尖圭コンジローマって何?
【質問者】
そもそも尖圭コンジローマって、どんな病気なんですか?
【先生】
尖圭コンジローマは、『HPV通称 ヒトパピローマウイルス』というウイルスが原因で発症する性感染症です。HPVは100種類以上の型があります。性交渉を通じて感染することが多く、ウイルスは性器周囲の皮膚や粘膜にも存在するため、コンドームを使っていても完全に防ぐのは難しいんです。
また、この病気の特徴は“潜伏期間の長さ”にあります。感染から数週間で症状が出る人もいれば、数ヶ月から1年近く経ってから症状が出る人もいます。そのため、『いつ、誰から感染したのか』を特定するのが難しく、パートナー間で不安や誤解が生じやすいのも特徴なんです。
【質問者】
感染してても症状が出ないこともあるんですか?
【先生】イラストあり↓
はい、その通りです。実際に感染しても無症状のまま自然に治ってしまう人も少なくありません。免疫力が強ければ、体がウイルスを抑え込んでしまうケースもあるんですね。
ただし、妊娠中はホルモンバランスや免疫力の変化によって、それまで無症状だったものが急に発症することがあります。免疫が少し弱まる“妊娠特有の状態”が、尖圭コンジローマの再発や悪化を招くことがあるんです。
尖圭コンジローマの典型的な症状は、“イボ”です。↓イラストあり
“女性の場合”は
主に陰唇(外陰部)、腟の入口や内部、会陰部、肛門の周囲に出やすいです。
“男性の場合”は
主に陰茎や亀頭、包皮、陰嚢、肛門の周囲に出やすいです。

これらの部位に、鶏のトサカのような形やカリフラワーのような形をしたイボが複数発生します。最初は小さい粒のようなものですが、放置すると次第に大きくなり、数が増えて広がっていくこともあります。
かゆみや違和感を伴うこともありますし、摩擦で出血することもあります。特に妊娠中は、イボが短期間で急に大きくなったり数が増えたりすることがあり、日常生活に支障をきたすケースもあるんです。
【質問者】
自然に治ることもあるって聞きましたけど…放っておいても大丈夫なんですか?
【先生】
確かに、免疫がウイルスを抑え込めば自然に治る場合もあります。しかし、すべてのケースでそうとは限りません。むしろ放置すると、イボが大きくなったり広範囲に広がったりする危険があります。
また、パートナーへの感染リスクもありますし、妊娠中に悪化すると出産のときに赤ちゃんの喉にイボができる“喉頭乳頭腫”という病気を引き起こすリスクもわずかですが存在します。ですので、発症した場合は早めに医師に相談し、適切な治療を受けることがとても大切なんです。
赤ちゃんに影響があるの?
【質問者】
妊娠中の場合、お腹の赤ちゃんに影響はあるんでしょうか?
【先生】
はい、可能性としてはあります。ただし、非常に稀です。尖圭コンジローマそのものが胎盤を通して赤ちゃんに感染することはありません。ただ、出産時に産道を通るときに赤ちゃんがウイルスを吸い込んでしまい、「産道感染」を起こすケースがあります。
この場合、赤ちゃんの喉や声帯にイボができることがあり、『若年性再発性呼吸乳頭腫症 通称 RRP』と呼ばれます。これは良性の腫瘍ですが、できる場所や大きさによっては声がかすれたり、呼吸がしにくくなったりすることがあるため注意が必要なんです。
研究では、母親に尖圭コンジローマがあっても1,000〜2,000件の出産に1件程度の割合で呼吸に支障が出ると報告されています。つまり、大多数の赤ちゃんには影響が出ないということです。
ただ、一度発症すると繰り返し手術が必要になることがあります。声帯にできたイボを切除しても、再発を繰り返すケースがあり、複数回の手術が必要になることもあるんです。発症のピークは1〜4歳ごろと言われていますね。
【質問者】
なるほど…確率は低いけれど、ゼロではないということですね。そうなると、産道にイボがある場合はやっぱり経腟分娩は避けた方がいいんでしょうか?
【先生】
実はそこは医学的にも長年議論が続いてきた部分なんです。以前は“帝王切開の方が安全だ”と考えられていましたが、現在では帝王切開をしても感染を完全には防げないことが分かってきています。
つまり、帝王切開にしたからといって100%安心というわけではないんですね。そのため、現在の考え方としては、「病変の大きさや位置によって判断する」という方針が一般的です
【質問者】
では、どういう場合に帝王切開を選ぶことになるんですか?
【先生】
様々な場合があります。
・病変が大きく、産道を物理的にふさいでしまうリスクがあるとき
・出血しやすく、分娩時に大量出血を起こす可能性が高いとき
・感染や増悪によって母体や胎児にリスクが及ぶと判断されたとき
こういった場合には帝王切開が選ばれることがあります。逆に、イボが小さく数も少ない場合は、経腟分娩が可能と判断されることが多いんです。つまり“一律に帝王切開”ではなく、“症例ごとに判断する”のが現代の標準的な考え方なんですよ。
治療法は?
【質問者】
妊娠中に発症した場合、治療はできるんですか?
【先生】
はい、可能です。尖圭コンジローマは“良性の腫瘍”ですので、命に関わることはまずありません。そのため、治療の目的は“症状の改善”や“分娩への影響を減らすこと”になります。治療の選択肢はいくつかあります。
“塗り薬”
自身の免疫を利用してウイルスを排除し、体の中から治療効果を高めるイミキモドクリームなどあります。ただし、一般的に使われる抗ウイルス作用のある外用薬は、妊娠中は胎児への安全性が十分に確立していないため使用できない場合があります。そのため、妊娠中は薬物療法よりも、物理的に病変を取り除く方法が選ばれることが多いです。
“焼灼療法”
レーザーや電気メスを使ってイボを焼き切る方法で、妊娠中でも比較的安全に行える治療法です。特に病変が大きくなって出血しやすくなった場合や、分娩に影響しそうな位置にある場合には、この方法が選ばれることがあります。
“外科的切除”
ハサミやメスで病変を切り取る方法もあります。大きな病変や広範囲に広がった場合には有効です。手術自体は局所麻酔で行えるため、母体や胎児への影響も最小限に抑えられます。
ただし、どの治療法にも共通して言えるのは、再発の可能性があるという点です。尖圭コンジローマの原因であるHPVは体内に潜伏するため、病変を取り除いても再び出てくることがあります。特に妊娠中は免疫が弱まりやすいため、治療してもしばらくするとまた出てくるケースも珍しくありません。
【質問者】
なるほど…完治というよりは、あくまで“症状を抑える”ことが目的なんですね。
【先生】
その通りです。そしてもう一つ大事なのは、“焦らないこと”です。妊娠中は『赤ちゃんに影響が出るんじゃないか』と心配になりますが、実際に尖圭コンジローマが原因で赤ちゃんに重大な影響が出るケースは非常にまれです。
性感染症というと“自分が悪いのでは”と感じてしまう方もいらっしゃいますが、HPVは非常にありふれたウイルスで、ほとんどの人が一生に一度は感染するとも言われています。ですから、感染したこと自体を責める必要は全くありません。
むしろ大切なのは、症状に早く気づいて適切に対処すること。そして、正しい知識を持って冷静に判断することです。少しでも疑わしい症状があれば、ためらわず産婦人科で相談してみてください。それが一番安心に繋がりますからね。

パートナーへの検査や予防
【質問者】
でも、尖圭コンジローマって“性感染症”なんですよね?ということは、パートナーも一緒に検査や治療を受けないと意味がないんでしょうか?
【先生】
はい、その通りです。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因ですから、カップルで感染している可能性が高いんです。ですので、妊婦さんが治療を受けても、パートナーに病変が残っていれば再び感染してしまうことがあります。これは“ピンポン感染”と呼ばれる状態で、繰り返し発症の原因になってしまうんです。
【質問者】
なるほど…。じゃあ、夫やパートナーも一緒に検査した方がいいんですね。
【先生】グラフあり↓
そうですね。男性の場合、症状が出にくいのが厄介なところです。イボができればすぐに気づきますが、皮膚の奥や尿道の中など見えにくい場所にできると、本人も全く気づかないまま感染を広げてしまうことがあります。ですから、症状がなくても泌尿器科や皮膚科でチェックを受けることをおすすめします。
また、パートナーが喫煙者だと再発しやすいという報告もあります。タバコは免疫を下げる働きがあるため、HPVの活動が活発になってしまうんですね。妊娠中は禁煙が推奨されますが、パートナーの禁煙も再発予防の大切な一歩です。
そこで大切になってくるのがHPVワクチンです。実は尖圭コンジローマの予防に非常に効果が高いんです。日本では“子宮頸がん予防ワクチン”という名前で知られていますが、実はこのワクチンは子宮頸がんだけでなく、尖圭コンジローマを防ぐ効果もあるんです。
表があるのですが、現在日本で使われている9価ワクチン(シルガード9)には、尖圭コンジローマの原因となるHPV6型・11型をカバーする成分が含まれており、約9割以上の尖圭コンジローマを予防できるとされています。
HPVワクチンは実は 小6〜高校1年生の女の子は定期接種で無料、さらに1997〜2009年生まれの女性も“キャッチアップ接種”で2026年3月まで無料で受けられます。
でもそれ以外の世代は自費になります。ガーダシル(4価)で3回だいたい5万円前後、シルガード9(9価)だと3回で9万円くらいかかります。
【質問者】
ワクチンの効果が高く 無料で受けられる世代もあるのですね。でも、ワクチンって女性だけが打つイメージがあります…。
【先生】
そう思っている方は多いのですが、実は男性にも接種が推奨されています。すでにオーストラリアなど一部の国では男女ともにHPVワクチンを接種することで、尖圭コンジローマの新規発症数がほとんどゼロに近づいているんです。つまり、男女両方がワクチンを受けることで“社会全体の感染を減らす”ことができるんです。
日本でも2020年から、男子中学生も定期接種の対象になりました。すでに成人している方でも、任意で接種を受けることは可能です。パートナーがワクチンを打っていれば、妊婦さん自身の再感染リスクも減りますし、将来生まれてくるお子さんや思春期を迎える世代の感染リスクも減らせます。
性感染症というと“女性だけの問題”と思われがちですが、実際にはカップルや家族の健康に関わる問題です。だからこそ、パートナーと一緒に向き合うことが、治療の成功と再発予防に直結します。
“お母さんだけが頑張る”のではなく、“夫婦で一緒に感染症を防ぐ”という意識を持つことが、安心して出産を迎えるためにとても大切なんです。
Copyright (c) NIPT Hiro Clinic All Rights Reserved.