニングを行うことが推奨されます。将来的に矯正治療が必要になることもあります。

まとめ

フォンテーヌ・プロジェロイド症候群(FPS)についての重要なポイントを振り返ります。

  • 病気の本質: SLC25A24遺伝子の変異により、ミトコンドリアの機能に変化が生じ、骨や皮膚、脂肪組織の形成に影響が出る先天性の体質です。
  • 主な特徴: 頭蓋骨縫合早期癒合症、薄い皮膚と皮下脂肪の減少、手足の爪の低形成、特徴的な顔貌などが挙げられます。
  • 「プロジェロイド」の意味: 早老様(早く歳をとったように見える)という意味ですが、急速に寿命が尽きる病気ではありません。
  • 原因: 多くは突然変異によるもので、ご両親のせいで起きたものではありません。
  • 治療の柱: 頭の形を整える手術、栄養管理、皮膚のケア、そして発達に合わせた療育が中心となります。

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